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『RTA in Japan』(公式サイト)より

リアルタイムアタック、略して“RTA”というゲームの遊び方をご存じでしょうか。簡単に言えば、ゲームをクリアするまでの時間を競う遊び方で、ゲーム内で流れている時間、いわゆる“プレイ時間”ではなく、よーいドンでタイムを計ってゴールした瞬間に時計を止める、現実で流れている時間を測る方法を言います。

タイムアタックといえばポピュラーな遊び方に思えますが、今その世界は恐ろしく深淵になっていまして、超絶テクニックや、誰も思いつかないようなバグ技を使った方法、あるいは絶対不可能に思えるような条件を付けてのプレイなどなど、観るものを驚愕させる様々なRTAが多種多様なゲームで行われています。

そんなRTAを集めたイベントがもうすぐ始まります。それが『RTA in Japan Winter 2021』です。『RTA in Japan』はRTA文化の発展を目指して行われているイベントなんですが、イベント自体がもうちょっと普通じゃありません。今回のイベント日程は2021年12月26日(日)12時~31日(金)20時19分で、その間ぶっ通しで様々なRTAが行われます。昼間はもちろん、深夜も、明け方もです。6日間常にRTAを行っていて、期間中ずっとTwitchによる生放送を配信し続けています。出場予定タイトル、その数なんと91。夏に行われた『RTA in Japan Summer 2021』では、『リングフィットアドベンチャー』のRTAが大変な盛り上がりとなり、同時視聴者数約18万人にも達しました。

ぜひご覧になっていただきたいと思うのですが、何しろ6日間ぶっ通しの91タイトルともなれば、どのチャレンジを観ようか迷ってしまいますよね。また、RTA独特の用語も初めての人にはわかりにくいかもしれません。そこで、用語や、注目の競技などもいくつかご紹介したいと思います。

■Any%ってなに? 観る競技を探す時に知っておきたい用語

『RTA in Japan Winter 2021』スケジュールより

まずは『RTA in Japan』の公式サイトに行き、イベントスケジュールを観てみましょう。

『RTA in Japan』(公式サイト)
『RTA in Japan Winter 2021』スケジュール
『RTA in Japan』(Twitch配信)

ゲームタイトルや、開始の日時をチェックしたら、“Estimate”を確認しましょう。Estimateは予定時間という意味で、これを見ればおおむねの視聴時間が分かりますし、また、やろうとしているチャレンジがどのくらいの時間でのクリアを目指しているかも分かります。ゲームの中身をしっていれば、ほとんどのタイトルで尋常じゃなく短い時間が記載されていることに気が付くと思います。

次にカテゴリを確認してみましょう。英語で書いてあって、読めば分かるものもありますが、見慣れない文字もあるかと思います。ゲームによって多様な条件があるので全ては網羅できませんが、メジャーなものをいくつかご紹介しておきたいと思います。

特に多く目につくのは“Any%”ですね。これはクリアの条件を問わないというものです。逆に“100%”と書いてあれば、すべての要素をコンプリートしてクリアということになります。何をもって全ての要素に当たるかは、ゲームごとにレギュレーションが定められます。

“New Game”と書かれているものは、初めからやるということですが、それがわざわざ書かれている場合は、クリア後の引継ぎ要素などが使われるゲームにおいて、そういったものを使用せずまっさらな状態からやります、という宣言になります。

“Glitch”はバグや不具合を利用したクリア方法を意味します。日本語でいうなら“裏技”と呼ぶのが良いでしょうか。逆に“Glitchless”や“No Major Glitches”と書かれている場合には、そういったバグの類を使用しないということになります。Glitchが使われているものでは、なんでもありで驚きの発想によるクリアが楽しめますし、Glitchが無いものはプレイヤーの技量の高さが分かりやすいと思います。

■どれを見ればいいか迷ってしまう人の為の見どころ紹介

『[Blindfolded] 70 star Speedrun for PB! (practice for !RIJ)』(Twitch)より 『RTA in Japan Winter 2021』に向けて目隠しマリオ64の練習をするBubzia氏

たくさんありすぎてどれを選べばいいか分からない、という人のために、いくつか見どころをご紹介してみたいと思います。

28日(火)21時10分からの『スーパーマリオ64』は予定時間2時間10分で、カテゴリに70枚と書いてありますが、これはスターを70枚集めてクリアをするという意味です。Glitchを使って、0枚や16枚でクリアする方法もある中で、70枚はクリアに必要な最低枚数ということで、正規のルートを2時間程度でクリアする挑戦ということになります。普通にゲームを遊んでる感覚からするとこれだけでも十分凄そうですが、恐ろしいのがもうひとつの条件、なんとこれを“目隠し”でプレイします。音を頼りにしたり、コントローラーの入力を毎回同じにできるようにパターン化するなど、常人には考えも及ばないような神業が見れそうです。

29日(水)20時の『ドラゴンクエスト3』は予定時間が30分。『ドラクエ』をたったの30分でクリアって意味が分からないと思うかもしれませんが、もしかすると、もっとあっという間に終わってしまうかもしれません。

カテゴリが“Any%任意コード実行”となっていまして、Glitchを使った方法で正規ルートをすっ飛ばしてクリアします。昨年開催された『RTA in Japan 2020』ではファミコンをホットプレートで熱して22分7秒でクリアするという異次元の戦いが繰り広げられ、話題になっていたのが、この『ドラクエ3』RTAでした。しかし、2021年の戦いは異次元の向こう側に行っており、カセットを途中で差し替える、『ファミリーベーシック』を駆使するなどの方法で、数分から数十秒の世界にまで突入しているようです。当日は3人の選手による一発勝負のレース形式となり、記録はもちろんのこと、安定した再現性も求められ、ゲーマーの常識を完全に超越した戦いが見られそうです。

最終日31日(金)17時16分スタートの『ゼルダの伝説 時のオカリナ』は、使用ソフトがWiiの『大乱闘スマッシュブラザーズX』になります。最初から「何を言ってるんだ?」と思われそうですが、『スマブラX』には『名作トライアル体験版』といって、参戦ファイターの出典作品となる、いくつかのレトロゲームが遊べるモードが搭載されていました。これは、過去のハードのゲームをWiiで遊べるバーチャルコンソールというサービスのお試し版なんですね。

ただし体験版ということで5分の制限時間がついています。その『名作トライアル体験版』の『時オカ』をクリアしよう、という趣旨のチャレンジになり、4人の選手がレース形式で挑みます。そもそも制限時間があるソフトの使用ということで、自然とタイムは5分以内になり、当然普通の方法ではクリアできるわけがないので、Glitchを駆使する形と思われます。チャレンジのスタート地点がすでに理解できる範疇を逸脱していて、クラクラしそうですね。

もちろん、今回ご紹介した以外にも、面白い挑戦が目白押しの『RTA in Japa Winter 2021』。自分のやったことのあるゲームを観て楽しむもよし、ご紹介したような話題のチャレンジを観に行くもよし、暇になったらとりあえず何かやってるので観てみる、そんな楽しみ方もアリだと思います。ゲームの楽しみ方の広大さ、多様さ、そして深淵がうかがえるこのイベント、ぜひご覧になってみてください。