今年2回目となる、Microsoft Ignite が11月2日より開催されました。この投稿はMicrosoft Corporation Satya Nadella の基調講演をまとめたものです。
過去1年半による影響により、組織は大きく変わりました。医療ではテレビ会議を通じた医療サービス、金融ではデジタルウォレットの普及、小売ではコンタクトレスショッピングやデリバリーサービスなどです。
デジタル変革は急務となり、小中大と規模を問わず、生産性をデジタル技術により高め、Tech Intensity(テクノロジーの密度)を高めることでコストの削減にもつながります。現在、根本的にはモバイル・クラウドの世界から、ユビキタスコンピューティングの時代へと変わりつつあるのです。 これから先10年のデジタル変革は、過去40年のデジタル変革の量に匹敵します。
それではトレンドにお話します。まず、ハイブリッドワークの状況が変わりつつあります。いつ働くか、どのように働くかが変わっていっているのです。より多くの人が自分に問いただしています。なぜ、自分は働くのか?その結果2つの課題が出てきます。ハイブリッドパラドックスと、グレートリシャッフルです。
70%の従業員はより柔軟なリモートワーク環境を求めており、65%の人は対面する時間を求めており、相反する結果が出ているのです。
そして、58%の人々は、より集中するためにより多くの時間をオフィスで勤務するという結果が出た半面、同じく58%の人々はより集中するためにより少ない時間をオフィスで勤務するという結果も出たのです。
より多くの人が転職を考えており、今まで以上に勤務に対する柔軟性が求められています。
生産性と柔軟性は相関があるわけではありません。どの組織もデジタルなレイヤーが必要となっており、デジタルな世界と物理的な世界をつなげる環境が必要あのです。より会社と従業員の絆を含める必要があるのです。従業員へはキャリアへ影響を及ぼさずに、より柔軟な働き方を提供していく必要があります。ハイブリッドワークについて今までも話していましたが、昨今は更に重要性が高まりました。
2つ目のトレンドは、ハイパーコネクテッドビジネスです。ビジネスの変革が訪れているのです。過去1年半で、よりビジネスはリモートに対応したものになる必要がありました。サプライチェーンを柔軟に対応できるように必要があります。カスタマーサービスはオムニチャネルである必要があります。よりビジネスと消費者はデータとインテリジェンスを活用し、つながる必要があるのです。
営業やマーケティング活動は2025年までに受動的なものから能動的なものへと変わることが予想されています。データとAIの活用により、物理的な世界とデジタルな世界が融合していくのです。
3つ目のトレンドは、どのビジネスでもデジタルなビジネスへと変化している点です。デジタルに業務を行えることが今後非常に重要になっていきます。それを行うにはマルチクラウド・マルチエッジの環境が必要となり、誰もがデジタル化に携われるフュージョンチームが実現できるツール群が必要になっているのです。コンピューティングは分散型になりつつあり、アプリケーションはよりエッジ上で動作するようになっていってます。エッジ上でAIと分析機能が搭載するシステムは現時点では5%ですが、2025年までには30%に増加することが予測されています。
そしてGitHubの利用者もどんどん増加しているのです。どこでもアプリケーションを展開できるような環境が求められていきます。それを実現するには、プロの開発者と、業務の専門家がお互いにアプリケーションを作り上げられるような仕組みが必要なのです。
4つ目のトレンドは、包括的なセキュリティです。サイバーセキュリティはどの業界においても最もデジタル変革に向けての課題と課題であります。サイバーセキュリティによる被害は現在は$6Tですが、$10.5Tになることが予測されています。組織はマルチクラウドに対応した、ゼロトラストのアーキテクチャが必要となります。
Microsoft のクラウドはこの次世代のためのもっとも包括的なクラウドサービスです。マイクロソフトクラウドは:
- 最も信頼された、包括的なクラウドです。
- 独自性を担保しつつ、組織にデジタルな環境を提供します。
- 信頼とセキュリティを基に構築されています。
- サスティナブルでもあります。
- 最も各テクノロジーレイヤーとの連携が可能なクラウドです。
今回のMicrosoft Igniteでは、90種類以上もの新しいサービスやアップデートが発表されます。
Microsoft Teams はコラボレーションに変革をもたらしましたが、次に大きな変革をMicrosoft 365 の一部としてもたらすのが、Microsoft Loop です。
Microsoft Loopはコミュニケーションファースト、AIファーストの世界のためのアプリケーションで、人々のコンテンツ、チャット、リアクションなどをコラボレーションのキャンバスとして提供していくのです。チャット、メール、ミーティングなど、あらゆる手段で人々は仕事へ貢献できるようになります。
