2021年7月末から8月頭にかけて「テイルズ オブ アライズ」(PS5 / Xbox Series X / PS4 / Xbox One / PC)のメディア向けハンズオンが行われたので,そのプレイレポートをお届けしよう。
9月9日の発売まで約1か月と迫った「テイルズ オブ アライズ」。今回は,スタートから第1章クリアまでを体験できる特別版が用意された。
6月にもデモ版でのテストプレイが行われたが,今回は製品版と同様に,主人公であるアルフェン1人の状態からプレイを進めていく。
なお,今回のハンズオンではBladeのゲームストリーミングサービス「Shadow」を利用し,実機と異なる環境下でプレイしている。
「テイルズ オブ アライズ」第1章 先行プレイ動画
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敵の敵は味方。バラバラな2人が描かれる,緊張感ある物語
「テイルズ オブ アライズ」の舞台となるのは「ダナ」という名の惑星だ。ダナは自然豊かな星だったが,隣の星「レナ」から突然侵攻され,ダナ人は,侵略者であるレナ人の奴隷にされてしまった。
レナ人は高度な科学と魔術を操るため,ダナ人たちは反抗できず,彼らは奴隷の証である謎の石を手に埋め込まれ,厳しい強制労働に従事させられ続けてきた。
そんな奴隷たちの中に「鉄仮面」とあだ名される青年がいた。顔はすっぽりと仮面で覆われており,なぜこうなったのかは本人も覚えていない。何よりも不思議なのが痛覚を失っていることで,レナ人から暴力を振るわれても平然としているのである。鉄仮面の心には,奴隷の境遇への怒りが燃えていた。しかし,虐待され続けるほかの奴隷たちは彼に協力するどころか,レナ人を恐れるばかりなのだった……。
さて,ここで気づいた読者もいるかもしれないが,この青年は,本作の主人公・アルフェンである。物語の最序盤だと,アルフェンは自身の名前すら思い出せておらず,ゲーム内の表記も「鉄仮面」で統一されているため,本稿でもその表記で進めていく。
そんな鉄仮面は,ある日,なぜか同胞から追われるレナ人の少女・シオンと出会う。触れる者に苦痛をもたらす「荊」の呪いを持つ彼女だが,その目的は驚くべきものだった。シオンはレナ人でありながら,ダナ星を分割統治するレナ人の権力者「領将(スルド)」たちを倒すというのだ。
レナ人に反抗するということで利害が一致した鉄仮面とシオンは,ダナ人の抵抗組織「紅の鴉」のリーダー・ジルファとともに,まずはカラグリアの地を統べる領将・ビエゾに戦いを挑むのだった。
第1章では,鉄仮面とシオンの考え方の違いが描写されることが多く,物語には張り詰めた緊張感がある。鉄仮面はダナ人を奴隷にするレナ人に怒りを覚えているが,シオンはダナ人の境遇や奴隷制の是非よりも,領将を倒すことだけを考えている。パーティを組んでいても2人の心はバラバラで,一緒にいるのも“敵の敵は味方である”からに過ぎないのだ。
シオンは,領将を倒すためであれば手段を選ばない,クールでタフな人物として描写されている。ダナ人の差別を憂いているわけではないが,ほかのレナ人と違ってダナ人を蔑むこともないし,奴隷の悲惨な実態を聞けば心を痛めもする。
人と距離を置くところはあるが,それは相手を荊の呪いで苦しめることを恐れるがゆえ。その思いやりはダナ人奴隷であっても例外はない。彼女の判断基準は,レナ人であるか,ダナ人であるかではなく,“自分の目的に役に立つか否か”であるようだ。
いささか厳しくはあるが,少なくとも差別や偏見のないフェアな物差しではあると言える。意志力と決断力に行動力を併せ持つのがシオンであり,鉄仮面を引っ張っていくことも少なくない。
一方の鉄仮面は,第1章の時点では分からないところがまだまだ多い。第1章ではアルフェンという名も思い出せないような状態で過ごすし,痛覚を失っている理由についても謎。だが心はとても素直で,ダナ人の皆が諦めきっている中でも,奴隷である境遇とレナ人に対して怒りを燃やしている。血気盛んで,突っ走る様が危なっかしい,等身大の青年といったところだろうか。
痛覚がないゆえにムチャをしやすく,周囲からフォローされつつ生き延びてきたというが,思わず心配になるくらいの真っ直ぐさを持っている。レナ人に対する怒りはあるものの,彼らが開発した高度な技術は賞賛するという純粋さにも好感が持てた。第2章以降で,彼の過去も明かされていくことになるのだろうが,物語の続きが楽しみだ。
2人の人間性はさまざまな事件を通して深彫りされていき,お互いを少しずつ理解し合っていくのだが,そのきっかけとして描かれる,「食」を通したいくつかのエピソードが印象深かった。
例えば,シオンは料理があまり得意でないようで,第1章の時点で作れるのは「おかゆ」くらい。あまりのシンプルさに絶句する鉄仮面に対し「腹は膨れるんだから問題ないだろう」と言い放つ。
合理的で豪快な一面を見せるシオンだが,「スキット」(キャラクター同士の会話劇)では,歩いている途中で鳴った腹の虫を「何も聞こえなかった!」と頑なに認めないといった可愛らしい一面を見せる場面もあった。
