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次々に世界的ヒット作が登場している韓国ドラマですが、昔の作品にはひと味違う魅力がありました。韓流ナビゲーターの田代親世さんに、年末年始におすすめな韓ドラを教えていただく短期集中連載。今回は、年末年始に観てほしい不朽の名作を紹介。

猫のような男にキュンと切ない『屋根部屋のネコ』(2003年)

◆猫のような魅力の男が住みついて

平凡で冴えないけど一生懸命就職をしようとしているヒロインを演じるのが、ナム・ジョンウン(チョン・ダビン)。彼女がひとり暮らしを始めた屋根部屋に、司法試験合格を目指す遊び人の学生イ・ジョンミン(キム・レウォン)が、ひょんなことから住みつくことに…。猫のような魅力のジョンミンにジョンウンは恋心を抱くようになるけれど、彼には好きな女性がいて… と展開していきます。

© MBC 2003 All Rights Reserved

◆猫背のジャージ姿に女子たちがハマった

キム・レウォンのセクシーさが見どころ。いい加減で調子がよくて、もう、まったく! っていうぐらい図々しいんだけど、とろける笑顔で甘えられると、憎めない。

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ふにゃふにゃしてるのに、セクシーキュートがさく裂しています。いつもジャージにサンダル姿で、ちょっと背中を丸めてて猫背。そんな男性がこんなセクシーでかっこよく思えるなんて! というのが不思議です。たくさんの女子がこのジャージ姿にハマって、キム・レウォンはこの作品で大ブレイクしました。

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◆大好きになった彼は違う女性のことが好きで

明るくて楽しいし、その上ほろりとも来ちゃいます。ヒロインはなんだかんだ反発しながら彼を大好きになっちゃうんだけど、彼は違う女性が好きで。胸キュン度と切ない度が非常に高い、韓国ドラマの王道です。

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御曹司役チソンが苦悩する『ラストダンスは私と一緒に』(2004年~2005年)

◆記憶が失われてもゆるがない御曹司の純愛

古き良き時代のハリウッド映画が好きだったら堪りません! 記憶喪失になってしまう男性が主人公で、韓国ドラマ要素が盛り込まれたドラマチックな愛の物語。名作映画『心の旅路』(1942年)を彷彿とさせます。

主人公のカン・ヒョヌ(チソン)は、父親と対立する財閥の御曹司。家出をしたときに事故に遭い、記憶を失ってしまいます。

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そんな彼を助けたのが、田舎でペンションを営む純粋な娘チ・ウンス(ユジン)で、二人は愛し合うようになります。

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御曹司カン・ヒョヌは、記憶が戻ったときに、記憶を失っていた間の出来事を忘れてしまいます。カン・ヒョヌが突然消えていったところからヒロインの苦しい愛が始まっていく。彼女が探し当てたとき、彼は彼女のことを忘れて他の女性(イ・ボヨン)と婚約しているんです。それでも、一途な純愛は何があってもゆるがないのね! という感動を味わえます。

◆「ああもう涼しげー! 清潔感!」だったスーツ姿

見どころは、中盤以降のチソンのかっこよさでした。最初、ヒョヌ(チソン)はカメラマンになりたくて家を飛び出したのでひげをのばしていたりとカジュアルなんです。

記憶が戻ってからスーツ姿に身を包む御曹司感満点のチソンが、すごい! さっそうとした身のこなしで「ああ、もう涼しげー! 清潔感!」って感じだったんです。

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チソンは当時「瞳の貴公子」と呼ばれていました。静かな湖のように澄んだ賢そうな瞳が、愛に憂いていくわけですよ。まさに王子の苦悩でたまりません。「こういうの大好物!」っていう人、多いはずです。

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ちなみにチソンは、このドラマで共演したのがきっかけで、婚約者役だったイ・ボヨンと結婚しました。

『愛の不時着』のラブコメ部分と純愛部分が2作に

この2作の主役を演じたキム・レウォンもチソンも今は40代。いい味を出すようになったスター俳優が、若さに輝いていた頃の作品です。日本の女性たちは、こういう純愛や胸キュンで韓国ドラマにハマっていきました。

その後、ドラマのクオリティはどんどん高くなっています。最近では、ラブストーリーの中にサスペンスとかホラーとか特殊な職業の世界とか、いろいろな要素が入れ込まれるのが当たり前になりました。しかし、今になって、この2作を見ると、私たちはそもそもこういうのが好きだったんだ! と改めて思い出します。

例えば『愛の不時着』には、韓国ドラマの歴史を背負ったいろいろな要素が入っています。ラブコメ部分が『屋根部屋』だし、純愛部分が『ラストダンス』と言えるでしょう。

最新のドラマになれていると、画面が昔っぽいなと思ってしまうかもしれませんが、王道の胸キュンラブストーリーものぞいてみていただければと思います。

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「最近韓国ドラマを観るようになった方にも、新鮮だったりするかもしれません」と田代さんは言います。お正月に韓国ドラマの魅力の原点を探索してみるのはいかがでしょうか。

取材・文/新田由紀子