人気メーカーのニトロプラスと、数多くのアニメ、ゲームなどの楽曲を手掛けてきた志倉千代丸氏率いる5pb.がタッグを組んだ異色のサイコサスペンス『CHAOS;HEAD』。PCゲームとして発売後、大きな反響を受け、この秋にテレビアニメになった。
近未来の渋谷を舞台に、『ニュージェネレーションの狂気』と呼ばれる不可解な連続殺人事件が起こっていたが、ひきこもりがちのおたく少年・拓巳が偶然ネット上で次の犯行予告を目にしてから不可解な出来事に巻き込まれるストーリー。
緊張感のあるシリアスなミステリーだけでなく、拓巳を取り巻くかわいい女性キャラ達、舞台となる渋谷やネット上の用語などのリアルな描写など魅力あふれる作品となっている。
そんな『カオス;ヘッド』もアニメでは中盤に差し掛かろうとしている。そこでヒロインで謎の美少女・梨深役を演じる喜多村英梨さんに『カオス;ヘッド』の魅力と見どころ、そして来年発売されるXbox360用ソフト『CHAOS;HEAD NOAH』、12月発売のキャラクターCDなど今後の展開について語っていただいた。
アニメイトタイムズからのおすすめ
魅力は密度の濃い展開と拓巳君の妄想トリガーっぷりです(笑)
――まず『カオス;ヘッド』とはどんな作品ですか?
喜多村さん:ネットに執着して、三次元には興味がない、おたく少年の拓巳君がいろいろな事件や、謎を抱えた女の子達と関わり、巻き込まれていく中、自分の存在について見つめ直していくお話です。「ニュージェネレーションの狂気」と呼ばれる連続殺人事件や様々な事象が絡み合った難解な内容で、視覚的にも聴覚的にもインパクトがある、濃い作品です。
――PCゲームからのアニメ化ですが、ゲームと比べての違いはありますか?
喜多村さん:PCゲームはノベル系で文字から読み取る情報が多いけど、アニメは音と動きが出て、より臨場感を味わえると思います。ゲームをプレーされた方は動きを想像していたところで「ここではこういうふうに梨深が動くんだ」と思う方もいるのでは。
あとアニメは限られた30分という時間の中にできるだけゲームの良さを詰め込もうという意欲はすごく感じます。「あそこの妄想トリガーはさすがにやらないんだ」という部分もありましたけど(笑)。アニメになったことでエッチな妄想トリガーはよりエッチに、怖い妄想トリガーがより恐ろしくなり、魂が揺さぶられる演出も素晴らしいです。でも梨深の妄想トリガーを弾かれた時はやっぱり恥ずかしかったです(笑)。女の子達もよりかわいくなって、更に“はきゅん”“どきゅん”してもらえると思います(笑)。
――演じているキャラクターについて説明してください
喜多村さん:私が演じているのは、咲畑梨深という女の子で、私的にはヒロイン・オブ・ヒロインかなと思っています(笑)。かわいいルックスでピンクの髪の毛、言葉使いも「びしっ!」とか「タハハ」など変わっている、ひと癖もふた癖もある魅力的なキャラクターです。拓巳に初めて出会ったのは殺人現場でしかも血まみれ、それなのに今まで友達だったような接し方をするので拓巳も驚いていました。拓巳のことが大好きで「私が守ってあげる」とか「私がそばにいるから大丈夫」など力強い言葉をかけたり、拓巳のために戦ったりしてます。でも拓巳は「悪魔女」呼ばわりして(笑)。拓巳が梨深に心を許してくれるまでアニメでも何話か費やしました。なぜその現場にいたのか、お茶を濁すようにはぐらかしていましたから、しょうがないんですけど。普段は明るく元気で拓巳を翻弄するような梨深も暗い過去や謎があって……。なかなか本質が見抜きにくいキャラですね。
――ずばり『カオス;ヘッド』の魅力とは?
