世界観を表現し、着る者の魅力を際立たせ、コミュニケーションの媒介となるコスチューム。『CGWORLD + digital video』vol. 277では、デジタルにより日々進化するコスチュームのセカイを大特集した。CGWORLD.jpでは全46ページの特集の中から約12ページを抜粋し、全4回に分けて転載する。以降では、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(以降、『プロセカ』)におけるColorful Paletteの制作事例を紹介しよう。
<Colorful Paletteの求人情報>
『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』の開発メンバーを募集
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TEXT_神山大輝 / Daiki Kamiyama(NINE GATES STUDIO)
EDIT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
イベントの衣装は、その時点のキャラクター性をギュッと凝縮したもの
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飯塚昂平氏(アートディレクター)
- 2018年6月の会社設立以降、企画に始まり、2020年9月のサービス開始、その後の運営にいたるまで、一貫して『プロセカ』のビジュアル面 をリードするColorful Palette。5ユニットのデザインが決定するまでの試行錯誤について、飯塚昂平氏(アートディレクター)に聞いた。
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プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク
開発:セガ、Colorful Palette
発売:セガ
価格:基本プレイ無料(一部有料コンテンツあり)
対応OS:iOS、Android
ジャンル:リズム&アドベンチャー
キャラクターデザイン:Colorful Palette、iXima(協力)
pjsekai.sega.jp
Colorful Palette設立時から『プロセカ』に携わってきた飯塚氏は、キャラクターのビジュアル全般のディレクションを担当している。飯塚氏はフィーチャーフォン時代からモバイルゲーム開発に携わっており、リズムゲームの制作経験もある業界歴10年以上のベテランだ。2Dアートのチームには約10名が所属しており、コスチュームのデザインは20代と30代の女性スタッフ2名が担当している。なお、本作の立ち絵はLive2Dで動かしており、同社にはその専門チームもある。3DCG制作はセガとその協力会社が担っており、飯塚氏はこれらの会社と連携し、3Dモデルの監修も行なっている。「人が足りていないこともあって、時間がないときには自分でガッツリ描くこともあります。この記事をきっかけに、求人の応募が増えると嬉しいです」(飯塚氏)。
『プロセカ』の5ユニット、20人のキャラクターは最初にColorful Paletteがデザイン案を作成し、3D化に関するセガのチェックや、クリプトン・フューチャー・メディア(以降、クリプトン)の監修を経ながらブラッシュアップされていった。また、クリプトンの依頼を受けてiXima氏もデザイン案を出しており、6人のピアプロキャラクターズはiXima氏の案がベースになっている。
▲「Leo/need」の星乃一歌のデザイン画
サービス開始後は、毎月3本前後のイベントが開催されており、シナリオ・音楽・ダンスの振り付け・MV演出・キャラクターイラスト・キャラクターのバックグラウンドや心情などが全てつながるように設計されている。もちろんコスチュームのデザインにおいても、イベントとの一貫性や親和性が重視される。「イベントの衣装は、それを着るキャラクターの、その時点のキャラクター性をギュッと凝縮したものです。それがユーザーさんの心に響けば、さらに共感していただけます」(飯塚氏)。イベント進行に合わせ、キャラクターの心情が変化していくため、MVやイラストはキャラクターの歩みの一瞬を切り取ったような画になっている。それを彩るのがイベントのコスチュームの役割だ。
5ユニットのデザインでは、何百枚もの案を描いては捨てるをくり返した
