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Storm Ventures(ストームベンチャーズ)の前パートナーで現在はプライバシー関連企業SkyFlow(スカイフロー)のCEOである投資家兼企業家のAnshu Sharm(アンシュ・シャルマ)氏がツイッターで、利子率とテクノロジー評価の関係について質問している

お世辞は無視していただきたい。シャルマ氏はジェフと私を引っかけて彼の質問に答えさせようとしているだけだ。こうして記事にしているのだから、その企みは成功したわけだが。

シャルマ氏はテクノロジーサイクルと資本の流れ、そのどちらにも豊富な経験がある人なので、上の質問を一般的な質問と考えてはいけない。彼はもっと深い話がしたいのだ。そこで、利子率とテック企業の評価額について深く探ってみよう。

履歴

スタートアップが必要なだけ資金を調達できる(調達資金総額は史上最高に達している)理由の1つとして、今日の低金利がある。

今は世界的に利子率が低い。つまりお金の価値が低いのだ。お金の価値が低いということは、あまりコストをかけずに資金を調達できるということだ。例えばCoinbase(コインベース)は現時点で負債によって20億ドル(約2244億円)を調達しており、2回分割返済となっている。1回めの返済期限は2028年で利子率は3.375%、2回めは2031年で利子率は3.625%だ。コインベースは、投資側の低利子率のおかげで目標調達額を15億ドル(約1683億円)から20億ドルに引き上げた。お金の価値が低いので、コインベースは、低リスクで高利子率の投資先を見つけることができない投資家から何回にも渡って資金を調達している。

お金が価値が低いということは、ファンドを形成してお金を貸し付けても多くの利益を期待できないということだ。このため現在の債権利回りは極めて低い。これはコインベースなどの企業にとっては有利だが、高利回りを求めるキャピタル・プールにとっては不利だ。こうしてだぶついた資本が、ベンチャーキャピタル市場など他の領域でより高い収益率を求めて、投資先を探している。資金が豊富にあるため、VCは従来よりも大規模なファンドを形成し短期間で資金を調達できる。また、これまで見られなかった投資家たちがスタートアップ市場に参入できるようになっている。

昨今のユニコーンブームは、このような調達コストの安い資金を前提としている部分がかなり大きい。

しかし、何事も永久には続かない。米国政府は市場刺激策としての債権購入量の削減開始を準備している。結果として、FF金利の目標範囲が上がり米国内の資金調達コストが上昇しており、一部の資産が輝きを失い始めるという予想もある。

資金調達コストが上がれば、資本家は貸付によってより多くの利益を生むことができるため、ベンチャー投資はリスク / リワード比という点であまり魅力的ではなくなる。あくまで理論上はそうだ。と同時に、株価も変わってくる。最低レベルの利子率により、投資家たちは、成長志向の会社の株を買い占めるようになる。そうした会社のほうが評価が高くなるため、同額の投資を低成長の会社に対して行うよりも有利になるからだ。

こうした傾向が2020年夏に最高潮に達した頃、多くの業界が新型コロナウイルス感染症の早期感染防止のため大打撃を受けたが、ソフトウェア関連株は、企業収益の増大という見地から依然として高利回りを追求する方法を提供していた。これは、定期クーポンの支払いではなく市場価格の向上によって支払われるものだ。

悪くない。

非常に広い意味では、利子率の上昇によって、競合資産分配の魅力が増し、ベンチャーキャピタルファンドへの資本の注入があまり魅力的でなくなるはずだ。また、利子率が上昇すると、成長による評価価値の向上に基づいて公開株を取引する魅力が薄れる。成長企業株以外の株が再度注目されるようになるからだ。

上記の議論の後半部分は技術的に説明できる。以下にシャルマ氏のツイッターのスレッドから一部を引用する。

しかし、シャルマ氏は上記のような答えを求めているのではない。そうではなく、従来的な考え方に疑問を抱いているのだ。本当にそうなのだろうか、と彼は問いかける。Amazon(アマゾン)やSalesforce(セールスフォース)といったテック関連株は利子率が上昇すると本当に価値が下がるのだろうか、と。シャルマ氏の見方では、ソフトウェアやeコマースのTAM(獲得可能な最大市場規模)が拡大したために、上記2社の価値が以前よりも上昇したわけだが、資本調達コストが上がったからといって、その上昇分が消えてなくなることなどあるだろうか。

ここで議論を行うには、絶対額ではなくベーシスポイントで考える必要がある。利子率はゆっくり変化する。お金の価値を急に変化させるような政府が存在するとは思えない。変化は徐々に、かつ慎重にやってくる。

地合いが変わって関連資産の価格が変動したり、構造的な変革よりも極端な結果に終わる場合はともかく、利子率が上昇し始めたときに今日の市場の基本的なダイナミクスが大きく変わると思うべきではない。もう少し簡単にいうと、連邦目標金利が25ベーシス・ポイント変わったくらいでは、規則的かつ急速にさらなる上昇が予想されないかぎり、大した意味はない。

アマゾンとセールスフォースの価値は、お金の価値が徐々に上がり始めても、おそらく大きく変動しないはずだ。利子率が5%に達するとアマゾンの時価総額は他の資産の価値との関連でおそらく低下するだろう。だが、それはセールスフォース等の価値低下需要というより、どちらかというと相対的な変化だ。

シャルマ氏は基本的なケースについては納得している。彼はソフトウェア関連株を買っている。しかし、彼の質問は良い点を突いており、よく検討してみる価値がある。ソフトウェアの価値とソフトウェア投資ブームを実現している基本的な要因が本当に変化したら、ソフトウェア企業の時価総額にどのくらい迅速に反映されるのだろうか(別の言い方をすると、成長志向型収益を他の資産や現金と比較したときの相対的な価値とSaaSへの資金注入を促進している要因が変化した場合、そうした要因の変化はどのくらい迅速に結果に反映されるのだろうか)。

お金の価値に対する初期の増分変化によってテック関連企業の評価総額が劇的に変化すると考えている人たちは、そうした変化を大げさに受け取っているのではないかと思う。

現在のスタートアップブームとその継続可能性について、The Exchangeが数週間前に次のような記事を掲載した理由もそこにある。

大規模な経済圏で資本の再分配が起こる可能性よりも、ある程度確実に言えると思うのは、現在のスタートアップブームを終わらせるにはかなり大きな衝撃が必要になるということだ。製品需要とファンド形成への関心の組み合わせは投資の意思決定を促す最強の組み合わせだ。収益を追い求める資本と資本を必要とする高成長企業というまさに最高の組み合わせだ。

また、この記事のために話を聞いた多くの投資家たちは、創業者と投資先であるスタートアップの質について強気だった。市場の需要と資本が存在していたというだけでなく、資本の助けを借りて市場の需要に答えるために構築されているものが、少なくともスタートアップに対して数百万ドル(数億円)から数億ドル(数百億円)の小切手を切る投資家たちの観点からすると、極めて質が高いのだ。

すべてのビジネスサイクルは循環する。上昇したものはいつかは下降する。スタートアップ関連株やテック関連株をより広範に買い求める動きは元通りというわけにはいかず、少し弱くなる可能性が高いだろう。もちろん、何か新しいテクノロジーが登場すれば、話は別だ。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Dragonfly)