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今年の3月にデビュー20周年を迎えたCHEMISTRYが初期の代表曲5曲をリメイク。10月より連続配信リリースを行ない、12月8日に「My Gift to You」が配信されたばかり。このリメイクプロジェクトは、松尾潔をトータルプロデュースに迎え、星野源やOfficial髭男dism、あいみょんなどの楽曲を手がける気鋭の音楽クリエイター集団「origami PRODUCTIONS」がサウンドプロデュースを担当。現代的なサウンドにアップデートされた各曲への想いをふたりに聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ
PHOTO BY 笹原清明

■ふたりの今のハーモニーを存分に生かす

──今年4月から続いている20周年アニバーサリーツアー。その第3章となる『This is CHEMISTRY』を終えたばかりですね。

川畑要(以下、川畑):第2章は『CHEMI×CHEMI 2021』と題してファンクラブ会員限定のライブをやったんですけど、第3章は自分たちの持ち味である“歌”というものに改めて焦点を当てていて。20周年だから20曲というところにもこだわりつつ、最近の曲から始めて年代順に遡っていくという構成にしました。みんなと一緒に歩んできた、この20年という歴史を、僕らもですが、観てくださった方にも感じてもらえたらいいなという想いがありました。

堂珍嘉邦(以下、堂珍):過去曲も新しいアレンジを軸にしたものを披露したので、サウンド的にもオール生バンド編成でやりました。シーケンスを使用せずにより自由度が高い状態で今回は披露したいなと思って。(オケに入っている)初期のコーラスはやっぱり今の歌い方とは違いますし。だから、ふたりの今のハーモニーを存分に生かすために、すべてを生バンド演奏にして、意識を高めてやっていました。

堂珍嘉邦

──ライブでは新たなアレンジで歌っていたんですね。

堂珍:そうですね。ちょうどリメイクプロジェクトをやっていたのもあったので。それに、生バンドでやることで僕らの今のモードが如実に反映されますし、これまでとは違う解釈ができたりもする。長くずっと追いかけてくれているファンの方々の前でも、同じことは絶対にやりたくないですから。僕らも第3章は常にフレッシュな気持ちで挑めたツアーになりましたし、歌を楽しんでやっていましたね。

■僕らの曲を料理してもらい、曲が新しく生まれ変わる

──今回のリメイクプロジェクトはどんな発想からスタートしたんでしょうか。

川畑:トータルプロデューサーの松尾(潔)さんからの提案ですね。2019年9月に『CHEMISTRY』という自分たちの名前を冠した8枚目のアルバムを出して、20周年に次は何をしようかと考えたとき、僕らにはありがたいことに、「PIECES OF A DREAM」とかみんなが知ってくれている代表曲があるので、それらをorigami PRODUCTIONSのクリエイターさんたちにリメイクしてもらえたら面白いんじゃないかっていうところから話が進んでいって。

川畑要

堂珍:20周年企画のひとつではあるのですが、ただのリメイクではなく、今の音楽シーンの真ん中にいらっしゃるクリエイターの方々に僕らの曲を料理してもらう試みは魅力的だなと思いました。なにより、曲が新しく生まれ変わるわけですから、それだけで僕たち的には大きい財産になる。同じ曲なんだけど、新しい曲がもう一曲出来たといってもいいくらいの仕上がりなんじゃないかと思っています。

川畑:自分たちがライブでも歌い続けている楽曲でもあるので、どういうアレンジになるのかは本当に楽しみでしたし、楽曲ごとにプロデューサーが違うので、それぞれに新鮮でしたね。

──では、1曲ずつリメイクの感想を聞かせてください。2001年のデビュー曲「PIECES OF A DREAM」は、ドラマーでシンガーでもあるmabanuaさんがサウンドプロデュースを手がけています。

川畑:僕はこの曲が一番グルーヴィーなサウンドになっているなと感じました。第3章のツアーで披露したときもバンドとのセッション感があって。

──まさに、ジャズやソウルのミュージシャンたちによるジャムセッション感がありますよね。

川畑:そうですね、黒い感じがある。転調したあとのキメも大好きです。ただ、一番アレンジが難しかったんじゃないかな。代表曲のアレンジを変えて歌うのは僕らでも緊張するものなので、mabanuaさんも「緊張した」と言っていましたけど、クリエイターさんの方がいい意味でのプレッシャーがあったんじゃないかなと思うんです。でも、“ここまで変えてくれてありがとうございます!”という気持ちでしたし、変化をすごく感じることができたのも嬉しかった。このアレンジの「PIECES OF A DREAM」があることでツアーもさらに楽しくなった感覚がありますね。

堂珍:僕も好きですね。しかも、mabanuaさんのお人柄もとっても良くて。ナイスガイな印象どおりの心地いい音楽に仕上がっていますし、グルーヴィーになったのが嬉しかったですね。過去にもリミックスアルバムを出してきましたけど、また違った感慨がありました。

──感慨というのは?

