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バレンシア工科大学(UPV)およびミラノ工科大学の共同研究チームが、耐久性に極めて優れ自己修復性を有する新しいコンクリート材料を考案した。結晶性添加剤、アルミナのナノ繊維、セルロースのナノ結晶などの混和材を用いた超高性能複合セメント材料で、ひび割れの自己修復機能を有するとともに、従来の高性能コンクリートと比較して耐久性が30%高いという。海洋上や臨海部にある構造物や地熱発電プラントなど、非常に高い腐食環境に晒されるインフラ設備に活用できると期待される。

コンクリート材料は、圧縮強度が高く維持管理も比較的容易な建設材料として、社会インフラや建築構造の主要材料に100年以上使われている。基本的にセメントと水を練り混ぜることで水和反応が生じ、様々な骨材を結合する機能を果たすが、水和反応に伴う自己収縮や乾燥収縮が必ず発生し、おおむね0.3mm以下の収縮ひび割れを避けることは難しい。

一旦ひび割れが発生すると、雨水の浸透により鉄筋の腐食が進行し、構造の安定性を低下させる。そのため、特に定期的な点検検査が難しい、海洋上や臨海部の大型構造物や原子力発電施設などでは、近年コンクリート材料に自己修復性を持たせる研究が活発に進められている。

例として、接着剤や補修剤などを封入したパイプやカプセルをあらかじめコンクリート中に埋め込む、粉体系膨張剤を混和材として使用する、さらにはコンクリート中でも生存できるバクテリアにより炭酸カルシウムを析出させるなどの自己修復技術が、提案されている。また、短繊維を多量に混和した繊維補強高靱性セメント材料は、水結合材比が通常のコンクリートより小さいため水和反応余力が残存しており、水分存在下で自己修復性が高いとされている。

研究チームは、ひび割れ抵抗性が高い超高性能繊維補強コンクリートに注目し、結晶性添加剤、アルミナのナノ繊維、セルロースのナノ結晶などを混合材として用いることで自己修復性を実現することに挑戦した。その結果、ひび割れが発生した場合に自己修復機能を持ち、従来の高性能コンクリートと比較して30%も耐久性が高いことが分かった。

これにより保守作業の頻度を低減することが可能で、耐用限界とされる50年を超える耐久性が得られる。現在開発されたセメント複合材料を用い、スペイン、イタリア、アイルランドにおいて6件の大規模パイロット構造物を建設、実際の使用条件下で評価解析を行っている。特にバレンシア州サグント港に建設した洋上風力発電用の浮体、およびバレンシア港に建設したムール貝用の筏では、広範なセンサ網が設置され、継続的にモニターして構造の耐久性に関するデータをリアルタイムで収集している。研究チームは、厳しい腐食環境におけるインフラ設備を中心として、新しいコンクリート技術に発展できると期待している。

関連リンク

New ultra-resistant and self-repairing concrete materials

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