引退会見をした体操の内村航平選手は14日夜、NHKの単独インタビューに応じ、「自分の強いところも弱いところも知ることができてなお強くなった」と振り返り、現役の終盤に結果の出ない日々を経験したからこそ、人として大きく成長できたことを明かしました。
都内のホテルで引退会見をした内村選手は14日夜、NHKの単独インタビューに応じました。
この中で、「今はスポーツ全体のことを考えられるようになり、発言していけるようになった。『わからないから』『わからないです』とかではなく、意見を責任をもって言うことができる。言葉の力に可能性を感じたので、『体操が素晴らしい』など考え方などもハッキリ言うようになった。自分の考えを自分の言葉で発信することができるようになったし、相手に伝わるように言葉にする能力がついたのがいちばん大きい」と話しました。
そうした成長の要因は、体の痛みなどで思うような体操ができなくなったリオデジャネイロ大会後から東京大会までのおよそ5年間にあることを明かしました。
内村選手は、「つらい経験をすることで人の痛みをわかるようになった。今までは強い自分しか経験していなくて、メンタルが沈むことがどういう状況なのかあまりわからなかった。人間としての弱い部分を知ることができたので、すごく成長した」と振り返りました。
そのうえで、「その期間がなければ、崖っぷちまで落ちたこともなかったし、そういう痛みをわからずに生きていくことになっていた。強いところも弱いところも知ることができて、なお強くなったかもしれない。新しい自分を発見できたという意味で、リオからの5、6年はすごく良かった」と話し、結果の出ない日々を経験したからこそ、人として大きく成長できたことを明かしました。
今後、自分が得た経験をどのように伝えていきたいかを問われ、「競技のように、いかに人の心に響かせるかを考えないといけない。人が持っている感覚に寄り添っていかないと、伝えられない。人間離れしていても違う物事に置き換えると、こういうことなんだよというのを説明できるようにしないといけない。人に感動や勇気、活力を届けられることにつながる。そうすると体操の価値が上がりスポーツ全体の価値も上がるはずなので、それがスポーツとしての力にもなる。僕が体操を知り尽くすことで、最終的には大きな輪になって力になる。競技者ではなくなったからこそ、ことばや表現を身につけないといけない」と、今後の目標を見据えていました。