三角形の紙パッケージが目印の、高密度ポリエチレン製のマチ付きポリ袋「アイラップ」。調理器具を汚さず簡単に調理できるアイテムとして、昨今大きな注目を集めています。洗い物が少なくなったり同時調理ができたり、メリットはさまざま。今回は料理家のmakoさんに、アイラップを活用した、時短や防災に役立つレシピを教えていただきました。
「アイラップ」とは?
アイラップは、岩谷マテリアルが販売する“ラップのように使える”マチがついたポリ袋。通常のサイズの他にもサイズや用途にさまざまなバリエーションがあり、調理はもちろん調理以外のシーンでも幅広く使われています。
近頃急速に話題になっていますが、実はアイラップがリリースされたのは昭和51年(1976年)。なんと40年以上も前に“ティッシュのように箱入りにして、ポリ袋をもっと便利に”という発想から開発された商品なのです。
「現在、日本海側を中心とした地域では“ポリ袋=アイラップ”と呼ばれるくらい定着しています。当初は、日本全国のスーパーで販売されていましたが、15年で特許が切れてから類似競合商品が乱立し、販売地域は徐々に縮小するに至りました。しかし、山形県にある小売店のオーナーが気に入って商品を大量に陳列したことから、山形を起点に日本海側で定着していきました」(岩谷マテリアル株式会社・アイラップ公式Twitter担当者)
日本海側を中心とした地域から再び全国に広がりはじめたのは、2018年のこと。アイラップの公式Twitterで 「アイラップは全国区商品なのに売り上げの75%は新潟・山形・富山・石川・福井」とつぶやいたところから火がつきました。発売当初からほとんど変わらないレトロでかわいいデザインと、その使い勝手のよさから瞬く間に話題になり、今ではたくさんの人に愛されています。
商品ラインナップはさまざま
アイラップは約幅350・高さ210・マチ40mmの通常タイプ以外にも、さまざまなバリエーションがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
1. ポリ袋タイプのアイラップ
アイラップのほかに、ミニタイプの「アイラップミニ」や、エンボス加工されている「アイラップ100」、エンボス加工でミニタイプの「小さなふくろ」があります。調理で使われるだけでなく、保育園では子どもの汚れ物袋として活躍。また、ニオイ漏れが少ないと生ゴミの処理にも役立っています。
2. ジッパーつきの保存バッグ
冷蔵・冷凍保存に適しているジッパータイプは、マチなしでダブルジッパーの「アイラップWジッパー」と、マチでスタンド式になり、液体を入れるのに適している「アイラップスライドジッパーNEO」の2種類があります。冷凍庫で保存していたものを、そのまま電子レンジで解凍することができます。
3. おにぎりを作るためのラップ
熊本地震の際に食中毒が発生したことを教訓に開発された、ごはんに触れずにおにぎりが作れる清潔的なポケットフィルム。四角いフィルムの二辺が開き、そこからごはんを入れてにぎるだけ。付属のシールで止めて使うので、シールに「シャケ」「梅」などと具材の説明書きをすることも。また、ハンバーガーやイングリッシュマフィン、大福といった汚れやこぼれが気になる食品にも重宝しそうです。冷凍して温め直しも可能(油分には注意が必要です)。
4. 調理中の汚れ軽減に持ってこいのシートタイプ
主婦の声から生まれたというアイラップをシートタイプにした商品で、ラップのようにくっつかないのが大きな特徴です。まな板を汚したくないときに敷いたり、洗い物を増やさず置き場所を確保したり、野菜を包んだりサンドイッチをラッピングしたりすることもできます。洗い物を増やしたくないアウトドアで活躍しそうです。
低温調理、同時調理、非常食……用途いろいろ!
