前々回のWeekly 4Gamerの方に,当連載に関するおたより,と言うかご感想?ご報告?が来ていました。ありがとうございます。せっかくなのでイジります。
■レトハンバーガー,毎週楽しみにしています。楽しみにしていますが,内容はほとんどわかりません。ほとんどわからないのですが,脱衣マージャンの回だけめっちゃわかりました。不思議です。(会社員 Ituki)
分からなくても大丈夫です。筆者も,たまに自分の脳が自分の手を使って何をタイピングしているのかよく分かりません。前回なんてパラグラフひとかたまり分の奇文が脳直でエディタに生成されていましたが,どこに組み込めば良いのか分からなくてセルフボツにしました。前後の接続は削っていますが,以下のようなやつです。
「ニッポンのヤングサラリーマンは,右手にスマートフォン,左手にシュリケン,右腰にビニール傘,左腰にカタナをぶら下げていて,四半期ごとの宴会でチームで最弱のメンバーがエグゼキュートされ,最終的に残った独りがブチョーになるデース」と言ったら割と面白い……いえ間違えました。“こうだと面白い”ではなく事実でした。とくに春,サクラの季節に行われるオハナミは多い場合は一度に10人以上がエグゼキュートされるため,ジャパニーズ・エグゼキューション・パーティーの中でも最もファンタスティックなものとされていて,オハナミでベスト・エグゼキューターに輝いたカチグミサラリーマンはシャチョーサンと呼ばれます(※あくまで名誉上のものであり,CEOなどとは別の意味合いです)。マケグミサラリーマンも,エグゼキュートされる前に自らハラキリするとブシドーランクが高いと讃えられます。また,オハナミの席はブレイコーなので,エグゼキュート・ターゲットがセルフディフェンスでカチグミサラリーマンをウチトッタリすることが,ゲコクジョー・リバーサルとして認められます。ただし,ゲコクジョーに失敗してウチジニ・ダイした者のブシドーランクは最低とされます。このように,オハナミはいろいろなチャンス(とリスク)が存在してエキサイティングですから,ニッポンジンはオハナミが大好きです。それに,オハナミでエグゼキュートされた者はサクラの根本に埋められ,その血を吸い上げて翌年のサクラが綺麗に色づきます。クニオ・ヤナギダはジェノサイドゾーンにサクラ・オブ・ザ・シダレーが植えられると言ってましたし,ヤクモ・コイズミも人間のソウルを吸って冬に咲くサクラの話を残しています。
「元ネタが分かれば分かる」などではなく,まったく架空の世界の話をしているので筆者にも全容は分かりません。「この世界の自販機はどういうラインナップなんだろう」と考えてイメージしてみると,また未知の世界が現れるはずです。世の中は分からないことだらけです。あっ,自販機に缶入りじゃっぱ汁が見えました(しかも「つめた〜い」)!
ただ,「分からない」と認知することにはマイナスのイメージがあるものの,実は「それこそ良い」ことだったりもします。
人間,刺激や新奇性から離れて生きていると「知らないことは何もない」と思い込みがちです。そのように自らのたまう人こそ稀ですが,「自分の世界観と知識で物事の理解は必要十分」となってしまい,未知の文化や風習,価値観,システムなどを「間違ってる」と思うようになり,実質的に「知らないことは何もない」となっている人は少なくありません。“地元”や“うちら”が世界観のすべてだったり,匿名掲示板のスレッド内でのバイアスを世論だと思いこんだりするような,いわゆる夜郎自大の者です。
夜郎自大を避ける主要な方法の1つが,それを理解するだけの情報や文脈を自分は持ち合わせていないと認知すること,つまり「分からない」と言えることです。なお,夜郎自大の者は「相手の説明が不十分だから分からない。中身のあることを言わないから分からない」(実際には自身に理解する能力が無い)といった方向で「分からない」を述べがちですが,それは他責によるものであり,自ら「分からない」と認知するのとは別の話です。
もし自ら「分からない」と認知できたなら,不足している情報や文脈を入手することで「分かる」ときが来るかもしれません。「分かる」ほうが,例えば「ウマ娘 プリティーダービー」(iOS / Android / PC)や「艦隊これくしょん -艦これ-」(BROWSER / Android)のキャラクターデザインに込められた意味合いが分かるとか,小島秀夫監督のゲームや庵野秀明監督のアニメなどでオマージュやインスパイアの源流が分かるとか,面白さが増してきます。
