家族や恋人、人との絆を温かい目で描く大人向けの人気アメドラ『ヴァージンリバー』シーズン2〜3の詳しいあらすじ(ネタバレあり)をお届けします、
ネタバレを知っても良い方は、各エピソードの帯をクリックしてください。
大都会ロサンゼルスのER(緊急医療)で働いていた看護師だったが、あることをきっかけに心に傷を負ったメル。
彼女が癒しと社会復帰を求めて町の求人に応じてやって来たのはカリフォルニアの田舎町ヴァージンリバーだった。
ところが…。
\原作を日本語で読む/
ポチップ
『ヴァージンリバー』エピソード1 あらすじ
ナースで助産師のメルは、新しい人生を歩み始めるためにカリフォルニアの小さな町ヴァージンリバーに移る。
彼女の指には結婚指輪がはめられている。
彼女は、彼女を雇い、ロッジを提供してくれた市長のホープ・マックレアに会う。
メルは地元のレストランバーで、バーテンダーかつ経営者のジャックと出会う。
メルはドクター・マリンズ(ドク)のマリンズ医院に到着したが、彼は彼の承認なしに彼女が雇われたことに不満だ。
ジャックの仲間のマリーン、ブレイディが町に戻ってきて、ジャックは彼にバーの仕事を与える。
ホープはメルについてドクと話し、彼がそれを認めるかどうかにかかわらず、彼には助けが必要であると言う。
ドクターはメルに30日間の試用期間を与えることに同意する。ジャックは医院の玄関で赤ちゃんを見つけ、メルを呼ぶ。
ドクの医院前で捨て子を見つけたメルは、行政に連絡すべきだと考えるが、ドクや周囲からは反対される。
雑貨店のオーナーのコニーなど地元の人々は何とか親を探し出すべきだという考えで、メルとは意見が異なる。
ドクはメルを雇うことに熱心ではなく、メルは不満をホープに伝える。ジャックはロッジの改修を手伝うことを申し出る。
メルは一時的に捨て子のクロエの里親になることを決意する一方、消すことのできない悲しい記憶をフラッシュバックさせる。
リリーは彼女が母親であることを認める。彼女の夫は6か月前に亡くなり、メルは彼女が産後うつ病に苦しんでいると考える。
メルは自分の赤ちゃんを失い、リリーに自殺を考えたと打ち明ける。それは死別による悲しみだけでなく、産後うつ病だった。
女性がバーにやって来て、ジャックのガールフレンドのシャーメインだとメルに自己紹介する。ジャックはメルに残ってもらおうと汗を流す。ドクはホープを家に降ろすが、彼女は階段を上りながら倒れる。
ジャックはホープのキッシュを持って来るが、メルは冷たく彼に接する。ペイジは道を聞きに店に入って来た女性に、ミシェルという名前の誰かと間違えられる。
ミシェルが銀行口座を持っていないこともわかり、彼女が秘密を持っていることを匂わせる。
メルはシャーメインから痛い質問を投げかけられる。健康に問題を抱えたホープはドクターに真剣な話を切り出す。
ジャックとメルは、ポット・キャンプ(大麻の違法栽培場)に連れて行かれ、メルがそこのボスであるカルビンの銃創を治療させられる。
住人の1人である若い女性が出産するのを手伝うことにも。メルの姉からの電話でホープが2人の失踪を知り、ドクが2人を探し出し、連れ戻す。
ホープがシャーメインを嫌悪する理由も判明する。メルは、ジャックが海兵隊の時の夢を見てうなされる夜驚症であることに気づく。
メルの姉のジョーイは、ヴァージンリバーにやって来て、夜のスイッチ・パーティに参加する。毎年恒例の、曲の間でパートナーを切り替えるダンス・パーティだ。
ドクは、ホープの望み通り彼と離婚できるよう弁護士のアポを取ったが、彼女がその席に来なかったことの不満をホープにぶつける。
ペイジはダンスの合間に息子のクリストファーを一時的に見失い不安に襲われる。
ジャックは、カルマインから愛を告げられるが、ジャックは渋い表情だ。2人は2年前から大人の関係を合意のうえ付き合い始めたが、カルマインは彼を愛するようになってしまったのだ。
ジャックの店の従業員のブレイディから口説かれるジョーイを宿に帰そうとするメルだが、納得しないブレイディ。彼女は既婚者だと注意するジャックに、メルもそうだと言われたジャックは思わずブレイディを殴ってしまう。
ペイジの車の中に落ちていた彼女の免許証を見て彼女の本名を知ってしまうプリーチャー。
車の後部座席に荷物が積んだままなのもおかしい。
夫を失った悲しみの記憶が蘇り感情を抑えられなくなるメルをジャックは心配する。
ジャックはシャーメインに「君のことは大切に思っている。でも無理だ」と、自分の正直な気持ちを伝える。
「メルは関係ない?」と問われたジャックは、「君と僕の問題だ」と答えるが、シャーメインは鼻で笑い、
「そんなの信じられない」。
「本当だ」
「自分にウソをついてるんじゃない?あなたが私を好きになるまで待つつもりはない」
「君を傷つけた」
「時間をムダにしただけ」
「すまない。夢を叶えてくれ」
こうして2人は別れるが、ジャックが去った後、涙を堪えきれないシャーメインだった。
夫が自分のせいで死んだことをメルはジャックに打ち明ける。
嵐が来て町は停電になる。
町の人は慣れっこだが、メルは心細い。
停電の時はジャックの店に集まるのが町の人々の慣わしで、メルも大家から誘われるが断る。
ジャックのバーは町の人々で賑わっている。
一方、メルはベッドの中。
メルはジャックに真実を明かしたことを後悔し始める。
姉からの電話で、「あなたもバー行けば」と言われたメルは、びしょ濡れになりながらも歩いてバーに向かう。
プリーチャーはペイジのことをインターネットで調べ始め、彼女が誘拐で手配されていることを知る。
プリーチャーは、ペイジの秘密をジャックに伝える。
シャーメインからの手紙を読むようジャックに迫るホープ。
ペイジの秘密を知り、彼女に会いに行くプリーチャー。
ホープはシャーメインから預かったジャックへの手紙を読んでしまい、シャーメインに会いに行く。
手紙をジャックが読めば彼が傷つくとホープは手紙を返そうとするが、シャーメインはジャックに渡すように言う。
ホープはジャックに手紙を渡すが、ジャックは手紙を机の引き出しにしまう。
12歳の娘を連れて両親が診察を受けにやって来るが、当初は喘息と思われた症状が、息苦しさ、頭痛、吐き気、発汗、徐脈と中毒症状だとドクとメルは気づく。
救急隊を呼びたいが、到着まで数時間かかるので、患者の車をドクが運転して大きな救急病院へ運ぶことに。
ドクは車中、彼らの飲料用の井戸水にカルヴィンの栽培場で使っている農薬が汚染していることによる有機リン中毒だと気づく。
ドクはメルの働きを褒め、試用期間を延ばしてもいいと言う。
ジャックはメルを港の高級レストラン「アーサーズ」のディナーに誘う。
夫とのデート以来、6年ぶりのデートだった。
夜、プリーチャーはペイジの家を訪ね、「力になる。俺を信じてほしい」と気持ちを伝える。
ジャックはメルを家まで送り、2人はキスをする。
メルは「ゆっくり進めたい」と言い、ジャックは「君にまいりそうだ」と言う。
帰宅したメルは袋から2個の指輪を取り出し、夫に「代理母を探す」と言った時の光景を思い起こす。
ジャックは机の引き出しに入れた手紙を思い出し、読む。
そこには衝撃的な内容が記されていた。
ジャックはシャーメインに会い、いつ妊娠を知ったかを聞き、彼女は数週間前から兆候があったと答える。
そして自分にとって母親になる最後のチャンスだと思うが、状況は変わる可能性はあるかと聞く。
ジャックは「君と子どもはサポートする」と言うが、シャーメインと結婚する気持ちはない。
シャーメインは、ジャックに「今も愛している」という言葉を残して、美容院に行く。
ドクはホープを「アーサーズ」に誘う。
メルが出勤するとホープがいて、メルをハグし「2人なら平気。子どもなんて関係ない」と言ってしまい、「シャーメインが妊娠した」ことを言わざるを得なくなってしまう。
メルはジャックに、シャーメインの妊娠に対処できないと言い、ジャックはメルに恋をしていると告げる。
また、メルは、夫が死亡した自動車事故がフラッシュバックし、激しく動揺する。
メルは荷物をまとめて姉の家に帰ると言う。
ホープは後悔と罪悪感でいっぱいだ。
ペイジはプリーチャーに、彼女が夫と離婚し、その後、親権を持たないにもかかわらず、息子と一緒に逃げたと明かす。
ジャックがシャーメインの妊娠をメルにどう伝えるか悩んでいる時に、ホープがやって来て、メルに言ってしまったことを告げて詫びる。
「関わるなって言ったよな」
「助けたくて」
「助けになっていない」
「君には俺の人生に関わってほしくない。ほっといてくれ」
メルがジャックを訪ねて来る。
「間違いだった、あなたも田舎町に来たのも幸せになれると思ったのも」
何とかすると言うジャックだったがメルは店を出て行く。
ドクがホープを迎えに行くと、ホープは20年間ドクの謝罪を受け入れなかったことを詫びる。
メルは隣町に用があって立ち寄った喫茶店で偶然シャーメインと顔を合わせる。
「あなたを見つめるジャックを見て気づいたの。私はあんなふうに見つめられたことないって」
ジャックが選択することで、彼に気持ちがないのに戻ってほしくない、メルがいるいる限り彼が戻ることはないと言ってシャーメインは店を出て行く。
ブレイディはジャックの店を辞め、以前声を掛けて来た大麻違法栽培のカルヴィンに会う。
車を運転しながらメルは夫と車の中で交わした会話を回想する。
人工授精してでも子どもがほしいメルと、子どもより2人の関係が大切と考える夫。
メルはそれなら別れるとまで言いうメルを夫は宥(なだ)めようとし、その時…。
ホープはドクの謝罪を受け入れ、2人はキスをする。
プリーチャーはペイジの家を訪れ、テーブルの上にスマホが残され、床に点々と血があるのを見つける。
メルが帰宅するとジャックが待っていた。
ジャックはシャーメインの妊娠を言わなかったことを詫びるが、メルはそれだけが問題ではないと語り始める。
「数年前、死産を経験した。私は子どもを産めない」
「それは…」
「私はできないけど、彼女は妊娠した。私には手に負えない問題よ。ムリなの」
ジャックはメルに自分の気持ちを伝える。
「過去は変えられないが、君の未来にいたい」
だが、メルは荷造りをし、姉に電話して涙ながらに留守電に吹き込む。
「ジョーイ、私。そっちに戻る」
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『ヴァージンリバー』シーズン2 あらすじ
メルは、夫のマーク・モンローの墓参りをする。
メルとジャックが惹かれあっていることに変わりはない。
シャーメインはドクの医院に転院して来る。
シャーメインには、食欲不振、極度の疲労感、脱水、低血圧、体重減少などの症状が現れ、ドクとメルは「妊娠悪阻(おそ)」(重症化したつわり)と診断する。
体重減少と脱水が続けば、母子ともに重い合併症を発症するかもしれないハイリスク妊娠だとメルはシャーメインとジャックに伝える。
ドクはシャーメインに、この町に滞在するように言う。
メルから治療を受けたくないシャーメインに、ジャックは「治療を受けろ。メルは優秀だ。先生が信頼するメルを君も信じろ」と言う。
ジャックはメルに、シャーメインの無礼を詫び、治療を依頼する。
ドクと復縁したホープは、2人の関係を秘密にすると言い張る。
皆の気を逸らすため、女優のミュリエルとデートしろとホープはドクに言う。
ホープは、昼間カフェで会ったミュリエルから、あなたは離婚したんだからドクをデートに誘っても良いわよねと言われたからだ。
メルはジャックとの関係からシャーメインの治療に躊躇(ためら)いがあり、なかなか寝付けない。
夫なら自分の感情より患者を優先すべきだと言うに違いない、だからあなたは名医だったとメルは思う。
翌日、メルはシャーメインのために部屋を探すがなかなか見つからず、ホープに頼む。
ホープは断るが、食い下がるメルに、あなたがジャックを説得できたら受けると条件付きで了承する。
プリーチャーはペイジに会い、「なぜウェスみたいな男と?」と聞く。
最初は紳士で手も握らなかったが、結婚して短気になったこと、ウェスの暴力を知った周囲は離婚を勧めたが、ウェスが周囲を遠ざけたこと、ペイジを殴った後ウェスは泣き、ペイジが慰めていた、当時はそれが異常だとは思わなかったことなどをページはプリーチャーに打ち明ける。
プリーチャーは自分の家の部屋を提供することを申し出る。
ブレイディはジャックに会いに来て「仲直りをしたい。店を任せてほしい」と言う。
だが自分は優秀だから、掃除や皿洗いはしないというブレイディ。
ジャックは「お前にはムリだ。イラク時代からお前をかばって来たが、お前のためにならない。いいかげん自立しろ。」と断る。
「“兄弟”だろ?」
「そうとも。お前のために周囲を見張り、自立へ導くのが役目だ」
「間違ってる」
「やっと正しいことができた」
メルはドクをカフェに誘い、相談する。
ジャックとシャーメインが破局した原因がメルにあるとシャーメインは思っていると、メルはドクに言い、自分がこも町に来なければ2人は続いていたと思うかと訊(たず)ねる。
ドクは、「ジャックは真剣ではなかった。ジャックは君と出会い、可能性を感じたんだ」。君が町を去っても、彼女と復縁するかは分からない。愛はないんだから」
「でも、彼が家族を持つのを邪魔している気がします」
「それはジャックの問題だ。彼が決断することだ。君は邪魔してない。君が現れジャックは希望を持った。君は悪くない。君を嫌っているシャーメインを助けるのは立派な行いだ」
ペイジはプリーチャーの申し出を受けるが、家に帰ると元夫のウェスが息子と遊んでいた。
プリーチャーはジャックに友人としてメルを諦めるように忠告する。
だがジャックは「よせ、惚れているんだ。何も言うな」
夜、メルは医院に残っていてタブレットで記事を読んでいる。
タイトルは、「排卵誘発薬か乳がん治療薬か」。
そのあとメルがコーヒーを淹れようとサーバーを洗っていると突然、男が侵入して来る。
たまたま医院の前まで来て立ち去ろうとするが、不審な物音に気付き引き返す。
メルの首を羽交い締めにしてナイフを突きつける男に、ジャックは立ち向かう。
裏口を施錠してなかったと反省するメルにジャックは、この町では皆、裏口は施錠しないと答える。
暴漢の目当ては、オキシコンチンという薬物だった(米国ドラマには本当に多く出てくる薬物だ)。
本来、がんによる疼痛の鎮痛剤だが、アメリカでは、ケガや歯痛にも用いられ、処方箋を出せば街の薬局で入手できるため、乱用や中毒が問題化している。
足首を痛めたメルをジャックは家まで送り、良い雰囲気になりかけるが…。
ペイジは、元夫のウェスから暴力を受け、顔にアザをつくっている。
「また逃げたら手加減しない」と夫のウェスはペイジを脅す。
シャーメインとジャックが来院し、ジャックは防犯強化を言い、シャーメインはメルに詫びる。
メルがシャーメインの滞在先を見つけ、それがホープの家だと告げるとシャーメインとジャックは即座に「ノー」。
ドクとメルから、ホープの家に同居するのが最善だと言い、シャーメインとジャックは渋々納得する。
ジャックとシャーメインがホープの家にやって来る。
玄関に迎えに出たホープは開口一番、「ベンジャミン・フランクリンは言った。”客も魚も3日で臭い出す“」
シャーメインは、あれが歓迎する態度かと憤慨する。
メルは、ホープが感情を素直に表現できないだけで、フランクリンの格言もただの冗談だと言う。
ホープはジャックと和解しようとするが、ジャックは許したがもう関わらないでほしいと言うと、ホープはもう干渉しないと言う。
だが、ジャックは、「わかってないな。“干渉”は邪魔することだが、“関わる”は何かの一部になることだ」
「あなたの人生から消えろと? 家族だと思っていた。家族は関わり合う。愛があるから」
「君は家族だ。ありがたいよ。でも家族に必要なのは、信頼だ。今は君を信じられない」
荷物を車から下ろすジャックのところにメルは行き、話しかけるとジャックが言う。
「ホープは親切だが、常に我を通そうとする。遠ざけるのは至難の業だ」
「そうね、ホープの本質を言い当ててる」とメルが笑うと、「おかしくない」とジャックは言う。
「ごめん。彼女は埋め合わせをしたいのよ。やさしくして」
「してるよ。俺は常識人だ」
「彼女は努力してる」
「努力がたりない」
「冷たいのね」
「俺が冷たいって? 冷たいってのは、理由も言わずに立ち去るってことだ」とメルを批判する。
ウェスはペイジをを連れて行こうとするが、ペイジは行かないとはっきり言うが、ウェスは俺は警官でお前は容疑者だとペイジを脅す。
ウェスが家庭内暴力を裁判所に訴え、ペイジを誘拐犯に仕立て上げたのだ。
言い合っている最中、首を絞められたペイジは、ウェスの体を押し、ウェスは家の階段を落ちてしまう。
ジャックの店は繁盛しているが、それだけに人手が足りずプリーチャーとリッキーは忙しい。
ミュリエルがホープへの予告どおり、ドクをデートに誘う。
自宅でローストポークを焼いているから、夕食を食べに来ないかというのだ。
ペイジはプリーチャーに助けを求める。
ジャックはマイクに電話して、メルを襲ったジャンキーを探るよう依頼し、カルヴィンが黒幕かもしれないと伝える。
保安官が言っていたという突発的な事件ではない怖れをジャックは感じたからだ。
メルがホープの家にシャーメインを訪ねると、ホープは大きな音の掃除機やテレビでシャーメインに嫌がらせをしていた。
メルがシャーメインの部屋から出て行く時、ちょうどジャックが入って来た。
お互い目を合わせようとしない2人に気づいたシャーメインがそれを指摘するが、ジャックは「何でもない」と否定する。
プリーチャーがペイジの家に行くと、ウェスが倒れていた。
「事故なの。息子の部屋に入るのを止めようとしただけ」
「もちろん信じるよ」
「保安官に電話して自首するわ」
「大丈夫だ、事故だと分かってくれる」
「ムリよ。彼は警官で、検察には友人がいる。私は逮捕される。いつも夫のウソが通るの。それで私に接近禁止命令が出たの。だから息子と逃げたの」
ホープが医院を訪ねると、ドクはおしゃれをしていた。
ミュリエルの招きに応じたからで、「もう誘われたの?厚かましい。すぐ同居したがるわ」
「君の要望だろ?嫌なら行かない」
「行って。これが最善の方法よ。私たちから目を逸らすにはね」
一方、ペイジは逮捕に備える。
保安官に自分が説明するとプリーチャーは言うが、ペイジはムダだと返す。
「夫は私を加害者に仕立て上げた。夫は警官。逮捕状が出され、逃げてる私を誰が信じる?」
ペイジは息子の面倒をみてくれるようプリーチャーに頼む。
が、「州が後見人になる。俺は何もできない」とプリーチャーは言う。
「なぜこんなことに…」と嘆くペイジ。
「君は息子を守った」とプリーチャーは慰め、言う。
「俺には信念がある。正義とは弱者を守ることだ。だから入隊したし、今もその信念を貫いている」
と語り、ペイジに息子を迎えに行き、ここを離れろとペイジに言う。
ドクはミュリエルの家を訪ねる。
メルはジャックの店に彼を訪ね、「誤解を解いて前に進むために来た」と言う。
「どうやって?」
「ちゃんと話せば友だちに戻れる」
「それはムリだな」
「黙って町を去ったことは謝る」
「黙って戻ったことは?」
「ごめんなさい。許してくれる?」
「イエス」
「友だちに戻れる?」
「ノー」
「どうしろと?」
「正直になれ」
「正直よ」
「君自身にだ。前に進むだって?心を開いてないのに。理解不能だ」
「私や恋愛について理解してるつもり? あなたは独身で伴侶と死別してない。このつらさは分からない」
「仲間の死を経験した。今も思い出す。そのつらさは分かる。過去があっても幸せになれる。チャンスはある。俺と前へ進めるはずだ」
「夫に2度と会えない。娘も抱けない。あなたを愛したらまた失うかもしれない。そんなの耐えらない」
「俺は消えたりしない」
「保証はないわ」
「いつかは信じて踏み出さないと」
「夫と出会った時は信じてた。2人で幸せな家庭を築いて一生添い遂げると思ってた。傷つくのはイヤ。私は強くないの」
「踏み出すのが怖い?」
「ええ。…あなたには彼女がいる」
「よせ。俺は君といたい」
「私にはムリ」とメルは店を出て車に乗り込むが、エンジンがかからず、ヒステリックに叫ぶ。
ジャックも出てきて、車のドアを開け、手を差し出し、「おいで」とメルに言う。
メルをそっと抱き寄せ、「分かるよ。いいんだ」
メルを家まで車で送り、帰ろうとするジャックをメルは引き留め、2人は家の中に入り、求め合う。
一夜を共にしたメルとジャック。
メルは、脱水状態のシャーメインに水分を摂らせようと苦労する。
ドクは点滴をと考えるが、シャーメインは注射恐怖症でできない。
メルから、街の病院で麻酔をかけ、点滴をして、状態を観察すると言われたシャーメインだが、泣いて嫌がる。
そこでメルがアロマテラピーや瞑想、リフレクソロジーを提案する。
美容院の客から瞑想がいいと聞いたとシャーメインが言うと、ドクがインチキより点滴が必要だと言うと、
「そういう療法は普及しています。LAでも取り入れてました。試してみては?」とメルが反論する。
ドクはシャーメインに聞こえないようメルに「今日点滴できなければ、病院へ連れて行く」と言う。
シャーメインは、やって来たジャックに一晩泊まってくれと頼む。
変な意味ではなく、夜は孤独を感じるからだという。
ブレイディはカルヴィンから製材所を任せると言われ、知識がないというと、必要ないと言われる。
ヴァージンリバーとの仲介役で、住民の疑問に答える仕事で、バーより遥かに稼げるという。
メルからアロマと瞑想の療法を受けたシャーメインは、メルに「いつ仲直りしたの」と聞く。
「昨日は露骨に避けてたのに今日はいちゃついてた」
「いちゃついてない」
「見てたのよ」
「彼とはただの友だち」
「彼は私を心配してくれる。希望をきいてくれる。彼もここに泊まるって」とメルを牽制する。
ジャックは大麻農場に行き、カルヴィンにメルがジャンキーに襲われたことを伝え、「お前の手下だろう」と言う。
ジャックが調べようとすると、
「悪いが今日は帰ってくれ」とカルヴィンは言い、
ブレイディが立ち塞がる。
ジャックと過ごした夜のことがメルの頭をよぎる。
カルヴィンは、ブレイディに仕事を任せる。
疲れているコニーを見て、その原因が姪のリジーだと知ったホープは、リジーを連れて町を案内することになり、ジャックのバーに。
そこにはメルがシャーメインから頼まれたレモネードを買いに来ていて、それを見たドクが言う。
「私なら早く点滴する。使い走りはしない。言いなりは良くない」
「先生が押しつけた。私はイヤだったのに」
「仕事と私生活の線引きが必要だ。患者をやる気にさせ、回復へつながる行動を促せ。導き、見守り、手を離すんだ」
「そのとおり。ありがとう」
シャーメインのところに戻ったメルは、彼女が言うことをきかないので、病院に連れて行くことにする。
ドクの医院にミュリエルがイチゴの手づくりショートケーキを持って来る。
母親のレシピで、友だちに作るのが好きだという。
ドクは「絶品だ」と言って、美味そうに食べる。
ミュリエルは、ドクをヴィバルディの演奏会に誘う。
メルはドクに電話して病院に行くしかないとシャーメインに言うが、彼女はきかない。
「母が入院して亡くなったから、たとえ出産でもイヤなの」
メルは11歳の時母親が病院で亡くなったことをシャーメインに告白し、「あなたを助けたいの」と言う。
足に触られるのをイヤがっていたシャーメインだが、リフレクソロジーを受けることに。
医院にホープがやって来て、リジーを見失ったとドクに言う。
ドクは、男子のいるところを捜せとアドバイスする。
プリーチャーはコニーの雑貨屋に来て、ペイジのパン屋を維持す件の返事をもらいに来たが、コニーは難色を示す。
コニーはプリーチャーにウェスが来たことを言い、プリーチャーはウェスのことを他言しないよう頼む。
メルは姉からの電話に出て、ジャックと寝たことを伝える。
「どうだった?」と聞く姉に、
「困ったことに最高だった」と答えるメル。
「付き合ってるの?」
「分からない。彼は望んでるけど。子どもが産まれるし、何もかもが…」
「彼女を愛してないのね」
「そう言ってるけど、親になれば気持ちが変わるかも。子どもはカップルの障害にもなれば、絆にもなる」
「産まれるまで分からない」
「だから今は友だちでいるべきよ」
「それで良いの?」
「よくないけど…、ジャックまで失ったら耐えられない」
「彼が運命の人なら?2度も愛を見つけるのは稀よ」
「なぜ電話に出たんだろ」
「愛する姉だから」
ドクはホープの家に来て、ヴィヴァルディの弦楽四重奏に誘うが、ホープに断られる。
ミュリエルと行くとドクが言うと、ホープは「完璧な2度目のデート」と返す。
メルは病院から超音波心音(エコー)を借りて来て、シャーメインの胎児を見る。
すると驚きの表情を見せ、「赤ちゃんたち」とつぶやく。
リッキーから聞いて、メルは川で釣りをするジャックに会いに行く。
ジャックは双子だと分かり喜ぶ半面、不安を感じていた。
シャーメインに支えると約束したものの、どんな生活になるか分からない。
そのうえ双子となると、世話をするのは余計大変だ。
「困ったら町の皆が助けてくれる。独りじゃない。助けを求めればいい」
ジャックがシャーメインのところに行くと、彼女は彼を質問攻めにする。
釣りをしていたと言うと1人でかと聞き、独りだったが途中メルが来たとジャックは答える。
「駆け引きは嫌いだ。言いたいことがあるなら言えよ」
「付き合ってるの?」
「ノー」
「彼女と寝てる?l」
「メルの話はよそう」
「私と別れる前?」
「聞こえなかった」
「つまり私と別れたあと寝始めたんだ」
「そうだ。1度だけ」
「そう」
「君を傷つけたくない。だから俺の恋愛の話はよそう」
「分かった。話してくれてありがとう」
「ウソはつかない」
「知ってる。ピクニックには行けないから、明日泊まってよ」
「気が進まない。線を引くべきだ。関係を明確にするためにね」
「分かった」
演奏を聴きに来たドクとミュリエル。
「練習を見るのは初めてだ。興奮して来た。13歳の頃の自分を思い出す」
「何の楽器を?」
「バイオリン。下手だった。母は音楽の才能があり、フルートや他の楽器も演奏できた。モーツァルト、ショパンなど偉大な作曲家たちを教えてくれた」
肩を寄せ合って仲良くプログラムを見る2人を後方から見つめている女性がいた。
ジャックスバーの常連ジョー・エレンだ。
「見てよ。ドクとミュリエルよ」とそのエレンが隣にいる夫のニックに言うと夫は、
「ホープは、退屈だから来ない」
医院にリジーが来院し、メルに「内密に」と念を押す。
その頃、町の人々は河原での毎年恒例のピクニックに集まっていた。
第33回ヴァージン・リバー・ピクニックだ。
町長のホープがステージで挨拶する。
「今年も困っている住民のために、寄付を募ります。困っているのはハミルトン家です。一家は嵐で損害を被りました。
コンサートでドクたちを見ていたエレンがホープのところに来て、ドクとジュリエルが1曲目からいちゃついていたと報告する。
「悔しくないの?」
「ちっとも。そんなの彼らしくない」
「信じないならニックに聞いて。彼も見ていた」
