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我々はこのような車を必要としている!

IAAモーターショーに出展されたスタディモデルであるVW ID.Lifeは、すでに量産車にかなり近いものとなっている。我々は、この電動シティコンバーチブルを初めて走らせ、感激した。

「VW ID.Life」が、ジョゼフ カバンを中心とするVW開発チームにとっては、単なる試作品ではないことは明らかだ。
現在の状況は、不可思議な実験をしているような余裕はないのだ。
内燃機関は、小型車クラスでは最初に廃れつつある。
つまり、「VWポロ」と「T-Cross」は、遅くとも次のユーロ7規格が施行される頃(2025年導入予定)までには、電気自動車の後継モデルが必要になる。
そうでなければ、複雑な排出ガス制御システムによって、このクラスの車の価格が高騰してしまうからだ。

一方、電気自動車の場合は、台数が増えれば増えるほど関税が下がり、バッテリーも安くなり、フォルクスワーゲンのプラットフォーム戦略によってさらに価格が下がる。
そのため、このメーカーは自信を持って宣言している。
「2025年には、2万ユーロ(約265万円)で買える、小さな街乗り用の電気自動車が登場します」、と。
そして、我々の思い通りになれば、それはまさに「ID.Life」のようなモデルになるはずだ。
特に、この100万ユーロ(約1億3,300万円)のワンオフモデルは、今すぐにでも量産できそうなだけでなく、ユニークなモデルにしては驚くほどよく走る。
今回、我々が許された速度は、30km/hをわずかに超える程度だが、これは純粋に安全のための措置で、もっと速く走ることも可能だ。
シートメタルの下には、将来の生産技術の初歩的なバージョンがある。
多かれ少なかれ、モジュラーエレクトリックツールキットの基本的なバージョンだが、ここでは234馬力の前輪駆動仕様となっている。

スピードメーターの表示に代わるヘッドアップディスプレイ

クラシックなディスプレイやスイッチがVW ID.Lifeにはまったくない。情報はヘッドアップディスプレイでのみ得られる。

サプライズその1: ステアリングホイールが飛行機のような形状のものに置き換えられていることは、運転中には全く気にならず、「ID.Life」はそれで問題なく操縦できる。
サプライズその2: インストルメントクラスターも、中央のスクリーンも、ステアリングコラムのストークも、ミラーも、何かが足りないのでは?
その通り。
スピードメーターの代わりにヘッドアップディスプレイ、ミラーの代わりにカメラ、ステアリングホイールにはターンシグナルを含むいくつかのタッチボタン、そして携帯電話がインフォテイメントシステムとなり、センターコンソールにマグネットで固定されている。
エンジン始動を認識して運転メニューに切り替わる専用アプリもある。
よく考えられたシステムで、直感的に操作できるようになっている。
しかし、このシステムは運転操作だけがすべてではない。
アプリのボタンを押すと、「ID.Life」は映画館に早変わりする。
フロントガラスの前にはスクリーンが広がり、フロントシートはフラットに、リアシートはリクライニングできるようになっている。

充電ステーションでの待ち時間は、寝転んで映画を見ることで解消できる。
また、ドライブインシアターでは、子供たちに、「BMW 3シリーズ」から、「ID.Life」に喜んで乗り換えてもらうこともできるかもしれない。
なぜならばプレイステーションも問題なく接続できるからだ。
ところで、ルーフはそれほど問題がないわけではない。
フロントフードと同様に、ペットボトルを素材とする空気室の付いたシートとジッパーでできている。
簡単そうに見えるが、プロトタイプはまだ開けるのに手間取る。
しかし、今後数年の間に、それも解消すると信じている。

「ID.Life」はすでに驚くほどよく走る。ベーシックバージョンは234馬力の前輪駆動仕様となっている。
飛行機のようなステアリングホイール
サイドカメラ
アプリのボタンを押すと、ID.Lifeは映画館に早変わりする。
充電ステーションでの待ち時間は、寝転がって映画を観ることで埋めることができる。
ところで、ルーフの動きはそれほどスムーズではない。フロントフード同様、ペットボトルを利用した気室の付いたシートにジッパーを付けたものだ。簡単そうに見えるが、プロトタイプではやはり開けるのにかなり手こずった。

結論:
「VW ID.Life」は、小さくても広々としていて、400kmというきちんとした航続距離があり、持続可能な素材、魅力的なデザイン、スマートなアイデアを兼ね備えている。
そのすべてが量産化されるわけではないにしても、社会はこのような車が必要としているのだ。
AUTO BILDテストスコア: 1-

以前から、EVになることでこれから自動車の形はどうなっていくのだろう、と感じていた。今までとはパワーユニットが変われば、自動車の形も変化するはずで、自由度の高いEVユニットならば、もっと革命的に自動車の形や姿は変化するのではないだろうか、と。
今はその過渡期とはいえるが、それでも、どのEVも、今までの内燃機関の自動車とあまり代わり映えのしないボンネットをもち、室内空間を持っているのははっきり言って面白くない。まあそれも、あまりにもドラスティックに変わることで顧客を惑わせてはいけない、という作戦のうちかもしれないが、今のところは自動車の形は内燃機関もEVもそれほど違わない、という現状である。
その点、このフォルクスワーゲンのEVコンセプトカーはちょっと革命的な部分も、新しさもあり、これならなかなか魅力的なのではないか、と個人的には思った。ボディ形状も内装も、新鮮だし、シンプルで好感が持てる。それもテスラとは違う意味でシンプルであり、自動車として魅力的なのが好ましい。
ただし、スマートフォンを用いたシステムだけは一抹の不安もあるし、これ以上スマートフォン依存が高まるのには納得できない部分も多い。自動車に乗った時くらいはスマートフォンに頼らない時間になってほしい、というのはもう古い感情なのだろうか。

Text: Michael Gebhardt
加筆: 大林晃平
Photo: Volkswagen AG