また,最初は奴隷に興味がなかったシオンの心を動かしたのも,“奴隷には充分な食事すら与えられていない”という「食」にまつわるエピソードだった。目的のためにはあらゆる人を利用するつもりでいたシオンであっても,人が満足に食べられないことや,その境遇をもたらしたのが,自分と同じ人種であることに衝撃を受ける。
「食」がきっかけで異なる人種がわかり合う話というと,「テイルズ オブ リバース」の有名な「ピーチパイ演説」を思い出すが,こうした話を見ると“ダナ人もレナ人も当たり前の人間であるというメッセージなのか”と深読みしたくなる。
先ほど少し触れた「テイルズ オブ」名物のスキットだが,第1章の時点でもかなり豊富だ。シリアスなメインストーリーとは趣向が異なり,先ほど挙げた,シオンの腹の虫エピソードのようなコミカルな話も少なくない。フィールドを歩いているとき,野営しているとき,戦闘が終わったときなど,いろいろなタイミングで新たなスキットが追加されるため,楽しみながら冒険を進めていける。
本作のスキットは,アニメ調のキャラクターが会話を繰り広げる従来のスタイルではなく,3Dグラフィックスがマンガ風にコマ割りされて描かれる。「!」のような記号が描写されることもあり,感情の動きも分かりやすい。キャラクターに着せた衣装や周囲の景色などもスキットのコマに反映されるため,ゲーム機側の機能でスクリーンショットを撮影しておけば,旅の良い思い出となってくれそうだ。
第1章の舞台は炎の大地「カラグリア」。パーティを強化して領将に挑め
第1章では,岩と砂の中に炎が噴き上がる恐ろしい土地「カラグリア」を冒険していく。ここにはレナ人が燃料を精製するための機械が設置されており,スチームパンクのような雰囲気がある。
プレイの流れは,フィールドを探索しながらモンスターを倒して,素材を手に入れ,素材で武器を作ってキャラクターをパワーアップさせていく,というもの。
拠点に行けば店はあるが,第1章という序盤であるためか最小限の消耗品しか売っておらず,装備は自分で素材を集めて作るしかなかった。素材はモンスターを倒すか,宝箱を探し出すことで手に入る。モンスターがどの素材をドロップするかは確認できるため,「この素材を手に入れるために狩りに行こう!」と自然とモチベーションを上げてくれる。
本作の戦闘は「アーツゲージ(AG)」「ブーストアタック」「ブレイク」「ブーストストライク」「キャラクターごとの固有システム」……とさまざまな要素が絡むが,新システムが開放されるたびにチュートリアルで学べるので,迷うことなく進められるだろう。
戦闘システムの基本的な部分は,6月に試遊したデモ版のプレイレポートを参照してほしいが,改めて1章を通してプレイした中で分かった点があるので,以下で解説しよう。
本作においては敵を「ブレイク」させることが重要になる。ブレイクは,敵に繰り返し攻撃を当てることで発生し,ブレイクしたタイミングで攻撃受けると敵がのけぞるようになる。逆にいえば,ブレイクしていない敵は攻撃されてものけぞらず,技の追加効果が発生しない。例えば,鉄仮面の「昇竜刹」は足払いの後に上昇しつつ斬りつけ,相手を浮かせる技だが,ブレイクしていない敵に当てた場合,ダメージは与えられるが浮きはしないのである。
敵をブレイクさせるうえで重要な役割を担うのが「通常攻撃」である。通常攻撃は敵をブレイクさせやすい効果があるため,浮かせたり叩きつけたりといった術技の追加効果を十分に発揮させるには,術技を放つ前に通常攻撃をしっかり当てていくことが大切なのだ。
そして,パラメータの「貫通力」がブレイクのしやすさに関係している。貫通力を上げるアクセサリーを装備して戦うと明らかにブレイクが起こりやすくなったので,敵との戦闘を有利に進めていくためには常に意識したい。
また「キュアポイント(CP)」がバトルに及ぼす影響についても,より深く確認できた。CPはHPを回復する術技に使うリソースで「回復用のテクニカルポイント(TP)」のような役割を持つ。普通のRPGでは回復系の術技と攻撃系の術技はひとまとめにされていることが多いが,この方式はCPが切れても攻撃術技は放てるため,常にアグレッシブに戦えた。
さらに,CPのもう1つの使い道として「マップアクション」の存在も確認できた。これはCPと引き換えにキャラクターが特技を使ってマップの障害を突破するというもので,鉄仮面は通路を塞ぐ炎の壁を消し去ることができる。
“通路が炎の壁でふさがれた道と,敵が待ち構えている道に分かれており,どちらかを選ばなければならない”“思わせぶりな部屋が炎の壁で塞がれている”といった状況がおこるため,プレイヤーはCPを回復のためにとっておくか,探索に活用するかを考えながらプレイしていく。
そして第1章の最後には,領将ビエゾが待ち構えている。ビエゾがブン回す斧に当たると痛いが,なにぶん大振りなため,ジャスト回避から逆襲をかける新アクション「カウンターレイド」を狙いやすい。アクション性の高まった本作の戦闘の面白さを体験できるボスだった。
今回のテストプレイでは,「テイルズ オブ」らしいシリアスな物語と,間に挟まるコミカルな「スキット」,そしてキャラクターの成長という,RPGとしての楽しさを十分に感じられる内容となっていた。発売までいよいよ1か月と迫ったが,期待がさらに高まった。