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 日本記者クラブで先日行われた党首討論の一幕で、司会者からの質問に岸田総理だけ手を挙げなかった場面がありました。賛否がはっきり分かれたテーマというのが、いわゆる“LGBT”を巡る公約です。当事者の抱える思いを取材しました。

IRIS代表 須藤啓光さん
 「お風呂・トイレ別で浴室乾燥機も付いているというのは、非常に物件価値として高いですね」

 都内で不動産会社を経営する須藤啓光さん。お客さんの多くは、ある事情を抱えています。

IRIS代表 須藤啓光さん
 「9割がLGBTの当事者の方々で、7割ぐらいのお客様は同性カップル」

 「完全予約制」のこちらの会社。お客さんのほとんどが性的マイノリティ、いわゆるLGBTです。自身もゲイだという須藤さん。従業員も・・・

営業 齊藤亜美さん
 「私はトランスジェンダーでMtFっていうんですけど、元々男性で性自認は女性」

営業 岩井真之介さん
 「僕は男だけど男が好きな、いわゆるゲイ」

 9人の従業員全員がLGBTなどの当事者です。なぜこうした会社を立ち上げたのでしょうか。

IRIS代表 須藤啓光さん
 「シンプルに言うと相談しづらいであったりとか、あとは物件の選択肢が少ないというところ。同性カップルの場合だとルームシェアって扱いになってしまうので、(2人入居可の物件は)入居ができないっていうこともありますね」

 性的マイノリティがおかれている現状。それは部屋を借りるときだけにとどまりません。

トランスジェンダーの従業員 齊藤亜美さん
 「私はやっぱり名前と戸籍、性別が違うっていうところで一番ストレスでした。どこの病院に行ったらいいのかわからなくて、結局、市販薬買って我慢するとか」

IRIS代表 須藤啓光さん
 「生きるか死ぬかの世界が関係してくるわけなんだからね。もっと真剣に取り組みをしてほしいよね。特別扱いして欲しいわけではなく、ただただ普通に生きるために必要なものを望んでいるだけ」

 須藤さんはいま、弁護士をしているパートナーの「たつきさん」と暮らしています。交際4年目。料理は、たつきさんがメインで作ります。

Q.本当に夫婦みたいですね

須藤啓光さん
 「僕はね、結婚ができるんであればしたいなと思いますね。君は?」

パートナー たつきさん
 「そうですね、できるならば・・・」

 二人が結婚を強く希望するようになったきっかけは、ある事件でした。

須藤啓光さん
 「急性扁桃炎で救急車を呼ぶって機会があったんです。緊急連絡先を出してくれって言われて彼の連絡先を出したら、『そういうのは認められないんですよね』って言われた。もうこんなのは耐えられないなと思って」

 まだ日本で認められていない、同性同士の結婚。

パートナー たつきさん
 「もし万が一のときに何かあっても、私の方に連絡が来ない可能性があって、ちょっとそれが怖いなって。異性の方々が普通にできることを同性でも認めてくださいっていうことだけなので、今ってその社会で認められているわけではないので、関係性が」

 結婚して、自分たちの関係を社会に認めてもらいたいと語る二人。衆議院選挙では、この同性婚やLGBTをめぐる問題も争点のひとつになっています。先日の党首討論では・・・

 「『LGBT理解増進法』を来年の通常国会で提出することについて賛成の方は挙手をお願いいたします」

 自民党を除く8党はLGBT理解増進などの法案を来年の通常国会に提出する考えを示したのに対し、岸田総理だけ手を挙げませんでした。

自民党 岸田文雄総裁
 「議論をしっかりと踏まえた上で法案の取り扱いについては考えていくべきであると思います。今この段階で一律的に時期を確定するということは避けさせていただいたということであります」

 LGBT当事者の須藤さんは、与野党に限らず、政治に「スピード感がない」ともどかしさを感じています。

IRIS代表 須藤啓光さん
 「多種多様なライフスタイルが広がっていく中で、あまりにも日本は、ジェンダーを含めたマイノリティの生活のことに少し自分ごとではない非当事者感が強いようには感じます。いろんな“不”を感じる機会が減って、自分らしく生きられる社会というものが実現できるようになるといいなと思います」