レシピで知るアイラップの魅力
アイラップは、袋の中に食材を入れて加熱することで低温調理ができたり、お鍋や食器が十分にない災害時の調理に役立ったりと、さまざまな使い方ができます。そこで、次のページからは、アイラップを使ったレシピを3つ紹介しましょう。ポリ袋調理のレシピ本がベストセラーとなっている料理家・makoさんに教えていただきます。
1. 低温調理で作れる「鶏チャーシュー」
2. いつものおかずが手軽になる「トマトハンバーグ」
3. 非常時に作りやすい「瓶詰めメンマのおこわ」
提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」
1.【アイラップで低温調理】
しっとり仕上がる! 鶏胸肉を使った「鶏チャーシュー」
一度は作ってみたい、鶏胸肉を使ったヘルシーなチャーシュー。低温調理器がなくても、アイラップに入れて炊飯器で保温することで、鶏胸肉がパサつかず、ジューシーに仕上がります。このままメインのおかずにするのはもちろん、丼にしたり、パンに挟んでサンドイッチにしたり、これからの季節は素麺や冷やし中華のトッピングにしてもいいですね。「甘みと旨みのあるオイスターソースを使うことで、調味料も少なく済むんですよ」(料理家・makoさん、以下同)
【材料(作りやすい分量)】
鶏胸肉……1枚(250g程度)
しょうゆ……大さじ1
オイスターソース……大さじ1
おろししょうが……3cm
【作り方】
1. 鶏胸肉の両面をフォークで刺す
「穴を開けることで味が染み込みやすくなります。もしもお肉の厚みに偏りがあったら、厚い部分は少し切り込みを入れて開き、平らにならしましょう」
2. すべての材料をアイラップに入れて揉み込む
「お肉の両面にしっかり味が馴染むように揉みます。全体的に色づけば大丈夫」
3. アイラップの空気を抜いて縛る
「なるべく空気をしっかり抜いて真空状態に近づけると、味が染み込みやすいですよ。また、加熱しているうちに膨張してしまう可能性があるので、お肉ぴったりのところで縛らず、余裕を持たせて縛ります」
4. フライパンまたは鍋に水を入れ、耐熱皿を敷く
「アイラップがしっかり浸かる大きさで、深さのあるフライパンか鍋で行いましょう。フライパンの底は高温になるので、必ず耐熱皿を敷いて調理してください」
5. 水が沸騰したら鶏胸肉をアイラップごと入れて5分茹でる
「アイラップがかぶるくらいのお湯の量で煮込みます。空気が抜け切れていないと浮いてきて表面が出てしまうので、その場合は途中でひっくり返してくださいね」
6. お湯ごと炊飯器に移して、1時間保温する
「このまま1時間放置しておけば、おいしい鶏チャーシューができあがります! 保温スイッチを押しておけば、買い物に出たり他のおかずを作ったりできるので、便利ですよ」
完成
おつゆは別のお皿に取っておき、いただくときにかけましょう。「切り分けてみて赤い部分があったら、もう一度炊飯器に戻して10分ほど保温時間を伸ばします。お肉に厚みがあったり、重なっていたりすると中心に火が通りにくくなってしまうので、たくさん作りたいときにも1袋に1枚の胸肉を入れて加熱してください」
続いて、アイラップで手を汚さずにお肉をこねられる「トマトハンバーグ」のレシピです。
提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」
2.【アイラップで手を汚さずごちそう作り】
ふっくらジューシー!「トマトソースのふんわりハンバーグ」
いつものおかずも、アイラップを使うことで、もっと効率よく手軽にできたらうれしいですよね。2品目は、誰もが大好きなハンバーグを作っていただきました。アイラップに材料を入れてこね、そのまま加熱するので、ボウルや手が油でベタベタ……ということもなく、洗い物が少なくて済みます。「加熱する前の状態のものをそのまま冷凍してしまえば、食べたいときにイチから作らなくて済みますよ」(料理家・makoさん、以下同)
【材料(2人前)】
<ハンバーグ>
あいびき肉……200g
卵……1個パン粉……大さじ4
塩こしょう……少々
<トマトソース>
トマトの水煮缶……200g
顆粒コンソメ……大さじ1/2
中濃ソース……大さじ1
【作り方】
1. ハンバーグの材料をアイラップに入れてよくこねる
