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近ごろ、人々の自己紹介に、大きな変化が起きています。それは「好きな番組」。今までは民放のバラエティ番組を挙げる人が多かったのですが、最近は「Amazonプライム・ビデオ」や「Netflix」、または「YouTube」と言う人が多いのです。いったい何が起きているのでしょうか。

感想を共有した時代

皆が同じ時間帯に同じテレビ番組を観ていたころ、人気ドラマが放送された翌日は、学校の教室内はその感想でもちきりになったものです。多くのクラスメイトがそのドラマを観ていたので、感動を共有することができていました。

 

それが今はどうかというと、テレビ自体を観ない人が増えました。しかも観たとしても録画してから後でまとめて視聴するので、リアルタイムに番組を楽しむ人が減っています。なので、放送翌日に話題にあがることも減り、共有体験がしづらくなっているのです。

 

スマホだけでいい

テレビ番組は無料で視聴できますし、YouTubeも無料なので、テレビを観なくなった人がYouTubeを観るようになったという理屈はまだわかります。筆者の娘(20歳)もしょっちゅうYouTubeを観ていますが、その理由が「普段スマホを使っているので、そのままスマホで視聴できるもののほうがラクだから」というのです。

 

面倒くさがりの娘は、テレビのリモコンのスイッチを押すことすら手間に感じ、YouTubeを愛用するようになりました。一部のテレビ番組をスマートフォンで視聴できるアプリ「TVer」も愛用しています。彼女は番組を視聴しながらツイートし、LINEをやり取りしているので、スマホで観ることができるものがありがたいのです。

 

アマゾンエフェクトの拡がり

日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP研究所・刊)は、著者である経営コンサルタントの鈴木貴博さんが、2020年代にどういったことが起きるかを予測した本。そのなかでは動画視聴の変化についても分析されています。

 

本書には「アマゾンエフェクト」という興味深いワードがありました。アマゾンが成長することでリアル店舗などが受ける影響を指す言葉です。人々がネット通販で買い物をする回数が増えればリアル店舗での買い物回数は減ってしまうのですが、それと同様のことが今、動画視聴にも起きているのだそうです。

 

有料なのに観る理由

アメリカでは今までケーブルテレビの利用が多かったのですが、Amazonプライム・ビデオという動画配信サービスが始まって以降、ケーブルテレビを解約してAmazonプライム・ビデオに切り替える人が出てきました。この現象をコード・カッティングと言うそうです。

 

日本では無料のテレビ番組から有料のAmazonプライム・ビデオやNetflixに切り替えるのはハードルが高いのではとも言われていたのですが、今では多くの人が視聴していて、よく観る有料動配信ランキングではAmazonプライム・ビデオは大抵ランキング1位です。Amazonプライム・ビデオを観るためには年間4900円がかかるのですが、なぜ無料のテレビ番組よりそちらを選ぶ人がいるのでしょうか。

 

共有に運命を感じる

本書では、Amazonプライム・ビデオによる視聴内容の変化が取り上げられています。Amazonプライム・ビデオでは映画もドラマもシリーズ作品が一覧でき、気に入ったら続編や関連作をどんどん観ることができるのです。そのため、ドラマも毎週細切れに観るのではなく、まとめて一気に視聴する人が増えたのだとか。人々はそのボリューム感をおトクに感じ、料金を払っているのかもしれません。

 

近ごろは自分のペースで行動することが尊重されています。毎週同じ時間にテレビの前にスタンバイするよりも、自分の都合のいい時間にゆっくりドラマの世界に浸ることが選ばれるのもその流れなのでしょう。動画配信サイトはスマホで視聴できるのも大きなメリットです。

 

けれど寂しいのは、ドラマの感動を多くの人と分かち合いづらくなったということです。自己紹介で「よく観る動画配信サイト」を挙げる人が増えているのは、感想を言い合う仲間を求めているからなのではないでしょうか。そして同じ動画配信サイトを楽しんでいる人と巡り会えたら、感動を共有できることを喜び、運命を感じるのかもしれません。

 

【書籍紹介】

日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方

著者:鈴木貴博
発行:PHP研究所

新型コロナウイルスの感染拡大により大波乱の幕開けとなった2020年代。「この10年間は、これまで叫ばれてきた様々な危機が現実化し、『日本が壊れる10年間』となる」。未来予測と経営戦略立案の専門家である著者はそう警告する。コロナショックはどんな影響を及ぼすのか? その後に到来する「7つのショック」とは?どうすれば崩壊を食い止められるのか? 不安な未来を読み解き、新たな変化とリスクにいち早く対応するための必読書。

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