堂珍:ビンテージ感を感じられるようになったのが嬉しかったんですよね。20年前の楽曲に新たな色を塗ったり、磨き直したりすることでオリジナルとはまた違った味わいが出たと思うし、ライブでやっていても自然と身体が動くようなグルーヴ感も出ていると思います。爽快感がありつつも、ビンテージ感も出ている。オリジナルが好きな人には、あの印象的なイントロがどう変わったのかに注目して聴いてほしいですね。

川畑:僕たちにとっては一番歌ってきている曲なんですよね。CHEMISTRYはこの曲で始まって、今も歌い続けている。それこそライブで歌い続けているからこそ、今の自分たちでも歌えているのかなという気持ちもありますね。

──クリエイター陣には事前に何かリクエストはしたんですか?

川畑:「それぞれの色で自由にやってください」ってお願いしたくらいです。

──そして、2曲目「Point of No Return」はギタリストの関口シンゴさんがアレンジを手がけられています。

堂珍:この曲も相当悩まれたんじゃないかと思うのですが、歌っている立場からすると、大サビからリズムが入ってきて、上がっていく感じが面白いなって思いました。

川畑:そうだね。ライブで歌っていて気持ちいい部分も、2サビが終わってDメロに入ったところなんですよ。当時のレコーディングのときは、そこを囁くように歌った記憶があって。今回のアレンジでは1回落ちて音数が少なくなったあとで、ビート感、疾走感が出てくる感じが好きですね。オリジナルアレンジのポイントも残しつつ、雰囲気をパッと変えてくれているので気持ちいい。

──続いて、3曲目「You Go Your Way」はベーシストのShingo Suzukiさんです。

川畑:「You Go Your Way」自体は、僕らが「バラードを歌いたい」と言って、シングルで初めてリリースしたバラード曲だったんですよね。オリジナルは壮大でドラマチックな感じですけど、今振り返ってみると、あの頃の自分たちにはちょっとデカかったなと思うんです。今回のアレンジは壮大というよりも、どっしりしていて大人っぽい。20年経つにつれて、どんどん沁みてきたというか、深まったというのか、重ねてきた年月までもが見えるようなアレンジですよね。この曲、僕から歌い始めて、音数が少ない中でサビまでいくじゃないですか。ライブでも自分のタイミングから歌に入るんですけど、“ここで入ったらドキっとするかな?”って、ライブに来ているお客さんからどう見えるかという視点でいつも歌い始めを意識しているんですよ。と言いながら、結構、早い段階で歌い始めちゃうんですけどね(笑)。

──ピアノとボーカルのみの編成で始まりますね。

川畑:はい。オリジナルだと最後に歌を聴かせて終わるんですけど、今回のアレンジにはたっぷりとアウトロが入っている。すごく余韻があるし、あの浮遊している感じも好きですね。バシッと今の自分にハマった曲でもありました。

堂珍: “想いは想いのままで”という歌詞があって。失恋してしまった歌なんですけど、今回のアレンジによってふたりの雰囲気にしなびた良さがあるというか。アレンジは素朴だけど、より濃厚に聴こえるし、逆に伝わりやすくなっているというか。僕らも40歳を超えてきているわけだから、20年前とは恋愛への考え方や価値観も変わっている。経験してきたものが、鏡となって歌声にも出るので、このアレンジで聴かせられるのは素敵だなというか……自分で「素敵だな」って言っちゃったけど(笑)。

──あはは。いや、本当に素敵でした。20代のときの失恋とは違う苦味というか、やるせなさも感じられました。そして、「君をさがしてた」はシンガーソングライターでもあるMichael Kanekoさんで、コーラスに、シンガーのHiro-a-keyさんも参加しています。

川畑:実はこの曲がリメイク楽曲レコーディングの1発目だったんですよ。最初なので、自分も少し構えるところがありましたし、ディレクションという部分でも、どんな感じになるのかなって、いい意味での探り合いがあリました。Kanekoさんはご自身で歌う方でもあったので「こういうふうに歌ったらどうだろう」っていうフレーズのアイデアをたくさんくださって。実はメロをちょっと変えたりもしているんです。ライブのリハでも、ビートと歌のハマり具合でどれだけグルーヴを出せるのかっていうことを試していたんですけど、ハマるとスタッフからも「うおー!」っていう反応があるんですよ。そういうのってすごく気持ちがいいじゃないですか。そういう意味でも、この曲は今、ハマったと手応えを感じることができました。

堂珍:僕は以前、Kanekoさんがやられていた配信音楽番組にゲストで出演したことがあって。まさかCHEMISTRYで一緒に仕事をするとは思っていなかったんですけど(笑)。Kanekoさんも歳が近くて、オアシスやジャミロクワイとか僕ら世代が好きだった洋楽カバーとかをされていて、ボーカルスタイルは違いますが、親近感がありましたね。これはトロピカルって言っていいのかな……。

──ベースはウーリッツアーのウォーミーなR&Bバラッドですけど、トロピカルの要素も入っていますよね。

堂珍:このメロウな感じがいいなと思っていますね。第3章のツアーのアンコールは、このイントロで入場していたんですけど、ギターの艶っぽい感じとか、ちょっとゆるい感じが、アダルトな演出と相まって気持ちよかったです。