メルが後からピクニックにやって来ると、皆がメルを見る。
ジャックは服がきれいだからだと言うが、何かおかしい。
「でも、リッキーのおばあさんが見るのは変よ」
「気にし過ぎだ。ここでは皆フレンドリーでね」
リジーも来て、リッキーが彼女を見つめるのを見てジャックが「話しかけてみろよ」と言う。
「努力したけど、話そうとすると緊張する」
「逆にウケる」
「そんなのイヤだ」
「そこから始まる場合もある。自然体で行け」
ホープに代わって寄付金の係をしていると、ジェイミーという女性がが寄付をしに来た。
サンフランシスコで飲食店をやっていて年に一度田舎で過ごすのだという。
ホープに告げ口したジョー・エレンがメルのところにもやって来て、
「ここにいるなんて立派よ」
「手伝っている人は他にもいる」
「伝えたかったの。私は味方よ」
リリーがジャックの模擬店に来て、農場をキャッシュで高く買ってくれる人が現れたという。
エメラルド製材所だという。
「木材会社?」
「ええ、事業を広げたいみたい」
「農場に木はない」
「でも、ブレイディが“再生する”って」
最初は疑ったけど、あなたの親友だから信じることにしたとリリーは言う。
ジャックは疑念を抱く。
リッキーがメルのところに来たのでメルは聞く。
「皆が“私の味方だ”と言うの。どういう意味?」
「皆、応援してる」
「なぜ?」
「僕の口からは…」
「お願い、教えて」
「祖母がクリア・リバーの美容師に聞いた。君がジャックを寝とったって。僕と祖母はメル派だから、100%」
「メル派?じゃあシャーメイン派もいるの?皆がこの話をじてるの?最悪」
メルは早速ジャックのところに行く。
「派閥があるそうよ。シャーメイン派とメル派。皆私たちが寝たと思ってる」
「事実だ」
「でも私たち以外は知らない。でしょ? ジャック?…ウソ」
「昨日シャーメインに聞かれた。ウソつけばよかった?」
「昨日?」
「釣りの後」
「一晩中電話してたのね」
「平気に見えたから、黙ってた」
「平気じゃなかった」
「だな」
「ジャック派はいない」
「いたら嬉しい。ごめん。俺はどうすれば良い?」
「恋人を黙らせて」
プリーチャーがペイジの家に鍵を取りに行くと、電話がなる音が。
それはウェスのケータイだった。
プリーチャーがケータイを手に取って見ると、
「ウェス、どこだ?彼女は見つかったか?」
というテキストが見えた。
ピクニックの恒例の催しである「卵リレー」に7連勝しているドクは、今年も勝利を目指しているが、相手のホープが見つからない。
卵リレーとは、スプーンに卵を載せて走り、次のランナーのスプーンに卵をパスするリレーだ。
そこへちょうどミュリエルが来たので、彼女に卵リレーのやり方を教える。
卵わたしがうまくいってハグしているところへホープがやって来る。
ホープは怒るどころか、ミュリエルと出場しろと言う。
「リレーを見て2人が付き合っていると勘違いする」ことで自分とドクの関係をカモフラージュするのが狙いだ。
ドクは断るが、ホープは「ただの遊びよ」と言う。
ホープは、「私は違う」と答える。
キッチンカーのパン屋では叔母から留守番を頼まれたリジーが悪戦苦闘しており、それを見たリッキーが手伝いに来る。
リッキーはリジーを卵リレーに誘う。
リジーは会場でゲームをしているブレイディに興味を持って近づき、名乗りあって握手を交わす。
いよいよ卵リレーの開催だ。
コニーがパン屋に戻るとリジーの姿がないので、リッキーに聞くと、休憩だという。
「怠け者め」と思わず口にする。
プリーチャーが鍵を持ってきてコニーに渡す。
浮かない顔のプリーチャーにコニーは言う。
「私のあだ名は“うわさ好き”、“知りたがり”。でも深刻な問題なら言いふらさない。ペイジとウェスのことを話したいなら、私が聞く」
コニーはキッチンカーに入って作業をしようとしてリジーのバッグを落としてしまう。
その中からこぼれ落ちたモノは、避妊薬だった。
ジャックはメルを探してやって来て、ウワサの件を改めて謝罪する。
メルは、「あなたは正直に答えただけ。謝る必要はない」と答える。
「今は最悪だが、明日は皆、別の話題に移る」
「全員がいつか私の患者になるかも。人の恋人を盗んだ女を誰が信頼する?信頼がないと治療はムリ」
「事実は違う」
「事実は関係ない」
「彼女と話す」
「ダメ。私と彼女の問題だから」
「彼女は恋人じゃない」
「分かってる」
「すまない」
メルは、ジャックに頼みがあると言う。
メルはジャックの手を引いて卵リレーの集合場所に行く。
ドクはステージで卵リレーの案内をアナウンスするホープを手招きするが、ホープは拒否する。
そこへミュリエルがやって来て、「私と組んで」と言う。
メルは、本気かと尋ねるジャックに「皆にネタを提供する」と答える。
「その意気だ」とジャック。
リッキーは卵リレーの相手を頼んだリジーを探すが見つからない。
リジーはリッキーとの約束は無視して、ブレイディとベンチに座っている。
卵リレーが始まった。
ミュリエルは、ゴール寸前で卵を落としてしまい、メル・ジャック組が優勝する。
「君もせいじゃない」とドクはミュリエル慰めるものの、8連勝を逃して悔しい。
ジャックが車に荷物を積んでいると、ホープがやって来て、ドクを見なかったかと尋ねる。
ジャックは20分前に帰ったと答える。
ホープはドクに家まで送ってもらう予定だったと言う。
「怒らせちゃった。リレーに出なかった。彼はミュリエルと組んで負けた。真剣に考えなかった」
「人が何かを言うのは、聞いてほしいからだ」
「悪気はなかった」
「彼も分かってる」
ジャックはホープに車に乗って行くかと聞く。
「迷惑でしょ?」
「迷惑なら聞かないよ」
ジャックが片付けに10分かかると言うとホープは飲み物を買いに行く。
ブレイディが自分の車に乗ろうとやって来る。
ジャックが声をかけ、「リリーから農場の件を聞いた」と話し始める。
「関係あるか?」
「黒幕はカルヴィンか?」
「合法の申し出だ」
「“再生する”と聞いた」
「マジか。なぜ彼女はそんなことを?」
「お前がそう言った」
「彼女は誤解している」
「俺の大切な人たちにウソをつくな。売り文句を考え直せ」
メルはシャーメインと話をする。
「どう思おうと勝手だけど、私は悪いことはしてない。あなたに尽くした」
「彼と寝るなんて優しいこと」
「でも、ウワサを広めるなんて」
「事実を話しただけ」
「私が彼を寝とったなんてデタラメよ」
「私には事実」
「はっきり言うわ。今後、私の名は口にしないで」
「あなたには勝てない。彼は必要とされれば手を貸す。一番彼を必要としているのは私たちの双子。双子の世話にはかなりの時間と労力が要る」
「これは競争じゃないのよ。私はあなたたちを助けてる」
「そう言ってるわね」
「どうなろうと私は彼の幸せを願ってる。あなたもそう言える?」
「クビよ。私に関わらないで」
「分かったわ。彼に頼まれたから治療しただけ」
メルが忘れた卵リレーの賞品であるビー玉を持ってジャックがメルの家に来る。
メルはシャーメインと話し、言いたいことは言ったとジャックに伝える。
「気は晴れた?」
「そうでもない」
「お袋は“人は変えられない。自分次第だ“と」
「とても賢明な方ね」
「面白い人だ。君を気にいる。いつか会ってくれ」
そこへ突然、亡き夫マークの妹ステイシーがやって来る。
「セクシーな木樵(きこり)ね」
「彼はバーの店主よ」
会うのはマークの葬儀以来だ。
ドクが家に独りで酒を呑んでいると、ホープからの電話が鳴るが、ドクは出ない。
ジャックがシャーメインを訪ねると彼女は嬉しそうだ。
彼がソファで寝ると言うと、シャーメインは朝までいてくれるかと聞く。
「いるよ。だが1つ条件がある。メルの話はよせ。彼女に構うな」
「彼女の差し金ね」
「違う。このことを知ったらメルは怒る」
「友だちとの会話が必要なの。あなたが心配なのはメルだけみたい。私は妊婦で体調を崩して寝込んでいるのに」
「私生活をさらしてほしくない。ウワサされて何の得がある?」
「人がどう思うかは、私にはどうしようもない」
「だから黙っていてほしい」
ホープがジャックのところに来る。
「今夜はソファに寝るが構わない?l
「毛布と枕を用意するわ」
ステイシーは、婚約したことをメルに伝える。
相手は上司のポールで、こんな指輪を贈られたとそれをメルに見せる。
「キレイね。着けないの?」
「しっくり来ない。マークがあなたに贈ったのは祖母の指輪。私は祖母に育てられた」
「だからおばあさまを愛していた」
「マークから指輪をあなたに贈りたいと言われ、反対できなかった」
「ごめんなさい。何が言いたいの?」
「マークはもういない。指輪を返して」
メルは亡夫の妹のステイシーと一緒に朝のジョギングだ。
へばったステイシーが言うには空調の整ったジムとは違う、自然の中で走ったから目眩(めまい)がすると。
「よくこんな所で暮らせるわね…、ド田舎で」
「“自然“と言って」
「マークみたい。よく山歩きに誘われた。でも私は断ってた」
「なのに、ここへ来た」
「それは、指輪のため。あなたは追悼式に来ないと聞いたから」
「追悼式?」
「家族と友だちで食事するだけ。聞いてない?」
「招かれてない。こういうことは前にもあった」
「あなたは来ないと母は思ったのかも。よく揉めてたでしょ?生前マークから聞いてた。苦しんでたわ」
「マークがそう言ってたの?」
「違うけど、揉めてたのは知ってた」
「それは子どもを失ったからよ。そのあと子どもを授かれず苦しんだけど、愛し合ってた」
「悪く取らないで。母はマークの彼女全員を嫌ってた」
「何よそれ。私は彼女じゃなく、妻よ」
「そうね。なら今も彼が生きてたら一緒にいた?」
呆れて返事をせず先へ歩くメルだった。
戦友のロナガンが死亡した時の夢にうなされるジャックをシャーメインが起こす。
「何か変なの。鼓動が早い」
ジャックはすぐドクに電話する。
ミュリエルが、ペイジの代理でパン屋を営むコニーのキッチンカーにやって来る。
開店前なのに、「ドーナツとコーヒーをお願い」と注文。
その時、ラジオから「フロリダの警官ウェスリー・ローガが行方不明。発見したら報告せよ」という警察無線が流れ、コニーは耳をそばだてる。
今度はホープがやって来る。
おはようと挨拶するミュリエルをホープは無視して、キッチンカーの扉を叩き、コーヒーを注文する。
ミュリエルは、ドクとのデートを許してくれてありがとうとホープに言う。
「私たち共通点が多いの。今度はダンス教室よ」
キッチンカーの扉が開き、コニーからドーナツとコーヒーを受け取ったミュリエルはコニーだけでなくホープにも礼を言い、ホープをハグする。
「あの2人、くっついたわね。平気なの?」
「コーヒーを」
「しらじらしいわね。カードの時と同じね」
ドクがシャーメインを診たあとジャックのところへ。
シャーメインは動悸を起こしているという。
「血液検査の結果が出たら原因が分かる」
「メルの治療はイヤだと」
「そう言ってた。だがリラックスは大事だ。メルには間接的に助けてもらう」
ジャックはドクから疲れを指摘される。
ドクが出て行こうとした時、玄関先でホープと出くわす。
ホープはドクに買って来た菓子パンを差し出す。
「謝罪のしるしか」
「あなたがしたいことに付き合う」
「たとえば?」
「リバーキャッツの試合?」
「4時間かかる」
「音楽関係は?」
「今夜はダンス教室に行く」
「楽しそう」
「ミュリエルに誘われ仕方なく」
「そうよね、彼女は“楽しみだ“と。共通点が多いのね」
「だからこんな提案を?」
「卵リレーの埋め合わせをしたい。でもあなたが…」
「私のせいにするな。来たいなら君も来い」
「デートなのに?」
「違う。集団で習うんだ」
ドクはパンをホープに返し、医院に戻る。
シャーメインを気遣うジャックに彼女は、戦友と会うことを勧める。
コニーは、「ジャックのバー」に来て、そこにいるメルに抗議する。
10代の姪のリジーに避妊薬をコニーの了解をとらずに処方したことに腹を立てているのだ。
「リジーはもう19歳。プライバシーを尊重して。診察のことは話せない」
「それがLA流?」
「いいえ、HIPAAという連邦法」
「知るもんか。リジーは子どもよ。処方箋は破った」
「計画街妊娠は良くない」
「姪を都会の看護師に毒されたくない。避妊薬をお菓子みたいに渡すような」
「彼女は賢明だと思う」
「先生に話すわ。あんたのだらしなさが証明される」
「したいようにすればいい。私はリジーに適切な医療を提供する」
「姪に近寄らないで。本気よ」
溜息をつくメル。
メルが店内に戻ると、ステイシーがいない。
メルは、ステイシーから指輪を返せと言われたことをジャックに話す。
「それはひどい」
「ひどいでしょ?」
「どうする?」
「分からない。喧嘩はイヤだけど、あれを渡すなんて」
リッキーはリジーが卵リレーに来なかったことを彼女に言うが、彼女はあっさり「うっかりしてた」と言い、パーティじ誘うが、アルコールの手配も頼む。
未成年は買えないとリッキーが言うと、店にある、テキーラがと言って去って行く。
ジャックの店に海兵隊時代の戦友たちがやって来る。
3年ぶりの再会だ。
ドクはメルにシャーメインのことを話す。
「彼女には軽い不整脈がある。血糖値も低い。病院に血液検査を頼むよ。原因を突き止める」
「空腹時低血糖だと?」
「双子の妊娠で妊娠悪阻(おそ)がある。妊娠糖尿病を招きかねない。治療に同意するよう説得してくれ」
ジャックは戦友たちとクロスバイクで山道を駆け抜ける。
険しい道を降ろうとするジャックだが、他の者は楽な道を降りようとする。
ジャックがだいじょうぶだと言うと、1人が「イラクでもそう言った」と言い、気まづい雰囲氣に。
メルがパソコンでマークの写真を見ているとホープが入って来て、メルは慌ててパソコンを閉じる。
「以前の私なら何を隠したか聞く。でも今は…」
「聞きたいくせに」
「好奇心は罪じゃない。知性の証」
「夫のマークの写真を見てた」
「夫がいるの?だから指輪を」
「だけど1年前に亡くなった」
「おお気の毒に。つらいでしょう。それでここに?」
「ええ、LAでは何を見ても彼を思い出してた」
「2人目の夫は新婚数ヶ月で死んだ。絶望したわ。1年近く彼が戻って来る気がしてた」
「私もそうだった。引っ越せば立ち直れると思ったの」
「結果は?」
「期待してたほどでは」
バーにサンフランシスコのジェイミーが来店し、プリーチャーに引き抜きの話をする。
「料理はどこで?」
「海軍で」
「信じない」というジェイミーにプリーチャーはウソではないと言う。
リッキーは店のアルコールを1本、自分のリュックに入れる。
キッチンカーのパン屋の前の空き地では、戦友たちがフットボールの後に呑み始める。
パン屋の前にいるメルと手で挨拶を交わしたジャックは、戦友からメルのことを聞かれる。
「俺なら彼女を逃がさない」
「複雑なんだ」とジャックはメルとシャーメインの妊娠のことを説明する。
ジャックは湖畔にいた犬を「気が紛れるから」と、シャーメインに渡す。
世話が大変なら飼い主を探すというジャックに、私が飼うと答えるシャーメイン。
製材所のブレイディのところにカルヴィンが来て、刑事が嗅ぎ回っていると伝える。
LA市警?と聞くブレイディに、そうだとカルヴィンが答える。
ブレイディは、マイク・バレンズエラだと教える。
「知人か?」
「軍の仲間だ。ジャックとプリーチャーも。皆で集まるため町に来てる。俺が見張るよ。ここは製材以外のこともやってる。事情を知らず危険は冒せない」
「知らなくていい」
「なら俺を自由に」
「フェンタニルだ」
主に麻酔や鎮痛、疼痛緩和の目的で利用される合成オピオイドである。1996年のWHO方式がん疼痛治療法の3段階中の3段階目で用いられる強オピオイドである。麻薬及び向精神薬取締法における麻薬に指定されている。
引用元 Wikipedia
「それは、話が違う」
「望みはカネだろ?」
「そうだ」
「1キロの製造費は5000ドル。うまくやれば30万ドルでさばける。ぼろ儲けさ。仕事が軌道に乗れば早く引退する。後継が要る」とカルヴィンはブレイディにウインクする。
「もちろん分け前はやる」
プリーチャーが、コニーを訪ねると、
「ウェスは警官で、警察が彼を捜してる」と言い、彼女は逃げてたのかと聞き、こう付け加える。
「ウエスが来た時、クリストファーは喜んでいた。でも近寄られると、たじろいだ」
「君は間違ったことはしてない。もう忘れて」
「ムリよ。聞いて。子供の頃ある家族がいた。大きな美しい家で両親と女の子が暮らしてた。皆が羨む完璧な生活」
「でも?」
「父親は短気で酔うと特に妻を殴り2度病院送りに。でも女の子は、怖くて何も言えなかった」
「どうなった?」
「ある日、学校から帰ると警察がいた。女の子はこう思った。父が捕まれば母が傷つかずに済む」
「ヤツは捕まった?」
「ええ。妻を殺してね。…父は刑務所で死んだ」
「女の子は?」
「黙っていた自分を決して許さなかった」
「コニー、本当につらかったね」
「子どもには絶対に母親が必要よ。クリストファーはそんな目に遭わせない」
「結婚後すぐに暴力が始まったそうだ。家族は”別れろ”とー」とプリーチャーはペイジたちの事情をコニーに説明する。
メルはステイシーからジャックとの関係を問われ、いずれメルは結婚して指輪をもらうのだから、「祖母を家族に返して」としつこく祖母の指輪の譲渡を求める。
私も家族の一員だと答えるメルに、ステイシーは、「あなたに指輪を譲る子はいない」と無神経な言葉を吐く。
メルはシャーメインに検査結果を知らせに行く。
幸い低血糖は妊娠悪阻のせいで、心臓も問題なく、動悸は治療できるが、血糖値は出産まで観察すると伝える。
ドクはミュリエルとダンス教室にいて、時計を気にしている。
ミュリエルは、ダンスの相手を替えずにドクだけにするよう講師に頼んでいた。
遅れてホープがやって来て、ミュリエルは驚く。
「お邪魔かしら?」と聞くホープに、ドクは「いいや}と答えるがミュリエルは「邪魔よ」と答える。
もう相手は決まっているとミュリエルが言うと、ホープは若い男の講師を相手に指導を求める。
サルサの後、講師がミュリエルとドクのダンスを「息もリズムも合っていた」と褒めるが、ホープに対しては「上手だが、サルサは1人では踊れない。息を合わせなくては。仲良く」とアドバイスする。
ジャックと戦友たちの集まりには仕事を終えたプリーチャーも加わる。
1人がプリーチャーと一緒に走りたかったと言うと、プリーチャーは「明日カヤックで全力を尽くす」と答える。
どこを走ったかとプリーチャーが聞くと、「危険な道がよかった」とジャックが言い、他の者が「結局、安全な道を選んだ」と答え、
「昔は向こう見ずだったのに、どうした?」とジャックが言うと、「人生を手にした」とその者が答える。
「向こう見ずと言えば、ロナガン…」と1人が昔、ロナガンの農場へ行った時の思い出話をする。
ロナガンがバイクで12メートル飛んで鶏小屋に突っ込み、その晩の食事はフライドチキンだったというオチだ。
皆は笑ったが、ジャックだけは笑わず複雑な表情だ。
「ヤツの死後、両親と話すのは本当につらかった」と1人が言う。
炎に照らされたジャックの目は涙で光っている。
リジーはリッキーと一緒に橋に座り、店からリッキーが持ち出した酒を呑みながら話をする。
リジーは、パーティが期待はずれだったと言い、
「こんな生活で親にムカつかない?」とリッキーに聞き、「ママは死んだし、パパは僕が赤ん坊の頃家を出た」とリッキーは答える。
「ごめん。でも、誰にも失望されないのはいい」
「彼女いる?」
「いない」
「なんで?かわいいのに」
「学校で僕は透明人間なんだ。存在感ゼロで、いても気づかれない。皆僕が見えない」
それを聞いたリジーは突然、リッキーにキスをし、言う。
「私は見える」
メルが独り庭のイスに座り物思いにふけっていると、ジャックがやって来る。
友人たちはもう寝たようだ。
「楽しかった?」
「ああ。でも今回は今までと違った」
「それはいいこと?」
「どうかな。ステイシーの車がある。だから外に?」
「当たり。婚約指輪のことで粘られて」
「どうしたい?」
「マークが死ぬ前は大変な1年だった。でもこう思い始めた。その前から大変だったかもと」
「問題のないカップルがいるか?」
「いいえ、でも…。マークが生きてたら別れてたかも」
「だな。でも乗り越えたかも…」
怪訝な表情をするメルに「何?」とジャック。
「今朝、指輪の話をしたら、”考えろ”と言ったわね」
「俺は…、検討すべきだと。考えを押し付ける気はない」
「”渡すべき”って意味かと」
「違う。俺はこう思う。指輪を手放す気になっても、それで彼を忘れることにはならない。悲しみが消えるわけでもない。悲しみは…何度も巡って来る。思いがけない時に」
「指輪を渡す気になれなかったら…」
「渡すな。持っておけ。君の指輪だ。彼がくれた」
「ありがとう。あなたは最高の友だち」
友だちと言われ、ジャックの心は複雑だ。
家に戻るとステイシーが荷造りをしていて、「友だちとの会話を聞いた。指輪を渡さない気ね」
「私は何より彼を愛してた。もしまた恋をしても」
「”もし”? ”もしまた恋をしても”?彼が死んでたった1年で田舎のバーテンダーと寝るなんて」
「あの指輪は私たちの愛の証。今でも私の宝物よ。プロポーズされた時と同じ。分かってもらえず残念だわ」
「マークも思ってる。指輪は我が家にあるべきだと」
「そんなのウソ。彼に聞いた。指輪をもらえずあなたは怒り、返すよう彼に迫った。おばあさんは私を家族とみなし止めた。彼は私の肩を持つはずだわ」
すると、黙って出ていくステイシー。
リッキーは酒の瓶を店に戻そうとするが、ジャックに見られる。
「酒を持ち出したのか?」
「僕は…、おカネを払うよ」
「家へ帰れ」とジャックに言われたリッキーは弁解しようとするが、ジャックは帰れと言う。
「車は置いてけ。運転するな」
ジャックの脳裡に浮かぶのは戦死したロナガンの姿だ。
ジャックはロナガンの実家に電話をする。
「私は息子さんの上官でした。遅くなりましたが謝罪したいんです。全員を帰還させるのが上官の責務なのに、できなかった。彼は立派な兵士でした。私は彼に”大丈夫”と言ったが、違った。救えなかった。いつか、彼を死なせた私を許してくれるよう願います」
「俺はクリスの兄だ。電話をありがとう。でも両親は亡くなった」
ジャックは、「申し訳ない」と言うが、込み上げて来る涙を堪えきれない。
メルが医院に独りでいると、ドアがガチャガチャと音をたて、警戒するメル。
先日ナイフを突きつけられたばかりだから、またかと思ってしまうのはムリない。
だが、そこにいたのはジャックだった。
鍵で開けようとしたがうまくドアが開かなかったようだ。
「カルテを電子化してるの」とメルが言うと、ジャックは、「先生は”コンピューターは文明の終焉(えん)”と」
「先生がカルテを管理できたら納得する」
ステイシーのことを聞かれたメルは、「指輪を渡さなかったから怒って帰った」と説明する。
「しばらく会わずに済む」
「ええ、追悼式には招かれてないし」
「追悼式?」
「明日でマークが死んで1年なの」
メルは、「前へ進めるよう彼を偲ぶことをしたい」と言う。
そして、ジャックにイラクの話をしないワケを聞く。
「アフガニスタンが長かった」
「軍の仲間と会って、その話をしたかと」
「してない」
「仲間に会うのはつらい?」
「もちろんだ」
ホープがカフェにいるドクに、「シャーメインの犬にブーツを壊された」と苦情を言う。ラグにオシッコされ、素足で踏まれたとも。
「家を取り戻したい」
「辛抱しろ。彼女はいずれ帰る」
そこへミュリエルが来て、「よく立てるわね。ダンスで痛めたでしょ?運動してないから」
ミュリエルはホープの前で、日曜はワインやゲームを楽しむから家に来てとドクを誘う。
ドクはミュリエルに何かを話そうとするが、ミュリエルから言われる。
「私たち共通点はまだありそう。あなたとホープが夫婦だったのが不思議。正反対だもの」
「個性が違うから惹かれ合うこともある」
「でも似た者同士が惹かれるのは、もっと自然だと思う」
「だが、重ねた年月も大事だ。…ホープと私は、よりを戻した」
驚くミュリエルに、ドクは詫びる。
「謝ることはないわ。率直に話してくれてありがとう」
「君とは友だちでいたい」
「状況が変わったらぜひ教えて」
よりを戻したことをミュリエルに言ったことをドクはホープに話す。
ドクは「彼女は良い人だ。君のたくらみに加担して後悔している」とホープに言う。
翌朝、ジャックはカヤックで競おうと、二日酔いでまだ寝ている戦友たちを起こすが、やる気満々なのはジャックだけ。
プリーチャーはリッキーから「ジャックから聞いた?」と話しかけられる。
酒を盗んだことだ。
「いろいろ任せて来たのは、信頼しているからだ。悪さはこれきりにしろ。一人前に扱われるのはいいことだ。長い目で見れば強い人間になれる。ヤツは許すさ」
メルはホープの家に来て、ホープに明日がマークの一周忌だと言う。
「どう過ごすべきか分からない」
「そういう記念日の正しい過ごし方はない」
「そうよね。記念日と呼ぶのも抵抗ある。記念日は何かを祝う日だけど明日は…。人生最悪の日に印は付けない」
「何もしなくていい。夫の死後、動揺しそうな日は無視した。誕生日、記念日、祝日」
「感情を抑えてうまくいった?」
「私の場合はね」
「人によって悲しみ方は違うけど、癒すには感情を認めないといけない」
「だから園芸雑誌を読む」
そこにドクが入って来る。
「シャーメインは?」
「シャワーに時間がかかってる」
「約束は10分前だ」
ドクはコニーと話したとメルに言う。
避妊薬の件で彼女は怒っているとメルがドクに言うと、「いや、激怒している」とドクは答える。
「それで?」
「こう言った。“メルは仕事をした”と。処方箋を書いてコニーは私に任せろ」
「リジーに断られた。薬局に行くにはコニーの送迎が必要」
「コニーは送迎を嫌がるだろう。…私は避妊薬の試供品を持っている。処方薬を買えない人のために。医院の書類棚にあるから、渡してやれ」
「本当に?」
「リジーは大人だ。コニーに邪魔する権利はない」
「同感です。でも驚いたわ。味方してくれるなんて」
「医療において大事なのは患者だけだ」
シャーメインがシャワーを終えて来たが、「20分待って、髪を乾かすから」
呆れる2人。ドクはジョークを言う。
「獣医になればよかったかな」
リッキーはパン屋の車のところに来て、リジーを探す。
「昼寝してた」とリジーが言うと、リッキーは「昼寝したら夜眠れない」と答える。
「体内時計もマジメなんだ」
「今日の予定は?」
「歴史のテストとバイト」
父親が送金してくれたので買い物に行くので、ユーリカのセフォラに行こうとリジーはリッキーを誘う。
リッキーが車がないと言うと、リジーは「じゃあ1人で行く。ヒッチハイクで」と言う。
「危ないよ。僕が送る」
「1時に来て。店は閉める」
ブレイディがリリーに、契約書への署名を急がせる。
「正式に契約したら、小切手を渡す。契約書を持って来る」
「カルヴィンって?」
「地元の実業家だ。薬の売人でしょ?」
「大きな誤解だ」
「彼が農場を買おうとしてる会社のオーナー」
「もう買った」
「ジャックは“署名するまで契約は無効”と」
「納得して同意しただろ」
「黒幕を知ってたら話すら聞かなかった」
