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パーソナルドキュメントスキャナー「ScanSnap iX1300」

 株式会社PFUは、パーソナルドキュメントスキャナー「ScanSnap」シリーズの新機種「iX1300」を10月8日に発売する。オープン価格だが、同社が運営するオンラインショップ「PFUダイレクト」での販売価格は3万5200円。本体カラーがホワイトの「FI-IX1300」とブラックの「FI-IX1300BK」をラインアップする。

 新しい給排紙機構「Uターンスキャン」など2種類のスキャン方法を採用し、コンパクトな本体と設置場所の省スペース化を実現。また、Wi-Fi接続にも対応しているため、クラウドサービスと連携させることで、スキャン時にPCを起動することなく使用することも可能。在宅ワークや家庭で生じるさまざまな紙の書類の管理の悩みを解消するのに適した製品となっている。

ホワイトモデル「FI-IX1300」

ブラックモデル「FI-IX1300BK」

Uターンスキャン方式で、コンパクトな本体・省スペースを実現

 iX1300の本体は、ScanSnapシリーズにおいて新設計となる筐体を採用。給紙・排紙方式として「Uターンスキャン」と「リターンスキャン」という2種類に対応している。カバーを閉じた状態の大きさは296×114×87mm(幅×奥行×高さ)、重さは2.0kgで、2リットルのペットボトル飲料を横に倒したのとほぼ同じ大きさ・重さだという。

Uターンスキャン

リターンスキャン

 給紙・排紙ともに本体上部で行うUターンスキャン方式により、本体手前の排紙トレイのためのスペースを不要とした。カバーを開いて原稿台が上部後方に伸張した状態での大きさは296×247×242mm(幅×奥行×高さ)となり、使用時の設置実スペースはほぼA4サイズに収まる。

 Uターンスキャンでは、A4カラー両面原稿を最大で毎分30枚・60面でスキャン可能(カラー300dpi、白黒600dpiの場合)。従来機種の「S1300i」より2.5~5倍高速化された。なお、ScanSnapシリーズの現行の最上位機種「iX1600」(およびその簡易機種「iX1400」)の最大40枚・80面には及ばないが、iX1600にモデルチェンジする前の最上位機種「iX1500」と同等であり、大量の書類を頻繁にスキャンするような使い方でなければ十分なスピードと言える。

 原稿は最大20枚をまとめてセットでき、スキャンする原稿をセットするシューター(原稿台)は本体カバーを開くのと連動して展開・伸張する構造となっているほか、スキャン後の原稿を受け取るスタッカー(排紙トレイ)もスキャン処理に合わせて自動的に伸張・収納される仕組みだ。ワンアクションで準備が完了し、すぐにスキャンできる操作性は、これらを手動で行うiX1600/iX1400よりも快適になった。

 Uターンスキャン方式が複数の原稿をセットして連続スキャンする際に適しているのに対し、手差しで1枚ずつスキャンする際に使うのが、本体前面から原稿の給紙を行い、スキャン終了後に同じく前面に排紙されるリターンスキャン方式だ。スキャンスピードは原稿1枚5秒(カラー300dpiの場合)となるが、本体カバーを閉じたままでも、本体前面のスロットに原稿を差し込むことで電源がオンになるため、写真やハガキ、子どもの学校のプリントなど、日々のちょっとしたスキャンを手軽に行えるのが特徴だ。A3原稿を2つ折りにしてスキャンする際にもリターンスキャンを使用する。

 また、免許証や保険証などのプラスチックカード、通帳、封筒、商品パッケージなどの厚手の原稿もリターンスキャン方式を使用する。PFUによると、iX1300では原稿の上側のローラーのサスペンションをより柔軟にあしたとしており、厚さ2.0mmmまでの冊子もスキャン可能だ。なお、名刺はUターンスキャンでもスキャン可能だが、スキャン後に名刺がカールしてしまう恐れがあるほか、厚手の名刺は給紙できない可能性もあるため、リターンスキャンを推奨している。