喜多村さん:え~……いっぱいあり過ぎて難しいなあ……。まずは拓巳君の妄想トリガーっぷりかな(笑)。日常の中で誰でも妄想したりすることはあるけど、その度合いが激しくて。たくさんの女性キャラが拓巳のフィルターを通して、いろいろなことになる様子は作品が重い分、視聴者の方にとってオアシスみたいになるのではないかなと思います。
――たくさんの女の子が登場しますが、それぞれ謎や暗い過去を抱えているようで……
喜多村さん:そうですね。例えば梨深は拓巳に恩義を感じる出来事が以前あったり、困難な環境の中でトラウマを持っていたりして。明るくふるまったり、嘘をついたり、「拓巳君を助けてあげたい」という強い気持ちは自分を投射している部分があるんです。優愛もとある事件を追っていたり、あやせは自分が人間世界でないところの住人という意識があったり、梢もあまりしゃべらないキャラだけどそれには理由があるし……。みんな、二面性がありますね。七海くらいかな、お兄ちゃん想いの妹という見たままなのは。でも七海も寂しがり屋なところがあって。だからお兄ちゃんに依存しているのかもしれませんね。
――監督からは「女の子キャラが元気じゃないと」みたいな発言があったそうですね
喜多村さん:拓巳君はネガティブな思考のキャラだし、登場する男性キャラも大人達で悩みもあり、野望があったりするので、「女の子達はビジュアルがいいのでどこまでもかわいく、押さえるところは押さえて、キメるところはキメる。それは意識してほしい」と言われました。絵を見ながらアフレコしてますが毎回、「あっ、ここが梨深の一番の見せ場なんだろうな」と思えるようなかわいいシーンがありますね。女の子のキャラって。
拓巳のセリフに出てくる用語がリアルで共感します
――また作品の舞台になっている渋谷などの描写もリアルですね
喜多村さん:アニメの収録の時、絵を見て、みんなで「お~っ」と感心しました。拓巳君が住んでいる神泉や、渋谷駅の前でセナに出会うシーンも、ハチ公前にある電車の廃車両の中で話していたり、駅前の店舗などかなり細かく描かれています。渋谷に行ったことがある人は「あっ、あの場所だ!」とより親密に見られると思うし、パロディ的な意味でもおもしろいかなと思います。
――殺人事件などセンセーショナルでショッキングなシーンはありますが、見ていると拓巳に自分を重ねたり、どこか共感できる部分もあります
喜多村さん:私もおたくなので「拓巳最高!」です(笑)。拓巳はアニメやマンガやゲーム好きだし、今、ネット掲示板などで使われている用語で会話したりしているのを見ると、私も「あっ、そうそう!」とか「わかる、わかる!」と思うし、おたくならではの斜め上から目線なんかもリアルです。全部あてはまる人は少ないかもしれないけど、どこか似ている部分が見つかると思うし、拓巳に親近感がわいてくれたらいいですね。拓巳が一人の部屋で「セーラたん、萌え~!」とか、「三次元では弱いけど二次元だったら俺強い」と焦りながら叫んでいるシーンもおもしろいけど、違和感なく見られるんじゃないかなと思います。
――ひきこもりの拓巳が事件や人と触れ合うことで、どう他者と向き合うかがテーマの一つになっている気がします
喜多村さん:自分から歩み出すというより、他者に外に出してもらう形ですが、拓巳がどんな対応をしていくのかが一つの課題になっていて、その中で「自分が何なのか?」、「自分の存在価値って何だろう?」と悩みながら、翻弄されているのは感じます。梨深が唯一、拓巳の存在の答え、エンディングを知っているので、他者にとっての拓巳の存在する意味も大きいと思っています。
私はあやせファンなので、演じている榊原ゆいちゃんとよく話しています
――ゲームと比べて、アニメの収録をしてみた感想は?
喜多村さん:ゲームは一人での収録なので、「相手はたぶんこんなふうにしゃべるのかな」と想像しながらやっていましたが、アニメではみんな現場にいるし、相手との息や間など小さなところも感じとれるので、相手にも自分のキャラが動かされる感覚があって、やっていて楽しいです。あとPC版では決められたセリフをしゃべることしかできないけど、アニメではアドリブや、みんなでやるモブのガヤとかもやっていておもしろいです。話がシリアスな分、みんな、そういうところで発散しているのかもしれません。
――現場の雰囲気はいかがですか?
喜多村さん:私はあやせ役の榊原ゆいちゃんがいつも隣りの席にいて、よく話します。私、あやせのファンで、あやせがしゃべるシーンをよくチェックしていて、二人で「邪心王グラジオール!」と言い合ったり、「あのシーン萌えるよね」とか、「私、水着でしゃべってるんだよ」とか話したり。でもシリアスなシーンではみんな、自分のキャラに集中したり、セリフに向き合っています。拓巳役の吉野裕行さんが一番端っこでピリっとした雰囲気を出していて、いい意味の緊張感がありますね。みんな、それぞれ楽しみつつ、共有できるところは共有して、でも基本線は自分のキャラと見つめ合う、いい空気感の現場です。
――自分が演じているキャラ以外で気になるのは?