「カネの問題なら、もっと出させる」
「問題はおカネじゃない」
シャーメインを診察したドクは彼女に言う。
「血糖値は大丈夫そうだ。妊娠悪阻の目眩を抑える薬も効いている」
「じゃあ家に帰れる?」
「今日にでもね。だが条件がある。定期的に経過観察する。メルと出産計画を立てて。ジャックは忙しそうだから私が送るよ」
メルが言う。
「私が出産計画を手伝うのは難しい妊娠に慣れているから」
「説明は要らないわ。あなたは私のために力を尽くしてくれた。ジャックと双子にも。望みが全部叶う」
「よかったわね」
「彼に帰れると早く伝えたい」
戦友たちとジャックは急流の川でカヤックに乗ろうとしている。
難易度は4か5だというその流れに、「興奮するよ」というジャックに対し、他の皆は「緩やかな下流に行こう」という。
ジャックがジョシュに意見を聞くと、「お前を川から引き上げたくない」と答える。
「どういう意味だ?」
「お前は一晩中呑んでた」
「みんなそうだろ?」
「俺たちは夕飯の時は呑んでない」
「安全な場所を探そう」ともう1人が言う。
ジャックは怒って、「皆帰りたがってたな。もう解散だ」と言って立ち去る。
ホープはミュリエルにパイを持参する。
「あなたに謝りたいの。彼は善人だから心を痛めてる。私もよ」
「わざわざ伝えてくれて感謝するわ。私は恨んでないわ」
「よかった。それを聞いて安心した」
踵を返して帰ろうとするホープにミュリエルが言う。
「“できた元妻”の演技は見事だった。でもショーは終わってない。あなたはまた彼との関係をブチ壊す。その時は私の出番よ」
メルのケータイに「マークの名で寄付するヨットキャンプを発見」というメッセージが届く。
メルはマークのボイスメールを再生する。
「記念日だね。愛してるよ」
戦友たちが帰り支度をしようとジャックのバーを出ようとした時、ジャックは捜査官のマイクに「カルヴィンの件は?」と尋ねる。
「今は状況証拠だけで令状はムリだ」
「新たな犯罪に走ってる。俺には分かる」
「お前の勘には救われて来たが麻薬課は証拠が必要だ」
「違法栽培は?」
「ヤツは法を守ると主張していて今は起訴されない。もっと動きたいが管轄外だ。今後も保安官事務所と連絡を保つ。運がよければ現行犯逮捕だ」
「分かった。こんな再会で済まない。最低だったろ?」
「いや。今はキツイよな。そもストレスが他の問題を引き起こす」
「だから発散したかった」
「頼むから自分を大事にしてくれ」
戦友たちが帰って行った。
プリーチャーがジャックに、「皆がお前を心配してた」と伝えると、
「俺は大丈夫」とジャックは返す。
メルがジョギングしているとジャックの車が停まった。
「どうだった?」とメルが戦友たちとの再会を聞くと、「思ってたのとは違った」とジャックは答える。
「大丈夫?寝不足みたい」
「深夜まで呑んでたから。昔より二日酔いがひどい。もう行くよ」
「どこへ?」
「シャーメインと約束した。マークを偲んで何をするか決めた?」
「いいえ、走れば名案が浮かぶかと」
メルはジャックと別れた後も走り続け、川にヨットが浮かんでいるのを見て、マークとヨットに乗ってした話を思い出す。
「約束して。僕を父みたいにしないと。70歳になっても身を粉にして働く老人。金持ちだが、いさめだ。仕事は好きだが、死ぬ前に見たいのは君だ。病院のミートローフはイヤだ」
「引退したら何をしたい?」
「船で世界を巡り、各地の港で君と愛し合う」
ホープが家のテラスでシャーメインの犬を膝に乗せて撫でていると、ドクが来て驚く。
「彼女がいないと仲良くできる。犬は明日、ジャックが連れて行く。まず彼女に一息つかせたいそうよ」
「どうした、君に懐いているな。忠犬になった」
「お菓子を焼いた匂いにつられただけ」
「パイを食べられる?」
「いいえ」
「どうして?」
「ミュリエルに上げた。謝りたくて彼女の家に行ったの」
「気は晴れた?」
「いいえ。彼女への謝罪は逆効果だったわ。火に油を注いだ」
「難しい相手でも悪いことをしたら謝るのが筋だ。君は立派だ」
「どのくらい?」
「とても立派だよ」
2人がキスをしていると、ホープのケータイが鳴る。
メルからだった。
ジャックがシャーメインの部屋に入ると、部屋はベビーベッドや大きなぬいぐるみなどでのベビー用品で一杯だった。
おじやおばが買ってくれたのだと言う。
「まるでお伽噺」とジャックは言うが、意識が朦朧として、トイレに入り、顔を洗う。
シャーメインは引き止めるが、ジャックは急いでバーに戻らねばと言って出て行く。
メルはホープとドクと一緒に、マーク追悼のため、マークが好きだったヨットの、模型を湖に流す。
ヨットに乗ったマークの姿が頭に浮かぶ。
メルのケータイに誰かが連絡して来て、メルは2人を残し急いでどこかへ行ってしまう。
リッキーはリジーと街を歩いているが、バイトの時間が気になる。
リジーは、「たかが仕事よ」
「君は余裕あるから」
「私も働いている。でも必死じゃない。僕は稼がなきゃ」
「働き過ぎよ」
「ジャックの頼みだ」
「断ればいい」
「彼は恩人だ」
「利用されてる」
「そんなことない」
「あんたが彼を慕っていて、断らないと分かってる」
「私は誰にも頼れなかった」
「両親がいる」
「親は私を更生施設に送ろうとした。大学に行かないワケを人に聞かれたくないからよ。私は一度化粧品を盗んだだけ。家出すると脅したらここに送られた。あんたもどうしたいか考えなよ」
ジャックは急流をカヤックで下ろうとして、プリーチャーに止められていたが、強行しようとする。
メルを呼んだのはプリーチャーだった。
「じゃあ私も行く。安全なら私も付き合う」
「君は来るな。帰れ」
「あなたは双子を父親のいない子にはしない。私は戻る。あなたは?」
ジャックは諦め、メルに礼を言う。
「死産とマークの死を経験した後…、長い間、死んでもいいと思ってた。あなたも苦しいのよね」
「来られなかった仲間がいる。彼は戦死した。俺のせいだ。部下を帰還させるのが仕事なのに」
「実現できない責務を自分に負わせないで。戦争では人が死ぬ」
「俺は大人の男を死なせた。どうやって赤ん坊を守る?いや、“無力な双子”だ」
「あなたは誰より強くて責任感がある。献身的に尽くして来た。町の皆のために。最高の父親になれるわ」
「自分を信じられない」
「カヤックに乗ってもよかった。あなたには命を託せる」
「よせよ。君を危険にさらすワケない」
「知ってる。そう思ってた。あなたは双子の父になり、ありったけの愛情を注ぐわ。双子もあなたを愛する。その機会を逃すの?」
「もう行く?」とジャックから聞かれたメルは、「もう少し」と言って、頭をジャックの肩に載せる。
夜のトムズ・バー。
プリーチャーが店に行くと、リッキーの姿がない。
結局リッキーはバイトをすっぽかしたようだ。
店を閉める時間だが、サンフランシスコの飲食店オーナーのジェイミーが残っていた。
彼女は、プリーチャーに聞く。
「なぜ、バーで才能をムダにするの?名店で働くか店を持てるのに」
「この町に落ち着いてから引っ越す気にならない。町の皆は家族同然だ」
「家族は大事。でも距離を取るのもいい」
「どうかな。俺の経歴を見て高級店の人間が感心するとは思えない。見習いから始めるのもどうかと」
「私が力を貸す。人生が変わるかも」
リッキーは隣にリジーを乗せて車を運転している。
「シートベルトして」と彼が言うと、「パパそっくり」
「当然のことだよ」
リジーは笑って、サワーボール、ミミズ・グミ、リコリス、どれがいい?と聞く。
「お菓子よく食べるね」
「幸せになる」
「どれにする?」
「ああ、ミミズ・グミ」
リジーは、グミをリッキーの口の中に入れてやる。
「顔が赤い」
「日焼けだよ」
と言って、ルームミラーの向きを変えようとした時…。
ジャックとメルが帰り道、警察に出くわす。
ハイカーが死体を見つけたと保安官は言った。
マークが亡くなって一年後の今日、メルは助産師として、ドクトとともに町の女性の出産に立ちあう。
ジャックのバーには、警官が食事に来て、発見された遺体の身元がまだ不明だという。
プリーチャーは緊張する。
ホープは夫の命日にメルを働かせるなんてとドクを非難する。
ドクは彼女の望みだと返す。
「彼女は私と違って繊細なのよ」
「分かってるさ」
ドクは、ホープをディナーに誘う。
家でいいというホープに、
「隠れて会うのはうんざりだ」
公にすれば人目をきにする必要もなくなるとドクは言う。
リッキーがジャックに、昨日車が事故で起こして来れなかったことを詫びる。
ジャックは、リッキーがリジーを乗せて事故を起こしたと知って、リディの許可なく車を持ち出したことを叱る。
「どうしたんだ。この前は店の酒を盗んだり、車を勝手に使いサボったり。お前らしくない」
「謝っただろ」
「リジーとずっといるのが、よくないのかもな」
「彼女とは関係ない」
「すべて彼女が来てからだ。とにかく先が見えてるぞ」
「彼女と話した?そんなふうに決めつけないでよ」
「そいじゃない。お前が心配なんだ」
「まだ女性をよく知らないだろ」
「あなたほどね」
「なんだと?」
「元カノを妊娠させて他の人と恋仲に。女性について助言する立場じゃない」
それを聞いていたプリーチャーが、
「おい、言い過ぎだぞ」
シャーメインが出産計画のため、ホープの家にメルを訪ねて来る。
ジャックも一緒に話をするはずが遅れ、部屋にはシャーメインとメルだけでバツが悪い。
遅れてやって来たジャックに、メルが遺体の件の進展は?とジャックに聞くと、彼は「何も」と答え、知らなかったシャーメインが「遺体?」と驚く。
「森で見つかったんだ」
「なぜ知ったの?」とシャーメイン。
「発見現場近くにいたから」とジャック。
「散歩してたの」とメル。
「いつの話?」とシャーメインの追及の手はひるまない。
「昨晩」とジャック。
「一緒だったのね」とシャーメイン。
「ええ」とメル。
「ウソね」
「何?」とジャックが聞く。
「ベビー用品を見に来て、店があるから帰るって」
「一体何の話だ?」
「プリーチャーと代わると。あなたが意味不明なんだけど」
「確かに言った」
「ウソね」
「行くつもりだったけど…」とジャック。
「メルといた」とシャーメイン。
「遅い時間だ。なあ、悪かった」
「バレたから謝ってるの?」
「よかったら別の日に」とメルが口を挟む。
「そうするか」とジャックが答えると、シャーメインが「彼女に賛成よね」と棘のある言葉を吐く。
「君が興奮してない時にと」
「原因はあなたよ。とにかく…出産計画が決まるまで帰らない。帰る理由を探してるなら今回も帰って」
とシャーメインはジャックにきつく当たる。
ホープはリリーの家に来ている。
リリーは皆がクロエの子育てをする彼女に優しくしてくれることや「愛する人に真摯に向き合え」と言ってくれたホープに感謝している。
リリーはドクとミュリエルの話をし、私は信じない、なぜならドクはこの町に来た日からホープに夢中だからという。
夫のバックは同級生だった。亡くなって失恋の痛みを知ったとリリーはホープに言い、続ける。
「あなたがつらかったのは分かる。何もかも差し出す。彼が半日でも戻るならね。あなたは手が届く。自分を守るあまり、機会を逃さないで」
バーには、レストラン経営者ジェイミーが来ていて、料理を出したプリーチャーに「挨拶は?」と話しかける。
「悪かった。混んでるのに人手不足で。ようこそ」
そこへ、コニーが入って来て、プリーチャーを呼ぶ。
スタッフルームに入ったコニーは、発見された死体のことで来たのだ。
「ウェスのとは限らない」とコニーがいうと、プリーチャーは、「違うとも限らない」とかえす。
「大丈夫よ。もし、そうでもあなたとの接点はない」
「車の指紋は拭いた」
「服の繊維はどうしようもない」
「時間がなくて」
「ウェスについて聞かれたらどうするtもり?」
「死体が彼で、俺にたどり着いたら、殺したと話す」
「クレイジーだわ」
「ペイジは守る」
「だからって犠牲にならないで。有罪判決は10%。うち90%は自白が決め手。警察に連行されたらすることは1つ。否認して」
一方、ジャックは「絶対に有り得ない」と叫んでいる。
「自宅の子ども用プールで出産なんて反対だ」
「正直な希望を言ってるの」
「双子の出産自体ハイリスクだろ」
「概してそうね」とメルが答える。
「たとえば?」
「未熟児になりやすい。それによくあるのが、どちらかの子が逆子や横位になる。その場合は帝王切開になる」
「手術になったら?病院まで2時間だ」
「自宅出産なら感染症の確率は半分以下」
「何の情報だ」
「インターネット」
「病院で産むほうが絶対的に安全よ。緊急事態に対応できるから」とメル。
「でも、病院が不安なら、策を考えないと。だからタッカーの散歩に行くね。2人でどうしたいか相談して」と続ける。
リッキーはリジーもいるキッチンカーのパン屋に、バーのパイを取りに来る。
「首にはならなかったのね」
「ああ、でもジャックは激怒している」
「平気よ。叔母は年中怒ってるけど、私は無事」
「でも彼は冷静な人だ」
「そうね。お詫びする」
「ブラウニーで?」
「もっと楽しいこと」
「そんなこと、必要ない」
「したいかも」
そこでリッキーの電話が鳴る。
リッキーがケータイの画面を見ると、
”急げ、他にも用がある“とのメッセージが。
リッキーが帰ろうとすると、リジーは「忘れものよ」という。
キスかと思いきや、
「パイ!」
2人は笑い、見つめ合う。
メルが犬のタッカーを散歩させていると、ケータイが鳴る。
姉のジョーイからだ。
姉はマリーナのヨガ教室を終えたばかりだという。
マリーナはオーナーの夫と恋仲になっているので、そのうち辞めると姉は言う。
「すごいゴシップね」
「調子はどう?今日は独りでいないでね」
「仕事してる。大丈夫。マークが恋しいけど。悲しくはない」
「対岸に渡ったのね」
「対岸て?」
「悲しみの。きっと最悪の時は超えた」
「どうして分かるの?」
「思い出が痛みから安らぎに変わる」
「ヨットのセーリングを思い出した」
「“船長”って呼んだよね」
「そう。ホントに変な人」
「夫婦で朝からマルガリータ」
「私は昼には寝落ちしてた」
そこへジャックが出てきて、メルは電話を切る。
「彼女にウソを?」
「悪気はない。言い訳で」
「何の?」
「家中に置かれたベビー用品を見たら、逃げたくなってね。傷つけたくなくて」
「話せば分かってくれたはず」
「覚悟ができてないワケじゃない」
「分かってる」
「俺が覚悟できてなくても関係ない。父親は必要だ」
「いるでしょ?」
「俺の話は聞かないから話してくれ。理解したうえで決断してほしい」
バーにホープが入って来る。
「ブースを予約したい」という。
ディナーを5時に2人だとプリーチャーに言うが、彼は「予約なしで大丈夫だ」と答える。
「ブースを確保したい。できれば奥の」
「町長の仕事?」
「詮索しないで」
「大事な用みたいだから」
「ドクと食事」
「なのに予約?いつものことだろ」
「今日は、親密に」
「マジ?」
「深い意味はないからそっとしておいて」
「よりを戻すんだね」
「実は、やり直そうと思ってる」
「朗報だ」
「なぜ?」
「だって、互いを気遣ってる」
「言い争ってばかり」
「熟年夫婦さ」
「なろうとして失敗した」
「熟成する期間が必要なことも。火を入れる前に」
「他にも料理のたとえ話が?」
「これだけ」
「励ましの言葉をありがとう」
メルに、シャーメインが言う。
「ごめんなさい。死産を経験したと知らなくて」
「この話をするのは、視野を広げて、最善の決断をしてほしいから。まだ悲しみは癒えない。生涯ムリかもね。私だけで十分よ。予防策を尽くしたと確信したいの。私は看護師よ。助産師で夫は医師だった。リスクは分かってたし、万全を期したけど、自分を責めた。もし不注意があったら、自分を許せない」
「どうするべきだと?」
「話し合って、見つけるの。最も安全な策を。あなたが安心できてね」
「そうする」
「よかった。それとね、もう一つ。昨晩は彼をさがしにいったのえ。友人と別れた後で心配だったから」
「それはいいけど、聞くまで本当のことを言わなかった。信頼できない」
「双子の父親よ。出産したら助けが必要になる」
ホープのベランダでは、ドクが犬のタッカーを抱いて座っていて、そこにホープが戻って来た。
「ディナーを予約して来た」
「どこに?」
「ジャックの店」
「君の希望?」
「いいえ。一種の荒療治。皆に存分、ウワサさせる」
「実は私も店を予約した」
「私の予約は順延ね」
メルが呼びに来て、ドクは中に入る。
「医院でドクと私が立ち合い、出産する。救急車を待機させ、必要ならグレース・バレー病院へ」とメルがドクに出産計画を説明する」
シャーメインは家のほうが良いけど、ここならと納得する。
3時半から来てるから休ませてもらうと言ってメルは出て行く。
ジャックがメルの後を追って外に来て、彼女にお礼を言う。
「きつかったはずだ」
「あなたのおかげなの。町にとどまれたのは、あなたがいたから。ありがとうね」
ドクとホープはディナーに。
港のレストランで、甲殻類が美味しい店だ。
「この辺に詳しいの?」
「いいや。知人の勧めで」
そこへ現れたのはミュリエル。
リッキーとリジーはキッチンカーの中でじゃれ合う。
保安官がバーに来て、遺体の身元はレオ・カバナーで、聞き覚えはとジャックとプリーチャーに尋ねる。
「聞いたことないが、メルを襲った男だ」とジャックが答える。
「ナイフの指紋と一致したよ」
「問題は誰が殺したかだな」
ジャックはかかって来た電話に出るためどこかへ行く。
残ったプリーチャーが保安官に聞く。
「で、容疑者は?」
「まだ誰も。だが時間の問題だな」
「犬が森を捜索中だ。何かあれば見つかる」
港のレストランではミュリエルがドクとホープの席に加わり、ディナーだ。
「カルマ(業)ってやつね」とホープ。
「勧めた店に来てくれて嬉しい。近くの皮膚科に来ていて。月に2、3回立ち寄るの。今日は治療のご褒美に買い物して、次いでにディナーもと」
「皮膚科なんてムダ。石鹸と水に勝るものはない」
「そんなことないわ。知らないだけよ。皮膚科に通ってるから、あなたとの同年代には見えない」
それを遮るようにドクが「チェックプリーズ」と会計をたのむ。
ホープは、「失礼。急に吐き気がして来た」と席を立つ。
「いい考えが。ワインのクラスのクルーズに2人もどう?」とミュリエルがドクに聞くと、ドクは日程を聞く。
ミュリエルはシアトルを出てサンフランシスコで折り返すと行程を説明し、
「確か昔、シアトルに?」
「住んでた」
「ベル・ストリート埠頭近くに出航前夜、泊まるの。おすすめの店は?」
「友人が住んでるから、よかったら聞いてみるよ」
「助かるわ、ありがとう」
ドクがレシートを見ながら訝しげな表情をしているのを見て、ミュリエルは「どうしたの?」と聞く。
「メガネが合わなくなってる。最後を読んで」
ミュリエルがドクの隣の椅子に移って、顔をドクに寄せてレシートを見ているところに、ホープが戻って来る。
楽しそうな2人を見て、ホープはドクに近寄り、キスをし、ミュリエルを元のイスに戻らせる。
しかめ面をするドク。
森を走って家に帰ったメルは、1人でダンスを踊り、郵便物をチェックする。
その中の1通の封書を見て、メルの息は荒くなる。
ジャックのバーにブレイディがやって来る。
睨むジャックにブレイディが言う。
「何もしない。頼みがある。リリーの件が泥沼だ」
「ボスの差し金か」
「違う。俺の意思だ。ダメにした契約を修復してくれ」
「彼女には知る権利がある」
「で、話した?」
「彼女は友人だ」
「常にいい友人か」
「彼女は売らない」
「俺の考えを?」
「いいや」
「俺の成功はあんたを凌ぐこと」
「密売人の成功の定義って何だよ」と思わずジャックは笑ってしまう。
「俺のほうが稼ぐのが許せないんだろ」
「お前がしてるのは犯罪だ」
「カルヴィンの商売を継ぐ」
「森の遺体を知ってるか。見ろ、これだ」とジャックは保安官からもらった遺体の写真をポケットから取り出してブレイディに見せる。
「ヤツの手下への待遇だよ」
「証拠はない」
「だけど分かる」
「他を探す」
「がんばれ。自分の命は自分で守れよ」
コニーの雑貨店にプリーチャーが来る。
「違った」とプリーチャーが言うと、「やっぱり」とコニー。
「でも警察犬が森を捜索中だ」
「森には山ほど遺体や証拠がある。想像以上よ」
「でも…」
「FBIじゃない。保安官の捜査は知れてる」
「軍で叩き込まれた。最悪に備えろと」
「なら、プランBよ」
「なんだそれ?」
「まず問題ないけど、万一のために2人のアリバイを」
ドクのところにジャックが来る。
「メルは?」
「午後からの出勤だよ」
「昨日のお礼にラテを持って来た」
「キッチンに置いて」
「熱いうちがいい。届けて来るよ」
医院の電話がなり、ドクが出る。
「早めにチェックインしたい。ベル・ストリート埠頭への交通手段も」
ジャックがメルの家に着いて、ドアをノックするが返事がないので、ジャックはドアを開けてはいる。
すると、ベッドには封書を握り締めながら、泣いているメルがいた。
「どうした?」
その封書をメルは黙ってジャックに渡す。
”パシフィック生命保険“と印刷されていた。
「LAから転送されて来た」
「メル、大丈夫だ」
「大丈夫じゃない」
「私、間違ってた。平気なんかじゃない」
ジャックは、物置を子供部屋にリフォームしようとしてバールでケガをする。
治療のため医院に来ると、ドクはおらずメルがいて、治療をしてくれる。
「ざっくり切れてる。縫わないと」とメルが言うと、「絆創膏で十分さ」
「タフガイの名が泣く」
「縫合針は好きじゃない」
メルはジャックの脚に麻酔し、縫い始める。
「この前はゴメンなさい。疲れてて感情を抑えられなかった」
「謝る必要はない」
「でも迷惑をかけたから。私らしくない。いろいろ起きるまではめったに泣かなかった」
「俺は非難してない」
「自分でよ」
「やめろ。俺にも分かるよ」
「何が?」
「死の痛みを癒す手順などない」
見つめ合う2人。
ドクとホープが朝食を摂っている。
「懐かしいな。昔一緒に住んでいた頃の夕食」
「私は一日中料理し、片付けている間、あなたは激務の疲れを癒す」
ドクは笑い、「私も進化した。手伝うし、デザートの準備も」
「で、望みは?」
「君のラザニア」
ホープはため息をつき、言う。
「一から作ると何時間かかると思う?」
「さあな、2、3時間?」
「6時間以上よ」
「時間はあるだろ」
「本気なの?」
「噛みつくなよ。君のラザニアは、町で1番と褒めてるだけだ。でも負担だったら、バーへ行こう」
「いいよ。美容院の後で作る。あなたのたっての希望で」
「埋め合わせはする」
「サラライさせたら」
「ない。誓うよ。じゃあ」
ジャックの傷の縫合を終えたメルは、注意点と2週間後に抜糸することを言う。
「お礼するよ」
「ツケをチャラにして」
医院の診察室の扉を開けると、大勢が待っていた。
ちょうどドクも来て、驚きながら、「皆さん、おはよう。全員すぐに診るよ」
ドクはコーヒーを飲みに行き、ジャックと会話を交わす。
「そのケガは?」
「バールが跳ね返って来て」
「まるで君とメルの関係だな」
「俺がバールを振り上げ、避けられて激突。確かに。…バールを下す時期かもな。ところで今日の件は?」
「難しいかも。すでに飛び込みの患者が4人」
「気にしないで」
「ホープに頼め。地域をよく知っている」
「気が進まない」
「だよな、強要はしない。だが町内きっての交渉人だ」
バーにいるプリーチャーに会いに来たコニーに、彼は「返事はノーだ」と言う。
「何も言ってない」
「アリバイ工作にあなたを巻き込みたくない」
「手遅れよ。もう始めた。伝えに来たの。明日、ボロい服で来て」
「何の話だ?」
「私は信頼性のあるアリバイよ。友人でもないし、主従関係もない」
「友達だ」
「仲がいいけど、友だちと違う。警察はあなたを庇うとは思わない。あなたとのペイジを守る最強の防衛線になる」
医院には、さらに多くの患者がやって来る。
「インフルエンザか食中毒だ」とドクは1人の患者に言う。
「妻のシチューのせいだ。マズくてこっそりバーへ食事に行く」
「彼女の様子は?」
「元気だよ。鉄の胃袋なのさ」
次に来院したのはチャーリーで、「消化不良」を訴える。
メルは、患者の数から食中毒を疑う。
ドクも同感で、何を食べたか調べようとメルに言い、続ける。
「チャーリーの問診は頼む。ベティは診察する」
「検査ができない」
「構わん」
「分かったけど、なぜ私に書類仕事を?」
「集団感染の問診なら1人で行うのが効率的。君に頼む。患者は私が診る」
リッキーはパン屋のリジーのところにやって来る。
「不機嫌そうだね」
「お客が絶えなくて。休憩する」とリジーは言って、「後ほど戻ります」という札を出し、リッキーの手を引いて駆け出す。
リッキーはバーの小切手を届けに来たのだが、リジーはリッキーをからかいつつ、家に誘う。
祖母のコニーは夜遅く帰って来るので、2人きりでいられるという。
「コニーに見つかったら、叱られる」
「楽しみの半分よ」
「もう半分は?」とリッキーが聞くと、リジーは彼にキスをする。
バーではミュリエルが、ドクとホープの話をコニーたちに聞かせている。
「まるで2人は新婚。でも、私が先生に興味を示すと“彼女で満足ー”って感じで対抗された」
「また“彼女”に戻った」
「そうね、コニー」
リリーは、「私は祝福する」と言う。
もう1人が、「披露宴でB&Bを使うかも」
「ホープが再婚するはずがない」とコニー。
「まだ離婚してない」とリリー。
「再び宣誓するのね」
「あり得ない」とコニーが言うと「なぜ?」と聞かれ、コニーは言う。
「彼女は先生の下着を洗う義務はない」
そこへホープが入って来る。
「何の話?」
皆は一瞬口籠るが言う。
「あなたたちがよりを戻すかって話」
「何でそんな話に?」
「関係を隠す気はないでしょ」とミュリエル。
「今回だけは彼女の言うとおり。ヴァーノン(ドク)とやり直す。でも再婚とは違う」
「言ったでしょ。じゃなきゃ自由に別れを告げ、個人秘書になるのと同じ」
「未婚の人の意見ね。私は夫の世話が好き。アイロンがけ、お弁当作り、医者の予約…」
「私たちは焦らず、ゆっくり進む」
「懸命ね。失敗の痛手が小さい」とミュリエル。
「やめて。ひどい」とホープ。
「彼の年なら妻がほしい。既婚男は独身男や既婚女より長寿」とコニーが言うと、リリーが「ホント?」と聞き、コニーは続ける。
「複数の医学専門誌に書いてあった」
「信憑性がない」
「この井戸端会議よりはある」とホープ。
そこへジャックがやって来て、ホープに「スタントンまで付き合ってほしい」と言う。
「近くを通るから乗せていくよ」とコニーは言うが、ジャックは見せたいものがあると言ってホープと出て行く。
ミュリエルが、「なぜ男は彼女に構いたがるの?」
「自然な美しさがある」とコニーが即座に答える。
ミュリエルが「私にだって」と言って席を立つと、コニーが言う。
「彼女が自然なのは、無遠慮な点だけね」
すると遠くからミュリエルの「聞こえたわよ」の声が。
医院ではドクにメルが、患者の共通点を指摘する。
「バーよ」
「最悪だ」
「ええ」
「確実か」
「全員、24時間以内に彼の店で食事している。他に共通点はない」
「具体的には?」
「ビートのサラダ。でも、食材の特定は難しい」
「解明するまで閉店だな」
