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日の光を熱源として利用する調理器具・ソーラークッカー愛好者の集い「第2回ソーラークッカー全国大会・山梨太陽熱エネルギーフェスティバル」が、日照に恵まれた土地として知られる山梨県甲府市で2016年の夏開催。全国大会と冠してはいるものの、実際はソーラークッカーや太陽熱温水器の展示・実演、工作体験がメイン。太陽エネルギーの素晴らしさが気軽に体感できるイベントだ。今回はそこで展示されていた個性豊かなソーラークッカーたちを、一部ではあるが紹介していきたい。

三脚にゴトクがついたパラボラ型ソーラークッカー「かるぴか」(右)。アルミフレームで重量は3.1kgと軽いのが魅力。火力が2.5倍の「おやぴか」(左)もある(工房あまね)

 

かるぴかでお湯を沸かしている様子。晴天時の火力はガスコンロの弱火に相当する

 

「かるぴか」のパネル内部には照準器を搭載。ボルトの影が消えていればしっかり太陽の方向に向いていることになる

 

ダンボールの内側にアルミホイルを貼ったダンボール製のパネル型ソーラークッカー。計13枚のパネルを組み立てて作る(山梨英和中学校・高等学校 自然科学同好会)

 

自然科学同好会が一緒に展示していた、折りたためるパラボラ型ソーラークッカー「サニークッカー」という製品。反射クロスを傘のように開いたり閉じたりでき、太陽と角度を合わせたらスライドファスナーで固定して使う(サニークッカードットコム)

 

2種類の自然循環式太陽熱温水器。左は真空ガラス管で、右が水路が並んだ受熱板に透明板を重ねたタイプ。中に水を入れて太陽熱で温め、上部に取り付けた貯湯槽にお湯を貯める。タンクは通常200~300Lほどある(ぐるっ都地球温暖化対策地域協議会/チリウヒーター)

 

貯湯槽内。冷たい水と比べて温かいお湯は比重が軽いので、矢印のように自然と循環される。片方が長いのは煙突効果でより効率的に循環できるようにするため

 

最も身近な自然エネルギーの利用は楽しく、料理も不思議とうまい

会場となった山梨県甲府市は四方が山に囲まれた甲府盆地という土地柄、年間降水量が少ない場所として有名で、日照時間も長く夏場は猛暑日になることが多い。だったらその暑さを逆手に取り、さんさんと降り注ぐ膨大な太陽エネルギーで調理ができるソーラークッカーの展示や、使い方を紹介しようというのが本大会のコンセプトだ。

太陽エネルギーのエコ的な活用法は主に太陽光発電と太陽熱利用のふたつがある。太陽光は電気を生み出して電気機器の使用に、太陽熱は物体に吸収された光を熱源にして調理や給湯、暖房などで活躍する。また、このふたつは「変換効率」と呼ばれる数値に違いがある。太陽のエネルギーを電気・熱エネルギーとして使えるように変える割合が10%程度の太陽光に対して、太陽熱は40~60%と高い数値を誇っているようだ。太陽光と比べて、太陽熱のほうがエネルギーを無駄なく有効活用できることを、参加者たちが声をそろえて話していたのが印象的だった。

各ソーラークッカーは、甲府市リサイクルプラザの屋内外で展示。参加者は興味深そうに出展者の話に耳を傾けている

 

現に、イベント当日は残念ながら雲が多く、太陽が顔を出している時間はほとんどなかったが、温水器内のお湯は60℃を軽く超え、ソーラークッカーでいえば光が集中する部分(鍋を置く位置)に手をかざすと、長い時間とどめることができないぐらいに熱く、ソーラークッカーの能力の高さを実感。条件が整っていれば炒め物や煮物はもちろん、さらにオーブン料理や米まで炊くことができるという。構造もコンパクトに収納できることを前提としているので、料理レパートリーの豊富さも相まって、ソーラークッカーは持ち運び可能なガーデンキッチンと言っていいのかもしれない。

出展者のひとりは、「今日は天気がいいから1品だけ外で作ろう」とベランダでソーラークッカーを広げたり、ある人は「花見のときなど火が使えない公園内でお惣菜を温めています」「日々のご飯とお湯ぐらいはこれで賄うようにしています」と話す。もちろん雨が降っていれば使えないがそこは別段気にしない。朝起きて空模様を見て天気が良ければ、太陽の恵みを頂こうか考える。決して、その日すべての献立を賄うなど無茶な使い方はせず、ときには失敗なんかもしちゃったり。皆、太陽熱だけで調理すること自体を楽しみながら、太陽と寄り添うように生きているかのようだった。

パネル型であればDIYで作るのにもハードルは高くないし、先に述べたスタンスで使ってもいいことを知った今、環境への貢献はほんの少しかもしれないが、これなら自分でも気楽にエコな暮らしというのを始めることができそう。そんなことを帰りの車中で思わせてくれるイベントだった。

 

足利工業大学・中條研究室が設計したパネル型ソーラークッカー「エデュクッカー003」。折りたたみ式でクリップを使って簡単に組み立てられる。ダンボール製で、内側には蒸着シート、表面は透明のポリプロピレンシート仕上げ(エコエナジースタイル 販売:昭和理化学器械)

 

こちらはパラボラ型。素材の大部分はダンボールなので片手で軽く持ち上げられる(エコエナジースタイル 販売:昭和理化学器械)

 

プラスチックダンボール製のパネル型ソーラークッカー。取り付けられたスナップボタンで組み立てるのでエデュクッカー003よりもさらに簡単(エコエナジースタイル 販売:昭和理化学器械)

