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ランドクルーザーは世界170か国で愛されるSUVの“王様”。その走破性に寄せられる信頼は絶対のものになっている。誕生から70年の今年、14年ぶりにフルモデルチェンジ。「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」を使命とする同車の新型は、早くも人気沸騰中だ。

※こちらは「GetNavi」 2021年10月号に掲載された記事を再編集したものです。

 

【SUV】2021年8月発売

トヨタ

ランドクルーザー

510万円~800万円

運転しやすく、疲れないクルマを目指した世界屈指の4WD。パワーユニットは先代のV8が姿を消し、全モデルV6エンジンに変更。ディーゼルエンジン搭載車の復活や、GR SPORTグレードが加わったことが話題になっている。

 

SPEC【ZX ガソリンエンジン】●全長×全幅×全高:4985×1980×1925mm●車両重量:2500kg●パワーユニット:3444ccV型6気筒+ツインターボ●最高出力:415PS/5200rpm●最大トルク:66.3kg-m/2000~3600rpm●WLTCモード燃費:7.9km/L

 

モータージャーナリスト

清水草一さん

フェラーリと首都高をこよなく愛する自動車ライター。クルマのほか交通ジャーナリストとしても活動中。メディア連載も多数。

 

伝統はしっかり継承しつつ悪路走破性をさらに高めた

ランドクルーザーは「キング・オブ・SUV」。日本ではオフロードを走る機会はめったにないが、中東諸国や途上国では絶対的な信頼とステータスを得ている。特にアフリカでは4WD=ランドクルーザーと言われるほどだ。

 

「道路事情の悪い国では、ランドクルーザーこそ最強であり最高級。途上国での絶大な人気が日本など先進国にも飛び火し、名声は高まる一方です」(清水さん)

 

新型の開発テーマは“継承と進化”。耐荷重性、耐衝撃性に優れたラダーフレームは剛性を上げながら軽量化して継承。さらにボディ各所にアルミ材を使用することで、車両重量を約kg軽量化した。

 

「オフロードでは車両の軽さは重要で、ぬかるみにはまったときも脱出しやすくなります。ランドクルーザーはさらに生きます」(清水さん)

 

路面状況に合わせて最適なドライブモードを選べる「マルチテレインセレクト」はさらに進化し、利用可能なシーンがより広がっている。

 

エンジンはガソリン、ディーゼルともにV6に変更された。

 

「燃費の良さを求められるクルマではありませんが、新型では向上しました。特に復活したディーゼルターボモデルは、力強いトルクと9.7km/L(WLTCモード)という燃費を実現していて、環境性能も向上しています」(清水さん)

 

【トレンドのツボ】世界じゅうで争奪戦がぼっ発? 日本では納車まで1年以上の見込み

ランドクルーザーは世界各国で使われており、このクルマでないと安心して走行できないという地域も多い。早くも世界じゅうからオーダーが入っており、争奪戦となっている。日本では納車まで1年以上かかる見込みとアナウンスされた。

 

↑観光客を乗せて砂漠を走る「デザートツアー」。故障は命取りになるため、ほぼランドクルーザーが使われる

新型ランドクルーザーはココが進化!

新型モデルでは絶対的な悪路走破性をさらに高め、安心してオフロード走行ができるように進化。先代から14年を経たフルモデルチェンジの革新はココに凝縮されている。

 

1.高剛性を高めながら大幅な軽量化を実現

新開発のGA-Fプラットフォームを採用。伝統のラダーフレームは剛性を高めつつ軽量化。さらにルーフや全ドアパネルの素材をアルミ化することで、車両重量が従来より約200kg軽量に。

 

↑従来よりも20%剛性がアップした新しいラダーフレーム。TNGAプラットフォーム思想により、最新の溶接技術などを導入したことで実現している

 

↑新開発のサスペンション。サスペンションアームの位置を変えることで、ブレーキング時の車両姿勢や悪路でのタイヤの浮きづらさが向上した

 

