日本には、いわゆる「SIMフリーのGalaxy」がありません。
もっと厳密に言うと「国内のどの通信事業者(キャリア)でもエリアに支障なく利用できるGalaxy」が存在しません。
日本ではauまたはドコモのスマートフォンという位置づけで、原則各社ブランドでの販売のみに留まっています。
しかし海外に目を向けてみると、SIMフリーのGalaxyはたくさん存在します。
機種によっては日本の全キャリアで利用できるものも存在し、かなり使い勝手が良いものもあります。
そんな海外版Galaxyを購入するメリットとデメリット、海外版をオススメできる人、できない人(向いている人・向いていない人)について解説していきます。
メリット①:キャリア要素がない
日本ではau版はauの仕様に、ドコモ版はドコモの仕様になっており、押しつけがましい余計なキャリア要素が含まれています。
特にドコモ版で顕著であり、ほとんどのアプリがアンインストールすることさえ出来ず、また強制的にドコモ絵文字が適用され、視認性や使いやすさに悪影響を及ぼしています。
海外版ではそういったキャリアのしがらみに囚われないモデルが数多く存在し、快適に利用することができます。
ただし、一部の国のモデルによってはキャリア要素の入ったモデルも存在するため、注意が必要です。
日本に流通する韓国版のほとんどは現地のキャリア版であり、キャリアアプリが大量に入っているモデルに遭遇する可能性があります。
ただしこれらのアプリは全て削除することができ、またキャリアロゴが本体に刻まれているといったことはないため、ドコモ版より主張が激しくありません。
メリット②:対応バンドが豊富
日本のGalaxyは、au・UQ版であればauの周波数のみ、ドコモ版であればドコモの周波数のみしか対応しておらず、適切なキャリアの回線を使用しないと利用できるエリアが狭まります。
一方で海外版のGalaxyは、国を跨いでも快適に利用できるよう様々な周波数に対応していることが多く、日本でもエリアに支障なく利用できるモデルが多数存在しています。
イギリス版Galaxy S21 Ultraでは上記のように様々な周波数に対応しており、スペック上は概ね日本でもキャリア問わず利用できるようになっています。
一方で国内版(ドコモ専売)のGalaxy S21 Ultraでは、スペック表を見る限り以下の対応バンドとなっています。
2G GSM | GSM850, GSM900, DCS1800, PCS1900 |
3G UMTS | B1(2100), B5(850) |
4G FDD LTE | B1(2100), B3(1800), B4(AWS), B5(850), B7(2600), B12(700), B13(700), B19(800), B21(1500), B28(700) |
4G TDD LTE | B38(2600), B39(1900), B40(2300), B41(2500), B42(3500) |
5G FDD Sub6 | 非対応 |
5G TDD Sub6 | n78(3500), n79(4500) |
5G TDD mmWave | n257(28000) |
このように、自社の周波数と多少の国際ローミング用周波数の対応のみに留まり、他国のモデルと比べても明らかに対応バンドが少ないことが分かります。
特に各社カバレッジに最も貢献している1GHz(1000MHz)未満のメイン周波数は、ドコモ専用のB19(800)のみの対応に留まっており、他社がメインで使用しているB8(900), B18(800)またはB26(850)には一切対応していません。
つまり国内版S21 UltraはSIMロックの有無に関係なく、日本ではドコモでしか十分に利用することが出来ません。
国内版はドコモの周波数しか対応していないのに、海外版は日本の全キャリアの主要周波数に対応しているという逆転現象が起きてしまっているのが現状です。
メリット③:選択肢が広まる
サムスンは国ごとに少しずつラインナップを変更しています。そのため海外版に目を向けると、日本では発売されていないGalaxyも選択肢に入れることができます。
また同じ機種であっても、日本未発売のカラーを入手できたりします。
選択肢が多ければ、より良い製品に出会える可能性が高くなり、満足度が向上するでしょう。
実際に筆者もA52 5Gよりスペックが向上した、日本未発売のA52s 5Gを購入して非常に満足しています。
メリット④:いち早く最新モデルを入手できる
国内版Galaxyは、グローバルの発表から非常に遅れて発売されることで有名です。これはキャリア要素の導入や、おサイフケータイの対応などといった独自の設計が加わるためです。