 リターンスキャンでは、原稿差し込み時にあらかじめ傾きをチェック。原稿が傾いて搬送口にぶつかりそうな場合には、斜めにセットしていることを警告し、スキャンをストップ。原稿の破損を未然に防ぐ。一方、ぶつからない程度の傾きや、名刺などの小さな原稿はそのままスキャンされ、原稿のサイズで自動的に切り抜き・傾き補正が行われる流れだ。

 PFUによると、iX1300のUターンスキャン/リターンスキャンは、富士通株式会社が2019年に発売した業務用ドキュメントスキャナー「fi-800R」で用いられていたのと同様の機構を、家庭用のScanSnapシリーズに投入したかたちだという。fi-800Rは窓口業務用ということで、リターンスキャンではパスポートやお薬手帳などもスキャンできる厚さ5.0mmまで対応しているといった違いがある。

Wi-Fi対応&クラウド連携により、PCレスで手軽にスキャン可能

 iX1300のインターフェースは、USBによるPCへの有線接続のほか、Wi-Fi(IEEE 802.11ac/n/g/a/b、2.4/5GHz)にも対応している。スキャンの品質や保存先の設定などにはPCなどとの接続が必要になるが、そうした設定がいったん完了し、自宅Wi-Fiネットワーク経由でクラウドストレージにスキャンデータを保存するような運用とすれば、スキャン時にはPCやスマートフォンなどを使わずにiX1300本体だけで済ませられるメリットがある。

 前述のリターンスキャン方式と併用すれば、例えば、子どもが学校から配布されたプリントを帰宅後にすぐにスキャンして家族と共有するなど、家庭での手軽な活用が可能になる。PFUでは、捨てるかどうか迷うような書類はとりえずスキャンすることを提案。在宅勤務などでおうち時間が長くなる中、紙をすっきり片付ければ快適な在宅ワークスペースも確保できるとアピールしている。

 なお、PC用の専用ソフトは、iX1600/iX1400などと共通の「ScanSnap Home」(Windows 11/8/1/7、macOS 11.0以降/10.13以降対応)を提供。また、スマートフォン/タブレット用にはアプリ「ScanSnap Connect Application」(iOS 12.0以降、iPadOS 13.0以降、Android 6.0以降、Chrome OS 88.0.4324.186以降、Fire OS 6.0以降対応)が用意されている。

 PCを所有していないユーザーでも、スマートフォン/タブレットのアプリから簡単にセットアップできるよう配慮。iX1300の電源ボタンを押しながらカバーを開けることでセットアップモードに入るようになっており、Wi-Fiのパスワード入力も含め、アプリ内でセットアップが完了するようになっているという。PC/スマートフォン/タブレットを問わず、開梱後すぐに活用できるとしている。

販売価格は3万円台、家庭用にも購入しやすく

 今年1月に登場したScanSnapシリーズ最上位機種のiX1600は、PFUダイレクトでの販売価格が5万2800円。量販店などではこれよりも安い場合もあるが、家庭用に購入するには抵抗のある価格帯だ。それと同時に登場したiX1400は、iX1600からタッチパネルディスプレイなどを省くなどシンプル設計にすることで低価格化した製品だが、それでも4万1800円。iX1400ではまた、Wi-Fi機能も省かれていたのが家庭用としては惜しい点だった。

 一方で、iX1600/iX1400よりも低価格帯の機種となると、2万8600円のS1300iがラインアップされており、家庭用としても購入しやすい価格帯ではあるが、Wi-Fiは未対応。また、2012年に発売された機種ということで、最新機種と比べるとどうしてもスペック的に見劣りしてしまうのは事実であり、購入するのに抵抗があった人も少なくないようだ。

 今回登場したiX1300は、そうしたScanSnapのラインアップの空白を埋める機種となる。PFUダイレクトでの販売価格は3万5200円のため、S1300iと比較するとまだ高価だが、場合によっては量販店などで3万円を切る価格で販売されることも考えられる。家庭でのペーパーレス化に導入するのにもちょうどいい位置付けのScanSnapが、今回ようやく登場したと言えそうだ。