ビジネスアプリケーションのアップデートでは、新たにMicrosoft Customer Experience Platformを発表します。こちらは、組織が所有する顧客データを管理するためのサービスです。どの組織にとってもこれは重要で、自動でデータが適切に蓄積されていく仕組みが必要となり、顧客体験の向上には必要不可欠なものとなります。
アプリケーションとインフラストラクチャーでは、ハイブリッドなマルチクラウド環境を提供するための新しいアップデートについての発表があります。Azure Arcはセキュリティ、開発環境、開発ツールなどを包括的に提供するAzureのマネージドサービスをどのインフラストラクチャー上でも実行できるようにするものです。
そしてPower Platform は組織の専門家とプロの開発者が共同で、今まで以上に素早く組織内の課題を解決できるようになります。
セキュリティでは、包括的なセキュリティソリューションとして、中小企業向けに、Defender for Business を提供します。
他にもたくさんのアップデートがありますが、今日は3つその中から取り上げたいと思います。まずはAIです。大規模なAIはあらゆるところで活用されるようになってきました。最新のAIの研究を今度は誰でも使えるようにしているのです。
Fortune 500 の95%以上の顧客はすでにAzureを利用して課題を解決しています。そしてマイクロソフトはどのようにクラウドコンピューティングで課題を解決できるかをどんどん模索しています。
5年前、このイベントでは世界初の最大級のAIモデルを発表しました。現在、我々は世界で最も大きなスーパーコンピューターで大規模AIを活用しています。顧客はこのAIを様々な課題で活用しています。例えばAMD社では次世代のCPUを設計するために利用しており、大学では新型コロナにおける人口密度の高いエリアでの飛沫感染のシミュレーションや研究で利用されています。
我々は大規模データに対するAIモデルの構築をしてきており、数週間前にはNVIDIAとの共同研究で、世界最大のモノリシックNLG学習モデル「Megatron-Turing NLG」を発表しました。
更に我々はZ-code マルチリンガルモデルを構築し、複数の言語を学習対象にしたことで、単体の言語が他の言語から学べるようになっています。これにより、今までよりもはるかに少ないデータ量で学習ができるようになりました。
このような研究の成果は、製品の至る所に搭載しています。たとえば、会話の書き起こしや、Power Point の翻訳
我々のパートナーであるOpenAI が自然言語解析AIのGPT-3をリリースし、このAIモデルもあらゆるところで採用しました。例えば業務の専門家は、GPT-3をPower Platform で利用したり、プロの開発者はGitHub Copilotでコーディングの支援が受けられます。
我々はこのように製品に組み込んでいますが、さらに皆さんも同じAIの恩恵を受けられるように意識しています。そして本日、その一環として Azure OpenAI サービスを発表します。Azure の Cognitive Service の1つとして、GPT-3を誰でも活用できるように、Azureのサービスとして提供するのです。
GPT-3やCodex
GitHub Copilotを利用し、AIが記述したいコードを汲み取り、自動でコードを生成してくれるため、より、重要性の高いコードを開発者は取り組むことができます。ここでは、Surface Duo 上のアプリを構築し、上には配信内容、下ではプレイ内容の要約が表示されるようにコードを書きました。
Azure OpenAI Service を利用することで搭載されているGPT-3モデルを活用し、リアルタイムの中継内容からAIが主な内容に重要な文脈だけを残し、要約してくれます。
更に要約に対して要約を行い、自動でブログ投稿を生成してくれることも可能です。生成された内容にあとは自分で微調整をするだけで完成します。
認証について
次に触れたいのが、認証のエコシステムについてです。物理的な世界では、今までも取引をする上でずっと重要なものでした。デジタルな世界では更に重要です。組織内のコラボレーションだけで認証を利用するだけでなく、お客様・パートナーなどともコラボレーションします。今日お話ししたテクノロジーにはすべて、境界のない、リアルタイムに様々な組織同士が信頼できるデジタルなエコシステムが必要なのです。我々は次世代のアイデンティティシステムを構築し、人々、組織、アプリをつなげ合わせて提供しているのです。
その始まりはAzure ADからです。あらゆるコラボレーションに対する認証がここで行われます。