 

ダンボール製のボックスの上蓋を立てて展開するタイプ。収納時は中に調理器具などを入れて運ぶことができる(エコエナジースタイル 販売:昭和理化学器械)
フランス製のパラボラ型ソーラークッカー「Cook Up200」。木製フレームに三角状のアルミシートを差し込んで組み立てる構造。デザインもおしゃれで、解体するとキャリーバッグ内に収まるサイズになるのが魅力(出展者私物)

 

CookUp200の裏側はこんな感じ

 

アメリカ製のボックス型ソーラークッカー「Solar ven」。素材は自動車のフロントガラスに張る日よけシートに似ている。熱を外に逃がさないように、前面には透明のシートが付随している(出展者私物)

 

アメリカ製の携帯型太陽熱温水器「Solar Kettle」。アルミパネルを広げてスタンドで斜めに置き、ガラス真空管内で約500mlのお湯を沸かせる(出展者私物)

 

アメリカ製の真空ガラス管のソーラークッカー「GoSun Sport」。取っ手つきのスライド皿がついており、中に入れることで蒸し焼き料理などが楽しめる(出展者私物)

 

晴れていればサンマが20分ぐらいで焼ける

 

このソーラークッカーはなんと太陽の動きに合わせて、左右の向き、上下の角度が自動で変わる。土台はOSB合板、廃品のパラボラに反射板を張りつけて製作。動力はソーラーパネルから取っていて、その横に調理したいものを置くスペースがある(あつぎ環境市民の会・ひまわりソーラークッカー研究会)

 

パラボラを取り外した状態。奥の黒いボックスが心臓部。底面に取りつけたターンテーブルで左右に動く

 

自作のギアが左右のフレームを転がることで上下に動く

 

真空ガラス管の太陽熱温水器。太陽の向きに合わせて左右に動かすことができ、かまぼこ型のパネルで効率よく熱を集める(あつぎ環境市民の会・ひまわりソーラークッカー研究会)

 

プラモデルに使われるギアを使用。動力は乾電池

 

こちらは縦型バージョン(あつぎ環境市民の会・ひまわりソーラークッカー研究会)

 

小型温水器「ぬくみちゃん」。背面に反射板、底面に黒色の集熱板、耐候性に優れたアクリル板で周囲をカバー。快晴の朝、2L程度の水を入れた黒いやかんをセットすると、午後には50~80℃のお湯ができるそう(ぬくみねっと)

 

真空ガラス管が手に入ったので、本大会のために急きょ製作したという太陽熱温水器。内側にレンジシートを張ったカマボコ型の木製パネルで熱を集め、上部の貯湯槽にお湯を貯めている(ぬくみねっと)

 

曇りだった当日は50~60℃のお湯が作れ、トウモロコシを茹でていた

 

太陽熱乾燥装置「おひさまドライヤー」。中に食材を入れて天日干しすれば、ドライフルーツ、健康茶、おせんべいなどが自宅で作れる(筑西市商工会エコの木プロジェクト部会)

 

本体はキリ材。背面はオーブン用の黒いシート、食材を置く面はテフロン性のメッシュシートを敷いている。前面の透明の板はガラスだと割れやすく、UVA(紫外線A波)の通過率を考えると、アクリル板がベストだそう

 

側面と上部には風通しをよくするための穴があいている。また、取っ手もついているので持ち運びに便利。なお、重量は小型が5.5kg、中型が10.1kg

 

日本ソーラークッキング協会がこの日持参していた製品は、アメリカ製のボックス型ソーラークッカー「サンオーブン」。ガラスを通して太陽光を取り込み、箱の内部に熱を閉じ込めて調理する。反射板を折りたためばトランク状になるので持ち運びもラク(アメリカ製)

 

ラスクなどが作れるフードドライヤー(左)と、ボックス型の「西川式ソーラークッカー」(中央・右)。発泡スチロール、透明フィルム、レンジカバー、ダンボールなど身近にあるもので作れるというのがポイント(日本ソーラークッキング協会)

 

真空ガラス管によるソーラークッキングが手軽に楽しめる「エコ作」。湯沸かしや魚のホイル包み焼きが約60分、焼き芋や焼き鳥は約45分で作れる。太陽熱はいろんなことに利用できる上、真空ガラス管は冬の寒さにも強いのが魅力だとか(寺田鉄工所)

 

ソーラークッカーの工作教室も大盛況!

 

環境教育教材用ソーラークッカーキット「ひまわり」

環境教育教材用ソーラークッカーキット「ひまわり」。ハサミ、セロテープ、クリップを用意し、台紙の裏面に書かれているとおりに切り抜いたり折り曲げたりすれば完成。使わないときは折りたたんでコンパクトにできる(住環境工房)

 

「鳥居式山梨モデルF型」

材料は牛乳パック3個、ポテトチップスの袋約7枚(またはアルミホイル)、ダンボール、割りばし、ペットボトル、黒く塗った空き缶など。普段なら捨ててしまうようなものでも、立派なパネル型ソーラークッカーが作れる(日本ソーラークッキング協会/サンライト)

 

「いつでもガスレンジシートクッカー」

市販のレンジシートの中央を丸く切り抜き、半分に切ったら2枚をクリップで器状に固定するだけの超簡単構造(甲府市地球温暖化対策地域協議会)

写真◎佐藤弘樹

*この記事のデータや内容は2016年8月時のものです。