話して来るというメルに、ドクは問診を続けるように言う。
「まず電話して、後から説明を」
「問診ばかり」
「決まった手順を守りたい」
「また助手扱いしてる」
「助手でその口の利き方ならクビにしてる」
バーは休業に入る。
メルがバーに来て、厨房で食材を処分するプリーチャーから患者数を聞かれ、10人くらいと答える。
「ジャックは?」
「電話にも出ない。確実なのか」
「おそらくビートのサラダが原因」
「マジか。信じられない」
「長引かないから」
「何でこんなことに」
「あなたの献身は知ってる。今回の件は仕方なかった」
「私から彼に?」
「いや。俺の問題だ」
メルが厨房を出ると、リジーがメルのところに来て、ピルのサンプルを求める。
「コニーの許可は?」
「まさか」
「そうね。サンプルを渡す前に骨盤の検査を」
「不要だって」
「要請よ」
「ピルがほしいの」
「医院で服用量と副作用を説明する」
「持ち歩いてないの?」
「とにかく来て」
ジャックはホープを家の内見に同伴させている。
「シンクの水漏れ、面倒が起こるのは時間の問題ね」とホープ。
「検査官は何言ってない」と不動産屋。
「狭い寝室ね。エアコンも虫の息。それに薪ストーブ。スモアでも作れって」
「おしゃれかと」と不動産屋。
さらに問題を見つけたようなホープに、不動産屋は1割引を提案する。
不動産屋が電話に出るために外へ出た隙に「どう思う?」とジャックが聞くと、ホープは「掘り出し物ね」
「名交渉人だな。ありがとう」
「いいのよ。買うの?」
「バーの上は子ども向きじゃない」
「じゃあ…」と言いかけて止めるホープに、「何?」とジャックが聞くと、「私生活に干渉しないと約束した」
「交渉のお礼だ質問は?」
「家を買うのは誰のため?」
「今は双子のためだな。快適で安全な家。子どもが2人の間を頻繁に行き来すれば、一緒に住むかもな」
「シャーメインとその可能性もあるの?」
「子どもと過ごすためなら仕方ないかも」
「彼女と暮らす気があったのね」
「違うけど、養育権では父親は不利だ。子どもといるためさ」
「もう1ついい?」
「どうぞ」
「私が言うのも変だけど、最近思ったの。厳しい道でも自分の望みを追うべきよ」
「ああ、確かに…。でも、簡単じゃない。メルトいた。1周忌の翌朝ね。打ちひしがれていた。分かったんだよ。まだ友人以上はムリだと。生涯かも」
「いつかは受け入れる」
「いつまでも待ってられない」
医院でには患者が集まっている。
メルはドクからどうだと聞かれ答える。
「何人かの患者が息切れを訴えている。食品由来の中毒と症状が違う」
「遅延反応かも」
「マイコプラズマや連鎖球菌の可能性も。調べてくれ」
「まず問診の結果をまとめる」
「まだなのか」
「大変な作業なのよ」
「何にしてるんだ?」
「全患者の行動を記録してる。24時間分の」
「急げ」
「一体何なの?最大限急いでる。簡単に言わないで」
「これだからイヤなんだ」
「エキスキューズミー?」
「危機的状況でも自分の扱いが優先か」
「プロに徹して」
「過剰反応だ」
「悪いけどハッキリ言う。あなたは最低。患者がいなかったら即出てってる」
2人のやりとりは、待合室に丸聞こえだ。
メルは待合室に出て笑顔で「次の方」と言うが、患者たちは無言。
ジャックはトレーラーハウスにいる男と会う。
「すれ違った人は?」
「いない」
「安全を最優先したい」
「分かった」
「訪問は困る」
「密かに来た」
「ヤツの手下がいる」
「お前を助けたい」
「マジか。密告がバレたら殺される。家族もな」
「今は安全?手下は殺される運命だ。変えられるぞ。家族のことを考えろ」
「どうかな。密告したと疑われただけで…」
「俺が守る」
「何を知りたい?」
「レオは手下か?」
「2週間だけだ。見張りをさせてた」
「で?」
「売り物でラリった」
「ハードドラッグも?エメラルド製材所と関係が?」
「家族の安全が確保されるまで話さない」
「ヤツが捕まるまで危険がつきまとう。力を貸してくれたら必ず家族と脱出させる」
ホープはシャーメインの美容院に。
まだ休んでいると思ったら、彼女が出てきた。
「数時間だけ出勤してるの。無料でいいわ」
「気を使わないで。髪色で印象が変わるのよ」
「このままでいい。急ぐの」
「分かった」と言い、シャーメインはホープの髪を切る準備を進める。
「それで、先生とは?」
「ウワサが広まるのは早い」
「同居してた」
「詮索するなんて」
「第六感が働くの。あなたは幸運よ。頼れる運命の相手には、なかなか出会えない」
「そうね」
「昨日、出産計画を話し合った時、ウソを知った。仕事と言い、メルといたの」
「その件は初耳よ」
「叔母に電話してグチを言ったの。そしたら大決断を迫られることに。でも人に話せない」
「なら黙って」
「聞いてよ。ジャックにも内緒ね」
「やめて。彼の私生活には関われないの」
「言わなきゃ平気」
「やめて。仲を修復しつつある。ゴシップはイヤ」
「叔母が私と双子を迎えると。ポートランドも自宅に」
「勘弁して」
「真剣に悩んでる」
「やめて」
「困ってる」
「知っちゃいけないことを知った。もう知らなかったことにできない。とにかく帰る」
「カットがまだよ」
「これできれい。私は来てないから」
ジャックは麻薬取締官のマイクに電話する。
「レオ殺害の証人を見つけた」
「ヤツは手を汚してない」
「当然、手下にやらせてる」
「なら厳しい。RICO法を知ってるか?」
「犯罪集団の法?」
「ああ、組織を一網打尽にする。ヤツが犯罪組織を運営する証拠があれば、狙いを定められる。証人は組織内に?」
「そうだ」
「決まりだな」
「問題がある。匿名でと。家族がいる」
「地方検事に協力を要請する。内部の情報は貴重だ」
「結果を知らせてくれ」
「連絡する」
バーに着いたジャックは、プリーチャーから食中毒の話を聞き、疑問をぶつける。
「おかしいだろ。食材はお前の畑の物だ」
「腑に落ちない。毎週、土壌を検査してる」
「リッキーらは?」
「手順に従ったと」
同席していたジェイミーが、「今週何か変化は?」と聞く。
「どうかな」とジャックは答えるが、その時、リッキーが顔を出す。
「実は、僕のせいだ」
「何?」
「手順どおりレタスを2度洗いした自信がない。今、悩みが多くて」
そこへメルが入って来て、そうしたのかと聞き、リッキーが答える。
「レタスを洗わなかったかも」
「原因は別よ。食材が原因じゃないみたい」
「本当に?」とジャック。
「別の症状があった。息切れ」
「どういうこと?」とプリーチャーが聞く。
「まだ不明だけど、野菜を洗ったかどうかは無関係」
「どう思う?」とプリーチャーがジェイミーに聞く。
「私なら部外者を疑う。新たな仕入先や従業員。近隣の競合店」
「故意だと?」
「食材管理に問題がないなら可能性は残る」とジェイミー。
「ヴァージンリバーのような田舎ではあり得ない」
「どこでも飲食店は食うか食われるかよ。常に警戒しないと」
ホープはドクに料理ができなかったことを伝える。
「作る気だったけど、美容院で事件が」
「気にするな。多忙で遅い昼食だった」
「空腹じゃないのね」
「バナナでいい」
「ラザニアがあっても食べない?予定を変更してたら、どうするの?」
「実際、作ってないだろ」
「私の時間をムダにしてる」
「なぜケンカをふっかける?」
「違う。キツい日なのに、イライラさせないで」
「世間一般では美容院に行くのは休日だ」
「私の大変さを知らないのよ」
「ほう、何にがだ」
「シャーメインが密かに引っ越しを検討しているの」
「ウソだろ。また首を突っ込んでるのか」
「違う。聞きたくないと言ったのに話して来た」
「まったく信じられない」
「私を信じないの?」
「今日はクタクタでその種の話には耐えられん。おやすみ」
リッキーはリジーの家に着き、リジーの出迎えを受ける。
いつものリュックを背負ったリッキーに、
「まさか宿題を持参?」
「もっと楽しいものを」
「お酒?」
「キャンディだよ。チョコバー、ポップコーン…バター味だよね」
「優しいね。何を観る?」
「『ストレンジャーシングス』?」
「観てないの?」
「忙しくて」
「あり得ない」
部屋に行こうとするリジーに、リッキーは喉が渇いたので水を飲んでからでいいかと聞く。
「2階で待ってるね。ベッドは快適よ」
ハンボルト郡保安官事務所をプリーチャーが訪れる。
「保安官に呼ばれたので」
「今は不在で」とハワード。
待つと言うプリーチャーにハワードは、遅くなる、ディンズモアで車が出たという。
漁猟師が雑木林で見つけたという。
「たいした事件じゃない」
「行方不明者の車でね」
バーの新人ジョージが来院し、メルが応対する。
手が腫れ熱を持っている。
炎症を抑える薬を塗ったあと、メルはジャックに電話して呼び出す。
ジャックは不動産屋と電話で話すが、「遅かったな。1割マシの客が現れた。高値をつける人に売る」と言われる。
パソコンでドラマを観ていたリジーとリッキーだが、リジーは途中でパソコンのカバーを閉じてしまう。
横になろうとリジーから言われたリッキーは、やめたほうがいいと答える。
理由を問われリッキーは、「童貞だから」と答える。
「変態だと思ったよね。フラれても仕方ない」
「あなたが変態なら私も変態ね」
「なぜ?」
「分からない?」
「私も初めて。内緒よ、恥ずかしい」
「帰ってほしい?」
「いいえ。ここからがお楽しみよ」
ベッドの上行き、パソコンのカバーを開け、2人は手を握り、身を寄せ合う。
カルヴィンがブレイディに、「買収は失敗か」と夜道で聞く。
「農場ならいくらでもある」
「問題はお前のダチだ」
「ダチじゃない」
「ヴァージンリバーとのパイプ役にと誘ったが、期待外れだった」
何かに気づいたブレイディには、
「おい、待てよ。再度リリーと話し、説得してみせる」と言う。
「やめろ。手遅れだ。信用出来なきゃ…」
「してくれ。誓うよ。あんたの指示に従う」
「なら試させてもらう」
「方法は?」
「慌てるな」
そこへ車が来て、男たちが1人の男を引っ張り出す。
「ブレイディに、チームの一員だろ。どうなんだ」
「スペンサーは違う」というブレイディにカルヴィンはライフルを渡す。
医院のメルのところに彼女が呼んだジャックがやってくる。
メルはジョージが怪しいとジャックに言う。
ジャックが話をしようとすると、彼の姿はすでになく、オモテに出ると、ジョージがカルヴィンの手下の車に乗り込んで去って行った。
「動機は明白ね」
「ヤツらかの警告ってわけか」
「保安官に」と電話しようとするメルをジャックは止める。
「やめろ。俺たちの問題だ」
ジャックが山道を車でね走っていると、男が前に倒れ込んでくる。
ジャックはメルに電話して、医院に男を担ぎ込む。
男の名はエイドリアン。
右腕を骨折し、ひどく脱水状態のようだ。
メルは点滴の準備をしながら、ジャックに聞く。
「早朝にパイン・リッジで何してたの?」
「ドライブ」
「朝4時に暗闇をドライブ?」
「ああ」
「正直に」
「スペンサーを訪ねた。カルヴィンへの証言を決めた直後、音信不通に」
「保安官に連絡を」
「食中毒を起こされた」
「だから連絡して。いつ止めるの?」
「何を?」
「抗争よ」
「決着した時」
「心配なの。自ら危険を冒してる」
エイドリアンが咳をしたので話は中断し、正午にバーで会うことに。
コニーの雑貨店前のテラスに座るドクは、メルからの電話に、「君に任す」と答え、そこにホープがやって来る。
「シャーメインが引っ越すの。何にも知らないジャックは家を買う気よ」
「もう話し合ったろ。首を突っ込むな」
「彼の人生が壊れるのを見てられない。今なら助けられる。すべてを整理して良き父親になろうとしている。なのに突然、背を向けられるのよ」
「確かにきついな」と言いつつも急いでいるドクは時間を気にして立ち上がる。
「私が悪いわけじゃない。傍観者に徹して来たのに、彼女が爆弾を投げた」
「誰の非かは関係ない」
「彼女よ」
「これはジャックが知るべき情報だが、君が伝えれば災難に考えろ。飛行機に乗り遅れるから行くよ」
「どこに?」
「シアトルで学会がある」
「嫌いでしょ?」
「誤解だよ」
「いつも言ってたくせに」
「君の許可は必要ないだろ」
「何の会議なの?」
「明日戻る」
「宿泊先は?」
「シアトルって言ったろ」
パン屋に来たプリーチャーにコニーが「パイが足りないけど何とかなる?」と聞く。
「気にするな」
「気にするでしょ?リジーのミスなの。親戚を悪く言いたくないけど若い娘には毎日が日曜日ね」
「正常な10代だよ」
「そう言ってもらうと救われる」
パイを車に積もうとするプリーチャーに、コニーは念を押す。
「夜、忘れずに寄ってね。アリバイの件よ」
「手遅れだ」
「まさか」
「電話が保安官から」
「要件は?」
「まだ聞いてない。訪ねたが不在だった」
「よかった」
「ウェスの車が発見されたって」
「話してないなら間に合う」
「コニー、感謝してるよ。でもこの件は俺だけで何とかするよ」
「ダメよ。認められない。あなたには私が必要よ」
「いや、リジーに必要だ。自分の決断で迷惑をかけたくない」
「頑固な人ね」
「違う。計算したうえでの結論だ」
「計算?」
「リジーが1人になったら?」
「両親の元へ戻る」
「彼女への最善策か?」
「違うわね」
「子どもの頃、母はよく家を空けててね。父が家族の夕食を準備し、世話してくれた。俺に関わるすべてをね。その姿を見て学んだんだ。1人でも愛を注ぐ人がいれば、あとは自分を信じるだけ。リジーには、あなただ」
ジャックに不動産屋から電話で、家のライバルが15日に決済をと言ってるとのこと。
「うちが迅速にしんさし、ローンの書類を通せば間に合う。どうします?」
「買うよ。書類をメールしてくれ。外出中だから夜、連絡する」
「お任せを。賢明な判断です」と嬉しそう。
「ローンをカバーする2階の借り手の件も頼むよ」
「連絡したが、もう別口を決めてた」
バーではリッキーが客からオーダーしたバーガーを急かされているが、そこへリジーから「来られる?」ともメッセージがケータイに。
仕事中と返すと、「お願い」と返って来る。
「後じゃダメ?」
「怖いの。物音がした」
「了解。すぐ行く」
そこへプリーチャーが来て荷下ろしを手伝ってくれと言う。
リッキーは1時間だけ帰宅したいと言う。
「理由は?」
「クマがゴミ箱を倒したから、片付けてって」
「クマ?」
「なぜクマだと?」
「ばあちゃんが彼を見た。厳密には性別不明、毛に覆われてるから。とにかくクマを見たみたい」
「ウソが下手だ」
「リジーが物音に怯えてる。すぐ戻るから」
「行け」
先程バーガーを催促した客が、「彼は休憩か。俺のバーガーは、30分前に頼んだぞ」
「済まない。すぐ持って来るから。デザートを付けて」とプリーチャーが宥める。
メルが入って来る。
「メル、ナマズがあるぞ」
「食べたいな。ジャックに今着いたって伝えて」
「用事でいない」
「そう、バーの用?」
「さあな、どうした?」
「会う約束をしてたの」
「電話した?」
「まだ。してみる」
「彼が来たら?」
「電話してと」
メルがジャックの電話の留守電に吹き込んでいる時、ホープがやって来る。
「先生なら出張よ」
「違うの。ジャックに。プリーチャーも居場所を知らなくて」
「シャーメインの問題ね」
「違うと思う」
「出産前に決めることが山ほどあるのよ」
「そうね」
「住む場所とか」
「私には関係ない」
「あの2人は爆発を待つ地雷よ」
「大袈裟ね」
「まったく、察しが悪すぎる。彼女はオレゴンに移る気で、決心がつくまで内緒にって。彼に必要な情報だから彼にあなたが伝えて」
「ズルい」
「彼の私生活には関われないから。正式にバトンを渡す」
「もう関わってる」
「私的にな違う」とホープは言うだけ言ってコニーたちの席へ行く。
「ミュリエルが旅行の前に雑に仕上げた」と手芸作品をホープに渡す。
「どこへ?」
「シアトル」とリリーが答える。
「クルーズよ。意気込んで服を新調してた」とジョー・エレン。
「体の線が出るドレスね」とホープが言うと、「1着は背中が開いてるって想像できる?」
「したくない」とホープが言うと、コニーが、「先生は出張?」と聞く。
「何で?」
「今朝、飛行機に乗ると話してた」
「学会よ」とホープ。
「どこで?」とリリー。
「シアトルよ」
皆、驚きと困惑の表情で黙ってしまうが、エレンが言う。
「すごい偶然ね。同じ場所なんて」
「彼女は船上でしょ?」とホープが言うと、エレンが答える。
「出航前、街で2日間…」
コニーが話の主を見つめ首を横に振る。
「事実よ」とエレン。
「でも言う必要はない」とコニー。
メルはシャーメインを訪ね、ジャックを捜していると言う。
「あら、彼を追うのは私だけかと」
「誤解しないで」
「どうでもいいけど彼はいない」
「待って。何か変なの」
ジャックが音信不通で誰も知らないことをシャーメインに伝えるメル。
「彼が圏外に行くことはよくあるわ」
「それとは違う。食中毒の件は?」
「初耳よ。何?」
「カルヴィンが手下に店で食中毒を起こさせ、彼は激怒してる。ムチャしそうで」
「保安官には?」
「思い過ごしなら迷惑になる」
「どうするつもり?」
「大麻畑に行きたいけど、道順を忘れた」
「あなたのような人が行くのは危険よ」
「どうして?」
「お嬢様育ちでウラの世界を知らない」
「LAのダウンタウンのERで3年間働いた」
「話が違う。ガーバービルのバーに場所を知ってそうな人がいる」
「よかった。電話番号を教えて」
「突然電話しても教えるはずないでしょ」
「失礼。大麻畑の場所を聞くのは初めてで」
「だから行くなって言ってるの」
「ならバーの住所を教えて」
「私も行く」
「ダメよ。妊婦なんだから」
「そう、ジャックの子。いい?彼が危険なら私にも関係する」
「畑へは連れて行けない」
「バーまで。1人じゃビーに相手にされない」
「ビーって誰?」
「高校の時、バイトしてた」
「高校生がバーで?」
「そう。してた。やっぱりお嬢様ね。捜しに行くよ」
製材所でブレイディがジミーに言う。
「自分の車で」
「ショーンが使ってる」
「俺の車には載らない」
「ヤツの荷物は燃やさないと
「名案だな。大麻畑の先で焚き火かよ」
2人はブレイディの車に乗る。
ジャックは、スペンサーのトレーラーハウスを訪ねる。
彼はおらず、残されたケータイには、「Cにバレた。逃げろ」のメッセージが。
そこへブレイディとジミーの乗った車がやって来る。
ジミーが小用をたすため停車したのだ。
ジャックはトレーラーから降り、ブレイディに聞く。
「スペンサーは?」
ブレイディが「ジャック」と言うやジミーが後方からジャックを殴る。
「どうして?」とブレイディはジミーに言うが、ジミーは「簡単に運べる」と答える。
「追い払えた」
「ボスが会いたいはずだ」
「まったく…。手を貸せ、車に運ぶ」
ホープはリリーと一緒に医院に行く。
「実はね、クロエが立っちした」とリリーがホープに話しかける。
ドアには「緊急時にはメルへ」との貼り紙が。
中に入ったホープは、証拠を探す。
リリーが、「何だか落ち着かない。覗き見だよ」と言う。
「結果が手段を正当化する」
「2人の仲を疑ってるの?」
「彼を疑ったりしない」
「ならやめて」
「秘密のされると気が変になるの。彼は絶対に隠し事をしてる」
「だからね」
「分かるでしょ」
「なぜ私を?」
「証人よ。…留守電ね」
「何するつもり?ちょっと…」
「留守電を聞くの」
「プライバシーの侵害だし、違法よ」
「留守電が発明された日から妻は聞いてる」
「私は違う」
「誰もが聖人じゃない」
「本当だ。何もない」
「だから言ったでしょ。早く行くよ。気まづい」
一方、シアトルのドクは、レストランでウェイターからワインのおすすめを言われている。
「いいんだ。連れが持参するから」
「なるほど」
そこへミュリエルが来て、遅れたことを詫び、ウェイターにワインをわたし、「上手に開けてね。高級品よ」
「来ないのかと一瞬、心配したよ」とドク。
「まさか。何を着るか迷って。こういうの初めてで。うまくいったわね。乾杯する?」
「何に?」
「新たな門出には?輝かしい未来にも」
「いいね」
リッキーはリジーのいるコニーの家にくる。
「呼び出してゴメン」
「いいんだ。ちょうどサボれた。物音って?」
リジーは2階を指さす。
「外に誰かいたみたい」
「きっとリスだよ」
リッキーはリジーの部屋の窓から外を見る。
「風かも」
「得意のチーズ料理を作るよ」
「いや、1時間でバーに戻らなきゃ」
「大丈夫だよ」
「プリーチャーを困らせたくない」
「お願い、少しだけいて」
「どうして?」
「一緒にいたい」
「本当の理由を言ったら店に電話する」
「分かった。家に独りはイヤ。親の出張が多くてシッターと過ごした。独りは慣れなくて」
「つらかったね」
「いても無関心だから関係ないけど。で、いてくれる?l
「ああ、君が好きなだけ」
メルは車運転し、シャーメインと一緒にジャック探しだ。
「正直驚かない。報復に行ったと聞いてもね」とシャーメイン。
「何かあれば私たちが困るとは考えてもいない」と続ける。
「あなたたちを守るために片をつける気なんだと思う」とメルが言うと、
「違う。あなたを傷つけたからだわ」
「まさか。理由は食中毒の件よ」
「個人的な恨みだと思う。だから選択肢を探ってるの」
「選択肢?」
「子どもに最も安全な環境を与えたい」
「彼も同じよ」
「ポートランドの叔母夫妻が私たちを迎えるって」
「彼は何と?」
「言ってない」
「双子を遠くに連れて行けば彼は失望する」
「私は日々、彼に失望してる」
「それとは違う。彼は父親なのに言わないなんて残酷すぎる」
「立場が弱いのは私のほうよちょっと、BMWに乗って、医者と結婚してたでしょ」
メルは返す言葉が見つからず首を小さく横に振る。
保安官がバーにやって来る。
「訪ねたけど不在だった」
「聞いたよ。悪かった。1ヶ月前に聞かれた車のナンバーの件だ」
「それが?」
「ひき逃げに関係しているようだ。運転手の特徴を聞きたい」
「ああ。乗り捨てられた車を見つけたって?」
「持ち主はウェス・ローガン。フロリダの有名な刑事だ。当初は捜索願いだったが、今は逮捕状に変わったよ」
「マジか」
「ああ。収賄、きょうかつ、暴行。相棒が吐いた」
「今後は?」
「うちじゃ集中捜索はできないから、ヤツがしでかすまで待つしかない」
そこへジェイミーがやって来てプリーチャーに話しかける。
「再開したのね」
「うれしいよ」
「食中毒の件は?」
「君が正解。従業員が故意に起こした。詳しくは知らない。ジャックが対処してる」
「なんてこと。キッチンを汚されたら私なら許さない」
「彼の店だ。覇権はシェフにある」
「言わばパートナー」
「実質的には違う。実は前のボスがサンフランシスコで店を出すの。推薦したらあなたを雇いたいと」
「マジかよ」
「シェフは?」
「パピル」
「あの?すげえな」
「見習いからでもすぐ昇格できる。またとないチャンスよ」
「話ができすぎだ」
「受けるなら24時間以内に返事を」
メルとシャーメインは、赤いBMWから降りてバーに入る。
「カルヴィンとトラブってる彼氏を助けるなんて無謀すぎる」とバーの女店主が言うと、シャーメインは「彼氏じゃない」
メルが「彼が心配なの」と言うと女主人は「ヤツらは武装してる。危険なのは分かるでしょ」
「兄弟が手下よね」とシャーメイン。
「あの怪物に関わる前はいい子だったのに」
「私たちを助けて。兄弟や他の人の助けになるかも」
「キャンプの位置を知りたい」とメル。
女主人はやや逡巡した後、メモを書く。
「私から聞いたとヤツらに知れたら、兄弟を殺される」
「絶対に言わない」とシャーメイン。
「絶対に」とメルも同意。
ブレイディとジミーは、ジャックをカルヴィンのところに連れて行く。
「スペンサーのトレーラーにいた」
「彼は?殺した?」とジャックがカルヴィンに聞く。
「俺は殺さないさ。なあ、ブレイディ」
ジャックはブレイディを見、ブレイディもジャックを見る。
「何をした?」とジャックがブレイディに聞く。
「仕事さ」
「お悔やみを言うべきかな」とカルヴィンが言うと、ジャックは、「完全に一線を越えたな」とカルヴィンに近寄るが、ジミーがジャックを止める。
「いいか、ジャック。今日は見逃す。今度俺の商売に首を突っ込んだら、その日、お前は終わる」
「覚えてろ」
「なぜ帰した?」とジミーがカルヴィンに言う。
「先のことを考えろ」
「許可があれば眉間にぶっ放したのに」
「ヤツに証拠はない。目撃者もな。殺害は騒ぎになる」とブレイディ。
「ヤツの心配はいい。商売の話がある。2人で」とカルヴィンが言うと、ジミーはイヤな顔をしながら「外にいるよ」と席を外す。
リッキーは仕事をサボり、リジーのベッドで彼女といちゃついている。
「ゴムは引き出しに。ピルも飲んでる」とリジー。
メルはシャーメインを車で送り、彼女の降り際に「大丈夫?」と聞く。
シャーメインは「彼とは別れたほうがいいと思うようになった」とメルに打ち明ける。
「本当に?」
「こう、思ってたの。付き合いが長くなれば私を愛するようになると。でも違うなら望まれない結婚になる。だから…」
「幸せになれる」
「そうね」
「もう1つ…、オレゴンの件、彼に話すって約束して。逆の立場なら知りたいでしょ」
「分かった」
「私が話すまで内緒にして」
「約束する」
シャーメインが去った直後、プリーチャーからメルのケータイに電話が入る。
リッキーがリジーとコトを終えて、冷蔵庫の飲み物を探していると、まだ戻らないはずのコニーがそばに立っていた。
「一体、どういうつもりなの?」とコニーは怒りをぶつける。
ジャックのバーで働くプリーチャーのケータイに、ジェイミーから「まだ考え中?」と、返事の催促がメッセージで届く。
そのメッセージに顔をほころばせるプリーチャーだが、店に来ていた男の顔をみて、彼の表情は一気に凍りつく。
ホープが階下に降りると、部屋中が多くのローソクで灯されていた。
ドクが帰って来ていて、ホープはドクに「何事なの?」と聞く。
「やあダーリン。うたた寝かい」
「ダーリン?酔ってるの?」
「酔ってない。だが、これからワシントン州が誇るスパークリングワインを飲む」
「あなたに怒ってる」
「待った。その前に、言いたいことがある。こんな話を聞いたことがある。物事を完全に理解するには、人は6〜7回聞く必要がある。それを念頭に、私は伝えるつもりだ。君に何度も何度もね。愛してる。出会った日から、私は君のものだ。死ぬ日が来るまで。ホープ・マクリー」
と言ってドクは指輪の箱を開け、
「私の妻になってくれ」
とプロポーズする。
「もう一度」
ホープは立ち上がり、「これを聞いて」と留守電を再生してドクに聞かせる。
それはミュリエルが残した伝言だった。
「留守電を聞いたのか?」
去って行こうとするホープの背中から、
「ホープ、待てよ」とドクが声をかけるが、ホープは部屋を出て行く。
自作のバッティングセンターでがむしゃらにボールを打つジャックのもとにメルが突然現れ、驚いて振り向いたジャックはデッドボールをくらう。
「ランチの約束をすっぽかし、電話にも出ない。ずっと捜し回ったのよ。プリーチャーに電話をもらうまで」
「悪かったよ。ちょっとあって、忘れてた」
「忘れた?」
「スペンサーが死んだ」
「なぜ知ったの?」
「キャンプで、ヤツらが殺した」
「ジャック、あなたに非はない。証言は彼の意思よ。無理強いじゃない」