ただ近年は,社会通念のパラダイムシフトから生じた不安感やSNSの発達・普及などによって,個人の認知を共有することが好まれるようになり,ゲームやアニメなどのエンタメは「分かりやすい」方向に寄りがちです。ゲームメディアもまた,「懐かしいなあ」となる“まとめ”記事や,「それな」となる“推し”記事が多く作られています。ニコニコ生放送で行われた「ぶらどらぶ」一挙配信内で,押井 守監督は「そればっかりじゃないんだろうけど(中略)意外性がどんどん無くなりつつある。アニメーション自体が追体験の場にしかなっていない。安心して観られるものしか皆観ない」と述べられていたように,今は“追体験”が多く求められている時代です。それに,エンタメが商業である以上は,ユーザーのニーズに応えるのが実際のところベターな選択です。
とは言え,予想外のことに驚く面白さ,斬新さや新奇性にワクワクする面白さ,捻ったコンセプトに唸らされる面白さが欠かれていて良いものでしょうか? 「日本ゲーム大賞」の司会やゲーム雑誌のコラム連載などで知られるタレントの伊集院 光さんが,「ビートたけしさんが,ラジオ番組で全然知らないことを喋っているのだけど,その口調が非常に楽しそうなので話題に興味を持つようになった」という旨を自身のラジオ番組で述べていましたが,そうやって「分かりにくい」ことを面白くユーザーに届けることも可能なはずです。まあ,当連載の前回におけるプチ・エレファントカシマシ祭りみたいなのが,実際それ系に当てはまるかはともかくとして。
その意味では,「分からない」ことを発信していくのもメディアの役割の1つだと思うんですよね。だから筆者が「先日お台場にあるペニョパラン系のヨッテン屋に行ったら,横稲荷がマンデロンしていたので3個ほど已甩持にしれくれと頼んだんですが,店主が『うちはそういうのやってないから』と替わりにジャークルモンゼを伏器に詰め始めて,いやそれじゃ根本的にベラスだろってことで,せめてヨーグレンにしてくれと言ったのですが,店主は聞き入れずモッチャンして,でも最終的には逆に黒辰李だったので超チョボスって言うか,マジで孚wwwwて言うか仍wwww」みたいなことを書いてもいいんです。駄目ですか。いいじゃないですか? さすがに「文章っぽい」だけのマジで意味が無いものは駄目ですよ。
あと,おたよりでちょ〜っと惜しいのが連載のタイトルですね。当連載のタイトルは,古典的にして根源的な魅力を持った「電子遊戯」を「再励起」する,そのための「砦」たるもの――「バーガー」って言うと一般的には食べ物のイメージですが,語源はドイツ語の「砦」(burg:ブルク)で,例えばハンブルグ(Hamburg)って湾の砦(ham-burg)なんですよ――というミーニングを“レトロ”にかけて「Re:Tron Burger」と綴り,読みは「ゲーミングドガチャカフリートーク5000〜1万字くらい独り大激論スペシャル(ってビョーキじゃね)〜おばちゃん,ギョーザまだ?〜」となっています。こう事実とデマカセと冗談と後付け設定をこねくり合わせた果てに,前提とは全然異なる着地点に持ってかれても困るかとは思いますが,そんな感じです。なお筆者は「レバ」と雑に略しているくらい名称にこだわりはないです。
〜今日のQ&Aコーナー〜
Q. その綴りだと発音は「リトロン」じゃね?
A. うっせぇわ。
んでアレです。飛び飛びで週に2日も祝日があると,制作と許諾取りが噛み合わないので当連載みたいなやつはネタがまとまりません。ガチのフリートークだったら隔週どころか週刊でも全然イケるとは思いますが。「『Nintendo Switch Online』でメガドライブのソフトが遊べるってことは,任天堂ハードで『バトルマニア』の例の裏技をやることも理論上は可能ってわけですよね」(関連記事)とか,「日本語吹き替え版だとクッパの声優は和田アキ子さんでしょう。マリオは古谷 徹さん。ドンキーコングは山ちゃん」(関連記事)みたいな。まーた「分からない」方のネタに寄ってますけど。それに,こういうのを独り喋りでやっていると,すぐカオス方面に陥るので難しいですね。壁に話しかけているのと同じですから。壁くんはすぐ僕を罵倒するから。壁くんは喋れないのに僕をなじってくるから!(カオス方面)
というわけで,今回はSteamで買ってライブラリにぶっこんでいたけど,よく「分からない」ので塩漬けにしていたゲームを,薄口
でやっていきましょう。て言うか,毎度話が無駄に濃くなりすぎているので,薄口くらいが普通のはずなんですが。でも普通なんてつまんねえじゃん!?