「肉の粒がなくなり、粘ってくるとだんだんまとまりが出てくるので、そこまでこねてください。よく混ざったら、アイラップに空気を入れて膨らませてしっかり口を持ち、お肉を中で振ると、袋にくっついたお肉も剥がれてくれますよ」
2. 肉を半分に分けて形を整える
「厚さを均等にして広げたら、半分にしてハンバーグの形に整えていきます。ここまでの工程を袋の中でやってしまえるだけでも、すごく便利ですよね」
3. トマトソースの材料を合わせておいて入れる
「トマトソースの材料は先に混ぜておいて、アイラップに入れます。顆粒コンソメが溶けるように混ぜ合わせておくのですが、ケチャップやソースならそのまま入れてもかまいません」
4. 深めのフライパンか鍋でお湯を沸騰させたら、30分茹でる
「1品目と同じようにアイラップを真空に近い状態にして縛ったら、お湯を沸かして耐熱皿を敷いたフライパンで茹でていきます。次に紹介するおこわも一緒に入れたら、同時調理ができて時短になりますよ」
完成
トマトソースの中でしっとり煮込まれたハンバーグは、ふっくら柔らかい食感です。「今回は玉ねぎを入れず、より時短で手軽にできるレシピにしました。焼いて仕上げるハンバーグよりも水分が逃げにくくジューシーで、小さなお子さんでも食べやすいと思いますよ」
3つ目は、“もしもの時”の非常食としても覚えておきたい、「瓶詰めメンマのおこわ」です。
提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」
3. 【アイラップで“もしもの時”の非常食】
味付けしっかりで満足度が高い!「瓶詰めメンマのおこわ」
アイラップ調理のメリットは、“もしものとき”にも役立つということ。炊飯器がなくても、ごはんを炊けるんです。今回は、瓶詰めのメンマでおいしいおこわを炊いてみました。「非常食レシピなので、いろいろなおかずがなくてもこれだけで満足感を得られるよう、味を濃い目にしてあります。他におかずを食べる献立にするときはおしょうゆを半量にしてくださいね」(料理家・makoさん、以下同)
【材料(ごはん1合分)】
メンマ 50g
米……1/2合
もち米……1/2合
水……180ml(お米のみの場合は200ml)
しょうゆ……大さじ1
みりん……大さじ1/2
オイスターソース……大さじ1/2
ごま油……大さじ1/2
【作り方】
1. 研いだ米ともち米、水をアイラップに入れる
「時間があれば、水を入れたまま1時間ほど浸水させておきましょう」
2. アイラップにすべての材料を入れて、空気を抜いて縛る
「材料を入れたら軽く揉んで調味料を混ぜます。アイラップを縛るときは、なるべくお米が平らになるようにならしておきましょう」
3. フライパンでお湯を沸騰させたら、30分茹でる
「先ほどのハンバーグの横におこわの袋も入れます。このとき鍋肌に袋がくっついてしまうと、そこが溶けてしまう危険があるので、お皿にきちんと乗せ、縛り口が鍋肌につかないように加熱します。また、こちらも1品目と同様、空気が抜けていないと浮いてきてしまうので、その場合は途中で裏返しましょう」
完成
できあがったおこわは、もちもちで冷めてもおいしい一品になりました。お弁当やおにぎりにしてもいいですよね。「ガスコンロの火加減によっても時間が変わってくるので、お米の芯があるようだったら、もう一度縛って5分加熱しましょう。防災対策として瓶詰めや缶詰などの買い置きがあると、ごはんだけでなく少し目先の変わった味のものが作れますよ」
慌ただしい毎日の中で料理の時間が取れないときや、調理器具が満足に使えない防災レシピとしても、一度は使って覚えておきたいもの。その便利さに手放せなくなりそうです。
【プロフィール】
アイデア料理研究家 / mako
フードコーディネーター・元保育園栄養士・野菜ソムリエ。「家政婦マコ」としてヒルナンデスにも出演。ポリ袋を使ったレシピ本『予約の取れない家政婦マコのポリ袋でつくりおき』『伝説の家政婦mako 魔法のポリ袋レシピ』(ともにワニブックス)が大好評に。『世界一早い!家政婦makoのずぼら1分ごはん』(マガジンハウス)など、さまざまな時短・簡単調理のレシピアイデアを生んでいる。レシピ本は累計35万部に。
HP http://www.makofoods.com/