2.充実したマルチテレイン性能でオフロード走行をサポート

悪路走破性を高めるマルチテレインセレクトを全モデルに標準装備。路面状況に合わせて走行モードを選択すれば、駆動力やサスペンション、ブレーキなどを自動で制御し、走破性を確保してくれる。

 

↑モードセレクトの動作範囲は通常の4WDであるハイレンジ(H4)モードでも選べる。より広いオフロード走行で使用可能になった

 

↑周囲の状況を4つのカメラでサポートするマルチテレインモニター。車両を停止させれば車両下の状況も確認でき、進むべき方向も教えてくれる

 

3.GR SPORTグレードにはラリーで培った技術を投入

新型モデルの目玉がGR SPORTグレードの設定。いままでにないほどオフローダーとしての性能を重視しているのが特徴だ。ダカールラリー参戦ドライバーの声を反映した専用装備が設定される。

 

↑前後のスタビライザーを独立して自動で電子制御し、前後輪それぞれの状況に応じその効果を変化させるE-KDSSを搭載。オンロードでの安定した走行と高い悪路走破性を実現する

 

↑本格的4WDではおなじみの、シャフトで左右両輪をつなぎ駆動力を生むデフロック走行。GR SPORTは前輪でも設定可能

 

【Column】ランドクルーザーを撮り続けているカメラマンがそのタフさを語る!

 

カメラマン

難波 毅さん

新聞社のカメラマンを経てフリーに。オーストラリアでランドクルーザーに出会い、以来過酷な環境下で働く姿を撮り続けている。

 

ランドクルーザーが止まればオーストラリアの生活が止まる

オーストラリアはランドクルーザーがランドクルーザーらしく活躍する場所。地下の銅鉱山では悪路、泥水、高湿度という環境で一生を過ごし、未整地の牧場では人車一体となって牛の群れを追う。産業界や官公庁で広く利用されており、「ランドクルーザーが止まればオーストラリアの生活が止まる」といっても過言ではないほどの信頼度だ。

 

↑放牧する牛の群れを追いながら移動させるのは馬に乗ったストックマンの仕事だったが、ランドクルーザーが馬の代わりとなることも。道なき牧場内を走り回るのは想像以上にタフである

 

↑オーストラリアの地下鉱山。その坑道は地下1900mに達する。地下で働くクルマは大型重機を除けばランドクルーザーだけ。いったん地下に下りたら基本的には2度と太陽を見ることはない

 

LAND CRUISER 70 YEARS HISTORY

1951

ジープBJ

自衛隊の前身である警察予備隊向けに開発された。車名の由来はB型エンジン搭載のジープ型モデル。性能は十分だったが、実績から納入は見送られた。

 

1955

ランドクルーザー 20

乗用車テイストに変化。ホイールベース違いのモデルもラインナップしていた。末期にはバンモデルも導入し、海外への輸出も本格的に開始された。

 

1967

ランドクルーザー 55

それまでのタフさ一辺倒ではなく、ランドクルーザーに求められた快適さを具現化したモデルが55型。高い快適性を持つステーションワゴンとなった。

 

1980

ランドクルーザー 60

55型の後継モデルが60型。より快適性能が向上した。エアコンやパワステ、国産4WDとしては初のATを採用するなど、より個人ユーザー向けになった。

 

1984

ランドクルーザー 70

悪路走破性能を保ちつつ快適性は乗用車と同様レベルに向上。日本での販売は終了してしまったが少しずつ進化し、海外ではいまも第一線で活躍中だ。

 

1989

ランドクルーザー 80

ラグジュアリー系RVとして地位を確立。仕様や装備は高級セダンと遜色ないうえ、耐久性や走破性能もランドクルーザーの名に恥じないものだった。

 

1998

ランドクルーザー 100

その異名は「悪路のセルシオ」。高級4WDモデルとして豪華な装備を誇った。海外ではレクサスブランドとして「シグナス」も追加されている。

 

2007

ランドクルーザー 200

ボディサイズを100型より拡大した200型。悪路などで超低速域を維持するクロールコントロールなど、先進機能を多く装備するのも特徴だった。