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 こんにちは、佐々木と申します。2007年に「デスクトップ百景」で執筆の機会をいただいてから14年、今回は、在宅で働く際に活躍している書斎のデスクトップについて書かせていただきます。どうぞご笑覧ください。

 書斎づくりに真剣になったきっかけは、2012年に刊行された『あたらしい書斎』(著・いしたにまさき)です。まさかこんなかたちで、こんなにもはやく、こうした状況が実現するとは思っていなかったのですが、結果的に、万全の状態で在宅ワークの時代を迎えられたのはこの本のおかげです。では、その書斎のポイントは何か? 9年前の自分がハイライトしていたのはこんな一節でした。

「モバイル」や「ノマド」など、場所に縛られない働き方が注目されていますが、本書はある意味でそれに堂々と逆行する、「書斎」がテーマです。(中略) 「書斎」と聞くと自分とは縁遠いものだと思う人もいるかもしれません。しかし、 本来「書斎」とは、学んだり考えたりするための部屋を指します 。 (中略)

従来、「書斎」は閉鎖された空間で、コミュニケーションの場ではありませんでした。しかし、ウェブに接続することで、 私たちは「開かれた書斎」と呼ぶべき、新しい役割を持つ書斎を手に入れることができます

 太字部分は私の手によるものですが、今読んでも膝を打ちたくなるような内容です。これらを実現するために行った工夫こそが、今回ご紹介したい内容となります。

学んだり考えたりする書斎のための机と本棚

まずはじめに、机と本棚の写真をご覧いただきたいと思います。

横長の机に、資料を全て開いておきます。机はいわば、数万ピクセル超えのディスプレイのようなもの

3つの本棚を使い分けて積読を構造化。次に読む積読、資料として再利用する積読、そして純積読

 在宅ワークを本格的にはじめて実感した最大のメリットは、机が広く使えること。インプットすべき資料、やりかけの仕事、そしてアイデアの種。それらをストレスなく自由自在に扱えます。どんなに大きなディスプレイも、本物のデスクトップの広さには敵いません。

 そして、それを独占できるのも書斎のよいところです。時間が経ったら資料を畳んで別の会議室に移動しなければいけない、なんてこともありません。複雑性で抽象度が高い仕事を中断するときであっても、書斎のデスクトップに着けばすぐに思考のスイッチが入ります。

 学んだり考えたりするには、本棚も重要です。電子書籍を最大限活用していても、紙の本が活躍する機会は一向に減りませんので、それら両方をうまく活用していく必要があります。そのため、書斎では3つの本棚を使い分けて積読を管理をしています。

 一、次に読むため脇に置いておく本棚。二、読み終えた後に資料としてすぐ再利用できる状態にしておくための本棚。三、「読まねば!」というプレッシャーを与える純粋な積読のための本棚。興味や仕事によってインプットの優先度が変わったときは、これらの本棚の中身を入れ替えて、計画的に学んだり考えたりしていきます。

開かれた書斎のためのカンバンとプリンター

 続いて、机の背面にある壁の写真をご覧いただきたいと思います。

クローゼットの扉をカンバンに。左からBacklog / To do / On going / Done。複雑性の高い仕事も一目瞭然

扉を開くと、プリンターが出現。デジタルとアナログを自由に行き来するために活躍する受肉機

 「開かれた書斎」というと、今ではオンライン会議システムで自由につながる状態のことを最初にイメージされるかもしれません。でも、それだけではありません。

 書斎という空間が、紙というアナログの資料のポテンシャルを最大限に引き出してくれることは前述した通りです。それを、カメラやスキャナーといったデバイスを通じてデジタル化し、オンラインでのコラボレーションに活用すること。さらに、オンラインで使ったり作ったりした資料を、プリンターを通じてアナログ化すること。アナログ<>デジタルとオフライン<>オンラインの自由自在な行き来。これらがスムーズに行える状態が「開かれている」ということです。

 たとえば私は、約20年前に書いた楽譜であっても、30年前に書いたTRPGのシナリオであっても、すぐさま相手に送ることができます。つまり、この書斎は過去に向かっても開かれているわけです。

 ちなみに、私が使っているのはエプソンのエコタンク方式のプリンターです。1枚あたりの費用が非常に安いのが特徴で、100ページを超えるようなスライドや小説のゲラもどんどん印刷してしまいます。また、デジタルやオンラインで作った資料もどんどん印刷して、それを壁に貼ってカンバン方式で仕事の管理も行っています。

 iPad Proにもかなりのことができるし、それにしかできないことも多々あるのは重々承知しているのですが、書斎における情報の一覧性や、思考のスイッチが入りやすくなるという体験においては、このやり方が気に入っています。

 在宅ワークをしてみたら、実際に会う人の数はたしかに減りました。でも、これまで深いところにあったもの(アナログなものであったり、昔のものであったり)をすぐに取り出して見せたり渡したりできるようになったという意味で、以前よりも開かれた状態になりました。それによって、より深いつきあいができたこともあります。これは体験してみないとわからなかったことで、今後もっと突き詰めてみたいと思います(実家に眠っている資料を掘り起こしたりとか)。

佐々木大輔 @sasakillの在宅ワーク環境

  • メインPC:MacBook Pro(13-inch、2017、Four Thunderbolt 3 Ports)
  • ディスプレイ:2画面
  • キーボード:Apple Wireless Keyboard A1314
  • マウス/トラックボール/トラックパッド:Apple Magic TrackpadA1339
  • カメラ:ロジクールC920 PRO HDウェブカメラ
  • マイク/ヘッドフォン/スピーカー:マイク: ロジクールC920 PRO HDウェブカメラ、スピーカー: Olasonic TW-S7
  • ビデオ会議サービス:Google Meet、Zoom
  • 机:チェリーの一枚板
  • 椅子:ハーマンミラーのセイルチェアをkagg.jpでサブスク
  • その他小物:EPSON プリンター EP-M570T、山善 突っ張り パーテーション

佐々木大輔 @sasakill

1980年、岩手県遠野市生まれ。株式会社インフォバーン、株式会社ライブドアからLINE株式会社を経て、2017年11月スマートニュース株式会社に入社。執行役員事業企画担当。また、株式会社Sekappyと株式会社NextCommonsの顧問を兼務。著書に『僕らのネクロマンシー』(NUMABOOKS、第53回造本装幀コンクールにて大賞)。座右の銘は公私混“働”と”諸”志貫徹。