瞳をテーマにした短編集。
著者らしさが詰まっている。ちょっとおかしい感性の持ち主たちが巻き起こす青春劇は、清々しくも羨ましい。中にはホラー色の物語が入り込んでいるのも、著者らしさだろう。
「静電気の季節」はこれぞ青春。衝撃となって得たものは苦いというか痛い恋だったかもしれない。西澤のような女の子を描くのは本当に上手いですね。会話劇の受け答えが奇抜で面白く、サバサバして一見ガサツにも映るのに、ふとした瞬間に中身の女の子が出てくる。
ふわふわした主人公を通して彼女を見ていると、揺れ動く感情が伝わってきて、読み手まで胸がざわざわしてきます。学生の恋、青くて羨ましい。
「瞳のさがしもの」は表題の物語だけれど、一人の男の人生が描かれていくのだが、これがまた良い。短編の中でも一番好きかもしれません。恋心と恐怖心に気づかないように、何となく生きている主人公。
誰しもが子供の頃の思い出を美化して抱えているけれど、大人になればなるほど思い出というものは輝くのですよね。彼の境遇もあるけれど、目的もなく歩き続けて、回り道した先にあるものは、確かに光り輝いていた。
Presented by Minai.