プリンストン大学とワシントン大学の研究チームは、粗塩の粒サイズの超小型カメラを開発した。幅0.5mmと非常に小さいが、体積が50万倍も大きい従来のカメラレンズに匹敵するほど、鮮明なフルカラー画像が得られる。医療用の超小型カメラや、背面全体をカメラにしたスマートフォンに応用できる可能性がある。研究結果は、2021年11月29日付の『Nature Communications』に掲載されている。
病気の発見や治療のために、患者への負担が少ない超小型の画像システムを搭載した小型の内視鏡や医療ロボットが求められている。従来のカメラシステムは、きれいに結像するためにガラスやプラスチック製の球面/非球面レンズをいくつも並べており、画質を維持したまま小型化、短単焦点化するには限界があった。
研究チームは新しいカメラに「メタサーフェス」と呼ばれる技術を利用した。これまでに発表されたメタサーフェスレンズは、ディストーションが非常に大きく、視野も狭く、色の再現性も低かったが、フロントエンドにメタサーフェス光学素子、バックエンドに機械学習ベースの信号処理を使用することで、広視野、高画質、フルカラーの画像を得ることに成功した。
新開発のメタサーフェスカメラは、幅が0.5mmで、表面を拡大すると160万本もの円柱が並んでいるのが分かる。実際に撮影すると、周辺が少しボケるものの、従来のメタサーフェスカメラよりはるかに鮮明な画像を出力できた。市販の4群6枚、焦点距離50mmのレンズと比べても、遜色のないレベルだとしている。また、レーザー光や特別な照明条件は不要で、自然光が利用できる。表面の構造は微細だが、材料としてSiN(窒化ケイ素)を使うため、既存の半導体製造工程と互換性があり、量産化も容易と期待される。
表面の円柱は独特の形状で、光アンテナのように機能する。アンテナ数が多いため、光との相互作用も複雑だ。「所望の性能を得るために、これら小さなナノ構造を設計し、作製するのは難しいことだった」と研究チームは振り返る。カメラ開発のカギは、各円柱の形状や配置と後処理のアルゴリズムのパラメーターを協調設計したことだった。効率的に設計と評価をするために、シミュレーターや近似モデルも開発した。
今後は、カメラ自身に計算能力を持たせ、画質の最適化だけでなく物体検知など、医療、ロボット分野に最適な機能を追加したいとしている。小型にするだけでなく、表面にセンシング機能を持たせることが可能なため、将来のスマートフォンは3眼でも4眼でもなく、背面全体を1つのカメラにできるかもしれない。
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