もっと詳しく

現在、世界中でエネルギー革命が起きています。このトピックでは自動車業界が大きな注目を集めていますが、ほかの産業に目を向けると、航空業界ではプラスチックごみなどを原料にしたジェット燃料の開発が進められています。空の燃料はこれからどうなるのでしょうか?

 

より効率的な触媒作用

↑目的地は脱炭素社会

 

ゴミ袋やシャンプーの容器などで使用されているポリエチレンは、プラスチックの中で最も多く使われている化合物です。米国・ワシントン州立大学の研究チームは、ルテニウム(白金族元素の一種で、銀白色の硬くて、もろい金属)と溶媒を使って、ポリエチレンをジェット燃料などに変えるための触媒を発明しました。これにより、実験で使用したプラスチックの約90%を220度の温度でジェット燃料の成分に変えることに成功。しかも所要時間はわずか1時間。従来の触媒では温度を430度まで上げる必要があるそうですが、彼らの方法ではそれが200度以上も低いうえ、触媒作用もより効率的であると言われています。

 

新たに開発された技術はニーズに合わせて、反応の温度や時間、触媒の量などの諸条件を調整することもできるそう。ほかの種類のプラスチックにも応用できる可能性があるそうで、同チームは商業化に向けて、さらに研究を進めていきたいと話しています。

 

プラスチックごみの問題に対処するため、世界各地でそのリサイクルが行われていますが、品質やコストに関して問題があるため、そう簡単ではありません。同研究チームによると、米国でリサイクルされるプラスチックは9%ほどしかないと言われていますが、今回の研究はそんな現状を変えることにつながるかもしれません。

 

ANAとJALも環境に優しい燃料へ

日本でも、環境を考えた燃料の開発が行われています。日本航空(JAL)では、2030年には「SAF(持続可能な航空燃料)」の利用を全燃料の10%まで利用する目標を設定。さらに丸紅やENEOSなどと共同で、廃棄されたプラスチックを原料にした代替航空燃料の製造や販売について調査を行っており、2026年以降の活用を目指すと報じられています。一方、全日本空輸(ANA)は、日本の航空会社として初めてSAFを2020年10月下旬に同社の定期便に導入しました。

 

日本政府は、2050年までに脱炭素社会の実現を目指す「2050年カーボンニュートラル宣言」を2020年に発表していますが、これに準じて、ANAとJALは2050年の二酸化炭素排出量実質ゼロの目標を掲げています。廃棄プラスチックを原料とする燃料や、環境に優しい新たなエネルギーの開発は、ますます加速していきそうですね。