もっと詳しく

新型コロナウイルスのクラスターが発生した後も、キャンプ・ハンセン(奥)を出入りする米軍関係者たち。一部にはマスク未着用者もいた=沖縄県金武町で2021年12月24日午後2時40分、喜屋武真之介撮影
新型コロナウイルスのクラスターが発生した後も、キャンプ・ハンセン(奥)を出入りする米軍関係者たち。一部にはマスク未着用者もいた=沖縄県金武町で2021年12月24日午後2時40分、喜屋武真之介撮影

 米軍基地が集中する沖縄県で新型コロナウイルスの感染が急拡大している。感染力の強い変異株「オミクロン株」が基地を経由して市中に広がった可能性が高く、5日の県内の新規感染者数は昨夏の緊急事態宣言中以来となる600人台となった。同じく基地がある山口県でも感染者が急増しており、日本の水際対策が米軍に適用できない日米地位協定の規定と米軍の甘い感染防止対策が、国内のオミクロン株流行を早めた形だ。

 「オミクロン株の感染が市中でも確認され、倍速の勢いで置き換わりが進んでいる」。沖縄県内での急速なオミクロン株感染拡大を受け、まん延防止等重点措置の適用を政府に要請する方向で検討している玉城(たまき)デニー知事は5日、まん延防止措置について経済界の意見を聞く会議に出席し、強い危機感を示した。

 感染の第5波が全国を襲った2021年夏には人口当たりで全国最悪の感染状況が続いた沖縄県だが、11月以降は1日当たりの新規感染者数がゼロか1桁、多くても十数人にまで落ち着いていた。ところが、12月23日ごろからじわじわと増え始め、年明け3日には130人、4日に225人、5日に623人と、ここにきて2倍、3倍と加速度的に増え続けている。

 発端は米軍基地での感染拡大だ。21年12月上旬に米国から米軍嘉手納基地(嘉手納町など)を経由してキャンプ・ハンセン(金武町(きんちょう)など)に入った米海兵隊員の部隊で大規模なクラスター(感染者集団)が発生。在日米軍から日本政府への報告では、47%がオミクロン株による感染だった。県の発表によると、ハンセンでの感染者は12月15日以降、計515人に上るほか、感染は他の基地にも飛び火し、1月5日までにキャンプ瑞慶覧(ずけらん)(北谷町(ちゃたんちょう)など)で97人、嘉手納基地で87人の感染者が確認されている。

 米軍内での感染拡大は基地で働く日本人従業員にも波及している。防衛省沖縄防衛局によると、12月16日以降、25人の基地従業員の感染が確認された。県は基地従業員を対象に集中的にPCR検査を実施して封じ込めを図ったが、年末には基地と関わりのない感染者が確認され、年明け以降は市中感染が爆発的に広がった。1月2日に記者会見した玉城知事は基地従業員と同じ系統のオミクロン株が市中で広がっていることを図で示し、「米軍からのしみ出しが感染拡大の要因になっていることは間違いない」と明言した。

 基地から周辺住民に感染が広がる状況は米軍岩国基地がある山口県岩国市も同じだ。岩国基地では5日、過去最多となる182人の感染が確認され、21年末以降の米軍関係者の感染者数は計422人になった。

 一方、この人数とは別に県が5日に発表した県内の新規感染者数は約4カ月半ぶりの100人台となる104人で、うち70人は岩国市在住だった。県によると、同市では過去2週間に計230人の感染が確認されたが、うち61人はクリスマス前後に米軍関係者が…