河野ワクチン接種担当大臣は、日本テレビのCS番組『日テレNEWS24』に出演し、スポーツ飲料を新型コロナワクチン接種前に飲むと、副反応が出にくくなるというのは、都市伝説だとして、効果を否定しました。
インタビュー(前編)の要旨は以下の通りです。
──ワクチンを打つと、もう感染しない?
いろいろな研究論文で「感染予防の効果がある」とされるが、必ずしもワクチンを打ったら感染しないということではない。2回打つと感染の確率は下がりますが、ワクチンは「発症を予防する」「重症化を予防する」効果が非常に高いとされています。当分の間はマスクをし、手洗いその他の感染予防をしっかり続けていただきたい。
──菅首相が「人口の4割が1回接種を進めると感染は減少傾向になる」と話す一方で、感染が拡大。ワクチンに効果がない?
今、感染力が非常に強い「デルタ株」に置き換わってきている。感染拡大は全世界的に起きていますが、日本では今、80%以上の高齢者が接種しているので、重症化する高齢者の数は大変少なくなっていて、ワクチンの効果があるとはっきり言ってもよろしいかと思います。
──一定の割合以上の人が免疫を持つと他人にうつしにくくなる「集団免疫」、デルタ株にも当てはまる?
どれぐらいの方がワクチンを打つ、あるいは感染したら「集団免疫」の状況になるのかは、様々な研究者が議論している。デルタ株は感染力が強く、集団免疫を確立するにしてもワクチン接種を相当高い比率に保たなければいけなくなると思う。残念ながら、まだどれぐらいワクチン接種が進むと集団免疫になるかは、確立された数字はない。
──日本で使われているワクチンはファイザー、モデルナ、アストラゼネカ。メッセンジャーRNAとウイルスベクターワクチンとの2つの違いは?
ファイザーとモデルナのワクチンは、スパイクタンパク質の遺伝子をのせたメッセンジャーRNAをポリエチレングリコールという物質でくるみ、それを体内に入れるというワクチン。
一方、アストラゼネカはアデノウイルスと言われる風邪の一種を引き起こす──ただ、これはチンパンジーのアデノウイルスなので、増殖しないように操作をした上で、そこにスパイクタンパク質の遺伝子をのせ、ワクチンとして体内に入れる。どうやってスパイクタンパク質の遺伝子を体の中に入れるかの違いだと思っていただければ。
──遺伝物質を体内に入れると「自分の遺伝情報が書き換わってしまうのでは」と心配の声も。
メッセンジャーRNAという物質が体内の細胞の核に入るということはない。仮にそうしたことが起きても、RNAの情報がDNAの大元に書き換えられるということはなく、遺伝子が変わってしまうという心配はいりません。
メッセンジャーRNAは体内に入れると、そのまま分解が始まります。2週間程でなくなってしまうと言われているので、スパイクタンパクの遺伝情報を入れるが、それが自分の遺伝子に何か悪影響を及ぼすということは全くありません。
──発症予防の効果はファイザーが95%、モデルナが94%、アストラゼネカが70%とされる。アストラゼネカは低いように見えるが?
ファイザーとモデルナは、今までのワクチンと比べると極端に高い数字。アストラゼネカの70%もワクチンとしては非常に高い数値ですので、効果はしっかりあると考えてよろしいと思います。
──アストラゼネカは海外の事例で、まれに血栓ができて危ないとの声も。
「100万人に数人、血栓が起きる」と言われるが、仮に起きても、どう対応したらいいかという治療法は確立されている。また100万人に数人という極めて小さい確率。日本の場合、40歳以上の方について、極めてまれにそうしたことが起こるとしても、ワクチンを打つ利益の方が、血栓のリスクよりもはるかに大きいということで、アストラゼネカを奨励しています。
──ワクチンは2回接種すると、効果はどれぐらい続く?
2回接種し2週間程度の期間を置くと、かなり免疫の効果が出てくると言われる。全国や全世界で打たれているファイザーとモデルナは半年たっても相当な効果が残っている。特に重症化の予防効果はかなり維持できているが、時間がたつにつれ効果は減衰するだろうと言われる。
「ブースター」という3回目の接種についての議論が行われていますが、少なくとも半年以上はその必要はないだろうと言われています。
──3社のワクチンは、デルタ株にも効果が?
デルタ株に全く効かないという情報はない。重症化予防については引き続き高い効果が維持されていると考えていいです。
──接種に不安を持つ人も一定数いる。「妊娠している人がワクチンを打ってもいいのか」という声も。
妊娠している方も全く問題なく打っていただいて構いません。むしろ妊娠している方がコロナにかかると重症化する可能性もある。しっかりと打っていただけるワクチンです。
──ここまで聞くと非常にメリットが大きいと思うが、逆にデメリットはある?
デメリットは副反応。季節性インフルエンザのワクチンと比べると、副反応がかなり強く出るのは事実。例えばファイザーやモデルナのワクチンを打つと次の日、腕を上げると痛いとか……これ私も経験しました。
また、2回目の接種が終わると38℃ぐらいの熱が出る方が相当数います。私も38℃弱まで熱が上がりましたが、だいたい一日で平熱に戻りますし、腕の痛みも一日で取れます。打った翌日はのんびりと家でくつろぐ時間を確保してもらえれば、その翌日にはだいたい体調は元に戻ります。
個人差はありますが、副反応が出ることはご理解いただいた上で、若い方でも重症化するリスクがありますし、コロナが軽く済んだとしても「臭いがしない・味がしない・毛が抜ける」といった後遺症に悩む方が相当数いると考えると、やはりワクチンを打つベネフィット(=利益)の方がはるかに大きい。そう考え、ぜひ打っていただきたい。
──若者の中では「自分が重症化しないんだったら、打ちたくない」という人も。また「スポーツ飲料を事前に飲むと副反応が出にくい」「解熱剤を先に飲むと副反応が出にくい」といった話も聞くが?
スポーツ飲料を飲んだら熱が出ないというのは都市伝説と思っていただいていい。打つ前に解熱剤を飲むのは……特にやめてくださいというわけではありませんが、解熱剤の効果は一定時間なので、先に飲んでも、どこかで効果がなくなる。熱が出て本当につらくなったら解熱剤を飲むので十分ではないかと思います。
──そこは臨機応変に対応してほしいと。臨機応変に考えてやっていただければと思います。