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ジョージア工科大学と大連海事大学の研究者らは、海中で揺れる海藻の動きからヒントを得て、波力エネルギーを利用する柔軟な摩擦帯電型ナノ発電機「S-TENG(Seaweed-like Triboelectric Nanogenerator)」を開発した。海面だけでなく海中でも発電可能で、海洋センサーへ効率的に給電できると期待される。研究結果は、2021年9月16日付けで『NANO』に掲載されている。

現在多くの沿岸地域で、海流や潮の満ち引き、透明度といった情報を収集するためのセンサーネットワーク、いわば「海洋IoT」が、船の航行や水質の監視に利用されている。ただ、定期的なバッテリー交換が必要なシステムは時間とコストがかかり、風力や太陽光発電からの電力供給は水中の利用には適していない。

海の波は、砂や小石、岩も運ぶほど強力なエネルギーを含んでいる。大きな波だけでなく、小さく穏やかな波にも、再生可能エネルギー源として活用できる可能性がある。ジョージア工科大学のZhong Lin Wang教授らは、低周波数、低振幅の波力エネルギーを集めて、水中でも発電可能なデバイスを作成するために、物体同士の接触や摩擦により表面に発生した摩擦帯電を利用する摩擦帯電型ナノ発電機(TENG)に着目。さらに海底に生息する海藻の動きにヒントを得て、柔軟な発電機のS-TENGを開発した。Wang教授は、2012年にTENGを発明した人物でもある。

研究チームは、1.5×3インチ(約3.8×7.6cm)のPETおよびFEPフィルムに導電性インクをコートし、これら2枚のフィルムで薄いスポンジを挟んで空気層を設けて防水テープで密閉し、S-TENGを作製した。

実験では、S-TENGの一端をブイにつなげて海中に沈めたり、海藻のように海底に設置した状態で波を起こすと、フィルムがくねくねと曲がって発電することを確認した。S-TENGに水圧がかかると、2枚の導電性フィルム間の空気層は狭くなるが、水深30フィート(約9m)の圧力に相当する100kPaの下でも発電できた。また、複数のS-TENGを水中に沈めて、温度計や30個のLED、ミニLED灯台を光らせ、小型の水中発電システムとして利用できることを実証している。

水中で海藻のように揺れながら発電するS-TENGシステムは、バッテリーに依存しない海洋IoTの実現に向けて効果的な手法となると期待される。

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Plugging into ocean waves with a flexible, seaweed-like generator (video)

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