「怖がるのに説得した」
「本当にイヤだったら、受けなかったはずよ。でも責任を感じる気持ちは理解できる」
「患者を死なせるのとは違う」
「事故の夜、マークと口論した。不妊治療を止めようと言われて、黙っていられなかった。譲らなければ彼が折れると思ったの。もし私が話を止めていれば、彼は前を見てた。私が悪い。あらゆる面で。だから分かる。でも他人を遠ざける理由にはならない」
「遠ざけてない。君には感情を打ち明けて来た」
「そうじゃなくて今日のこと。あなたを捜しながら心配で息苦しかった」
「君が去った時の俺だ。つらかったのは、その時初めて君の存在の大きさを実感したことだ」
立ち去ろうとするジャックにメルは声をかける。
「いいんだ。俺の問題だ」
「待って」
「気にするな」
メルはジャックを追って来て、
「知ってほしい。どれだけ…」
と言いかけて一瞬メルは躊躇するが、ついに胸の内を打ち明ける。
「愛してるか。愛してるの」
驚いて黙るジャックにメルは、
「笑わせてくれるのが好き。笑いたくなくても。私の話を聞いてくれるのが好き。友だちになってくれて、故郷を与えてくれた。一緒の朝が好き。安心できる。1人でいても。あなたを遠ざけて、ゴメン。自分を守ってた。傷つきたくなくて。で、あなたのいない人生はつらすぎる。私…」
今まで塞いでいた思いが一気に溢れ出るメルに、ジャックはそっと近づき、キスをし、それに応えるメル。
ドクはホープの部屋に入る。
「もう帰ったのかと」とベッドの上に座るホープがドクに言う。
「遅かれ早かれ帰る」とドクは言って、ベッドに自分も座って言う。
「ミュリエルの友人は、ビンテージの指輪を専門に扱っている」
とドクは言って先程の指輪をホープに見せる。
「婚約指輪を作り直してもらった。自分の目で出来を確かめるために行った」
「留守電は?」
「感謝の印として昼食に誘った」
「知らないのはイヤ」
「サプライズさ」
「今後は話して」
「私の留守電も聞くな」
「分かった」というホープの目には涙が。
「他には?」
「毎日、夕食を作るのはイヤ」
「この15年作ってないだろ」
「聞いて。結婚は続けるけど、私はやり方を変えない」
「変える必要はない。君が幸せならそれでいい。そのためなら私は何でもする」
「あなたの望みは?」
「2人が一緒にいる。それで十分だ。君にはつらい思いをさせたが、私を信じてくれ。君を二度と傷つけることはしない」
「悪いわね。私に縛られた一生で」
「何だ?」
「答えはイエス。あなたと結婚を続ける」
ジャックはメルの家のソファで目を覚ます。
メルは眠られずにコーヒーを飲んでいる。
「すまない。昨日はいろいろあったからね。めげたよ」
「休めばよくなるわ」
「君は?変わらない?俺たちのこと」
「変わらないわよ」
「愛してると言ったら?」とジャックが聞き、
「”私も“って返す」とメルが答える。
キスしようとすると、ジャックのケータイが鳴り、
「プリーチャーを手伝って来る」とジャックは言うが立ち上がらない。
「大丈夫?」とメルに聞かれ、ジャックはノーと答える。
「スペンサーに起きたことを考えると苦しくて」
「そうね」
「しかも、ブレイディが殺した」
「話を聞かなきゃ」
「俺に話すヤツじゃない。尋ねたが…、とにかく元凶はカルヴィンだ」
「お願いよ。今日は何もしないで。頭をスッキリさせて必要なことだけして」
「分かった。保安官には渡さない」
「そうね。また電話する」
ジャックは店に向かい、メルはリリーに電話をかける。
「ブレイディの会社から売却の話が?」
「”エメラルド製材所“ね」
「場所はどこ?」
「いかがわしい人が集まっている」
「でもブレイディと話さなきゃ」
リリーはケータイで調べ、メルに「コミッショナーズ通り」だと教える。
「助かるわ」
「メル、気をつけるのよ」
リッキーを祖母が部屋に起こしに来る。客だという。
客は、リジーと叔母のコニーだった。
「コニー、ご用件は?」
「姪があなたの孫に汚されたのを目撃したの」
「リッキー、本当?」
「昨晩、リジーと僕は…、コニーに会う前に僕は…」としどろもどろのリッキーだが、リジーがキッパリ言う。
「私たちセックスしたの」
「ウチで?」
「怒ってるのはしたこと?した場所?」とリジーが言うと、
「やめて」とコニー。
「せっくずよ。セックス、セックス、セックス」
「リジー、やめなさい。あなたはその汚れた手で姪に触らないで。この結末はどうつける?」とコニーはリッキーの祖母に詰め寄る。
「姪はまだ19歳よ」と言うコニーに、リッキーの祖母は、「リジーは18よ。2人とも大人よ」と答える。
「法の解釈なんて聞いてない。婚前の性行為は罪よ」
「では結婚を?」
「2人には自制が必要よ。気持ちは分かるけど、時代は変わったのよ。避妊は?」
リッキーが口籠ると、すかさずリジーが「コンドーム」と答える。
「恥を知りなさい」とコニー。
「リッキーは真っ直ぐな子よ。将来は海兵隊に行かせる。バーで稼いで病気の私を助けてくれている。率直に言う。孫と会えてリジーは幸運だわ」
見つめ合うリジーとリッキー。
「あなたが動かないなら私が動く。次に堕落したところを見つけたら両親の所に戻す」
「勝手なことは止めて」
「ルールに従って」
「なら家を出る」
「どうやって自活を?」
「大事な彼女と一緒に過ごしたかったんです」とリッキーがコニーに言うと、コニーは
「セックスは必要ない」と返す。
ドクは朝食を用意している。
そこへホープが来る。
「グッドモーニング、ワイフ」とドクが言えば、
「グッドモーニング、ハズバンド」とホープが返す。
「いい匂い
「ベーコンとトーストだ」
「好物よ」
「天稼ぎさ」
「もうたまってるわ。変かもしれないけど、考えがあるの。もう一度誓いを立てて小さな会をするべきかと」
「式を挙げる?」
「やっぱり必要ないわ。まだ夫婦だし」
「いや、それは今までで1番いい考えだ。いい機会だから盛大にお披露目しよう」
「盛大に?」
「皆を驚かせよう」
「詳しく聞かせて」
「そうしたいが、もう病院に行く時間だ。招待客リストをまとめてくれ」
ジャックはバーに出て、プリーチャーと朝の挨拶を交わす。
プリーチャーが裏でジャックと話をしようとすると、ジャックは時間がないんだと断るが、「今日は言わせてくれ」と言い、続ける。
「人間は皆、葛藤している。俺もそうだ。おい、聞いてるか」
ジャックが振り返る。
「カルヴィンのほかにロナガンのこともあって、イラついてるな。それにメル、シャーメイン、双子と続いた」
「そっちは気楽な人生か?」
ふふと笑い、プリーチャーは答える。
「俺は時々、元軍人向けのグループに参加してる。彼らが支えになってる」
「悩みを打ち明けたら解決するとでも?」
「でも、話すと変化が起きる。お前は独りで抱え込んでる」
「俺には責任があるからな」
「誰だったそうだ」
「俺は経営者で父親だし、町中が助けを求めて来る。最善を尽くしてるが、店を回せてないとでも?」
「責めてない。友だちとして何かできないかと」
「方法は?」
「店の共同経営とか」
「何?」
「景気の悪い時は俺も経費を負担する。儲かれば利益を分ければいい」
そこへ「すぐ来て」とのメッセージがジャックのケータイに。
シャーメインからだ。
「行かないと」
「考えてくれ」
「グループに参加するのは、考えてもいい。だが、共同経営となるとややこしくなる。事業のことで友情を壊したくない」
プリーチャーは決心を固め、ジェイミーに電話をする。
「仕事を受けることにしたよ。サンフランシスコに行くよ」
と留守電に吹き込む。
プリーチャーはコニーが店に来たので、先週の支払い分の小切手を渡す。
「私を巻き込みたくないのは分かるけど、保安官から連絡は?」
「あった。ウェスに容疑がかかってて逮捕状が出ると」
「本当?」
「でも、ヤツは行方不明らしい」
「いいことよ」
「ペイジとクリス(トファー)の安全は守られる」
「なのに…、浮かない顔ね」
「実をいうと昨日、店でウェスを見た」
「まさか」
「本当なんだ。あの男はウェスだ」
「きっと人違いよ。でも、ペイジのために手を尽くした。命の恩人よ。犠牲を払うことであなたの気持ちを伝えることはできる、愛してるんでしょ?彼女はいつか、戻って来るわ」
メルが医院に来ると、ドクがいて、
「私の代理を頼めるか」と聞く。
「往診に?」
「ユーリカで人に会う。患者の件でね。夜には戻る」
「私も用事があるんです」
「用事って?」
「言わないでおきます」
「患者って?」
「言わないでおく」
「近くにいるし、ケータイも持ってる」
「患者が来たら対応を頼む」
「ええ」
去ろうとするメルにドクは言う。
「最近は機嫌の悪さが態度に出てしまっていた。でも今後はそうならないよう努めるよ」
「分かった。ありがとう」
「ところでホープに結婚を申し込んだ。イエスと」
「本当?」
ドクは嬉しそうに笑う。
「嬉しいわ。おめでとう」
「式をしようと思っていて、君も来てくれたら、とても嬉しいんだが」
「喜んで行くわ」
シャーメインの家にジャックが駆け込んで来る。
「遅かったわね」
「急いで来た」
「シンクが詰まったの」
「緊急じゃないな」
「私にとっては緊急よ。タッカーのおやつを作ってた」
「犬のおやつを?」
「欲しければあなたのも作るわよ」
「要らないl
ジャックは流しの下を見ながら、かかって来た電話の相手に言う。
「手が離せないからかけ直す」
「まだ書類をもらってない」
不動産屋のカルロスからだ。
「昨晩は忙しくて。夜までに持って行く」
「家主は売りたがってて、他にも声をかけてる。決め兼ねてるなら…」
「決めてる。午前中には手続きすると家主に伝えてくれ」
それを聞いていたシャーメインが聞く。
「何を買うの?」
「それは…、契約するまで言わないつもりだったが…、店の上じゃ狭いから俺と君の中間地点に家を買おうかと」
「まあ、知らなかった」とシャーメインは嬉しそうに笑う。
「契約は前だは、大丈夫だろう。車からレンチを持って来る」
リッキーが家に帰ると、祖母がチョコレートケーキを作っていた。
「早いのね」
「店の経営が厳しいから」
リッキーは手伝いながら、リジーとの件を祖母に謝る。
「いいのよ。コニーは好きだけど、自分の意見を押し付けて来る」
「味方をしてくれたね」
「真実を言っただけ」
「コニーのこと、悪く思わないで。見当違いなことを言ったけど、根はいい人よ。あなたが、切り抜けられればいいの。愛してるわ」
「僕も」
「チョコを持って来て」
「ねえ、チョコは糖尿病に良くない」
「私のじゃないの。リジーにあげて。彼女にきちんと気持ちを伝えなさい」
メルの赤いBMWが雨の中を走って行く。
行き先はエメラルド製材所だ。
ブレイディにメルは言う。
「スペンサーは?」
「私有地に勝手に入るな」と大きな声で言った後、「止まるな」とメルに囁く。
「帰らないわよ」
「向こう見ずだな。カルヴィンに知られたらマズい」
「じゃあ事実を話して」
「静かに。車で1.5キロ北に行ったところで待ってろ。こっちも行く」
ジャックはまだシンクの詰まりと格闘して、シャーメインがその様子を見ながら嬉しそうな表情で、「何か飲む?」と聞く。
「いや、もうすぐ終わる」
「レモネードは?」
「大丈夫だ」
「家を買ってくれるなんて、嬉しいわ。子どもも走り回れるわ」
「庭は広いぞ」
「見てみたい」
「そうか、いつでも」
「ブランコも置ける」
「楽しそうだな」
「そうね」
「直った。詰まりもない」
「ありがとう」
「仕事に復帰したんだろ。どうだ?」
「楽しくやってる。つわりの時助けてくれてありがとう。大変だったと思う」
「3人を支えると言った」
「とても優しいのね。あなたが父親でよかった」
ハグし、キスするシャーメインに、戸惑ったジャックは、
「何してる?」
シャーメインも困惑して、
「あなたが分からない。結婚しないのに一緒に住むの?」
「一緒に住むなんて言ってない。子どものための家だ」
「私がおかしいと言いたいのね」
「まさか」
「どう考えればいいの?あなたの子を授かって、犬までもらった」
「君を元気づけようとした。それに預かってるだけ」
「あなたは無神経な人ね」
「シャーメイン、妊娠した時からはっきり言って来た。父親にはなるが、一緒には住まないと」
「メルを愛してるから?」
「彼女は関係ない」
「信じられない」
「君は…、いい人を見つけろ」
「私が欲しいのは、あなた!」
「済まない」
「一緒はイヤなのね。でも私は夫が欲しい」
「そのほうがいい」
「その人は結婚すると、双子の父になり、あなたとの関係もできる。好きにすれば?」
メルが待つ待ち合わせの場所に、ブレイディがやって来て、彼の車に乗れと言うので、メルは乗る。
コニーの雑貨店に、ホープが来て、リジーと会話する。
「クレジットカードを勝手に使ったこと、まだ謝ってなかった。ゴメンなさい」
「“盗った”ことね。でも許してあげる」
コニーとリリー、ジョー・エレンが座る席に、ホープも座る。
「ご機嫌ね。どういう風の吹き回し?」とコニーが聞くと、
「ヴァーノン(ドク)が、婚約指輪を作り直して、昨晩渡してくれtの。だから私、受け取った」
と言って、指にはめた指輪を皆に見せる。
ジョーが、ミュリエルは?と聞くが、「彼女がヴァーノンにシアトルの修理人を紹介したの」
「彼女はショックよね」とジョー。
「それは“道ならぬ恋”よ」とホープ。
「式はするの?」とリリーが聞く。
「ホープがするわけないわ」とコニーは言うが、
ホープは、「再婚式とパーティを考えてる」と言うと、
「2人とも幸せそう」とリリー。
「離婚届も破って捨てた」
「“おとぎ話の世界”ね」とコニー。
「フィッチズで式を挙げるのは?」とジョーが言い、
「カジュアルにするなら農場は?」とリリーは言い、
「農場はいいわね」とコニーはリリー案に賛成する。
だがジョーは、「動物のフンの臭いは勘弁よ」と言う。
「きれいにするわよ」とリリーは反論し、賑やかなおしゃべりが続く。
ホープは幸せそうにそれを聞いている。
ブレイディの車は、山奥まで入り、彼はメルに聞く。
「誰かに話した?」
メルは不気味さを感じながらも「ノー」と答える。
「聞いて。時間を巻き戻せるなら、ジャックは喜んで助けるわ。どんなことをしても。どんな態度を取っても、あなたのことを守る。いつもそうだった。今は助けてあげて」
「あそこだ。スペンサーの墓だ」とブレイディは言うや、車のグローブボックスを開けてると、そこには拳銃が。
一方、ジャックのバーでは、ジャックが出かけようとしており、プリーチャーが話があると止める。
話は済んだとジャックは言う。
「俺のことで話がある」
「後じゃダメか?」
「分かった」
ジャックが出て行くと入れ替わりに、ある男が入って来て、カウンターに座えい、プリーチャーにペールエールを注文する。
「聞きたいことがある。数週間前、弟が行方不明に」
「大変ですね」
「ああ。弟の妻の家を見つけたが、出た後だった。ミシェル・ローガンを知ってる?」
「いや、聞いたことがないな」
「ペイジ・ラシターは?」
「パンの移動販売を」
「ペイジはミシェルの偽名だ。甥を誘拐した。弟はここに来たが以降、音信不通に」
「知らなかった」
「知らない?」
「彼女の居場所です」
「俺は刑事でね。マイアミ市警だ。ここの人はマイアミも人間より人懐こい。いろいろ話してくれる。芝居はやめろ。彼女と親しいんだろ?彼女に伝えてくれ。俺が捜しに来たと。いずれにせよ、彼女には代償を払ってもらう。伝えろよ」
と言い放ち、代金を置いて出て行く。
メルは、ジャックの訪問を受ける。
「見せたいものがある」
ジャックがメルの家に入ると、
「今日ブレイディに会った」
「医院で?」
「いえ、製材所に押しかけた」
「どこだって?」
「これを見て」
と言って、メルはジャックにケータイの動画を見せる。
「これが俺の生きてる証拠になるだろう。マキシーンとバスに乗る。恩に着る、ブレイディ。あばよ」
「スペンサーは生きているのか?」
「ええ。カルヴィンにバレないよう逃したの」
「何?」
「ブレイディが一家をバス停まで送り、マイクの連絡先も渡した」
「ブレイディ聞いたのか?」
「彼は自分なりにカルヴィンと縁を切ろうとしてる」
「なぜ君はブレイディ所へ?」
「真実が分かればあなたも楽になるでしょ?」
「1人で行くもんじゃない」
「分かってる。でも何とかしたかったし、ブレイディとも話せた」
「2度と危険なマネはしないでくれ」
「どうかしら。愛のためなら危険も冒す」
キスえお交わし、お互いの服を脱がし、抱き合う2人。
バーでは、「腹が下ったよ。ルバーブだな」と髭を蓄えた太った男がプリーチャーに言うが彼のの反応がないので、
「プリーチャー、上の空だな」と言う。
「まさか」
「なあ、くよくよするな。たいしたことじゃない」
「どうも」
そこに、ジェイミーがやって来る。
「お別れを言いに」
「戻るのか」
「明朝ね。でもまた向こうで会える」
「仕事を紹介してくれて感謝してる」
「私こそ鼻が高いわ。俺はまだジャックに話せてないんだ。代わりが見つかったらすぐそっちに向かう」
「分かった」
「早く来てね。未来が待ってるわ」
メルの家ではメルとジャックがベッドの上で見つめ合っている。
「どんな気分?」
「幸せで守られてる気分」
「本望だ」
「もう一回?」
「朝まで頑張れる」
「お腹減った」
「食べてない?」
「豆しかないの」
「店でステーキでも焼くか」
「いいわね。欲しいものは?」
「君だ」
リッキーがコニーの家の前まで来て、リジーの部屋の窓に、どんぐり(?)をぶつけてリジーを呼ぶ。
「リッキー、何してるの?」
「返事がなかった」
リジーが降りて来て、玄関先に出て来る。
「電話がなくて。どうしたの?」
「会いたくて」
「本当?」
「ああ。ゴメン。僕のせいだ」
「違う」
「もう会えないなんて」
「コニーの言うことを、いちいち聞いてられない。思いついた」
「何?」
リジーはリッキーにキスして、
「“別れは切ない”」
「ルネサンスのイベントにでも行く?」
「違う。『ロミオとジュリエット』。悲運の2人が秘密の愛を育むの。燃え盛る愛よ」
「最後に2人とも死ぬ」
「深く考え過ぎよ」
「そうだね。考えないよ」
再びキスする2人。
バーにいるジャックにマイクから電話が入る。
「連絡があった。スペンサーの家族は俺が面倒を見る。製材所が隠れ蓑だった。カルヴィンは木に現金を詰めて輸出し、見返りに50万ドル相当の麻薬を受け取ってた。それを飼料トラックに積んで運んだと」
「だから農場を探ってたのか」
「ジャック、…ブレイディにも逮捕状が」
物音がして、ジャックはメルが来たと思い、
「折り返す」とマイクにいう。
「また」
「気をつけろ」
プリーチャーにサリーという女性が会いに来る。
ミシェル、つまりペイジの友人だという。
「彼女は無事?」
「ええ、でもヴィンスに連絡先を知られた。それで彼から連絡が来た」
と突然、クリスがプリーチャーに駆け寄って来た。
「寂しかった」とプリーチャー。
「一緒にいたい」とクリス。
「ああ。そうしよう」
ホープが帰宅すると、ちょうどそこへドクも車で帰って来た。
「サプライズの夕食だったのよ。なのに庭を見せると言ってジョー・エレンに言われてね」と、ホープがドクに言う。
「たとえばね、すごい“あずまや”があった。その他にもモザイク柄の噴水には金の蛇口が付いてる。…ねえ、どうしたの?」
「今日ユーリカで医者に会って来た」
「患者のために?」
「いや、私のことでだ」
「健康診断?」
「ホープ」
「怖いわね」
と、そこでドアが突然開き、「サプライズ!」と大勢の声が響く。
「婚約おめでとう!」とコニーがだけぶが、町の大勢の人々が集まっている。
ホープもドクも知らないサプライズだった。
メルがバーにやって来て、ジャックを呼ぶが、返事がない。
メルがさらに入って行くと、ジャックが血を流して倒れていた。
メルはジャックの名を必死に呼ぶ。
目を開けたが生息吐息だ。
弾丸を受けた腹部の穴からは血が噴き出ている。
メルは布切れで傷を押さえ、「ジャック、しっかりして」と声をかけ、ケータイを手に持って耳に当てる。
VODは20社以上ありますが、その中から主なVOD6社を紹介します。U-NEXT、Netflix、Hulu、dTV、Amazonプライムビデオ、FODです。
『ヴァージンリバー』シーズン3 あらすじ
完全に回復したが、一部記憶喪失のジャックは、リッキーの卒業を祝うためにパーティーを開く。
ホープは留守で、ハリケーンのせいで帰れない。
ジャックの妹のブリーが訪れ、シャーメインは婚約済みの新しいボーイフレンドを紹介する。
リッキーは、パーティーを開いてくれたジャックに、自分を許してくれたことを感謝する。
メルとジャックは、もうすぐやってくる彼女の誕生日を楽しみにしながら、二人の関係を楽しんでいる。
過去の記憶が次々と蘇るメル。
彼女は自分の誕生日を祝う気にならないが、ジャックは彼女のために特別な日を作ろうと努力する。
リッキーとリジーはまだ秘密の関係にあり、リッキーはコニーを疑っている。
ドクはホープから何か情報を得ようとする。
ミュリエルは彼のために非常に大きなプレゼントを用意する。
ジャックの家は火事で全焼したため、メルの小屋でしばらく過ごすことになる。
彼女はジャックに一緒に住まないかと誘うが、ジャックは承諾しない。
ドクはホープのことがだんだん心配になってくる。
ドクは、健康上の理由から密かに後任を探し、面接を行うようになる。
ジャックの妹ブリーは予定より長く滞在することになり、ブレイディーに惹かれて一夜をともにする。
リッキーとリジーの関係は秘密だが、リジーが特に願うプライバシーの保持は難しくなりつつある。
リリーがメルを訪ねて来て、泣きながら「私、ガンなの」と打ち明ける。
メルはリリーに孤立しないことが大事だと伝えるが、リリーは「重荷はイヤ」と答える。
ブレイディと仲を深めるブリーは、ジャックにある事を打ち明ける。
リジーの前に、元カレのパーカーが突然現れる。
「お泊まり会」に誘われて喜ぶペイジの息子クリストファーに、プリーチャーは外泊の許しを与えず、クリストファーからは「あんたなんか大嫌いだ」と言われてしまう。
ジャックはシャーメインの彼氏から、シャーメインはドク(マリンズ)の医院ではなく、ユーリカ病院で出産させると聞く。
リジーは元カレのパーカーから、「LAでクラブを開くので開店を手伝ってくれ」と誘われ、「考えさせて」と答える。
リッキーは海兵隊員のリクルート事務所前に来たところでリジーからの電話が鳴るが、ちょうど海兵隊員から声を掛けられ、その電話に出ない。
プリーチャーは、「お泊り」を認めなかった代わりに、クリストファーのためにテントを張ってキャンプをし、マシュマロを焼く。
メルの家の前庭でメルとキスしていたジャックの携帯が鳴り、電話を切ったジャックがメルに、「ジミーが拘束された」と告げる。
ジャックが目を覚ますと、ベッドの隣にいるはずのメルがいない。
ジャックが庭に出ると、メルは車の中で寝ていた。
ジャックのいびきがひどくて眠れずに車に移動したのだった。
離れたところにいるホープと連絡がつかずに心配していたドクは、やっとホープと連絡が取れホッとする。
ジャックはジミーを拘束した友人の刑事に面会を頼むが規則違反だと断られる。
メルは姉からの電話を受け、離婚が決まったことを告げられる。
メルはクリニックの留守番電話を再生して、面接のキャンセルを知り、ドクが自分に相談なく増員しようとしていると思う。
リジーを問い詰めるコニーに、リリーは、「手綱を締めすぎると反発するわよ」と忠告されるが、その直後、リジーがリッキーとキスしているのを目撃してしまう。
妹から「メルを手放しちゃだめ」と、アドバイスされたジャックは、メルへのサプライズを用意する。
クリニックには、リリーの娘のタラがドクを訪ね、母親の体調がすぐれないので心配だと相談する。
クリストファーはプリーチャーに胸の異常を伝え、プリーチャーはクリストファーをクリニックに連れて来る。
クリストファーは「遅発性呼吸障害」とドクからの診断を受け、気づかなかったどころか仮病かと疑ったプリーチャーは、子育てに自身をなくす。
ジミーが拘束されている保安官事務所を訪ねたジャックは、手錠され廊下で待たされているジミーを見つけるが、脅されカッとなる。
クリストファーの治療が終わってメルはドクに「スタッフを増やすなら私にも話を」と言うが、ドクは答える。
「増やす気はない。君の代わりも求めていない」
リジーはスーツケースを引いてリッキーの家にやって来る。
メルにサプライズの風呂を用意したジャックの携帯に、友人の刑事から電話がかかり、ジミーのアリバイが証明されて釈放になると告げられる。
メルが風呂から出て庭に移動するとジャックはシャンペンを用意し、庭にはローソクの灯りがたくさん灯されていた。
ジャックの妹の案だという。
灯籠が浮き、何ともロマンチックな庭から続く池に2人はボートで漕ぎ出し、キスを交わす。
ブリーは、バーでブレイディとダンスをしていて良いムードに。
ところがカウンターに座っていた若い女性から声を掛けられる。
「ドナの助手だったステラよ、覚えてる?あなたと話したかった」
ブリーはその話を遮るように「行かなくちゃ」と言って店を出ると、ブレイディを置いて車で走り去ってしまう。
ベッドでメルは隣のジャックに言う。
「考えてた。今朝お互い正直にと話したよね。どう思う?子どもを産んだら…」
「いつから子どもが欲しいと?」
「事故後、妊娠できないと思ったの。ママにはなれないと言い聞かせた」
躊躇いが感じられるジャックに、メルは言わなければ良かったと後悔する。
クリストファーに、からかわれた時の対処法を教えるプリーチャー。
「ヤツの目を見て言うんだ。”何とでも言え!”で、立ち去る」
やって来たコニーに、プリーチャーはサポートを感謝すると、「よく言うでしょ?”子育ては村中で”って」
クリニックでメルがコーヒーを飲んでいると、ドクがやって来る。
やっと、ドクは医師と面接することをメルに告げ、彼女に同席を求める。
リジーが働くキッチンカーの場所に、リッキーの祖母がやって来る。
「コニーの家にいつ戻るつもり?」
「全然話ししてなくて」
「でも仲直りしないと」
「でも家族は大切よ」
「2人が家族みたい。変かな?」
「まさか、嬉しいわ」
リッキーの祖母は、リジーにコニーの家に戻って欲しいのだが、会話が噛み合わない。
ブリーのスマホにブレディから10分後に会いたいというメーセージが入る。その直後、病院から電話が。
「シェリダンさん? 追加ザナックスを処方しました。次回は診察が必要です」
ジャックにシャーメインが会いに来た。
「トッドが豪華な病院を予約してくれたの。専用のシェフがいて、カメラマンやメイクもいる」
「双子が安全なら他は気にならないよ」
「彼は私と双子を大切にしてる」
価値観の違いによって会話が噛み合わない。
「トッドと確執があるわよね」
「ないさ」
「なら良かった。彼がランチに誘いたいと」
今日だと言う。店でパーティがあり、明日はイベントが控えているから無理だと答えるジャックに、「一杯だけでも」と食い下がるシャーメイン。
「今日はダメだ」と断るジャックに、シャーメインは「誘いを断ればトッドは気を悪くする」
「構わない」
「本当?長い目で見たら面倒だよ。でも、あなた次第」
「電話させろよ」