上記で述べた信頼できるネットワークが確立できることによりTeams Connect が実現できるのです。我々のID基盤により構築できるTeams Connectを利用することで、シームレスに信頼できるコラボレーション環境を素早く提供します。
例えば製造業の会社が組織を跨いで、サプライチェーンの課題に取り組む例を見てみましょう。まず、サプライヤーはDynamics 365 からTeams の通知でサプライチェーンの障害の可能性についての情報を受信します。瞬時に対策チームを作り、社内外の関係者と同じTeams のチャネルでコラボレーションします。
添付されたファイルが中国語だったとします、その場で翻訳ボタンで解決します。
関係者は同時に同じ文書を開くことができ、共同編集が可能です。文書はMicrosoft Information Protection によって保護することができます。
保護されたドキュメントでも共同編集が可能となり、安全性を担保しつつ、生産性を向上できます。組織外部のメンバーでも、メンションすることができます。これはTeamsのテナントを切り替えることなく、そのままシームレスに共同作業が行えるのです。
物理的な世界とデジタルな世界が融合するにあたり、できあがるのがメタバースです。消費者のためにも、企業のためにも、人々、モノ、場所をデジタルの世界に持っていこうとしています。
例えば、本日発表する、Dynamics 365 Connected Spaces を例にしましょう。
Connected Spaces は、人々は物理的空間でどのようにして動くか、インタラクションを行うかを分析するものです。店舗や工場などでシミュレーションしたり、洞察を得ることができます。メタバースについて話す場合は、新しいプラットフォームでもあり、新たなアプリケーションの種類でもあります。
Microsoft のクラウドでは、Azure IoTからAzure Digital Twins、Microsoft Meshなどのメタバースのソリューションを皆さんのために提供しているのです。メタバースによって、コンピューティングを現実世界にもたらしており、現実世界をコンピューティングの世界にもたらしているのでもあります。
今までのようにカメラから現場を見るのではなく、皆さんが現場に「入る」ことができるようになったのです。ビデオ会議を行うのではなく、バーチャルに一緒に会議をするのです。ゲームを友達と一緒に遊ぶのではなく、ゲームの中に一緒に入って遊ぶのです。これらの機能を我々のアプリケーションにも組み込みました。
Microsoft Teams のプレゼンターモードはまさに、2Dとしての体験の始まりです。
人と出会うような感覚が得られるのが次のステップになります。そして今回、Mesh for Microsoft Teams によって、Teams の中から融合した体験を得られるようになります。実際にAccentureでの体験をお話いただきましょう。
私たちのミーティングや会議などで利用し、実際に新入社員の受け入れには非常に良い体験になりました。私自身もアバター機能で参加しています。カメラを有効にすることなく、参加することができます。
Immersive Experienceを有効にすると、仮想空間で会話ができます。すでに100回以上この機能を利用し、コラボレーションを試しました。Accenture では数万人を受け入れます。
新入社員はより多くの人と話しかけたりすることができ、関係を築くことができました。
Microsoft 365とも連携されており、親和性の高い体験です。
皆さんがいかに様々な場面でテクノロジーを活用しているのかを見ると、インスピレーションを受けています。私たちのテクノロジーは、皆さんに活用してもらうためのテクノロジーなのです。
最後に、Power Platform によってもたらされたインパクトについてご紹介します。先月、20万人以上の方々が、Power Platform を利用し、自分自身の課題を解決しました。
私はITの経験がありませんでしたでしたが、Power Apps を利用してアプリを作ることが、私には自然な流れでした。
私にとってPower Platform はツールではありません。デジタル変革のための機会でした。もしみんながこの国で利用すれば、ナイジェリア全土が改革できるかもしれません。
Power BIを利用し、来客分析に活用しています。テクノロジーのキャリアを築いていこうとは一度も思ったことがありませんでした。
みんなが僕の作ったアプリを利用してくれて嬉しく思いました。これからはITのキャリアに進んでいきます。
Power Automate に出会い、私はいろんなところで使える可能性を感じました。このコロナ下でも、子供たちは引き続き勉強できるのです。
私は家庭訪問医として、患者を見回っています。結果はすべてPower BIで可視化することができました。
Microsoft Ignite 2021 秋の基調講演まとめは吉田の備忘録で公開された投稿です。