中央大学と凸版印刷傘下のトッパン・フォームズは10月29日、紙媒体と電子媒体の情報伝達効率の違いについて共同研究した結果、年齢や媒体の性質以上に、読者の媒体への“慣れ”が情報を読み取る速さや理解度に影響していると発表した。
トッパン・フォームズによると、一般的には電子媒体より紙媒体の方が文章を読む速度や記憶の定着率がいいとされているが、デジタルシフトが加速した近年は媒体による情報伝達効率の違いに関する研究が無かったとして、2020年度に中央大学飯尾研究室と共同で研究を始めた。
実験では情報伝達効率を理解度と閲覧時間の尺度で分析。紙とディスプレイで同じ内容の原稿を提示して被験者が文章を読むのにかかった時間を計測し、5問程度のテストで内容の理解度を確認した。被験者は20代の若年層グループ、30〜50代の中年層グループ、50〜70代の高齢層グループ(それぞれ10人)。紙媒体と電子媒体のどちらを使い慣れているかといったアンケートも実施した。
結果は、電子媒体に慣れている人が多い若年層と中年層で、電子媒体の方が短時間に正確な情報を伝達でき、高齢層では紙媒体の方が情報伝達効率が高かったという。
高齢層では、電子媒体に慣れている人が電子媒体に表示された原稿を読んだ場合に理解度が67.2%と、紙媒体で読んだ場合の59.5%より高く、逆に紙媒体に慣れている人の理解度は、紙媒体に表示された原稿を読んだ場合が52.2%、電子媒体で読んだ場合が49.1%だった。閲覧時間と理解度は年齢とも比例していないことなどから、中央大学とトッパン・フォームズは、年齢や媒体の性質より、慣れが理解度に影響していると結論づけた。
今後は、影響力の強さを確認できた“慣れ”という要素に焦点を当てて共同研究を進めるとしている。