シャーメインが乗って来た車が新車だと気づいたジャックに、自慢気にシャーメインは言う。
「素敵でしょ?プレゼントなの」
ブリーは、ブレイディに先日の非礼を詫びる。
ブレイディがスーツとネクタイ姿だったことが意外と思いブリーが訊ねると、会社で融資を受けるために銀行の担当者と会っていたという。
担保がないため融資は難しく、連帯保証人を探すよう言われたという。
メルは、ドクが女性医師の面接をするのに同席した。
名門の大学病院での地位を捨てて来ようとする理由をドクが訊くと、
「流れ作業にウンザリした」し、「全体観的医療を独立した医療で目指したい」と答え、ドクは好感を持ったようだ。
リッキーの祖母のリディが、ジャックの店で働くリッキーの許へ軽食を差し入れに来て、リジーがコニーと仲直りするよう促す。
「大人の交際をするなら、争いも大人として解決してちょうだい」
トッドが招いた食事会にジャックは来ていた。
最初から火花が散るような会話の後、トッドは要件を切り出す。
「皆にとって最善の策は、法的に双子を養子にすることだ。子どもの行き来も父親間の対立もない。僕が養う。学費だけでも相当な額だ。考えろよ、ウィン、ウインだ」
これを聞いてジャックの心には怒りがこみ上げて来た。
「双子の心の傷は考えないのか。捨てられたと感じる」
「伏せておく」
「俺の子どもとの関係をウソから始めるんだな」
ジャックは席を立つと、
「俺が双子をカネで手放すと一瞬でも思うな。売り物じゃない!」
ジャックは食事代をテーブルの上に置いて、去った。
メルがドクに面接相手の感想を聞くと、ドクは「気に入った。町に欠かせない医師になる」と答える。
「良かった、同感よ。徐々に慣れてもらいましょう」とメルが言うと、ドクは、「必要ない」と答えた。
「私は、もうできない。質問するな」と続けた。
「どうしたの?」
「引退する」
リジーのキッチンカーにジャックの店用のパイを取りに来たリッキー。
リッキーはリジーに、コニーと仲直りするように勧めると、リジーからは予想外の答えが返って来た。
「2人で部屋を借りて住もう。暖炉があるといいな」というのだ。
リッキーがムリだと答えると、「おカネならパパが出すわ。遊べない分、貯金もあるし」
「同棲は大きな一歩だ」
と躊躇するリッキーに対し、
「忘れて」
と気分を害するリジー。
ジャックの店にメルが来て、ジャックに言う。
「先生が引退する」
「理由は?」
「さあ。引退なんて思いもしなかった。でも引退が問題じゃない。親密だと思っていたから、落ち込んでる」
「彼は自分の話をしない人だろ。君への感情とは別問題だ」
メルは今夜ブリーと飲む約束をしているとジャックに伝えると、ジャックは2人が仲良しなのを喜ぶ。
ドクはリリーの娘から頼まれたことが気になってリリー宅を訪れた。
ドクがリリーの体調を心配すると、てっきりメルがドクに言ってしまったと思いこんだリリーは、自分がガンであることを告白してしまう。
「緩和ケアにする。苦しむ姿を見せたくない」
「忘れないでくれ。そばにいる。ホープも」
リリーはホープに言わないで欲しいと言う。親友だから支えたいはずというドクに、「私の口から話すべきよ」
「いや、早く知りたいはずだ」
リリーは、泣きながら、「心の準備ができていない」と答える。
夕方、事を終えたブレイディとビリー。
「行くね。店でメルと会うことになってるから」
ブレイディが部屋を出ると、ビリーはあわててバッグの中から薬を出し、口に入れる。
ドクはリリーに、「愛する人に時を与えるべきだ。彼らが君の病を理解して感情を表し、別れを言うためにね。後悔しないように」
そこへリリーの娘のタラが帰って来て、2人に違和感を感じて言う。
「何事?ママ、何なの?」
リリーは、がんであることを打ち明ける。
「化学療法はいつから?」
「末期で治療法はないの」
「何かあるはずよ。あるよね?先生」
「膵臓がんは進行が早い。手術はムリだ」
「残り時間をあなたたちと過ごしたい」
驚き悲しむタラが、「何でもするから」と母親のリリーに言うと、リリーは、「あなたの生活は変えたくない」
「私はいいの。ママが心配なの。大好きなんだよ」
「本当にごめん」
車で帰宅したドクの携帯電話が鳴る。
ジュリアから面接の感触を聞かれたドクは、「非常に良かった」と答える。
もう少し考える時間が欲しいと言うドクに、
ジュリアは「明日までに決断しないと、話は流れる」と答える。
そんなに急に決断できないと言うドクに、ジュリアは、「悪いけど、迅速に決めないと。よろしく」
ジャックの店ではパーティが開かれている。
酒飲みが多く、追加注文もあり、利益がより見込める。
ジャックがプリーチャーに、「臨時収入は(どう使う)?」
「あの子をテーマパークにでもと」
「いいな。ペイジはいつ戻る?」とジャックが聞いた時ちょうどドクが入店して2人の会話が途切れる。
ジャックはドクの相手をし、引退のことを聞く。
ドクは「誰に聞いた?」と険しい表情に。メルから聞いたと知ると、「言っておくが、その件は彼女に内密に話したことだ」
「彼女を責めるなよ。傷ついてるんだから」
「関係ない。業務上の秘匿だ。院外の者には誰だろうと口外しちゃいけない」
「冷静に頼むよ。本意でなくても彼女を傷つけた」
「おい、説教されに来たんじゃない。料理はキャンセルと伝えろよ」
そこへメルが入って来て、ドクにどうしたの?と聞くが、ドクは、「彼氏に聞け」
ジャックはメルに、「君が傷ついたことを話した」
「黙っていてって言ったのに」
「愛する人を守りたくて。謝るよ」
メルは思わず微笑んで、
「これで怒れなくなった。もう何も言わないで」
「この先も君が傷つけられたら黙っていない」
「何回も言ったわよね。自分で闘えるとね」
「私が急いでいて幸運ね。約束の時間なの」
メルはブリーに会いに来たのだ。
メル画2階のブリーの部屋に行きノックするが返答がない。
しばらくして、「ごめん。寝落ちしてた」と言ってブリーが寝室から出て来た。
メルを見て笑うブリー。
「その髪型を見たのはマンディ以来」
「マンディ?」
「兄貴の元妻。知らなかった?」
「うん」
「ごめん。バレたら兄貴に殺される」
「安心して、言わないから。大丈夫?やめておく?顔色が悪いわよ」
バッグを忘れてベッドのほうに戻ったブリーは、「行こう」と言ったかと思うと突然、ベッド脇に倒れてしまった。
倒れたブリーの血圧を測り、血圧が低いことを心配するメル。
ジャックがバッグから床に転げた「アルプラゾラム」という薬を見つける。
ジャックがメルに何の薬か訊くと、「抗不安薬」で、不安障害に処方される薬だという。
ジャックは「頭痛の薬も飲まないのに」と不思議がり、自分が心配をかけたせいではないかと心配する。
ドアを激しく叩いてドクの家に入って来たのは、ジョー・エレンとリジーだった。
木こりゲーム大会の委員長のキャロルが頭痛で大会の運営ができず、ドクを頼って来たのだ。
1人じゃムリと言うドクに、ジョー・エレンは、「大丈夫、助手がいる」と、隣のリジーを指す。
「司会はミュリエル、ジャックが調理、コニーが出店を」
リジーが「お祭り?」と聞くと、ドクが「木こりたちのオリンピックだ」と答える。
毎年シェルター山で開催され、開拓者への敬意を示すのだという。
祭りだし極寒なので、みな木こりの服装で参加することになっている。
ジョー・エレンは、予定表、手伝いのシフト表、参加者リスト、進行表、安全手順などをドクに渡す。
ドクに「君はなぜ巻き込まれた?」と訊ねられたリジーは、「B&Bにタダで泊まったから、借りに感じて」
「チェーンソーや斧を使う大会は初めてだから先が読めない」とメルが。斧投げの的を準備するジャックに言う。
「参加予定のツリーレースって?」
「正確には木の頂レース」
「意味不明よ」
「見れば分かる」
「今朝ブリーに会った?」
「いや、来ると連絡はあったよ。変だとは感じていた。聞き出せばよかった」
「感情を話すには時間が必要なこともある。自責は無意味よ」
いよいよ「ヴァージンリバー木こりゲーム大会」が始まりだ。
ロープを使用しての丸太上り、チェーンソーでの丸太切り、水に浮かべた丸太に2人が乗って滞在時間を競う丸太乗りなどが催されている。
プリーチャーとクリストファーもやって来ている。
チェーンソーでの丸太切りに興味を抱いたクリストファーに、木こりの男が自分は7歳のときのクリスマスプレゼントがチェーンソーだったと語る。
プリーチャーがまだムリだと言うと、「僕は10歳になる」と、クリストファーは不満そうだ。
「昔は安全性を気にしなかった」とプリーチャーは言い、「乗馬ができるか見に行かないか」と続ける。
ここにいると答えるクリストファーに、「そうか、直ぐ戻るよ、動くなよ。人とも話すなよ」
馬具の数をチェックするドク。
14組あるはずが13しかないというドクだが、やって来たリジーが数えると14あった。
「私が見てないうちに誰かが返したんだろ」と苦し紛れの言い訳をするドク。
他に何か手伝うことはとあるかと訊ねるリジーに、「斧投げで手伝いを探していた」とドクは答える。
「それってどこ?」
「斧を投げてる人がいるところだ」
「こんな人生イヤ」
リリーと娘のタラもやって来た。
「ジョー・エレンの様子が変ね」とリリーが、離れたところに数人が集まっている中にジョー・エレンを見つけて言った。
タラが申し訳なさそうに、コニーに会った時、病気だと言ってしまったと泣きながら打ち明ける。
「質問されてウソをつけなくて。ごめんね。がんで頭がいっぱいで」
「タラ、私はあなたの重荷になるのがイヤで黙ってたの」
「私はいいの」
「必要以上に苦しんでる」
シャーメインからジャックのケーターに電話が。
トッドがアレルギーで眠れないので犬のタッカーを手放すという。
「早く誰かを見つけないと…」とお願いはせずにジャックに引き取らせようという魂胆が見え見えだ。
お人好しのジャックは「なら、オレが引き取るよ」
「本当? すごく助かる。なるべく早く連れてくわね」
友人の刑事がジャックに寄って来て、ブレイディのアリバイが崩れたことを伝える。
ブレイディのアリバイを証言したビーの証言が変わり、2時間の空白ができたという。
「彼が第一容疑者だ」
信じられず、戸惑うジャックに刑事は、「誰も排除しない。現実をたどる」と続けた。
ジャックの妹のブリーもやって来るが、木こりのかっこうではない。
「ドレスコードを見逃したわ」とブリーがメルに冗談を言うと、「それならテントで付けヒゲを売ってるわよ」と冗談を返す。
「昨晩はごめん」とブリーが言うと、メルは「私がいる時で良かった」と答える。
「食あたりだと思う」と誤魔化そうとするブリーに、メルは薬を見たことを言う。
「バッグを?」
「私じゃない。ジャックが」とメルは答え、服用量を聞くと、1錠では足りないとブリーは答えた。
「ワインを飲んで?」
「早く効くようにね。でも間違いだった。もうしない」
「抗不安薬と酒はどちらも中枢神経の機能を妨げる。命に関わる場合も」
「ちょっと最悪の日だったの」
「銃撃事件の後は私も最悪だった」というメルに、ブリーは、薬の服用はその前からだったと打ち明ける。
「サクラメントで弁護士と付き合った。ひどい別れ方だった。しれで仕事を辞めた」
同僚ではなく、裁判所で顔を合わせるのがイヤだったという。
「ジャックに話すべきよ。心配してる」
「どうかな。昔ほど親密じゃない」
「でも今は近くにいるし、関係を変えられる」
斧投げ会場にいるリジーの許へリッキーがやって来た。
「まだ怒ってる?」とリッキーが聞くと、「同棲したくないなら何か考える」
「まだ早いと思う。付き合いが浅い。お互いを知る段階だ」
「寝てる仲よ」
「でも生涯一緒とは限らない」
「同棲もよ」
海兵隊員が目に入ったリッキーは、「また後で話そう」と去ろうとするリッキーに「話すことなんてない」とキッパリ。
ジャックとメルは、「ジャックとジル」という2人挽きの大鋸(のこぎり)で男女のペアが丸太を切る速さを競うゲームに参加。
※「ジャックとジル」とは、太郎と花子のような男の子と女の子のペアを表す言葉。
鋸を挽く最中に、会話はジャックの妹のことに。
メルはブリーから聞いたことをジャックに話す。
ところがジャックは、「男でつまずくような柄じゃない」と言う。
「愛してたんだと思う」
「それは違う。あいつは、あくまでキャリアを貫く」
「年齢とともに優先順位は変わる」
「何の話だ?」
「愛は人それぞれ。深刻な関係に及び腰になる人もいる」
「当てつけか」
「まさか」
「親密にもなれる。俺たちを見ろ」
「ええ、でも。ほら…」
「何だ?」
「人生を変える関係に、あなたはビビってる」
ここで競技終了!
モーリーとバート兄妹が切り終わって勝利。
そこへプリーチャーが来て、「クリストファーを見たか?」
皆でクリストファーを探すことに。
ドクが参加予定のトラップ射撃にドクが来ないのでジョー・エレンが呼びに来た。
「今年は出場しないと伝えた」とドクは言うが、ジョー・エレンはリストに名前があるという。
消しておいてくれというドクに、ジョー・エレンは参加者は3人だけでドクが抜けると競争にならないといって突然、泣き始める。
射撃のことではなく、リリーががんなんて信じられないと。
「何もできず、ただ別れを待つしかないの?」
そんなジョー・エレンにドクは言う。
「最後に何が起きるかは誰にも分からない。我々はただ人生を全うするだけだ」
「すべて消えるのに?」
「こう考えよう。最後だけを考えて過ごせばショーを見逃す」
ドクのところにミュリエルが来て、自分の司会ぶりが大好評だと自慢した後、「今年も優勝ね。楽しみ」とドクに言う。
「優勝できるとは思えんが」と答えるドクに、「謙遜し過ぎよ。あなたは無敵だわ。粉骨砕身の覚悟でね。砕くのは粘土盤よ」
「粉砕する」とドクは言ったが、ミュリエルが去ると、「盤で済ませたいね」
そこへ今度は医師のアレックスが来る。
「病気の影響はまだみたいですね」
「手違いで仕方なくだ。何かに当たる確率はよくて10%だろう」
「抗VEGF治療の件は?」
と、そこへ銃を持ってドクを呼びに来る男がいて、ドクとアレックスの話は中断される。
クリストファーを探すジャックは妹と出くわす。
「昨晩はごめん。悩んでて」と謝る妹に、「助けたい」とジャックは伝える。
「ありがとう。でも平気」
「なぜ遠ざける?」
「まさか」
「なら話せよ」
躊躇(ためら)う妹に、「どんな話でも動じない」
「私的なことなの…。事件の前、いつ電話くれた?」
「連絡が途絶えたから邪険に?」
「違う。でも兄さんはイラクから帰国してから行方不明なの。家族のみんなにとって」
「愛してる」
「私もよ。でも時々、他人に感じる」
そこへクリストファーを探すメルが来て、去る。
ジャックとメルのおかしな雰囲気に気づいたブリーが訊ねる。
「メルと何かあった?」
「尻込みしてると言われた。唐突で意味不明だ」
「私のせいかも」
射撃会場では3人が競っていた。
ドクの射撃をミュリエルやアレックスが見守る。
海兵隊の軍曹がリッキーを見つけて声を掛けて来て、トレーニングの進み具合を聞く。
それをリジーは遠くから目撃する。
やっとクリストファーが見つかり、プリーチャーは言う。
「言いつけは守れ。俺がお前を預かっている。何かあったら自分を許せない」
「なぜ?」
「守ると約束したんだ。お前の協力が必要だ」
「ごめん」
次はハーネスを付けて木の高所から別の木に移る速さを競うゲームだ。
ここでもジャックとメルの会話には棘(とげ)がある。
「関係を望んだのは俺だ。君は迷った」
「でも前進した。今はあなたが迷ってる」
「子どもの件か。時間をくれと言った。まだ数日だ」
「まだ数日だけど、その話題を避けてる」
「悪いが答えが出ない」
「答えは求めていない。話し合いたいの」
「選択肢を探るため答えを急ぐのか」
「何の話?」
「今なら別の計画に移れる」
「悪いけど別の計画はない」
こんな話をしながら渡るのは危険だと思うのは正しい。
メルが踏み外して落ちそうになるが、ハーネスに救われる。
手を差し出すジャックの手をメルは引っ張り、ジャックも落ちそうになる。
メルは笑顔になり、レースは終了。
「また負けた」とメル。
ベンチに座るブリーの許へブレイディがやって来る。
「よう。何してる?雲隠れか」
「兄とモメて、1人になりたくて」
「俺も邪魔かな」
「まさか」
「平気か?」
「ただの兄妹喧嘩よ」
「マイクと話してたな」
「嫉妬?」
「違うよ」
「冗談よ」
「バイクで出かけるけど君もどう?」
「どこへ?」
「グレース・バレーに、いいイタリア料理店がある」
「2時間かかるよ」
「他に行きたい場所が?」
「思い浮かばない」
ジャックのところへシャーメインがやって来て、「勝った?」
「今年は負け。トッドは?」
「仲間とビールを飲んでる。タッカーをよろしくね」
「なあ」とジャックは何か言いたそうだが、それを無視してシャーメインは続ける。
「朝食の前に、お腹をなでてあげて。散歩は1日3回。昼寝は日なたでするのが好き。それで…、餌とおもちゃよ。毛布も」
悲しそうな顔をするシャーメインを見て、ジャックは言う。
「手放さなくても」
「ダメなの。手放さなきゃ。アレルギーはウソ。犬が好きじゃない。私が変えられると思ったけど、ムリだった」
「で、君に諦めさせた?」
「強制じゃない。犠牲を払うの」
「俺に言わせれば最低だ」
「意見は聞いてない。引き取ってくれるの?」
「ああ」
「よかった。助かる」
シャーメインが去ると入れ替わりにメルがやって来て、ジャックが「犬は?」と聞く。
「どうして聞くの?」
「トッドが手放せだと」
「何? 彼女、傷ついただろうね」
「俺の意見では彼を手放すべきだ」
「意見を言う権利はある?」
メルは、ジャックにレース中にあんな話になったことを詫び、ジャックも「俺もだ」と謝る。
「マンディの件だよな」
「そうなの。ブリーと約束してたから。いつかあなたから聞けると」
「そう話すこともない。高校を出てすぐ結婚。俺は海兵隊へ。イラク出兵の時、離婚。3カ月も続かなかった」
「なぜ黙ってたの?」
「正直、考えてなかった。先に言っとけばな」
「そうね。他にも何かあるのかと」
「たとえば?」
「分からないけど、将来を見据えたくて」
「分かる。でも、子どもの件は時間をかけろと」
「だよね。ごめん。ただ私…待つのがつらくて」
「どんな形でも君の幸せを望む」
「幸せよ。一緒にいたい。それに家族が欲しい」
「双子は?結婚したら、君は継母だ」
「だよね。精一杯2人を愛する。絶対よ。だけどね、気持ちは抑えられない。自分の子が欲しい。考えてみて」
「ああ分かるよ。考えてみる」
愛してると言い合ってハグしているところにメルの電話が鳴る。
リリーの家で急患だとの連絡だ。
ドクとメルとジャックは急ぎリリーの家に車で駆けつけた。
ソファには娘のタラが寝かされていて、リリーが「タラの発作が起きた」と言う。
「てんかんか」とドクはつぶやく。
最後の発作は5年前で、今回は90秒くらいの発作だったという。
頭を打ったかもしれないとリリーが言うので、メルはタラの頭を手で触ってチェック。
ドクがメルに言う。
「大半は強直発作だが、欠神発作もあった。幼児期の高熱が発端だろう。幸い薬で抑えられている」
「ストレス?」
「たぶん」
「母親のがんがこたえる中、妹の世話も」
「至急、支援計画が必要だ。さもないと発作が頻発する」
ジャックがコーヒーを淹れようとダイニングにリリーを誘ったのだが、リリーは自分のせいにタラの発作が起きたと自分を責める。
「違うよ、リリー。自分を責めちゃいけないよ」
赤ん坊の泣き声がして、ジャックがリリーを静止してベビーベットに行き、赤ん坊を抱き上げた。
翌朝7時前、まだベッドに横たわるジャックだが、ベッド脇ではメルはすでに起きて何やら忙しくしている。
「LAに発つのは明日だろ?」
「うん、今日は忙しいから」
「同行しない理由を説明させてくれ」
「いいのよ、店があるんだから」
「違うんだ。2人の最初の旅行は特別なものにしたいいんだ」
プリーチャーの家に来たコニーのクリストファーは?との問いに彼は、ジャックが引き取ったタッカーと遊んでいると答える。
「それであなたが世話を?聖人だわ」
クリストファーがタッカーに一目惚れをして、世話を申し出たのだそうだ。
「お人好しね。でも正解よ。仲間ができた」
プリーチャーのケータイが鳴り、キャンプの劇が中止になったとのメッセージが届いた。
「がっかりするだろうな」と言うプリーチャーに、コニーは「そうはさせない。電話してかけ合う」
「その必要はない」
「平気よ」
「かなり世話になっている。甘えすぎてる気がする」
「助けは不要ってこと?1人で全部はムリよ」
「いや、違うんだ。いずれあなたを怒らせる気がして」
「なるほど」
「ホッとしたろ?」
「そうね、ええ、不要って最高」とコリーは言って出て行く。
水源がジャックの土地の真下にあるという。
「当局に届け出?」
「申請しても許可が下りるとは限らない」
「それでいつ着工できる?」
「8〜12カ月後。許可が下りれば。環境保護関連は遅れの原因でね」
「家が建ったのは1954年。既得権条項を適用できるはずだ」
「今、新築は許可が要る」
「確約もなく1年待つか、損して売れと?」
「他に策がなくてな」
「部屋がなければ不利な立場に追い込まれる」とジャック。
「メルの家は?」と一緒に話を聞いていたマークが言う。
「最初はいいが、部分的親権には子ども部屋が必要だ」とジャック。
「物件を探せ」とマーク。
「カネがない」
「売却か」
「建築許可が危うい土地を誰が買うんだよ。八方塞がりだよ。前進するたびに障害が現れる」
「お前らしくないぞ」
「そう感じる」
「昔のお前の口癖は?諦めたらそこで終わり」
「だよな。もう昔の自分じゃない」
ソファで抱き合うブレイディとブリー。
「昨晩はありがとう」とブレイディが言うと、「帰れってことね」
「実は一緒にいたいと思ってた」
ブレイディのケータイが振動し、電話に出る。
「必要なのか。そうか」と言ってケータイを切り、「仕事だ」と言う。
「気にしないで。夜会えるよね」
「それより、いい考えがある。すぐ片付く。朝食を買って戻るよ」
リジーがジャックの店に来て、テーブルの上でラップトップを開く。
リッキーが注文を取りに来ると、リジーは「休みかと思った」と。
「なぜ?」
「1つくらい、ツイてたらって」
「災難が?」
「B&Bの回線がダウン。店は超遅い」とリジーは言ってラップトップのカバーを閉じた。
「僕とは話さない気?」
「どうかな。あなただけが欲しいものを手にしてる」
「同棲は大きな一歩だ。交際とは違う」とリッキーは言い、リジーの手を握ると「愛してる。君といたい」
「分かった。大きな一歩ね。将来、話すかな」
「もちろん。ポテトは?」
「お願い。塩多め」
「了解」
席を立ったリッキーに、リジーが聞く。
「この前、話してた海兵隊の人は?」
「入隊の勧誘さ」
「知り合いに見えたよ」
「違うって」
「じゃあ初対面?」
そこへ1人の男が入って来る。
リッキーが「グレンジャー・スミスだ」とリジーにささやく。
知らないリジーに、カントリー歌手、しかも超有名だと説明する。
カウンタの中に戻ったリッキーはジャックから、リジーが男をチェックしていると言われる。
リッキーは有名なカントリー歌手だと教えたからと言うが、ジャックの答えは「違うな」で、リッキーも「分かってる」
プリーチャーがキャンプに行くので1時間外すとジャックに言う。
「じゃあ、帰りにパイを取って来てくれ」と頼む。
キャンプの近くだからだが、今朝のコニーとのやり取りで気まずくなったプリーチャーは顔を合わせたくない。
「今朝コニーと意見の相違があってね」
「じゃ俺が行くよ」
「いや、行くよ。どうせ報いを受けるなら今にする」
メルはタラを支援するための予定表を作るとドクに言う。
「具体的には?」
「計画を立て、みんなで用事を分担するんです。たとえば買い物、クロエの世話、食事の調達」
「名案だな。ところでハンセン先生は断るよ」
「気に入ったと思ってた」
「合わないと思う」
「また面接を?」
「いや、当面の間、求人は保留にする」
なぜ引退の件をジャックに話したかをメルはドクに説明しようとする。
「謝りたいんです。信頼を裏切ったと思わせたし、不意打ちだと感じて彼に話した。感情を収めたくて。口止めしたけど、ジャックは私をかばおうとした」
「彼には怒っていない。善意だと分かってる」
「私に?」
「怒ってるとは言わない。私は…不満なんだ。30年間、医院を築くために1人で仕事をしてきた。今までやるべことはすべて私の職務だった」
「1人のほうがいいと思うんですね」
「楽だ。自分に合えばいい」
「合わせなくていい。敬意の問題です」
「敬意は示しているが、居心地が悪い。人生のすべてを干渉される」
「人生でなく医院の話でしょう」
「そこが分かってない。この医院は私の人生だ」
ジャックの店で、リッキーがリジーに近寄ると、リジーが言う。
「調べた。歌手じゃない」
「やっぱり。そう思った」
「ごちそうさま」
「僕らは大丈夫?」
「うん、仕事に行くね」
リジーはリッキーにキスをして「愛してる」と言い、店を出て行く。
ブレイディは保安官事務所でジャックの友人の刑事マイクの取り調べを受けている。
ビーが証言を変えたことをマイクは言い、「お前には空白の2時間がある。銃撃するには十分だ」
「俺が撃ったと思ったか」
「さあな、教えてくれ」
「撃つ理由がないだろ」
「お前はカルヴィンに雇われ、その直後に資産の大半を譲られたな。当時ジャックの通告で、警察は内通者を必要とし、お前が現れた。情報を提供してくれたよな。だが、ガサ入れは失敗。現状、内通者だとはバレてない。だから生きてる、でも、スペンサーの件は、ヤツに知られた。だから償いの意を示した。ジャックを撃って」
ブレイディは短い口笛を吹いてからマークの目をじっと見て「戯言だ」と言い、「話は弁護士同席で」と続けた。
「賢明だ」とマークが言うと、ブレイディは立ち上がり、「じゃあ、帰るぞ」
「ああ、町を出るなよ。ジャックに近づくな」
メルがジャックに店に顔を出し、ドクが自分に対し不満のようだとジャックに言う。
「何かあるみたいだけど、分からない」
「リリーの件かもな」
「でも、少し前からなんだ。そっちは?」
「家の再建築の件で問題があってね」
「力になれる?」
「帯水層を動かせる?」
「ムリかな」
メルは、保険の書類やらカルテの記入やらで大忙しだとジャックに言う。
「さらに赤ん坊の世話なんて大変だよな」
「どういう意味?」
「別に」
「話してくれたほうが楽」
「意味はない。ただ、クロエを寝かそうとしたら泣かれてずっと抱いてた。それが2人となればキツいだろ?」
「何かを望むなら策を考えださなきゃ」
「問題は限界点さ。1日の時間は有限だ」
「限界は人それぞれ」
「だな。身の丈はわきまえたい。こんな話するつもりじゃなかった」
「あなたの考えを知りたい」
「イヤな話も?」
「もちろん」
劇の練習をしようとしているクリストファーのところにプリーチャーが来て、
「監督を探してるんだろ?」
「さすがだ。劇が中止になるかと」
「もう大丈夫だ」
プリーチャーは、そう言うと、子どもたちを呼んで座らせ、自己紹介をした。
「俺はジョン。プリーチャーと呼ばれてる。新しい監督になった」
