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1人で取ったメダルではない。

 体操女子種目別床運動の決勝で2日、村上茉愛(24)が銅メダルを獲得した。2016年リオデジャネイロ五輪でともに戦い、団体4位にとどまった盟友から託された夢をかなえた。

笑顔が戻った。団体、個人総合ともに決勝に進んだが、ミスもあり、メダルを逃していた。この日は今大会の床運動で自身の最高得点となる演技を終え、ガッツポーズ。銅メダル確定後、他の選手らと抱き合って喜びをあらわにした。

2年前、日本の体操女子が団体で東京五輪出場権を獲得した場に、村上の姿はなかった。

17年世界選手権の床運動で金メダルを獲得し、勢いに乗っていたが、腰痛のため五輪の団体出場枠獲得がかかる19年の世界選手権の選考会を棄権したからだ。

後を託したのはリオ五輪の団体でともに演技して戦った1学年上のライバル、寺本明日香(25)。寺本に歩み寄り、伝えた。

「あとは任せたよ」

「茉愛とは『話さなくてもわかる』みたいなところがある」と寺本。19年世界選手権で日本代表を率いて出場枠を確保。大会後すぐ村上に?返信?した。

「五輪、一緒に出ようね」

しかし、その約束は果たされなかった。今度は寺本が昨年2月、左アキレス腱(けん)を断裂する大けが。病院を見舞った村上は「今度は私が助ける番」との思いを色紙にしたためて渡した。

寺本は頭をかすめた「引退」の二文字を封印して復帰。五輪出場はならなかったが、補欠として代表合宿にも参加し、主将の村上の負担を軽くしようと、メンバーの相談役を担った。

試合前、寺本に「茉愛がいい演技ができたら私もうれしい」と送り出された村上。「明日香に喜んでもらえるような演技ができた」と笑った。2人の思いを重ね、勝ち取ったメダルだ。(三宅陽子)