英国のサンダーランド大学(University of Sunderland)は、学生が現実世界での課題解決に人工知能(AI)技術を応用することを支援すべく、ロボット犬を活用している。救助犬で知られるバーナード犬にちなんだ、四足歩行ロボット「Bernard」がそれだ。
サンダーランド大学技術学部のジョン・マレイ教授によると、Boston Dynamics製のBernard(製品名は「Spot」)は、同学部の学生が最新技術を現実世界に適用することを学ぶために重要な役割を担う。「われわれがBernardを購入した理由は、AI技術や運動学などの多様な技術を組み合わせて、学生に工学やコンピュータ科学における最新動向を教えるためだ」とマレイ氏は説明する。Bernardには基本的な駆動に必要なセンサーとリモコンが付属しており、同校はそれらを活用して研究を進めている。
マレイ氏は、捜索や救助などへのBernard活用も検討している。Bernardには、物体の位置や距離を測定するLiDARセンサーなど、複数のセンサーを搭載できる。Bernardは「自律型ロボットであり、自由に動き回ることができる」と同氏は説明する。サンダーランド大学技術学部は工場の検査などの作業にBernardを活用することも考えている。
産業や人間が抱える課題に技術を応用する学びは、サンダーランド大学技術学部の履修課程の中核になる。「学生は学習を進めて自らのプロジェクトを持つようになれば、Bernardの斬新な使い方や応用方法を考えるようになる」とマレイ氏は期待する。同氏によると、プロジェクトに参加する学生には、最終学年や修士(理学)課程の論文プロジェクトでBernardを使用する機会がある。そこで同校は学生のソースコード記述力やセンサー設計力に加えて、産業やプロジェクトへのロボットの応用力を評価するという。
研究アイデアを生み出す存在は、Bernardなどのロボット犬だけにとどまらないとマレイ氏は強調する。「ロボット犬は、工学やコンピュータ科学を専攻する学生が取り組むことができる、実に優れた研究対象だ」と同氏は指摘しつつ、「それよりも基礎を理解し、学習したことを産業に応用することの方が重要だ」と主張する。
サンダーランド大学技術学部の学生は履修課程の中で、ロボットの製作、設計、プログラミング、制御に必要な技術を学ぶ。これは同校のより広範な技術教育プロジェクトの一環だ。マレイ氏によると、同校は技術学部に積極的に資金を投じている。「Bernardは、最先端ではないにせよ、開発中の四足歩行ロボットとしてはとりわけ高度な技術を活用した製品だ」と同氏は評価する。Bernardを利用できる英国内の大学は「ごくわずかしかない」(同氏)という。
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