「デイヴは?死んだ?」と1人の女の子が手を挙げて質問する。
「死んでない。家族の件で急用だ。我々の任務は『オズの魔法使い』の上演」
「あなたヒーロー系ね」と別の女の子が言うと、クリストファーが「海兵隊」だと教える。
するとさっきの女の子が、「人を殺したことは?」
「なあ、劇に集中しよう」
「何をするの?」とクリストファーが聞く。
「クリストファーの他にセリフを覚えた人は?」
誰も返事をしない。
「そうか。ならそこからだ」
「歌はいつから?」とクリストファーが聞くと、プリーチャーは答えに詰まる。
メルはリリーに、作成した「予定表」を届け、終末期の患者を支援する団体があることを伝える。
リリーは不要だと答える。
「感情をためこむとつらくなる」とアドバイスするメルに、リリーは言う。
「違うの。夫に会えるから死は怖くない。彼と南国の海岸で夕日を見るのを想像するの」
リリーにとって心配なのはタラとクロエのことのみだった。
キッチンカーでコニーがリジーに「どう?」と尋ねる。
店のことだと勘違いしてリリーは「客足は鈍い」と答える。
「B & Bはどう?」とコニーが聞き方を変える。
「そっか、大丈夫よ」と答え直しつつも、「ジョー・エレンが…」
コニーは瞬時に察して、「おしゃべり?」と聞く。
「親切だけど常にしゃべってる」
などの会話を通じて2人は仲直りし、リジーはコニーの家に戻ることに。
リッキーとの交際も、家に2人きりにならない条件で認めてもらえる。
医院で診療が一区切りしたところへミュリエルが訪ねて来る。
夕食にとローストポークとサラダを持って来てくれたのだ。
「後は175度のオーブンで15分焼くだけ」
「甘やかし過ぎだ」
「料理してあげるのが楽しいの」
「そうか、感謝するよ」
「悩んでるみたいね」
「仕事のことで、ちょっとね」
「話して」と言われたドクは、メルを怒らせてしまったことをミュリエルに話す。
「なら謝れば?」
「違うんだ。愛想がないのは認める。でも私は悪くない」
「根拠は?」
「うちの家系は、『問題は自分で解決しろ』。メルは業務上の決断に携わりたがる。私のやりかたと違う」
「でも、打ち明ければ、問題への違う見解が得られる」
「しっくりこない。老犬にはムリだ。新たな方法の習得なんて」
「歳の姓にするなんて言い訳よ。老いた脳は、感情的知性では、より優れてる。若い子よりもね」
「君の発見の根拠は…」
「数分間見たTikTokよ」
ドクは思わず声をあげて笑う。
「夕食楽しんで」と言ってミュリエルが去った後、ドクは「助かった」とつぶやく。
プリーチャーがキッチンカーにやって来ると、コニーが追加分のパイを渡すが、プリーチャーが帰ろうとしないのを見て「他に何か?」と訊ねると、プリーチャーが詫びる。
「気分を悪くしたなら謝るよ。協力に理解を示そうとした」
「気分が悪かったよ」とはっきり言った後、コニーは付け加える。
「でも意図を尊重する」
「なら、水に流してくれる?」
「まあね」
仲直りするとコニーが劇のことを尋ね、プリーチャーは代理の監督を引き受けるハメになったと答える。
「すごく勇敢ね」
「愚かかも。俺も子どもも手探りだ」
コニーは、女優経験のあるミュリエルに相談するようアドバイスする。
ブリーがジョギングに出ようすると、ブレイディが待っていた。
引き返そうとするブリーをブレイディは追う。
3時間連絡なしで待たせたことをブリーは怒っているのだ。
「忘れたわけじゃない。済まない。埋め合わせはする」
ブレイディはその時間取り調べを受けており、それを隠すからこういう結果を産んでいる。
ブレイディはキスをしようとするが「ありえない」と断られる。
「何をしたいかは見えている」
「君の美しさを讃えたいだけさ」
結局仲直りしてキスするが、その最中にジャックが家から出て来て目の前で目撃してしまう。
「離れろ」
ジャックの銃撃事件の日の記憶が蘇る。
「犯人だ」
「違う」
「現場にいた」
「確かにいたけど撃ってない」
「敷地から出ていけ。早く失せろ!」とお大声で叫ぶジャック。
ブレイディはバイクで去り、ブリーは悲しそうに家に入る。
ドクはワインを持ってメルの家を訪ねる。
2人は池の畔でワインを前に、視力の15%を失ったことなど病気のことをドクはメルに話す。
長期的には失明の可能性もある。
「だから後任を探したのね」
「そうだ。君の職に関係ないと言っただろ」
それを聞いてメルは詫び、ドクモ謝った。
思わず涙が溢れるメルにドクは「涙は必要ない。和解だ」と言った後、メルに頼み事をする。
「誰にも言わないと約束してくれ。ジャックにもだ。後任を決めてから公表したいい」
念を押すドクにメルは「守秘義務を果たす能力はある」と答える。
2人は「では、明確な視界に」と乾杯する。
リッキーが「女性が来てるよ」とジャックを呼びに来る。
女性はヴァレリー・ホルトという名の弁護士だった。
近くに来たから寄ったという。
メルからの電話が鳴るがジャックは切ってしまう。
ジャックは自分の希望が「子育てへの実質的な参加」だと伝える。
「制限すると脅された?」
「直接ではない。でも婚約者が養子にしたいと」
「なんて答えた?」
「『受け入れると思うならイカれてる』と。だからあなたに。未婚だから親権でモメそうで心配だ」
「出生証明への記載や父親と認めるのを拒まれたら父親であると訴える」
「法廷で訴える?」
「ええ、簡単ではない。彼女が完全な親権を望めば係争は何年も続く」
「その間、双子は彼女たちと暮らすんだな」
「そうね」
「お願いするとなれば条件は?」
「1時間350ドル。着手金は2万5000ドル。知人だから2万で」
ジャックは、高額なのにやや怯みながらも「ともに過ごすために戦う」と返事する。
「親権争いは、感情と金銭面で疲労困憊する。生活が崩壊するの」と言って立ち上がった女性弁護士は、
「犠牲を払う父親がいて双子は幸せね」と付け加え、立ち去った。
暖炉の薪が燃える家でメルが本を読んでいると、ジャックが帰宅する。
「電話したのよ」
「忙しくて」
「料理は?」
「忘れた」
「どうにかする。大丈夫?」
「長い1日だった」
「驚かそうと思ったけど、我慢できない。実はマウイ便を予約したの。姉の部屋を使える」
「予約を?」
「クリスマスだよ。先に聞くべきだったけど、衝動的なことがしたくて。ロマンチックかなって」
喜ぶかと思っていたのに沈んだ表情のジャックに「どうしたの?」とメルは聞く。
「双子の親権のことで弁護士に会った。たぶん長くて高額な法廷闘争になる」
「残念ね。何でもサポートするわ」
「分かってる。ただ…感じるんだ、すべて君にしわ寄せが」
「何の話?おカネのこと?」
「カネだけじゃない。時間もだ。最低でも来年はバタバタだ。父親になる。その上、法廷闘争を抱え、家を建て、店を経営。子どもをもう1人はムリだ。悪いな」
「いいの、待てるから。いい?」
「もし待って、2つの家庭を持つのはムリだと分かったら?君は時間をムダにし、取り返しがつかない。母親になるのを俺が妨げるなんて。傷つけたくない」
「それを承知の上での選択よ」
「そうは行かない。君は選ぶ必要ない。望みをかなえてくれる男がふさわしい。それは俺じゃない」
「別れたいってこと?」
「本望ではない」
「そっか、信じられない」
「君は最高の女性だ」
「私の望みが分かってる?」
「分かるから言ってる。君の望みを叶える自信がないんだ。つらいよ。…でも間違ってはいない」
メルは両手を組んで少し考えた後、こう言い放った。
「出てって」
ジャックはメルの家を出て自分の車に乗り込むと、そこで静かに泣くのであった。
銃撃事件の夢を見て目覚めるジャック。
裏庭で妹のブリーと顔を合わせたジャックは、ブレイディのことで忠告する。
「本当に彼が撃ったと思ってるの?」と聞くブリーにそうだと答えたジャックは、続ける。
「ヤツは善人じゃない。違法栽培に関わり、ボスは合成麻薬を密売してた。ガサ入れの時は情報が漏れ、ムショ行を逃れてる」
「びっくり。だまされたわ」
その後、お互いの愛情を伝えあった2人。
ブリーが自分が料理するからメルと一緒の夕食はどうかと提案するが、ジャックの表情は曇る。
「私の腕は悪くない」
「別れたんだ」
何があったおかと聞く妹に、ジャックは「彼女の望む家庭を築く自信がない」と答える。
「愛してるのに」と言う妹にジャックは、「だからさ。彼女のためだ」と言う。
妹は、「人を遠ざければ味気ない人生になる。父さんを考えて」
「遠ざけてない。本心を話した。つらいが、これが正しい」
「後悔しながら生きて欲しくない」
ドクの家でドクとミュリエルはドクが作ったスクランブルエッグ(?)を食べている。
ドクがクリームチーズを取りにキッチンへ向かった後、テーブルの上にあるドクのスマホが鳴る。
テレビ電話を掛けて来た相手はホープで、ミュリエルはその電話に勝手に出てしまう。
ドクが戻って代わる。
「感謝の印に朝食に招待した。助けてもらってるからね」
ミュリエルが「リリーも元気よ」と言ってしまったため、ホープがドクにしつこ問いただす。
ドクは後でと電話を切ってしまう。
ミュリエルは、「知ってると思ったの」と言って詫びる。
ドクは、「リリーはホープに直接伝えたいそうだ」
傷心のメルは、離婚の問題を抱える姉のジョーイを支えるためにLAへ。
裁判所から家に帰って来たメルと姉だが、姉は「あの判事ひどい。家は維持できない」と言って、昼間なのにアルコールを飲み始める。
「子どもにとってはここが家よ。何て話せば?愛着のある家よ」と姉はメルに言う。
「大切なのは家じゃない。一緒にいること」
その後、メルはジャックと別れたことを姉に告白する。
「子どもの件は重荷だって。悲しい」
「出産に彼は必要ない」
「他の誰かと付き合う気力はない。彼といたい」
「違うの。マークとの受精卵が残ってる。使って」
「彼との家庭を築くためのものよ」
「まだ築ける」
「1人じゃ育てられない」
「1人じゃないよ。ここに戻れば助け合える。私の子どもたちも喜ぶ」
「マークの子を産んだら、また恋しくなるかも」
「彼が生き続ける美しい形かも」
姉の家のベッドの上でメルは、スマホの「ベンソン医師 不妊治療」のアドレス画面を見て、番号を押す。
ジャックのバーにリジーが手伝いに来る。
保安官事務所にジャックは来て、友人の刑事マイクと会う。
「現場にいたことは認めたんだな」
「俺が思い出してからだ」
「他は?」
「着てたのは黒いパーカー。ケンカしてた「
「銃は覚えてるか」
「いや。以上だ」
刑事は、礼状を取って家宅捜索するという。
ジャックが帰ろうとすると、マイクはジャックに「ブリーを誘っていいか」と聞く。
「婚約者がいただろ?」
「遠距離でうまくいかなくてね」
「事件のために残るなって言ったのに」
「いいんだ。運命の相手じゃない。彼女の視線はメルがお前を見るのとは違った」
ショックを受けるジャック。
リリーとタラの母娘は、牧場の馬を引きながら会話をする。
「家を去ったのは間違いだった。サンフランシスコに行かなければ、パパやママともっと過ごせた」
「あなたの決断は私たちの誇りよ。パパは言いふらしてた。娘は都会人だとね」
「パパの死後は戻るべきだった」
「人生を諦めて欲しくなかったの」
「力になれなかった」
「クロエを養子にくれるだけで十分」
「当然よ」
「だけど、大きな責務を追うことになるのよ。私が死んだら…」
「やめて」
「最後まで言わせて。ヴァージンリバーを出て欲しいの。ここで妹を育てる義務はない。住むなら幸せになる場所で。いいわね」
カフェでブリーはブレイディと会う。
「5分だけあげる」
「俺は撃ってない」
「売人だったそうね」
「違法栽培は知ってた。でも合成麻薬の件を知ったのは最近だ。町を出るのにカネが欲しくて」
「それで私が認めると?」
「過ちだった。でも撃ってない。本当だ」
席を立つブリーの背中に向かってブレイディは言う。
「行ったよ、あの晩、バーに」
席に戻ったブリーに、ブレイディは続ける。
「口論になり帰った。それが最後だ。絶対に」
「マイクには?」
「信じないさ」
「なぜ?」
「イラクでの過去があって」
「なら、保安官に」
「前科がある。帰国後、大量に酒を飲み、バーでケンカして捕まった。銃の所持で1年間刑務所に」
「軽く言うのね」
「日々その報いは受けた。相手を殺せたさ。でも誰も撃ってない。密売の件も過去の話だ。製材所は合法だ。多くの過ちを犯したのは分かってる。でも足を洗った」
「いいわ、あなたの考えは。でも職業柄分かるの。人は行動を正当化する。どんな罪でもね」と言ってブリーは去った。
リリーとタラが馬を引いて家に戻ると家のポーチでミュリエルたちがいて、手を振っている。
「子守を口実にされて断れなくて」とタラ。
リリーは大喜びで友人たちのもとへ。
リジーはバーの手伝いに。合間をみてリッキーに電話をするが彼は出ない。
リッキーは海兵隊の試験を受けていたからだ。
数学、言語、技術習熟などの成績次第で入隊資格が得られるという。
メルは不妊治療院のロビーにいる。
亡くなった夫マークとの思い出が蘇る。
ドクは医院で診療が一区切りした時、ホープからのテレビ電話を受ける。
「話して」とホープは挨拶も抜きでいきなり本題だ。
ドクがそのことを指摘すると、
「ハロー、話して」
「今は何の問題もない。直接伝えたいと言ってる。君が戻る来週でいい」
「腹が立って来た。教えてよ」
「口止めされてる。忍耐が美徳なのには理由がある。戻ったらすぐリリーに聞くと良い」
リリーの家に遅れてコリーがやって来た。
プリーチャーの家に寄って遅くなったようだ。
「何の話をしてたの?」
「ミュリエルがバックを誘惑した時の話」
バックはリリーの亡くなった夫だ。
「白状するわ。町に来たばかりの頃、バーで会ったの。既婚者だと知らなくて」
友人の1人が「彼ってセクシーだった」と言い、リリーが驚くと、
「カウボーイハットとブーツに弱いの」
そんな話の後、リリーは皆に感謝を述べた。
「いい人生だった。恵まれてた。最愛の人と結ばれ、子どもたちも授かり、誠実な友人たち、美しい地に暮らす幸運も得た。唯一の心残りはタラとクロエのこと。2人がどこにいてもみんな代わりに助けてあげて。タラは我慢強いの。クロエには私たちの話をして。どれほど母親が愛してたのか、何度も伝えてね。みんな愛してる。友人でいてくれてありがとう」
ヴァージンリバーに帰ろうとするメルに、姉のジョーが言う。
「ここに戻ること考えた?」
考えてはいるが、契約は満了しなければと答えるメルに、
「そうよね。来てくれて感謝してる」と姉は涙ぐむ。
「泣かないで。私まで泣いちゃいそう。マスカラが落ちると悲惨でしょ?」
「途方にくれちゃって。1人になるなんて」
「1人じゃない。私がいる」
「遠くよ」
「電話をくれればいつでも飛んでくるわ」
バーには刑事のマイクが来ていて、ジャックはそろそろ店仕舞をしようとしていた。
ジャックが店の奥に消えると、ブレイディが店に入って来た。
「これはこれはバレンズエラ刑事」
「酔ってるな。帰れ!」
「自分が誇らしいか」
「何の話だ?」
「また俺が悪者でお前がヒーロー」
「そうみたいだな」
「まずいよな。事実は違う。俺は罪の代償を払った。お前は?」
「やめろ」
「なぜだ?」
「ヒーローでないとバレるのが怖いか」
「ここで犯罪者は俺じゃない。お前だ」
「イラクの件は知ってる。お前も手を血で汚した」
するとマイクがブレイディの胸ぐらをつかんで取っ組み合いのケンカに。
そこへジャックが戻って来て、2人を引き離し、ブレイディに「出てけ!」と叫んだ。
クリアリバーではなくユーリカに住むことになったことをパーテイの参加者から聞いたシャーメインは、トッドに抗議する。
「私の生活基盤はクリアリバーにある。友だちもサロンもクリアリバーにあるう」
「友だちを作り、別の店を探せば良い。続けたいなら」とトッドは答える。
気が変わった理由を問うと、ジャックが自分たちの生活を厄介にする、ユーリカなら煩わしくないと答えた。
「それでも彼は双子を諦めないわ」とシャーメインが言うと、
「最初はな。でも物事を面倒にすれば最後は退散する。自由になり思いどおり、家族を築けるさ」
医院でドクはジャックを診察。
ジャックはメルと別れたことを伝えると、理由を聞かれたので、
「子どもが欲しいと言われ、叶える自信がなくて」と答えた。
「お節介な助言はホープのお株だけど」と前置きしてドクはジャックに言う。
「メルは自立していて強い意志を持ち、非常に能力のある女性だ。しかも広い心が、タフな見た目の真ん中にすわっている。やわじゃない。人生の困難から守らて来た人でもない。…彼女は先のことを理解してる。ムリだと思えば踏み込まない。彼女を守りたいんだろうが、それは彼女には必要ない。望んでもいない。1人で過ごす人生なんて悲劇だぞ。その原因が誤解ともなれば、最愛の人を誤解している」
「あなたがこんなに多くの言葉をつなぐ姿は初めてだ」
「私も語るんだ。絶対に必要なことなら」
リジーの部屋にリッキーが来る。
リジーが今日何をしていたかを尋ねると、リッキーは祖母とクリアリバーに行ってたとウソをつく。
リジーが電話したと言うと、電池切れだったと返す。
逆にリッキーがリジーに何をしてたのか聞くと、リジーは、「髪を3回洗った」と答える。
リッキーの代わりにジャックのバーで働き、煙臭くなったことを伝える。
「友だちを訪ねるからって助っ人を頼まれた。誰にウソをついてるの?」
「僕は…」とリッキーが言い淀むと、リジーは「やっぱりね。出てって」
友人たちが帰って、リリーはタラと2人になった。そこへドクが訪問。
リリーがいきなり「ホープは?」と聞く。
「なぜ分かった?」
「折返し電話をくれと6回も留守電に」
まだ話をしていないという。
「君に問題があると知られてしまった」
がんのことは言ってないが、飛行機を降りたら一目散にここへ来て質問攻めにするだろうとドクは続けた。
リリーは、どう話そうか考えると気が変になりそうだと言った。
電話で話せばすべてを投げ出して戻って来るだろうし、帰ってから話せば秘密にしたと思うだろうしとリリーは言う。
ドクはリリーの傍らに移動し手を握って、「病人は君で、誰かに報告する義務はない。他人がどう考えるかで消耗するな」
「彼女は他人ではなく親友よ」
「だから理解してくれるさ。愛する君の最善を望むさ」
「よくしてくれた」
「そうだな」
「よかったら私から話すよ」
「考えてみる。ありがとう」
タラがキッチンからコーヒーを持って戻って来た。
飲んだらすぐ帰るというドクに、「そんなのダメ。夕食までいて」と言うリリー。「ぜひ」とタラにも言われ、ドクは言葉に甘えることに。
「じゃあ決まりね。私は少し昼寝する」
タラはドクに「良くなってる気がする。ずっと奇跡を祈ってる。叶うかも」
ドクは「そうだな」と否定はしない。
ヴァージンリバーの桟橋で川を眺めながらメルを回想するジャック。
メルの家の前でメルの帰りをジャックは待っていた。
タクシーで帰って来て、家に入ろうとするメルに、ジャックは話しかける。
「話すことはない」ときっぱり断るメルに「頼むよ。聞いてくれ。イヤなら途中で帰る」
「分かった」
「君をみくびっていた。傷つけたくなくて、別れを切り出した」
「守らなくていいと言ったよね」
「ああ、今なら分かる。もっと信頼すべきだった。圧倒されたんだ。不安にのまれた。決断を誤まり、済まない。間違いだった」
「何が望み?」
「戻ってくれ」
「それはムリ。できない。理由があって別れた。双子親権争い…」
「忘れろ。不安から自分を見失った」
「でも、状況はキツくなっていくよ。どうするの?」
「闘わず得るものに価値はない。そう信じてる。メル・モンロー君は最高の人だ。君も同じ想いだろ。生涯君の幸せのために闘うと誓う」
「あなたから別れた」
「メル、頼む。お願いだ。大きな過ちを犯したけど頼む。機会をくれ。もしもくれたら、2度と立ち去らない。約束する」
メルはジャックにキスし、2人はお互いの服を脱がし合うのだった。
リリーの家では、エンチェラーダの良い香りが漂っていた。
タラはドクに食器の準備を頼み、母親を起こしに行った。
「ママ、できたわよ」と言っても、体を揺すってもリリーは起きない。
タラは大声でドクを呼んだ。
ドクはリリーの頸動脈の脈を診ると、「彼女は逝ってしまった」とタラに告げた。
「そんなわけない。ママ、起きて。そんな。冷たいよ」と取り乱すタラにドクは、「もう血が巡っていない」と言う。
「イヤよ!理解できない。最高の1日だったのに」
「そうだな。残念だよ」
「まだ一緒にいられると思った」
「分かるよ」
「もう少し…。時間があると思った」
冷たくなった母の体を抱き、「イヤよ。ママ…」とタラは泣き続けた。
ベッドの上で手が血まみれのブリーが、スマホでジャックに助けを求める。
ジャックは駆けつけ、抱き上げて医院に。
メルは超音波でブリーの腹を検査し、流産だと診断する。
ドクが来て、メルはブリーの様子を伝え、話は今日の葬儀とホープとドクの眼のことに。
ホープは何とか葬儀に間に合いそうだ。
ドクの視力は良好であり、眼球に針を刺す抗VEGF治療も順調のようだ。
「良ければ医院は私に任せてドクは休んで」
「ありがたいが、ブリーを診たらタラの様子を見に行くよ」
ジャックのバーでは店を臨時休業し、リリーを偲ぶ会の準備に忙しい。
タラの話では15~20人が参加すると、プリーチャーはリッキーに言う。
そこへコニーが来て、「問題発生よ」とプリーチャーに言い、スマホの画像を見せる。
ヴィンスの写真でクリアリバーで撮った写真だという。
「今朝、献花を取りに行った時、撮ったの。なぜ彼がいるの?」
「サリーを覚えてるか?あの子を連れて来たペイジの友人だ」
そのサリーがプリーチャーに会いたいと言って来たとプリーチャーが言う。
「ヴィンスに関係あるの?」
「ああ、多分。ペイジから連絡なにのが気になる」
「なぜ?」
「彼女に何かあったのかも」
ドクはブルーベリー・マフィンを持ってタラを訪ね、ベッドの上のタラに言った。
「余り起きていられないそうだね」
「疲れてて」
「当然だよ。悲しみはエネルギーを奪う。葬儀でスピーチしないと聞いたぞ」
「それが?」どうかしたかと聞くタラに、ドクは「後悔して欲しくない」と語る。
「つらすぎる」と吐露するタラに、ドクは言う。
「愛する人を失った痛みは耐え難い。痛みに圧し潰されそうになるだろう。君を小さい頃から知っているが、強気の子だった。今だってタフだ」
「家族や友だちがついてる。頼めばいい」
「身動きできない」と返すタラに、ドクは深呼吸を促し、タラは素直に深呼吸を行う。
「いいか。リリーは心から君を愛してた。君が苦しむ姿は望まない」
ブリーの部屋のベッドに戻ったブリーにジャックは言う。
「1人はできない」
自分が残るとメルが言う。
1人で平気だとブリーは言う。
寝たいだけだと言うブリーにジャックは、「万一の時は?」と問う。
「メールする」というブリーに険しい顔をするジャック。
「子守は必要ないと言って」とブリーがメルに助けを求めると、メルは「1人でいても問題はない」とジャックに言う。
2人になるとブリーがメルに気持ちを吐露する。
「理解できない」
「そう思っても当然」
「あんなことがあったばかりよ」
「ねえ、夫との子どもを望んだ時、何度か流産した」
「ごめん、そんな…」
「いいの、この話をしたのは…、あなただけじゃないと伝えたかったから」
「妊娠も気づかなかった」
「かわいそうに。抱えきれないよね」
「大きま波にのまれたように感じる。押し倒されたって」
「強いから立ち上がれる」
「ムリかも」
「私たちがいる。2人で支える」
疲れたというブリーに、「どんなことでも何かあったら連絡して」とメルが言って部屋を出ようとした時、ブリーはメルに感謝の気持ちを伝える。
メルが階下の店で働くジャックのところへ行く。
リリーの話になり、2人ともショックを受け、受け入れられない心境だ。
「タラがかわいそう。母親を失う気持ちは分かる」とメルが言うと、ジャックは「想像もつかない」と返す。
「プリーチャーと料理を届ける。それしか思いつかなくて」
「優しい心遣いよ。助かると思う」
メルが出て行こうとするとジャックが、「俺たちはどうなってんだ?現状、3日間、俺を避けてるだろ」とメルに言葉を投げかける。
「違う。考えたいと言ったよね」
「何を?」
「LAから戻った夜、あなたの話は当を得てた。でも翌朝、私が聞きたいことを言った気がして」
「まさか、違うよ。あれが本心だ。別れたのは大きな間違いだった。確かに不安はあるけど、君への思いは何にも勝る」
「ヨリを戻しても先のことが心配なの。あなたは休みなく働き、疲れ果てて不満に思う」
「それはない」
「なぜ?」
「それが俺だ]
「今はそうでも双子が生まれれば変わるよ。誰かに相談を」
「他人の話は関係ない。これが俺の思いだ。知りたかったんだろ?機会をくれなきゃ、証明できない」
バーのテーブルを拭いているリッキーのスマホが鳴る。
電話に出ると、海兵隊のゴメス軍曹からだった。
試験の結果が出てスコア97で、トップ集団に入ったという。
「契約書にサイン後、訓練基地を選ぶ」と軍曹はリッキーに伝え、続けた。
「サンディエゴ希望だろうが、サウスカロライナも検討を」
「じゃあ、送金は完了?書類はサインして明日返送します」と自宅にいるメルは電話で相手に伝えた。
そこへノックして黒いネクタイを締めたジャックがやって来た。
黒いドレスを身に着けたメルの美しさに眼を奪われるジャック。
これから協会へ向かうのだ。
協会の駐車場に停めた車の中でドクが弔辞の練習をしていると、携帯電話が鳴った。
ホープからだった。
レンタカーの調子が悪いようだ。
プリーチャーとコニーがクリストファーと一緒に教会に入って来る。
「葬儀は悲しい。キツかったら言えよ」とプリーチャーがクリストファーに言うと、
「お別れを言いたい」とクリストファーは答える。
「その歳にしては立派だ」
「僕は大丈夫。プリーチャーこそ悲しそう」
ジャックとメルも教会に到着する。
が、教会の入り口で立ち止まるメルに、ジャックが「大丈夫?」と聞く。
「ただ気が動転して」
ジャックが車に水を取りに行く間、メルには夫の想い出が蘇る。
ジャックが戻って来て水のボトルを渡して言う。
「つらいのは分かる。思い出すなよ」
「そうね」
「死後、きつくて」
「なあ、いいか。ムリならいつでも言えよ。望むところに連れて行く」
「ありがとう」
ドクが壇上に立って弔辞を述べている。
「20年近くの間、リリー・アンダーソンは、親愛なる友人でした。妻のホープが不在なので、夫婦を代表してリリーのご家族に心からお悔やみ申し上げます。我々がついていることを忘れないで。リリーは常に助け、涙する人には肩を貸した。彼女は愛は与えるものと信じていた。分かち合うものと。そして我々全員と分かち合った」
続いてコニーが弔辞に立つ。
「以前、読んだ。嫌われ者は長生きだと。それが事実なら私が一番長生きよ。今日それが本当だと感じる。彼女は誰より優しかった」
ジャックも弔辞を捧げる。
「ヴァージンリバーに来た頃は知り合いもいなくて無我夢中でバーを建ててた。多少の経験はあったけれど、素人同然でね。毎日リリーが立ち寄るようになり、突然必要なものが揃い始めた。俺は聞いたよ。『どうなってる?』。彼女は答えた…」
少し間をおいてジャックは続けた。
