NVIDIAのGeForce RTX 3000シリーズをはじめとするグラフィックスカードは半導体不足や物流、材料コストの高騰から販売価格が定価を大きく上回る状況を維持していますが、Moore’s Law is Deadが関係者から入手した情報によると、NVIDIAが年末年始に向けてグラフィックスカードの減産を計画している可能性があるとの事です。
NVIDIAがRTX3000シリーズの減産を計画中の模様
Nvidia Halts Ampere Production to Keep Pricing High | mooreslawisdead.com
グラフィックスカードについては、半導体不足や銅など貴金属価格の高騰、原油やコンテナ不足に伴う物流コストの増大などで定価が大きく値上がっている状況となっていますが、グラフィックスカードの出荷数自体が需要に追いついて居ない事から店頭販売価格の高騰に拍車がかかっている状態が2020年末頃から2021年現在も続いています。
そんなグラフィックスカード市場ですが、NVIDIAが主力モデルであるRTX 3000シリーズの減産を計画している事がMoore’s Law is Deadが持つ複数のソースから明らかになったそうです。
2021年Q4の出荷量はQ3に比べて少なくなる
Moore’s Law is Deadが信頼できる複数のソースから得た情報によると、NVIDIAは2021年10月の段階で既に2021年通期の売上高を達成できるだけのグラフィックスカード出荷数が確保できる見通しでいるとのことです。
この調子で出荷を順調に進めていけば、やがてNVIDIA製グラフィックスカードの価格はメーカー希望小売価格(以下MSRP)に近づいていく可能性はありましたが、複数のソースによるとクリスマス商戦があるにもかかわらず、NVIDIAでは年末にかけての出荷量が夏頃の水準以下に落ち込む可能性が高いとのことです。
この出荷量の減少については、Moore’s Law is Deadが持つほとんどのソースから情報を得られているとの事で高い確度を持っているとの事です。
例年、年末はブラックフライデーなどモノが最も売れる時期になり出荷量を減らす事は常識的には考えられない事ですが、ソースによるとこの出荷量減少は中国での大停電やサムスンでの製造不良などサプライチェーン関連の問題では無く単にNVIDIAの社内方針によるものとのことです。
減産は来年度も増収増益を維持するためと、新製品のためか?
ソースによるとサプライチェーンに起因する問題ではなく、NVIDIAによる計画的な出荷量削減であることから明確な意図をもって行われている事は確実と言えます。
その意図は推察しかできませんが、2つの可能性が指摘されています。
まず1つ目の可能性が決算です。
NVIDIAが既に2021年10月の段階で2021年度の収益目標を達成できるだけのグラフィックスカード出荷量を確保している事がソースによって明らかにされています。このままの勢いで出荷をすれば収益目標の上方修正をすることも可能ですがNVIDIAとしては2021年度に極度に高い収益を達成してしまうと2022年度は減収減益を記録してしまいます。そのため、2021年度が終わるまで出荷数を制限し、2022年度が始まるタイミングで出荷数を増やし前年比増収増益を狙う意図を持っている可能性があります。特にNVIDIAではグラフィックスカードが大きく枯渇した2017年には高い売上高を記録したものの、翌年はその反動から減収減益を記録してしまい株価が下落してしまっています。その苦い経験を踏まえた上で出荷量削減に踏み切っている可能性があります。
もう1つの可能性がRTX 3000シリーズで得た自信とRTX 3000 SuperやRTX 4000登場に向けた動きです。
GeForce RTX 3000シリーズではメーカー希望小売価格(MSRP)を大きく上回る価格での販売が常態化している一方で高いシェアを維持しつつ非常に好調な売り上げで推移しています。NVIDIAにとってこの記録は『価格が高くてもグラフィックスカードは売れる』という大きな自信に繋がっているようで、次の製品であるRTX 3000 SuperやRTX 4000シリーズでも同じような価格帯で売りたいはずです。そのためにNVIDIAではRTX 3000 SuperやRTX 4000シリーズの発売までRTX 3000シリーズの出荷量を調整する事で市場価格が高い状態を維持し、新製品が登場する際にはメーカー希望小売価格をRTX 3000シリーズの販売価格並みで売り、高い売上高を確保するという意図を持っている可能性があるとMoore’s Law is Deadでは語られています。
NVIDIAでは2017年の仮想通貨ブームでグラフィックスカードが飛ぶように売れ、決算にもその数字が表れていましたが、翌年の決算では売上高が約20%程度減少し、株価も最高値から半値にまで下落した過去があります。そのため、Moore’s Law is Deadが指摘している単年度であまりにも良い成績を出さず、売上高を後ろ倒しさせるという可能性は大いにあり得ると思います。ただ、こうすると消費者がより手に入りやすいAMD Radeonに流れるのではないかとも考えられますが、NVIDIAはAMD Radeonに比べて圧倒的に高いシェアを持つとともに動画中では『MindShare』と呼ばれる企業に対するイメージも高い事から多少の供給を制限したところで消費者のほとんどはNVIDIA製グラフィックカードを待っててくれると読んでいるのかもしれません。
2つ目の価格つり上げについて現状、グラフィックカード市場シェアのほとんどをNVIDIAが占めている事に原因があるように考えられます。IntelもRyzenが登場するまでSkylakeを永遠に売り続けていたように、会社は市場シェアを一定以上取ってしまうと決算や株主への還元を行うため暴利を得ようとする傾向にあります。そのためIntelがArc Alchemist、AMDがRDNA3などがNVIDIAの城壁を壊せるのか期待がかかります。
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