グローバルでの発売から数か月待たされるため、日本で発売する頃にはもう海外ではブームが過ぎている…なんてことがザラです。
逆に言えば、先に発売されている海外版を購入することで、一足先に新しいGalaxyをフライングゲットすることができるということになります。
メリット⑤:デュアルSIMやeSIMが利用できる
国内版GalaxyはデュアルSIMどころか、eSIMさえも対応していません。
キャリアでの限定販売であることから、複数のSIMを挿して利用することや、長らく対応が見送られていたeSIMでの契約を前提としていなかったためです。
しかし海外版では対応しているケースもあり、好みに応じて選択することができます。
ただし販売地域によっては非対応の場合もあるため、モデル型番や販売元はしっかりと確認しましょう。
デメリット①:無線通信に難あり
これまでメリットだけを紹介してきたので、まるで海外版は国内版の上位互換であるかのように見えてしまいますが、そうではありません。
日本のユーザーが使用することを想定していないので、基本的に通信速度は国内版よりも遅いです。
現在の4Gや5Gはキャリアアグリゲーションによって高速な通信速度を実現していますが、海外版はそれに対応していないことが多いため、国内版よりも混雑の影響を受けやすくなります。つまり、通信速度が著しく低下してしまいます。
また海外版のGalaxyは、日本で無線通信を行うにあたって必要となる認証である技適(技術基準適合証明)が確認できません。
そのため4Gや5Gはおろか、WiFiやBluetoothの利用でさえ電波法違反として罰せられる可能性があります。
これらの無線通信は全て自己責任において利用する(非推奨)か、全て有線通信で利用することとなります。
デメリット②:国内の公式サポートは一切利用できない
サムスンは有償・無償に関わらず、原則国内版のみしか修理などといったサポートを受け付けていません。
海外版で故障などが発生した場合、初期不良であったとしても、国内の正規サポートを頼ることは一切出来ません。
ただ購入元によっては独自にサポートを受け付ている場合があるため、アフターサポートについては十分に確認しましょう。
デメリット③:一定の知識が必要
程度の大小はありますが、同じ名称のGalaxyでも販売地域によって仕様が異なります。
そのため海外版Galaxyを取り扱う流通業者によっては、間違った対応バンドを記載しているケースが多々あります。
地域ごとに存在するサムスンの公式サイトやニュースリリースなどを確認したり、各モデル型番の仕様などを把握する必要があるため、海外版を使用するにあたっては相応の知識が求められます。
完璧に把握する必要はないものの、一定の知識がないと購入してから後悔する可能性があるため、ハードルは決して低くないでしょう。
英国と日本のGalaxy S21 Ultraのスペックを見ても、まずCPUの周波数から異なることが分かります。
オススメできる人・できない人
これらのメリット・デメリットをふまえた上で、海外版Galaxyをオススメできる人、できない人をまとめます。
海外版をオススメできる人
- 一定の知識を持っている、または興味がある
- 自己責任において利用する覚悟がある
- いち早く新しいものをゲットしたい
- 日本未発売のモノに惹かれる
海外版をオススメできない人
- 手厚いサポートが欲しい
- 快適な通信を求めている
- 何も考えずに安心して使える
- 極力少ない出費で購入したい
逆に国内版にしかないメリットとしては、一定期間使用後にキャリアに返却すると一定額の支払いが免除されるいつでもカエドキプログラムやスマホトクするプログラムといった、分割プログラムが充実している点が挙げられます。
また上記には記載していないですが、おサイフケータイ(FeliCa)は国内版しか対応していません。これを利用したい場合、海外版という選択肢はなくなります。
これを利用することで実質支払い価格がかなり安くなるので、少ない出費で購入したい方は国内版がオススメです。
また近年のGalaxyは国内外問わずソフトウェアアップデートが3年以上保証されていることも多いです。アップデートの頻度こそ高くはないものの、国内版だけアップデートされずに取り残されるということはありません。
結論としては一長一短であり、それぞれ異なるメリットが存在します。
オススメできる条件に当てはまる人は海外版を、オススメできない条件に当てはまる人は国内版を是非検討してみてください。
両方購入してみても良いかも?