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アニメやドラマを見ているとき、「この主人公の家の間取り、どうなってるんだろう?」と思ったことはないだろうか。僕はよくある。基本的に空間把握が苦手(方向音痴です)なので、図面に起こしたりはしたことはないが、頭の中で「ああ、この奥に寝室あるなぁ」なんて考えたりすることはある。

 

しかし、基本的に空想の世界。全体の間取りが映し出されることもなく、全貌はわからないままのことが多い。

 

名作マンガに出てくるあの部屋の間取りを再現

そんな疑問に真っ向から立ち向かったのが『名作マンガの間取り』(景山明仁・著/SBクリエイティブ・刊)だ。著者は不動産業・建築コンサルタントのかたわら、息抜きにマンガの間取りを作図しているという。アニメ以外にもマンガやドラマ、小説などの間取りも出てくる。

 

アニメにかなり精通しているらしく、新旧のアニメに出てくる家の間取りが描かれている。外観とアニメ内に出てくるさまざまなシーンを分析し、できる限り実際に住めるように間取りを起こしているという。正直、アニメやドラマに出てくる部屋の間取りなんて、あってないようなものだし、その都度変わってるなんてこともザラ。それをちゃんと現実世界の間取りに落とし込んでいるというところに、プロの魂を感じる。

 

外観と間取りがかみ合わないジレンマ

定番のところではサザエさんの家の間取り。世田谷区の平屋。玄関を入ってすぐにカツオとワカメの部屋で、その向かいがマスオさんとサザエさん、タラちゃんの部屋。テレビのある居間と客間はつながっており、客間と波平さんフネさんの部屋がつながっている。トイレは縁側の突き当たりらしい。

 

僕の好きな『めぞん一刻』の一刻館の間取りもある。1階の部屋は二間あるなとは思っていたが、著者によると外観と間取りが一致しないそう。

 

外観と各部屋の配置がそれぞれしっかり描かれているが、しっかりしすぎているだけに、間取りを優先すると外観が成り立たず、外観を優先すると間取りが成り立たないというジレンマ。

(『名作マンガの間取り』より引用)

 

専門家ならではの悩みと言える。僕らが見たって、全然わからない。

 

その他、アニメ『日常』の東雲研究所、『けいおん!』の平沢唯の自宅、『ドカベン』の山田畳店、『ちびまる子ちゃん』のさくら友蔵邸。『ドラえもん』の野比家に至っては、新旧両方が掲載されている。『アルプスの少女ハイジ』や『うさぎドロップ』『3月のライオン』『おおかみこどもの雨と雪』などなど、かなり幅広いアニメが登場するので、ぜひ見ていただきたい。

 

『注文の多い料理店』山猫軒の間取り

変わったところでは、『吾輩は猫である』『注文の多い料理店』といった小説に出てくる間取りも再現している。アニメやマンガ、ドラマと違い、実際に映像として出てくることはないので、再現するのにはかなり根気がいったことだろう。

 

ぜひ見ていただきたいのが、『注文の多い料理店』の山猫軒。あくまでも著者の想像のようだが、とにかく部屋がどんどんつながっている感じで、間取りを見ると小説を思い出す。これから『注文の多い料理店』を読むときは、この間取りが頭に浮かんでくることだろう。

 

実際にはないものを、具現化するというのは結構難しい。それが間取りとなればなおさらだろう。空想の世界のものだから矛盾も多数あるはず。それをきちんと現実世界でも成立するようにしているのは、とてもおもしろい。こういう知的な遊びができるような人間に生まれたかったなぁ。

 

 

【書籍紹介】

名作マンガの間取り

著者:影山明仁
発行:SBクリエイティブ

『NANA』『海街diary』『時をかける少女』『宇宙兄弟』『3月のライオン』『しろくまカフェ』『美味しんぼ』『ドラえもん』『究極超人あ~る』など、全71物件!

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