新型コロナウイルスによって大打撃を受けているエンタメ業界。ライブの中止や上映の延期など、苦しい状況が続いています。
そんななか、活動を制限されているアーティストを支援するために現在開催されているのが、バーチャル音楽ライブ「YOU MAKE SHIBUYA VIRTUAL MUSIC LIVE powered by au 5G」。会場は渋谷区公認の配信プラットフォームである「バーチャル渋谷」内に作られたライブハウス。4月16日から5月23日のあいだの計20日間、100組のアーティストが出演しました。今回はそのライブを実際に体験してみたので詳細をレポートしたいと思います。
ライブ会場はスクランブル交差点の地下
そもそも渋谷区は、KDDIなどの参画企業と「渋谷5Gエンターテインメントプロジェクト」を始動し、渋谷の文化・エンタメを支えることを目的にさまざま取り組みを行っています。昨年2月には、KDDIがau 5Gを用いて東京オリンピックが開催された1964年の渋谷の街にタイムスリップするイベントを開催しました。
今回のバーチャルライブも同プロジェクト内のクラウドファンディングの一環として、コロナ禍で活動を制限されたアーティストに発信の場所と機会を提供することが目的でした。渋谷の街を再現したVRイベント空間「バーチャル渋谷」内に、バーチャルライブハウス「SHIBUYA UNDER SCRAMBLE powered by au 5G」をオープンし、ライブを開催しました。
バーチャル渋谷には、バーチャルSNSアプリ「cluster」からアクセス。アカウントを作成し、「バーチャル渋谷」を選択すると渋谷のスクランブル交差点を自由に歩くことができます。現実では地下鉄の渋谷駅に通じる階段が、ライブハウスへの入口です。
階段を下っていくと、スクランブル交差点の地下にバーチャル空間が広がっています。ここはまだエントランスの部分で、アバターの操作方法を音声やパネル表示で教えてくれます。ステージ空間には、エントランス奥にあるゲートを通って入ります。その前に、今日のタイムテーブルをチェックします。
操作に慣れたり出演者をチェックしたりしていると、「これリアルと同じだ」と気が付きました。実際のライブハウスに行くときも、地下への階段を下りてチケットを見せて、飲み物を買ったりタイムテーブルを見たりしますよね。そのときと同じワクワクとドキドキが(程度の差はあれど)味わえるんです。
いよいよライブの開始時刻。ゲートを通りましょう。
ひとりではなく「みんなと一緒に見ている」感覚
ゲートを抜けると、正面にステージとステージ全体を映すスクリーン。さらに、両脇には別視点の映像を見られるスクリーンがかかっています。異なる角度の映像が見られるのは配信ならではの魅力。最前列に詰める人もいれば、少し離れた場所に陣取る人もいて、このあたりはリアルのライブさながらの雰囲気があります。
実はアバターは移動だけでなく、ジャンプや拍手といったアクションを取れます。画面内のボタンをタップして、テンポの速い曲にあわせてみんなでジャンプしたり、ギターソロに拍手をしたりできます。ただ視聴するだけでなく自分からアクションできるのは、自由度が高くてとても楽しめました。
こうした他の人のアクションを見るのもおもしろくて、なかにはおそらく上下の視点移動を繰り返しているのか、ヘドバンしている人も見かけました(笑)。コロナ禍では音楽や演劇などさまざまなジャンルでライブ配信が盛んに行われるようになりましたが、自分と同じ視聴者の存在を感じられる機会はあまりありません。だからこそ、「みんなと一緒に見ている」感覚が新鮮でした。
ただ、アーティストにはこちらの様子は見えない模様。「盛り上がっていきましょー!」の呼びかけに精一杯応えられないのがなんとももどかしく……。視聴者同士だけでなく、アーティストともアクションを共有できたら、リアルともまたひと味ちがう体験ができるのではないでしょうか。
また、リアルのライブのように物販があったらおもしろいなと思います。clusterアプリではアバターの顔にアイコンを貼ったり、他サービスで購入・造形したカスタムアバターを使ったりできるのですが、着せ替え機能のようなイメージでTシャツやタオルなどアーティストのグッズを身に着けられたら、また今度はグッズを身に着けてバーチャルライブに参加したり、ファン同士がそのグッズを見てアクションしたり、という楽しみかたができそうです。
映画や音楽、演劇、スポーツ観戦など、コロナ禍のエンタメでは単に見る機会がなくなったのに加えて、「誰かと一緒に見る・応援する」という体験が失われたのだと、今回バーチャルライブを視聴して感じました(もちろん、1人で見ることもとても楽しいことです)。
しかし、こうした他者の存在を感じられるような配信形式は、もっと広まってほしいところ。出演者も含めて参加者どうしの接点や共有する感覚を生み出せれば、コロナ禍でのライブもさらにおもしろいものになるはずです。
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