5ユニット、20人のキャラクターをデザインするにあたり、最初に行われたのが2Dアートのチーム全員による "ブレスト" だった。「青春バンド」「王道アイドル」などのキーワードが提示され、それに紐付くリファレンスが収集され、何百枚ものデザイン案を描いては捨てる日々がくり返された。「衣装担当のひとりは、"普段から、イラスト・写真・映画・本など、いろいろなモノを見ておく。気になったモノは、ざっとでも描いてみる。服であれば、実物を見に行って、触ってみたりもする" と言っていました。そういう感じで日々インプットしていると、いざというときにアイデアが出せますよね」(飯塚氏)。2019年2月〜3月にかけての1ヶ月におよぶブレストを経て、5ユニットのイメージボードがつくられ、これをベースにコスチュームを含めたキャラクターのデザインが詰められた。
どのユニットもひと筋縄ではいかなかったが、「Vivid BAD SQUAD」と「ワンダーランズ×ショウタイム」は各キャラクターのコスチュームの方向性が様々だったこともあり、特に時間を要したとのこと。また、「Vivid BAD SQUAD」の東雲彰人、「ワンダーランズ×ショウタイム」の天馬司の2人は特にデザインが難航した。「Leo/need」と「25時、ナイトコードで。」のコスチュームは、制服という方向性では重複しているが、その雰囲気は両極端。いずれも通学用の制服ではなく、制服をベースにした衣装という設定で、「Leo/need」はブレザーとシャツ、「25時、ナイトコードで。」はセーラー服がデザインの起点となっている。
これらのデザインを考える際、飯塚氏はスタッフに「3D化のことは気にしなくていい。デザインが決まってからチューニングする」と伝えていたという。「実際には、透過表現はできない、突拍子もないシルエットは難しいといったことはセガさんから聞いていましたが、この段階では自由にデザインしてほしかったし、仕様も決まっていなかったので、デザインの良し悪しだけで判断していました。それでもiXimaさんからMEIKOの肩掛けジャケットの案が上がってきたときには驚きましたね。ああいう再現の難しいデザインは、僕だったら無意識に避けてしまうと思います」(飯塚氏)。
「Leo/need」のイメージボード(決定稿)と3Dモデル
▲「青春バンド」などのキーワードから展開されたユニット。星乃一歌(3Dモデルの上から1人目)の腰に巻いたカーディガンの袖には専用ボーンが入っている
「MORE MORE JUMP!」のイメージボード(決定稿)と3Dモデル
▲「王道アイドル」などのキーワードから展開されたユニット。スカートの鍵盤柄は初期のイメージボード段階から提案されており、ブレストを経て決定稿のデザインとなった
「Vivid BAD SQUAD」のイメージボード(決定稿)と3Dモデル
▲ストリートミュージックのユニットらしく、ファッションもストリートがベースになっている。ひとくちにストリートファッションと言っても様々なので、小豆沢こはね(3Dモデルの上から1人目)は「ローティーンファッション、ガーリィ」、白石杏(上から2人目)は「スポーツカジュアル、スポーツモード」、東雲彰人(上から3人目)は「ごついブ厚い、ポップ、アウトドア」、青柳冬弥(上から4人目)は「アンニュイ、アーティスト風、ロック」というキーワードがiXima氏から提案された
「ワンダーランズ×ショウタイム」のイメージボード(決定稿)と3Dモデル
▲テーマパークのキャストのコスチュームをベースにしつつ、それ以外の要素も加えることでハチャメチャ感を出している。例えば天馬司(3Dモデルの上から1人目)の場合は、王子様的なデザインと宇宙柄の組み合わせが印象的だ
「25時、ナイトコードで。」のイメージボード(決定稿)と3Dモデル
▲ムラのある黒のグラデーションを基調としつつ、各キャラクターの嗜好をふまえた差別化が図られている。ファッションに無頓着な宵崎奏(3Dモデルの上から1人目)はオーバーサイズのパーカー、カワイイ服が好きな東雲絵名(上から3人目)と暁山瑞希(上から4人目)は装飾の多いゴージャスな服を着ている。朝比奈まふゆ(上から2人目)のスカートはシアー素材の布が重なっているデザインだが、透過表現ができないため、テクスチャで表現している
info.
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月刊CGWORLD + digital video vol.277(2021年9月号)
特集:デジタルで彩るコスチュームのセカイ
定価:1,540円(税込)
判型:A4ワイド
総ページ数:112
発売日:2021年8月10日
cgworld.jp/magazine/cgw277.html