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「良い文章を書けるようになるためには、自分が書いた文章を声に出して読みなさい」。

これは筆者が最初に聞いた、最高のライティングのコツの1つだ。皮肉なアドバイスだといつも思う。文章を上達させるために、文章を音声にする必要があるというのだから。しかし書いたものを声に出して読むと、誤字や考えの不足が見つかり、さらに文章の構造の中にあるおさまりの悪いフレーズやおかしなリズムといった微妙なことにも気づく。何年経ってもこれは真実だ。そして特に、自分の文章を音読している間に飽きるとしたら、おそらく読者も飽きるだろう。

文章を書くのが大好きな人にとっても、文章を書くことはあいまいなルールの上に成り立つ大いに人間的なアートだ。複雑な問題なので必ずしもテクノロジーによる解決策が求められるわけではないが、サンフランシスコを拠点とするスタートアップのNoRedInkは10年近くにわたって、ライティングを上達させたい学生をソフトウェアで支援している。

米国時間8月24日、NoRedInkはアダプティブラーニングと言葉ゲームのMad Libsのような手法を組み合わせたデジタルライティングカリキュラムが5000万ドル(約55億円)のシリーズBにつながったと発表した。このラウンドはSusquehanna Growth Equityが主導し、True Venturesが参加した。他にGSV、Rethink Education、Kapor Capitalなども投資している。

今回のシリーズBは、シリーズAからおよそ6年経っている。これはNoRedInkが数カ月、数年かけてしっかり成長したいと考えていることの現れだ。しかし同社には解決しなくてはならない最大の問題がある。利用者が増えれば、シンプルにしたいことが複雑になっていくのだ。

創業者でCEOのJeff Scheur(ジェフ・シュア)氏は、シカゴで英語教員だった2012年にNoRedInkを創業した。このサイトでは、提出物に「赤字(red ink)で書き入れる」以上のものを子どもたちが学べるようにしている。これは、教員が子どもたちの宿題によく赤ペンで誤りの指摘やアドバイスを書き入れることに由来する。

シュア氏は「子どもたちは、提出物のフィードバックを見てもどうすればいいのかわかりません。成績は見ますが、その後は捨ててしまいがちです。そこで私は、子どもたちに知って欲しいと思っているが明確には教えていない、習得が極めて難しいスキルを(子どもたちが)使えるようにするにはどうすればいいかを解決するためにツールの開発を始めました」と述べた。

創業以来、NoRedInkはレポートの構成、論点の無駄を省くこと、正しい引用の仕方まで、さまざまなライティングスキルを学生が身につけるための支援を目指している。

画像クレジット:NoRedInk

シュア氏は「ライティングを教える上で大きな課題の1つは、表現の芸術性を損ねることなく優れた書き手になるプロセスを明らかにすることです。そのために子どもたち1人ひとりに合わせた演習を多数提供し、書き方は1つではないことを認識してもらえるようにします」と説明する。

そう考えると、NoRedInkがアダプティブラーニングを採用しているのは納得がいく。アダプティブラーニングとはアルゴリズムを使って学習者の強みや好みといった情報を取得し、それに合うアウトプットを作成する教育法だ。学生に好きなキャラクターやロールモデルを尋ねたら、NoRedInkは1人ひとりの関心に応じたライティングの演習を作成し、軽くサポートしながら文章を書くプロセスをガイドする。

画像クレジット:NoRedInk

シュア氏はNoRedInkのゴールの1つを「習得が難しいスキルを、何段もの足場を付けて分割すること」と表現する。

これまでにNoRedInkの演習エンジンで100億種類以上の演習が学習された。この数字は同社が従来のカリキュラムの問題点やでうまくいかないこと、見過ごされている問題を学区に対して明らかにするために示しているものだ。

NoRedInkには教員が試用するための無料の機能制限版があるが、制限のないプレミアムバージョンも提供している。プレミアムバージョンは学習管理システムや他の教室と統合され、学校や学区が進捗を見ることができる。

ビジネスの拡大に伴い、NoRedInkは市場シェアを増やすために構想をさらに掘り下げる必要があるかもしれない。AIベースの文法・ライティングのユニコーンであるGrammarlyがやっているのと同じように文章のトーンもアドバイスするようになるのだろうか? 今のところ、そうではないようだ。

シュア氏は「Grammarlyは優れたコンシューマアプリで、Microsoft Wordが何年も前にやっていた文法チェックの現代版です。NoRedInkはまったく違います。学校や学区がスキルを教えるために使うものです」と述べた。

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Kaori Koyama)