「俺が来たことは町のためになると。ずっといてほしいと。町での人生を築かせてくれた。これからも感謝し続ける。安らかに眠って欲しい。思い出は永遠だ」
ドクが他に話したい人がいるかとみなに聞く。
タラが涙声で、「先生待って」と言って、登壇した。
「母は献身的な母親でした。常に自分より子どもを優先しました。ものすごく愛してくれた母は私たちのすべて。だから…」
ティッシュで鼻を拭くタラは必死に続ける。
「母が亡くなった夜…」
言葉が詰まるタラに、メルが壇に上がり、タラに寄り添い、代わりに読むことに。
「母が亡くなった夜、私は暗闇に迷い込んだ。出口が分からずにいると、友人が母の志を思い出させてくれた。母は、夕陽が好きで、その理由をこう話した。『世界は永遠の闇ではないと教えてくれる常に太陽は戻る道を探す。だから感謝しなきゃ』と。母が恋しくなったら夕陽を見て。母もどこかで見てるから」
ブレイディが花を持って、ベッドのブリーを見舞った。
「みんな葬儀でいないから退屈かと。迷惑なら帰るよ」
「いいよ、いていい」
いることを許されたブレイディは椅子に腰掛け、言った。
「俺はジャックを撃ってない。売人もやめた。分かってくれ。言い訳ではなく、子どもの頃から何も持ってなかった。だからカネに目がくらみ、カルヴィンの話に飛びついた。分かってる。弱いよな。関わるべきじゃなかった」
「捕まるからね」
「違う。俺らしくないからだ。足を洗った」
「『自分は変わる』という人を私は信じない」
「寂しい世界観だな」
「公選弁護人をしてから人間の最悪な部分を見てきた。人を信じられないの。特にウソをつかれるとね」
「残念だ。でも俺が出会ったどんな女性とも違う。賢く、面白くて自立してるのがセクシーだ。その鋭さがどうしてか魅力的なんだ。分かってる。図々しいけど、頼む。本当の俺を見せる機会を与えてくれ」
「なぜ?」
「初めてなんだ。君に夢中だ」
料理を口にしながらおのおの会話を交わす村の人々。
ジャックは、ポーチの椅子で休むメルに料理を運ぶ。
メルはジャックに言う。
「ここに座って考えた。家に家族が集ってる。彼女も会いたかっただろうって」
「それが葬儀だろ。一番喜ぶ人がいない」
中に戻ろうとするメルを引き止めて、ジャックが言う。
「別れたのも夢を叶えて欲しかったからだ」
「あなたを不幸にしたくなくて別れを受け入れた」
「互いの幸せを望んでる。それが…、愛だろ」
「今はその話はしたくないわ」
「聞いてくれ。今日はリリーたちの物語を聞いた。何より強い愛が人生を美しくしたと。俺の理想だ。2人のことを諦める気はない。絶対に確信してる。君は偶然町にたどり着いたんじゃない」
そこへリッキーが顔を出し、献杯の準備ができたことを伝える。
ジャックが献杯の挨拶をする。
リリーの人生を讃え、「人は得るもので生活し、与えるもので人生を築く」というチャーチルの言葉を引用し、続ける。
「彼女は得るより多くを与えた。みんなの人生を豊かにした。彼女に感謝しましょう。永遠に忘れない」
そして盃を高く掲げ、「リリーに!」と言った。みなも「リリーに!」と唱和した。
ミュリエルがドクのところに来て、スピーチを褒め、ドクは「君の助けのお陰だ」と礼を言った。
「お安い御用よ。演劇で素早く記憶する方法を学んだ。なたのコーチを務められて光栄よ。『言葉を忘れて心で話す』よ」
「ところでホープはまだ?」
「レンタカーのエンジンが故障して手間取った。でも間もなく着くはずだ」
「彼女がいなくちゃね」
ドクのケータイが鳴る。
ドクがポーチに出てメガネを掛けてメッセージを読むと、「まだ途中。夜は医院で寝て」
リジーがリッキーをつかまえ、朗報があるという。
友人の結婚式の付添人に呼ばれ、彼女の父親のプライベートジェットで行き、ヴィラにも無料で泊まれるから一緒に行こうというのだ。
だがリッキーは、行けるかどうか分からないと返答する。
「来月どこにいるか分からない」
「大学入学の準備でしょ?」
「大学には行かない」
「バーの仕事を続けるの?」
「違うんだ。志願したんだ」とようやく海兵隊の試験に合格し、契約をするつもりであることをリジーに打ち明けた。
リジーはリッキーが海兵隊入隊を内緒で進め、ウソをついたことをとが許せなかった。
リジーは「良い人の仮面にだまされた。あなたもウソつきね」というと離れていった。
泣いて立っているリジーにコニーが近づきハグをする。
シャーメインが来ていることに気づいたジャックは、シャーメインの傍に行き、尋ねる。
「君はどう?双子は?」
「順調よ。彼がユーリカに越すと決めた。私に相談もなくね。どうしたものかと。彼を愛してるけど、常に彼に合わせなきゃダメなの」
「彼は押しが強いよな」
「嫌いなのは知ってる」
「俺は関係ない」
「『だから言っただろ?』って思ってるでしょ?」
「思わないよ。まったくね。男女の関係は難しい。君には幸せでいて欲しい」
「幸せだと思ってた。今は分からない。途方に暮れてる」
「彼と話したら?どう感じてるか説明するんだよ。彼に歩み寄る気がないなら歩み寄る男を探せ。君に見合う男を」
リッキーが1人で立っているのに気づいたプリーチャーが彼に話しかける。
「何してる?」
「彼女が怒ってる」
海兵隊の志願を隠していたことをリッキーはプリーチャーに言う。
「マジか。契約は?」
「するつもり」
「リッキー、俺は入隊したことを誇りに思ってる。でも軽く決めるな」
「違う。子どもの頃からの夢だ」
「ならばなぜ、みんなに隠す?」
「反対されるから」
「違うだろ」
「祖父もジャックも進学をすすめる。リジーも僕が町を出るのに反対だと思った」
「聞けよ。他人は関係ない。疑ってるのは自分だろ」
「あなたほど自信がない」
プリーチャーは笑って言う。
「俺もお前の歳の頃にはなかったさ。年の功だよ。自分を見つめて、人生を考えろ」
メルがタラの様子を見に行く。
「葬儀ではありがとう。心配したとおり、やり通せなかった」
「登壇したことを尊敬する」
メルは自分の夫が亡くなった時、葬儀で話せなかったことを打ち明ける。
タラは、メルやドクやみんなの支えに感謝し、愛を感じていることをメルに伝える。
ジャックは暖炉のある居間で飲んでいる。
メルがブリーの部屋から降りて来て、「ブリーは回復してる」とジャックに伝え、「朝見に来るね」と続けた。
「ありがとう。君のお陰で本当に助かった」
「いiの。お礼は不要よ。彼女が好きなの」
「そうか。準備ができたら送るよ。1人歩きはよくない」
「あなたの言ったことを考えてた」
「それで?」
「別れるのが絶対的に安全よね」
「メル。愛してる」
「分かってる。私もよ。だから心の声が別れるなって」
2人はキスをする。
保安官がドクを訪ねて来る。
「起こしてすまない」
「いいさ。用件は?」
「うまく話せないから率直に言うよ」
「何事だ?」
「事故があった」
ホープが交通事故にあったとの連絡を受け病院に急行したドクに、ジャックとメルも同行。
状態は悪いようで、衝撃で脳に出血や腫れが生じ、さらに新しくできた腫れによって脳組織が押し出されれば命に関わるという。
準備が整い次第、手術に入るとのことだが、問題は術後の腫れを抑える方法だという。
その方法は2択。
人工的な昏睡状態かステロイドの増強のどちらかを選ばねばならない。
「心臓の持病がある。心停止に陥る危険性がある」とドクは言い、担当の女医も「だから人工的昏睡状態が最善かと」と言う。
「脳活動を抑えれば、腫れがひき回復が早まる」とドクが言うと、女医は「当然意識障害の可能性は残る」。
人工的昏睡を解いても無反応の恐れがあるという。
女医はドクに決断を迫る。
「昏睡を最善とするなら判断を信じる」と決断するドクだったが、
女医が去ると溜息をつく。
「ホープのことでは決断を誤って来た。今回は正解を祈るよ」
グレースバレー病院から家にいるメルのスマホにメールが届く。
そこには「妊娠検査の結果は陽性です」とあった。
そこへジャックがラテを持って入って来て、「ドクから連絡があった」という。
手術は成功し、安定しているとのことだ。
メルは着替えたら病院へ行こうと言うが、ジャックは断られたと返す。
ジャックとメルは10日間続けて通ったようで、「1人になりたいのかもな」とジャック。
ジャックは桟橋での夕食にメルを誘う。
「今夜は2人きりになりたいと思ってたの」
「2人になれる」
「違う。誰もいないところ」
「なら妥協案がある。桟橋を散歩して、料理をテイクアウトして来よう」
「いいよ、名案ね」と答えるメルだが、何か元気がないのを感じてジャックは「だいじょうぶか」と聞く。
「平気よ。すごく愛してる」
「分かると。俺もだから」
抱き合ってキスする2人。
病院で佇むドクにリジーが声を掛ける。
受付係がうるさくて免許証がないと入れないと言うので、泣いたと言ってドクを笑わせた。
「私いつでも泣けるの」
「便利だな」
リジーが容態を聞くと、「頑張っているよ」とドクは答える。
リジーはイヤホンを持って来たと、ドクのスマホを求め、「キツい時や悲しい時は音楽を聞くんだ」と言い、「だからプレイリストを作った」と続け、転送してiTunesで聴けるように設定してあげた。
「60~70年代の曲よ。のら、先生って…」
「古典派?」
「そう」
「趣味を知らないから、ボブ・ディラン、ストーンズ、ジョニ・ミッチェル」
「どれも好きだよ」
「転送している間に私のでイヤホンを試そう」と言ってリジーはイヤホンをドクに渡す。
彼女が再生した曲は、ドビー・グレイの「明日なきさすらい」。リジーの好きな曲だ。
「いいんw。好きだ」と涙ぐむドクは、「優しいんだな。ありがとう」
ドクはそう言うと、イヤホンの片方をリジーに渡し、一緒に音楽を聴く。
リジーの青い大きな目にも涙が滲んでいた。
バーでは新人のハンナが働き始め、プリーチャーが「どうだ」と気にかける。
「皿を山ほど割り、ヴィーガンに肉を」
「幸運にもヴィーガンの客は少ない」
「助かる。皿が少ないの」
「心配ない。上出来だ」
「建設的な批判は歓迎よ」
「じゃあ、もう皿は割らないで」
「傷ついたな」
バーの事務室で指輪を見つめていると、プリーチャーが来て、「ホープの件が気になって」という。
「今は成り行きを見守るしかない」
プリーチャーは、「祈ってると伝えてくれ」とジャックに言う。
戻ろうとするプリーチャーを引き止めて、ジャックは共同経営の件を考えてくれたかと聞く。
「実は、話したかった」と言って間を置き一瞬ジャックを不安にさせるが、「乗るよ」と答え、「よし、最高だ」と2人は満面の笑みで握手をする。
「実質的に家族だ」とジャックが言うと、「そうだな。必要なことは何でも…」と返すプリーチャーに、
ジャックは指輪ケースを持って、「付添人を頼む」。
「やったな。お似合いだよ。…なぜ結婚する気に?」
「今ドクが感じてる痛みを俺も感じる。彼女を失えない」
「手放すな」
「再婚するとは想定外だ。結婚には完全に及び腰だった」
「最初の時は若気の至りさ。今は自分の幸せを分かってる」
「そうだな。感謝するよ」
「いつでも。考え込むな」とプリーチャーは言って戻って行った。
待ち合わせのカフェにメルが行くと、ブリーはすでに来ていた。
「私が勧めたセラピストには連絡した?」
「してない」
「気が進まないと思うけど、電話して好印象なら会えばいい」
「違うの。町を出るつもり」
ジャックから聞いてないというメルに、「兄も知らない」とメルは答える。
「代わりにあなたから話して欲しい」
「言わずに去る理由は?」
「質問攻めにあう。この状況で反対尋問は闘えない。自分が恥ずかしいの。お酒と抗不安薬で意識を失うなんて最低よ」
「誰も非難してないって」
「自分で許せないの。昔の私ならありえない。自分を抑えられた」
「誰でも踏み外すよ」
「新しい場所で再出発したい。誰も私を知らない所で」
「ねえ、痛みは自然には消えない。向き合うまでつきまとう」
少し考えてからブリーは話し始めた。
「サクラメントでね。あることがあって…。その…」
「ムリに話さなくてもいいのよ」
「話したいの。でも兄には内緒に。マジよ。知られたくない」
「秘密は守る」
「実は…。イヤだ、想像よりキツい」
「焦らないで」
「6カ月前、弁護士と付き合い出した。出会いは慈善の会。彼はスマートで、イケメン。すごく意気投合した。それで…、ある夜、一緒にいた。私は仕事でひどく疲れてたの。だから拒否した。でも彼はやめなかった。終わった時、私、泣き出した。そうしたらね、彼は服を着て何も言わずに出てった」
と涙声で語るブリーに、
「かわいそうに」
「流産したのは、その夜の子」と言ってブリーは顔を覆って泣き、それを見たメルはブリーを抱き、「つらいよね」
プリーチャーはジャックスバーの河畔のデッキでサリーと会う。
サリーはペイジの友人だ。
「クリストファー?」
「キャンプに行ってる」
「よかっ。内緒にしたい」
「ペイジは無事か」
サリーは周囲を気にして「場所は移れる?」と聞く。
店を出て人がいないところへ移り、プリーチャーがペイジのことを聞くと、
「国境近くの小屋にいる」とサリーは答えた。
「なぜ君が来た?」
「自首する前にクリストファーに会いたいと」
「自首しないと決めたはずだ。最悪あの子をウェスの一家が引き取る」
「でも、逃亡生活に参って聞く耳を持たない」
「なら俺が会って話を思い出させる」
「それを頼みたくて」
ジャックに会いにシャーメインが店にやって来た。
「彼とはうまくいってるのか」
「みたいよ。実は結婚した。だから…」
「そうか…、いつ?」
「昨日よ。ユーリカで」
「正直、予想とは違ったけど、おめでとう」
「ありがとう。結婚の日が決まるまで越さないと言たら、即結婚しようって」
「よかったな。幸せだろ?」
「幸せだった。確かに。あなたの弁護士を知るまではね」
「誰に聞いた?」
「私の弁護士を探してて、候補者に利益相反になると言われた。それであなただと知った」
「争う気はない。共同親権が欲しいだけだ」
「正直、それはないと思う」
「なぜだ?」
「彼はあなたの関与を嫌う」
「我が子への関与だぞ」
「あなたを守るより結婚生活が大切なの」
「シャーメイン、俺たちが実の親だぞ。2人の問題で他のヤツは関係ない」
「弁護士が決まるまで彼が代理人よ。親権はあなたの弁護士と彼で話して」と言ってシャーメインは去って行こうとするがジャックが「待ってくれ」と引き止め、「彼が俺を締め出すのを見過ごす気か」
「彼は夫よ。完璧じゃないけど頼れる父親になる」
「俺の実の子だぞ。将来それを知った双子がどう思うと?」
「味方にするために罪悪感を持たせないで」
「違う。そんな気はない。双子の将来の話だろ」
「行くね」
プリーチャーはサリーの車でペイジの居場所に向かう。
ブレイディが製材所からジープで出て行こうとすると2台の車がやって来て塞ぐ。
「何事だ」
車から降りて「ドライブさ」と言ったのはカルヴィンだ。
「祝のな。俺への告訴は正式に取り下げられた。証拠不十分でな。スペンサーすら証言を拒んだ」
「それは良かった」
「会社は借金まみれと聞いた。半年、支援しよう。給料に設備費、輸送費用、全額だ。黒字になる」
「見返りは?」
「俺も借金があり、お前が多角化に…」
「ドラッグはやらない」
「見逃すだけでいい」
「悪いな。興味ない」
「ブレイディ、元締めは何としてもカネを回収する。俺が払えないと、お前が追われるぞ。シャバにいればな」
「何の話だ?」
「お前のアリバイが崩れた」
「銃撃とは無関係だ」
「なら心配ないだろ」
ベーカリーにリッキーがリジーを訪ねる。
「悪かった。志願すると話すべきだった。謝るよ」
「謝罪はいらない」
「あの晩、怒っていたろ?」
「そうね」
「君に黙っていたのは、反対されると思って」
「どうして?」
「結婚して子どもが欲しいと言っただろ?」
「私が?」
「子どもの数のクイズとか。同棲したいとか」
「クイズは冗談。同棲と結婚は別よ。50年代じゃあるまいし」
「もし話してたら何て言ってた?」
「動揺するけど、行けと言った。なぜだと?愛してたから。どんな夢でも応援したかった」
「愛してた?過去形?」
リジーの元カレがやって来る。
リジーはリッキーに言う。
「謝罪は必要ない。お互い自分の道を行こう」
ブレイディがジープで家に戻ると、ブリーが家の前で待っていた。
「ここで何してる?」
「あなたが会いたいかと思って」
2人は仲良く家に入って行く。
サリー車を停め、「この下よ」と言うサリーの後をプリーチャーがついて行くと、体がふらふらする。
「どういうことだ」と言ったかと思うとプリーチャーは倒れてしまう。
サリーはプリーチャーのポケットからスマホを抜き取ると足早に去って行った。
プリーチャーは目を開けたまま動けない。
飲みものに何かの薬を入れられたらしい。
ブレイディの家では彼が「スティング」のDVDをブリーと一緒に観ようと再生し始めた。
「絶対、気にいる。アカデミー賞7部門獲得だ」
ソファでブレイディはブリーの肩を揉み、ガチガチだな、ここにいれば何でもするぞと言う。
ブリーは「そのこと、訪ねた理由なの。町を出るつもり」
「仕事に戻るのか」
「違うの」
「理由は?」
「兄がいると対処しにくいことがって」
「そうかなるほど」
ブレイディはDVDを消して、「俺達は?」と聞く。
「私たち?」
「そうだ。この前の話は本気だよ。君に夢中だ。君しか頭にない」
「それは違うと思う」
「本当だから言ってる」
「この関係は矛盾してる。兄はあなたが犯人と」
「撃ってない。なあ、マジで君の魅力は尽きない。一緒にいると熱を感じる。初めてだよ。分かるだろ?」
「うん、分かるよ」
左手をブリーの手の上に重ねると、ブレイディは「町にいてくれ。あと少しだけでもいい。俺を信じてくれ」
「イエスと言えば後悔しそう」
「させない。約束する」
ジャックは、ポテトとソーセージのオーブン焼きを持ってタラの家を訪ねる。
メルも一緒で、アップルパイを渡す。
するとタラが「すごいニュースがある」と言う。
「匿名で私とクロエに信託が」
「驚きだな」とジャック。
「農場を維持できるから越さずに済む。誰か分かれば、お礼を言えるのに」
「リリーの人柄ゆえだ」とジャック。
「そうだね。渡す物がある。待って」とタラが別の部屋に消えると、ジャックが「一体支援者は誰だろうな」と言ってメルを見る。
「誰か匿名にしたい人よね」
「秘密は守る」
「なぜ私だと?」
「寛大で控えめなのは君だけだ」
「タラに借りだと思ってほしくないの」
メルの背中のほうをジャックが見るので、メルが「何?」と聞き、ジャックは「翼を探してた」と答える。
「人の姿をした守護天使だろ」
タラが戻って来て「メル」と言う。
タラは一幅の絵を抱えていた。
ヴァージンリバーを描いた油絵だ。
「ママが、あなたにって」
「パパの絵」
「驚きよ。素敵だけど受け取れない。家族の財産だもの」
「ママの希望なの」
「もし町を去っても忘れないでと。断ればママが化けて出る」
ブレイディがポップコーンを持ってソファにいるブリーのところに戻って来る。
「すごききれいだ」
「よく言われる」
その時、ドアがノックされる。
「保安官だ!」と叫ぶ声がし、
「何?」とブリーが驚くが、ブレイディは分からないと言う。
ブレイディがドアを開けると、「家宅捜索令状だ」と保安官。
「見せて」とブリーは令状を受け取り、内容を見てから「断れないわ」と言って令状をブレイディに渡す。
「そうか、何も出ないぞ」
大勢の捜査官たちが入って来る。
最後に、刑事のマイクの姿があった。
「残るかは君次第だが、俺は時間のムダだと思うね。相手にするな」
「さっさと仕事して帰れ」とブレイディはマイクに言う。
絵画を持ってジャックとメルは帰宅する。
ジャックがステーキでも焼くかとメルに聞くが、メルは要らないと答え、ジャックは心配する。
「朝食も食べてないだろ」
メルは横になり、「寝れば平気だと思う」と言い、「今夜はごめんね。計画してたよね」と続ける。
ジャックは「いいんだ。もし早く目覚めて元気になってたら朝日を見よう」
「そうだね。あなたが起きる時に起こしてね」
ジャックが薄い布団を掛けてやるとメルは「愛してる」と言い、ジャックも自分もだと答える。
だが体の向きを変えてベッドを離れると、指輪ケースをポケットから取り出し、壁に掛かった上着のポケットにそれを入れた。
「この家にはお酒がないの」とリジーが言って、パーカーにジュースの入ったコップを渡す。
「あったぞ」と言ってパーカーが自分のバッグから酒瓶を取り出す。
「コニーが激怒する」
「気にしすぎだ。町を出たほうがいいな」
「LAには戻らない」
「なぜ?」
「家賃が高いし、親と暮らしたくない」
「なら俺も」
「クラブは?」
「もういいんだ。真剣にだ。国を旅する」
「誰と?デイヴに運転はムリ。常にラリってる」
「一緒に旅したいのは君だけだ」
「何の話よ」
「楽しいぞ。2人だけで好きに旅するんだ。グランドキャニオンでもマイアミでも」
「ヨリは戻さない」
「なぜだ」
「信用できない」
「悪かった。オリヴィアの件は過ちだ」
「寝て後悔してる?」
「当然だ。バカでガキだった。不満で…」
「私を責めないで」
「だな。ごめん。マジでだ。リジー、愛してる。頼む。もう一度、機会を」
「町は出ない」
「なぜ固執する?」
「フィッチズ B&B」に若い男がリュックを背負ってやって来る。
「IDを見せて」とジョー・エレンから言われた男は、「19歳なんだ」と答える。
男がIDを見せると、「シアトルからね。友人が住んでた。きれいな街だと」
「まあね」
「よかったら、町に来た理由を教えて」
「祖父を探してるんだ」
「大半を知ってる。名前は?」
「ドクター・マリンズ」
それを聞いてジョー・エレンはたいそう驚くのだった。
ミュリエルが病院のベンチに座ってるのにドクは気がついて「いつから?」と聞くと、「数分前よ。そのうち戻ると思って」
「カフェにいた。君の分がなくて悪いな」
「いいの。先生が心配よ。どう?」
「平気さ。…そうでもない。どうにかだ」
「そうね。お見舞いの品で先生も元気になれるかも」とミュリエルは言って、仲の良い友人たちの顔写真がプリントされたタオルケット(?)をバッグの中から取り出して、広げてドクに見せた。
そこへ担当医師がやって来る。
「発熱したんです」
「まさか感染症?」
「CTと血液検査の結果が出たら知らせる」
ショックを受けて沈むドクにミュリエルが、すべてうまくいくと慰めるが、ドクは「今回は、もう、そう思えない」と言う。
「私がリリーの病を知らせていれば、ホープも帰宅して事故には遭わなかった」
泣き始めたドクに、
「ヴァーノン、そんな風に考えないで」
「彼女が消えていきそうなのに、なすすべがない気がして」
クリストファーがキャンプから帰宅して、コニーが付き添っている。
「プリーチャーは?」
「先に帰ってるかと」
「じゃあ、ピザは2人のものだ」
「1切れ残してあげて」
暗い奥の部屋には男の姿があったが、2人は気がつかない。
ブレイディの車のシートの下から拳銃が発見される。
グロッグ26だ。
「凶器と同じ型」と保安官。
「俺のじゃない。違う。ブリー、信じてくれ。マイク、ハメられた。ちくしょう」
「ブレイディ、殺人未遂の容疑で逮捕する」
「無実だ」
逮捕され権利を読み上げられるブレイディの姿をじっと見ていたブリーの目には涙がにじむ。
朝陽を見ているジャックとメル
「休暇中ここに来た。景色を見て、故郷だと感じた」
「愛してる、ジャック」
「君に恋に落ちた日を覚えてる。日じゃない、あれは瞬間だった」
「本当?」
「クロエと散歩した時、君は考えてた。町に残る気もないのに、里親になると」
「私を知らなかったでしょ?」
「関係ない」
「感じたんだ。人生で欠けたものが埋まったと」
「ずっと、心が麻痺してて当時は何も感じなかった」
「でも心を開いてくれた。生涯、感謝する」
キスした後、ジャックは指輪の箱を上着ポケットから取り出し、跪いてプロポーズのスタイルに入る。
ところがメルはそれを止めて、「話があるの」と切り出す。
「妊娠した」
「本当?」
「昨日話すつもりが大変で」
「ノー、嬉しいことだ。すべて受け入れると言ったろ。予想とは違うけど」
「ジャック」
「俺たちの子だ。信じられない。すごいよ」
「違うの」
「どうした?何があっても大丈夫だ」
メルは首を横に振って、「父親はあなたじゃないかも」
〈シーズン3終わり〉
VODは20社以上ありますが、その中から主なVOD6社を紹介します。U-NEXT、Netflix、Hulu、dTV、Amazonプライムビデオ、FODです。
大都会ロサンゼルスのER(緊急医療)で働いていた看護師だったが、あることをきっかけに心に傷を負ったメル。
彼女が癒しと社会復帰を求めて町の求人に応じてやって来たのはカリフォルニアの田舎町ヴァージンリバーだった。
ところが…。
\原作を日本語で読みたい方は↓/
ポチップ
『ヴァージンリバー』主な登場人物
- メル 主人公。看護師、助産師。ロサンゼルスの病院で活躍していたが、あることをきっかけに「うつ」になり、癒しと復帰を求めて田舎町ヴァージンリバーに。
- ジャック 田舎のレストランバーの経営者。元海兵隊員。戦争時の経験が心の傷(PTSD)に。姓はシェリダン。
- プリーチャー 本当の名はジョン・ミドルトン。ジャックの海兵隊時代の戦友で、今はジャックの店のシェフ。ペイジに好意を寄せる。
- ジョーイ メルの歳の離れた姉。両親を早く亡くしたメルにとって親代わりだが、メルを子供扱いするため、メルは「姉離れ」しようとする。姓はバーンズ。
- シャーメイン 2年前からジャックとは大人の関係のはずだったが、ジャックに真剣に惚れてしまい、妊娠も。ジャックのメルへの好意に気づいている。美容師。姓はロバーツ。
- ホープ マリンズ医師と婚姻関係にあるが、20年前の彼の不貞で別居し、今に。町長として看護師のメルを町に招く。姓はマックレア。
- ドク ヴァーノン・マリンズ。町で唯一の医師で通称ドク。シカゴでは大病院のお偉いさんだったが、辞職し、ヴァージンリバーに。文学を専攻していたが、田舎の開業医だった父親の影響で医師の道へ。
- リッキー ジャックのバーで働き、高校を卒業したらすぐに海兵隊に参加したいと考えている。リジーに恋する。
- ブレイディ ジャックと一緒にかつて海兵隊員で、民間人の生活に再適応するのに苦労している。プリーチャーはブレイディに、「お前のせいで腎臓を失った。ロナガンは死に、ジャックは…」と言う。
- マーク メルの亡き夫
- カルヴィン 違法大麻栽培場のボス
- ペイジ 「ペイジズ・ベイクアウェイ」という名前のベーカリー・トラックのオーナー。男の子がいる。本当の名は、ミッシェル・ローガン。
- ジミー カルビンの右腕
- バート・ゴードン 地元のレッカー車の運転手
- リリー 牧場主。夫を半年前に亡くしたが身ごもっていたことが判明。コニーやホープの友人。
- コニー 雑貨店主。ウワサ好き。ホープの友人。
- リジー コニーの姪。リッキーの恋人に。
- ミュリエル 女優。ドクに惹かれ彼を狙っている。
- リディ ジャックの店でアルバイトをするリッキーの祖母。
- ブリー ジャックの妹。弁護士として都会でバリバリ働いていたが、仕事を辞めてヴァージンリバーに戻って来る。シーズン3から。
- タラ リリーの娘。シーズン3から
- パーカー リジーの元カレ。