喜多村さん:あやせです! 拓巳君は自分に近い存在過ぎて、あこがれとか好きという気持ちを超えてしまっていて、ある意味、家族みたいに感じます。あやせは三次元キャラなのに二次元っぽくて、独特な間、自分が信じる神に信仰していて、そのために歌い続けるストイックさはおもしろいなと思いつつ、『カオス;ヘッド』っぽいかなと。私が梨深を演じている分、あやせは正反対なキャラなので魅かれるのかもしれないですね。
――オンエアは中盤にさしかかりましたが、なかなか物語の核心に迫れません
喜多村さん:ちょうどセナが出てきて、「視覚的に映る○○で~○○の対象が……」みたいな理科系っぽい難しいセリフをずっと聞かされて、「全然、わかんねぇよ!」というシーンが続いているところかな。拓巳の周りの人達が自分の世界の中で死みたいなことを語り始めるんですけど、拓巳は別の世界でふわふわして置いてきぼりになっている感じで。見ている人達はたぶん拓巳君と同じ視点だと思いますが、アニメの最終回の数分前まで見ないとわからないんじゃないかな。PC版をやっていた時にもそう思いました。伏線張り過ぎキャラと、張り過ぎストーリー展開で、キャラ1人に対して事件が3~4倍。「そう簡単には教えられないぞ」という感じの焦らし焦らしプレーです(笑)。
アニメは集約されていると言いながらもPC版が柱になっているので毎回、目を凝らして、頭を使って、集中して見ないとわからないと思います。読み解くおもしろさはPC版もアニメも変わりませんね。
――難解で毎回、情報量が多く、視聴者が30分、目を離せない作品は異質な感じがします
喜多村さん:そうかもしれませんね。私も『カオス;ヘッド』のように考えさせられたり、人間の泥臭い描写が多い作品が好きなので、久しぶりにそういう作品が出てきたなという喜びを感じます。
“妄想ボイス”も収録されたキャラクターCDにご期待ください
――いろいろなプロジェクトが進行する『カオス;ヘッド』ですが、来年にはコンシューマーゲームも発売されるそうですね
喜多村さん:2月26日にXbox360用ソフト『CHAOS;HEAD NOAH』が発売されます。『カオス;ヘッド』の芯の部分は変わらず、更に追加シナリオとしてプラスされた要素があり、初めてプレーされる方もPC版をプレーされた方も楽しめる内容になっています。PC版を制作している時、スタッフさんが「こんなにかわいい女の子達が出るんだったら攻略したいよね」と言っていましたが、今回のXbox360版は各ヒロインごとのルートがより強化され、美少女ゲームっぽい仕上がりになっているかなと思います。ちょっとライトになった『カオス;ヘッド』を楽しんでいただきたいです。
――また12月24日には梨深のキャラクターCD『CHAOS;HEAD ~TRIGGER 2~ 咲畑梨深(cv.喜多村英梨)』も発売されます
喜多村さん:『カオス;ヘッド』の6人の女の子キャラのCDが12月から2キャラずつ3カ月連続で発売され、最初は梨深と七海のキャラCD『Xbox360用ソフト「CHAOS;HEAD NOAH」オーディオシリーズ』です。収録されるキャラソンはXbox360用ソフトの、それぞれのルートのED曲になっています。そして妄想ボイスというミニドラマも入っています。梨深が拓巳と二人きりの設定で、彼に対して甘かったり、ちょっぴりエッチなセリフを言っています。聴いてくださる方は自分が拓巳になったつもりでこの妄想ボイスを聴いていただきたいです。
――最後に皆さんへメッセージをお願いします
喜多村さん:PCゲームからアニメになって、より臨場感が増した『カオス;ヘッド』を毎週見てください。私としてはぜひ梨深ちゃんの生「びしっ!」を見てほしいです。来年に発売されるXbox360版ではPC版、アニメで語り尽くせなかったヒロイン達の過去や想いなども追加シナリオで楽しめますのでプレーしていただけたらと思います。そしてXbox360版のルートED曲になる、それぞれのキャラクターソングも来月リリースが始まりますが、妄想トリガー引きっぱなし状態できっと喜んでもらえるはずです。更にドラマCDも発売されて、こちらではより各キャラクター達の日常や生活風景などが描かれた内容になっています。PCゲーム、アニメをチェックしていただきつつ、これからも続く『カオス;ヘッド』の世界を一緒に楽しんでください。
『カオス;ヘッド』アニメ情報
◆『CHAOS;HEAD~TRIGGER2~咲畑梨深(CV.喜多村英梨)』
08年12月24日発売
1,470円(税込)
発売:5pb.
◆Xbox360用ソフト『CHAOS;HEAD NOAH』
09年2月26日発売予定
限定版:9,240円(税込)
通常版:7,140円(税込)
発売:5pb.
◆DVD『カオスヘッド 1』
09年2月25日発売
スペシャル・パック(初回生産限定):7,140円(税込)
通常版:6,090円(税込)
※映像特典あり(内容未定)
●スペシャル・パック(フィギュア付)と通常版の2アイテム同時発売
●第1巻スペシャル・パック同梱フィギュア:咲畑 梨深