というわけで(二度目),Firedog Creativeから去年3月に発売された「愛神餐館MAX」と,2017年末頃に発売された,その続編「愛神餐館2」です。何が分からないって……UIの対応言語が中国語(繁体字)オンリーでさ!
大本の「愛神餐館」は,台湾の大宇情報から香港/台湾で2000年に発売されたPC向けタイトルで,開発および版元は香港のFiredog Computer Entertainment(火狗工房)。恋愛シムと経営シムとRPGを組み合わせた“てんこ盛り”なタイトルです。
2002年2月には韓国のXYZ Entertainmentから韓国語PC版,2002年6月にはサクセスから日本語Xbox版(邦題は「ビストロ・きゅーぴっと」),同じくサクセスから10月にPC版がリリースされています。その拡張版が「愛神餐館MAX」で,2004年に香港/台湾で発売されました。なおFiredog Computer Entertainmentは「香港初のオリジナル商用ゲームソフトウェア制作会社」であり,「ビストロ・きゅーぴっと」は「日本の家庭用ゲーム機で初めて発売された香港産のオリジナルゲーム」なのだとか。
続編の「愛神餐館2」は,まずPS2 / Xbox向けの日本語版(邦題は「ビストロ・きゅーぴっと2」が2003年にサクセスから発売。2005年に中国語版が香港/台湾でリリースされています。こちらもサクセス販売版は「PS2で初めて発売された香港産のオリジナルゲーム」だそうです。
「愛神餐館MAX」は日本語版が発売されておらず,先述の通りSteam版も日本語は非対応。日本向けのXbox / PC版に使用されていた日本語CVも入っていません。ただゲーム自体はサクセス販売版がベースとなっているらしく,起動時にはサクセスのロゴが表示されます。
ちなみに日本語CVは,メインヒロインが堀江由衣さん,ヒロインの1人および主題歌が野川さくらさん,その他にも川澄綾子さん,田中理恵さん,氷上恭子さんと,今の視点だと「かなり豪華」と感じられるキャスティングとなっています。まあ,川上とも子さんのお名前に,ちょっとスンッ……とはするのですが。つい先日,アニメ「かぎなど」で真田アサミさんが神尾観鈴役を継がれると発表されて,それにスンッ……となったばかりだったりもするのですが。
「愛神餐館2」も日本語PC版は発売されていないのですが,こちらは日本語ボイスを搭載(2005年の中国語版の時点で日本語ボイス仕様だったそうです)。水樹奈々さんによる主題歌「恋してる…」なども聴けるうえ,えーっと……筆者は中国語って英語より読めないんですけど,百度百科によると「中国語PC版はXbox版の専用ヒロインとPS2版の専用ヒロインも追加されている」……みたいですね。日本語音声のおかげでシナリオは割と把握できるのですが,ゲーム自体はガチめの難度らしいので,日本語UIが無いのは厳しいところです。
つまりSteam版「愛神餐館MAX」および「愛神餐館2」って,どちらも「決定版」と言えるエディションなのに日本語ではプレイできないという……これ,日本語でやりたいな? サクセスさんか,サクセスIPの現行機移植に精力的なシティコネクションさんでワンチャン無いでしょうか。まあ実際のところ,ライセンスを得てローカライズして移植して,そのコストに対して売上はどれだけ見込めそうかっていうと難しいのは承知ですが……。
うーん,頑張って中国語,読むかあ。
なおFiredog Creativeは,2010年代には日本市場に向けても積極的にコンテンツ展開をしていたものの,2013年にリリースした「ティアラ コンチェルト」は約1年でサービス終了,2015年にリリースしたアストラルゲイザー(後に「アストラルステアウェイズ」へ改称。iOS / Android)は2018年に日本向けサービス終了と,なかなか苦戦している印象。ただ同社の公式Facebookによると,“より良い開発”を目指す意味を込めて3月末に自社ロゴを改修(角を丸く)したとのことで,今後の活躍に期待しましょう。
ちなみに,ちょっと名前の出た台湾の大宇情報ですが,こちらはこちらで1990年代に発売したMS-DOS向け麻雀ゲームをSteamでリリースしたりもしています。なんかこう……旧作がサラッと出てくるの,アジア感ある!