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※リアルの生物の写真が出てきます。苦手な方はご注意ください!

『あつまれ どうぶつの森(※以下『あつ森』)』では海でさまざまな魚を釣ることができます。

釣れる魚たちはそのサイズによって、魚影の大きさも異なります(メダカのような小型魚は魚影も小さく、ピラルクなどの大型魚は魚影も露骨に大きいなど)。

さらに、ごく一部の魚種では魚影の大きさではなく形状が特殊なものも存在するのです。たとえばサメ類などでは背びれが海面から突き出しており、一目で「ふつうの魚ではないな」と判断できます。

そしてもうひとつ、特殊な魚影をもつグループが存在します。

はい!細長~いシルエットの「ウツボ」たちですね。

ウツボといえばみなさまご存知、海の岩場とかにいる細長くてニョロニョロした、それでいて「海のギャング」とか失礼なあだ名で呼ばれるくらいには歯が鋭くておっかない印象の肉食魚です。

『あつ森』では本州、四国、九州でよく見られる「ウツボ」と沖縄など南洋に生息する美種「ハナヒゲウツボ」の2種類が登場します。

▲『あつ森』のウツボ。
▲青と黄色のリボンのような「ハナヒゲウツボ」。ウツボとは正反対の可憐な印象です(※『あつ森』内での出現期間は6~10月)。

ウツボはざっくり言うと、そのシルエットからも察しがつく通りウナギやアナゴに近縁な魚です。

ウナギ、アナゴたちとのわかりやすい違いは「ヒレらしいヒレがない」ことでしょう。

厳密には背ビレや尾ビレは尾部を縁取るように残されているのですが、痕跡的でほとんど目立ちません。

胸ビレに至っては完全に退化してしまっているため、ウナギ以上に全身がスムースで、よりヘビのような印象を感じさせます。

▲リアルの「ウツボ」。あまりはっきりしたヒレがないのが特徴。

とにかく引っかかりそうなパーツを削ぎ落とした、岩などの隙間に潜り込む生活には最適な体型といえるでしょう。ヒレがないかわりに体全体が縦に扁平しているので、体をくねらせればそこそこ泳げるのですね。ヒレで水を掻くのではなく、全身をオールとして使うイメージです。

これだけ体のつくりが特殊だと、生態や行動も一風変わっています

ウツボ類は肉食性で、小さな魚や甲殻類、イカやタコを捕食するほか、大きな魚の死骸なども食べます。

そうした大きな餌を食べる際には鋭い歯でガブリと噛みつき、体をグルグルと錐揉み回転させて肉片をもぎとるのです。

この行動には「デスロール」という恐ろしげな名前がついており、ウツボたちの「怖い、危険」というイメージを補強する要因にもなっています。

実際にはちょっかいを出されない限りは攻撃してこない臆病な魚なのですが。

また、餌を飲み込む際には喉の奥から「咽頭顎」なる第二の顎が伸びてくるという脅威のギミックも飛び出します。

さらに、さきほどウツボの外見をして「ヘビのよう」と表しましたが、それは行動にも顕れます。

彼らは嗅覚が鋭く、海水中に漂う獲物の血や臓物のにおいを嗅ぎ分けて食料にありつきます。

一度ロックオンした餌への執着はすさまじく、なんとその守備範囲は陸上にまで及びます。漁師や釣り人が磯で魚を解体していると、海へ流れ込んだ血臭をたどってウツボたちが大挙して上陸。捨てられた内臓を貪るという現象が起きることもあります。つくづく面白い生き物ですよね。

▲口内には鋭い歯が並びます。軽く触れただけでスパッと切れるので注意!

こんなウツボは『あつ森』内では8~10月のみの出現(※北半球設定の場合)ですが、リアルではほぼ一年を通じて釣ることができます。

高知などウツボを好んで食べる地域もありますが、味が良いのはむしろ冬場なのだとか。気になる方は寒くなったら磯へGO!

▲高知で食べたウツボのから揚げ。上品かつプリプリで美味しいんです。

『あつ森』博物誌バックナンバー


■著者紹介:平坂寛

Webメディアや書籍、TV等で生き物の魅力を語る生物ライター。生き物を“五感で楽しむ”ことを信条に、国内・国外問わず様々な生物を捕獲・調査している。現在は「公益財団法人 黒潮生物研究所」の客員研究員として深海魚の研究にも取り組んでいる。著書に「食ったらヤバいいきもの(主婦と生活社)」「外来魚のレシピ(地人書館)」など。


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