インディーズデベロッパ・Twin Heartsが開発し,アークシステムワークスが日本およびアジア地域のパブリッシングを手がける「ニャンザの冒険」(PS5 / PS4 / Switch)。
本作は,動物が暮らす世界を舞台に,主人公のニャンザが世界を救うために冒険するアクションRPGだ。作物を収穫できる農園や伐採した木材,採掘した鉱物などを素材とするクラフト要素もあり,単なる冒険譚に留まらない内容となっている。
今回,本作のPS5版をストーリーのエンディングまで見届けたので,そのプレイレポートをお届けする。
本作の舞台となるのは,動物達が暮らす国・カノイデラ。この国はかつて,住民と平和な関係を築いていたモンスター達が,謎の力によって突如凶暴化するという厄災に見舞われた。しかし勇者達の活躍によりモンスターは倒され,謎の力も影を潜め,この国に平和が訪れたのである。
しかし現在,カノイデラ各地にて再び凶暴化したモンスターの姿が確認されるようになり,厄災の再来が囁かれるようになった。そこで軍に所属するニャンザと相棒のマカロンは,傭兵としてニクキュー村周辺の警護を担当することになるのだった。
ゲームの基本的な流れは,住民から依頼されたクエストをこなしてストーリーを進めていくというもの。その過程でさまざまなフィールドやダンジョン,拠点に赴き,新たな住民と出会ったり,モンスターとバトルしたり,クラフト用の素材を収集したりしていく。
バトルは,フィールド上やダンジョン内を徘徊するモンスターに遭遇するとシームレスにスタート。ニャンザの攻撃手段は,剣または弓による通常攻撃およびスキル,そしてこの世界では禁忌とされる魔法だ。剣・弓のスキルと魔法は合計4種類をショートカットボタンに登録できるので適宜使い分けて,モンスターを倒していく。
モンスターも種類に応じて近接攻撃と遠距離攻撃,魔法攻撃を駆使してニャンザに襲いかかってくる。攻撃を仕掛けてくるときは地面に範囲の予兆が示されるので,ニャンザが範囲外に移動する,または回避行動を取れば避けられる。
モンスターは一部を除きアクティブなので,ニャンザが攻撃しなくとも一定距離まで近づくとニャンザをターゲットし攻撃してくる。本作ではほとんどのフィールドに多数のモンスターが配置されており,とくに遠距離攻撃をしてくる複数のモンスターにターゲットされてしまうと厄介なことになる。ニャンザがかなり強くなるゲーム終盤までは,モンスターの攻撃を回避したら,ほかのモンスターの攻撃予兆が出て……といったことが繰り返され,反撃のタイミングを見出すことが難しいなんて局面もしばしばある。
なお,本作にはレベルや経験値の概念がなく,ニャンザの強さは装備の強さに依存している。装備はクラフトすることで強化できるのだが,個人的には防具を優先して鍛えることをオススメしたい。ニャンザの耐久力が飛躍的に高まるので,攻略に役立つはずだ。
本作で話題になりがちなクラフトや農園は,かなりシンプルな作りになっている。クラフトはモンスターがドロップする素材や採掘した鉱物などを必要数集めてNPCのところに持っていけばいいし,農園も耕して種を植え,種類に応じて必要な日数分だけ水やりをすれば作物を収穫できる。
なお,余った素材や作物は換金可能だ。本作にはこの換金とクエストのクリア以外に資金を稼ぐ手段がないので,効率よく換金できる素材・作物を探すのも攻略の1つとなっている。
実際にプレイした本作の感触は,動物達が暮らす雰囲気の良い世界を楽しむ,シンプルなアクションRPGというもの。クラフトや農園に関しては,ゲームを進める上で必須の存在ではあるものの,あくまでもアクセントに留まっており,本格的にやり込みたい人向けには作られていない。
またストーリーは,当初抱いていたイメージとは異なる意外な展開まで含めて王道の作りで,「なるほど,そうなるか」と思わされた。
ただ,少しゲームバランスが気になったことは否めない。装備を強化すればニャンザが強くなるのは上記のとおりだが,ゲームの序盤から中盤を過ぎるあたりまでは素材をドロップするモンスターが強かったり,素材の必要数が多かったり,必要な資金が集まらなかったりと苦労させられ,必然的にストーリーの進行も滞りがちになる。
ところが終盤に入ると,効率的に換金できる作物の登場などによって格段に装備を強化しやすくなり,あれよあれよとニャンザが強くなっていく。難度が高いはずのダンジョンもクリアしやすくなり,ストーリーも一気に進行する。
確かに,主人公を育成して強敵を難なく倒せるようになるというのはRPGの楽しさの1つではあるが,もうちょっとなだらかなカーブを描きながら強くなっていっても良かったかな,というのが筆者のすなおな印象である。
まとめると本作は,ニャンザをはじめとする動物キャラクターやグラフィックスが醸し出す雰囲気に惹かれる人,シンプルなアクションRPGを求める人に向いているタイトルと言える。クラフトや農園というワードに期待しすぎなければ,多くの人が楽しめるはずだ。