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 《がん免疫治療薬「オプジーボ」の特許をめぐり、平成30(2018)年にノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑(ほんじょ・たすく)京都大特別教授が、製造販売元の小野薬品工業(大阪市)に約262億円の支払いを求めた訴訟の口頭弁論が2日、大阪地裁であり、本庶氏が出廷した。この日は本庶氏のほか、小野薬品の相良暁(さがら・ぎょう)社長と担当者への尋問を予定。ノーベル賞受賞者と製薬会社トップが法廷で直接対峙(たいじ)する異例の裁判として注目される》 《本庶氏が請求しているのは、オプジーボに似た薬を販売する米製薬大手メルクから小野薬品が得る特許使用料の一部。小野薬品などはメルクを特許侵害で訴え、2017年1月、メルクが約710億円などを支払う内容で和解した。全体の25%を小野薬品が受け取ると決まっていた》 《オプジーボに関する特許を共同で持つ小野薬品と本庶氏は10年以上前から特許使用料の配分をめぐり対立。本庶氏は、メルク訴訟に協力すれば小野薬品に支払われる和解金の40%を配分するという提案を相良社長から受けたのに、実際は1%にとどまったと主張している。これに対し小野薬品側は、40%の提案をしたことは認めているが、本庶氏自身が「はした金だ」と一蹴したために金額交渉自体が決裂したと指摘。「第三者から特許使用料を得た場合、1%の対価を支払う」としたメルク訴訟前の平成18年の契約に基づき、これまでに数億円を配分したと反論している》 《受け取り済みの1%分との差額(39%)はおよそ262億円。裁判では配分割合の妥当性や、交渉の経過をめぐる双方の食い違いが争点になるとみられる》 《この日午前中から始まった裁判で、本庶氏の本人尋問は午後から。本庶氏はしっかりとした足取りで証言席に座ると、自身の弁護人からの質問に答えていった》 --平成18年に小野薬品と特許使用の契約を結んだ際、メルク訴訟のように係争状態になったときの協力義務について説明はあったか 本庶氏「説明はなかった」 --係争の結果、得たお金をどう配分するのかについても説明はなかったのか 本庶氏「そのとおりです」 --メルク訴訟では、本庶さんは具体的にどのような協力をしたのか 本庶氏「協力というのは不正確だ。私は原告、張本人として参加し、共同研究者らの協力も得て証拠のほぼ全部を集めた。単なる訴訟協力や助言というには逸脱した仕事をした」 --本庶さんの対応がなければ訴訟が円滑にいくことはなかった 本庶氏「小野薬品はオプジーボの製品化には関わったが、(その前提となるタンパク質「PD-1」の)発明・発見には関わっていない。この訴訟の争点は誰が発見したかどうかで、私が証拠提出しなければ実質的な(小野薬品側の)勝訴はなかった」 《はっきりとした口調で、自身の主張を述べ始めた本庶氏。これに先立ち午前中には、本庶氏と小野薬品の間で行われてきた交渉や面談に平成24年から立ち会ってきた担当者が証人として出廷。「関係を修復したい」という思いのあった相良社長による40%の提案に対し、2日後に本庶氏が「受け入れられない。若い研究者からなぜこんな安い金額で受けるのかとそしりをうける」など述べて拒否したとする経緯を説明した。また、原告側席に座った本庶氏が「あなたは『私の言うことは社長の言うことです』と言ったことを覚えているか」と直接質問し、担当者が「覚えていない」と答える場面もあった》 《注目の尋問は、序盤から両者の主張の食い違いが鮮明になっている》