──ウエディングソングに続き、最後はウインターソング「My Gift to You」で、アレンジはキーボディストのKan Sanoさんですね。

川畑:この曲はオリジナルとアレンジが大きくは離れていなかったので、一番素直に歌っていますね。大きな違いといえば、オリジナルにはSkoop On SomebodyのTAKEさんの声が入っていること。その部分はライブでは僕が歌っていて、リメイクではHiro-a-keyさんが歌ってくれていますが、僕の中では、今、ライブでやっているふたりバージョンに落とし込むっていうのが頭にありました。

堂珍:要が言うように、ライブで構築してきた、育ってきた感じをそのままやるのがいいかなって思いました。そんなに曲の印象は変わっていないんですけど、歌の主人公が入れ替わった気持ちになるところがあったんですよ。“大人になり 夢にはぐれて/戸惑う僕の前に 君が立っていた”っていうフレーズ。昔は 、自分は“僕”の方だった。今、お客さんの前で歌っていると、大人になった自分が“君”の側に立っている気分になるんです。そういう変化があって面白いなって感じました。

川畑:僕はいつも車の中でオケを聴きながら歌っているんですけど、最後の方の掛け合いのフレーズをちょっと変えたのは、ドライブ中に自然に出てきたものだったんですよ。ふと思いついて、提案させてもらいました。

──この曲は2011年の東日本大震災のときに歌った印象も強いです。

川畑:そうなんですよね。同じバラードでも、「You Go Your Way」は切なさがあって、「My Gift to You」はあたたかさがある。奇しくも、震災というものが「My Gift to You」を本当の音楽のギフト、“愛の贈り物”にしてくれたと思います。そういうものを経験して、肌で感じたうえで、あれから10年後の今も歌っている。感謝も込めながらこれからも歌い続けていきたいと思っています。

■来年2月の武道館公演は、20周年を歌い切りたい

──そして、このリメイク5曲とオリジナル5曲に、おふたりが各5曲ずつをセレクトしたベストアルバム『The Best & More 2001〜2022』が2022年2月16日にリリースされることが発表されました。

川畑:僕らの選曲はまだこれからなんですよ。自分でも何を選ぶかわからないんです。もしかしたらかぶるかもしれないしね(笑)。

堂珍:そうなんですよ、まだ考えているところなんです。リマスターもしますのでそこも楽しみにしていてほしいですね。

──さらに、その翌週、2月23日には日本武道館公演も控えています。

川畑:『20th anniversary LIVE 最終章』と謳っているので、きっちり“最終章”として締めたいですね。コロナでライブがなかなかできなくなってしまって、後ろにずれてしまったけれど、ここでしっかりと自分たちの20周年の締め括りを見せたい。しかも、武道館で1日だけなので、やり切る、歌い切りたいっていう気持ちでいます。

堂珍:アニバーサリーのラスト、有終の美を飾ります。挑戦と熱をどれだけ注げるか、無理なく無理をして(笑)、いっぱい詰め込んで、お客さんも含めてみんなで楽しみましょう。

──2022年、武道館を終えた先はどう考えていますか。

堂珍:CHEMISTRYもありつつ、お互いのソロもあると思いますけど、今は、20周年をみんなとお祝いできて幸せだなっていうことに尽きますね。

川畑:まずは20周年イヤーを無事にやり切って、やり遂げたときに、どんな気持ちになるのか、次に何が見えるのか。先のことはそれから考えようと思っていますので、お楽しみに。


プロフィール

CHEMISTRY
ケミストリー/堂珍嘉邦、川畑要による男性デュオ。オーディションバラエティ番組『ASAYAN』の男子ボーカリストオーディションで約2万人の候補者の中から選ばれ、ボーカルデュオ“CHEMISTRY”として、2001年にシングル「PIECES OF A DREAM」でデビュー。CD総売上枚数は1,800万枚を誇る。2012年に活動休止、ソロ活動に重きをおくが、2017年に活動を再開し、2021年にデビュー20周年を迎えた。


リリース情報

20TH ANNIVERSARY PROJECT

2021.10.27 ON SALE
DIGITAL SINGLE「PIECES OF A DREAM feat. mabanua」

2021.11.10 ON SALE
DIGITAL SINGLE「Point of No Return feat. 関口シンゴ」

2021.11.24 ON SALE
DIGITAL SINGLE「You Go Your Way feat. Shingo Suzuki」

2021.12.01 ON SALE
DIGITAL SINGLE「君をさがしてた feat. Michael Kaneko, Hiro-a-key」

2021.12.08 ON SALE
DIGITAL SINGLE「My Gift to You feat. Kan Sano, Hiro-a key」


2022.02.16 ON SALE
BEST ALBUM『The Best & More 2001〜2022』


ライブ情報

CHEMISTRY 20th anniversary LIVE 最終章
「PIECES OF A DREAM」

2022.02.23(水・祝)日本武道館



CHEMISTRY OFFICIAL SITE
https://chemistry-official.net/