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軟体動物の貝殻の内側の層にインスパイアされた、より強くより頑丈なガラスが開発された。この新しい材料は、衝撃を受けても粉々に砕けることがなく、プラスチックのような弾力性があり、将来的には携帯電話の画面の改良などに利用できる可能性がある。この研究はカナダのマギル大学によるもので、2021年9月10日付で『Science』に掲載された。

ガラスを強化する技術には、焼き戻しやラミネート加工などがあるが、これらは高価な上、表面が傷つくとその効果はなくなってしまう。また、従来は、強度、靭性、透明性の間にトレードオフの関係があった。近年の生体模倣(バイオインスパイアード)ガラスも、優れた機械的性能を示すが光学的品質の低下という問題があった。

一方、自然界に存在する貝殻の内面にある真珠層は、硬い素材の剛性と柔らかい素材の耐久性を有しており、両方の長所を兼ね備えている。硬いチョークのような物質の断片が非常に弾性のある柔らかいタンパク質とともに層になっており、この構造が並外れた強度を生み、真珠層は構成する物質の3000倍も頑丈になっている。

今回、研究チームは、真珠層の構造を模倣して、強度、靭性、透明性を兼ね備えたガラスとアクリル樹脂の複合材料を開発した。マイクロメートルサイズのガラスフレークと、アクリル樹脂とも呼ばれるポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)を混合し遠心分離して構造化することで、高密度のPMMA-ガラス層を形成した。このようにして真珠層の構造を再現することで、非常に強く不透明な材料を、簡単かつ安価に製造することができた。

さらに、研究チームはこの複合材料を光学的に透明にするため、もう一歩踏み込んだ研究を行った。PMMAの屈折率を調整してガラスの屈折率に合わせることで、連続した界面を形成。PMMAをガラスとシームレスに融合させて、真に透明な複合材料を作り上げた。

この新材料は、良好な強度と靭性を示した。通常のガラスと比べて強度が3倍であるだけでなく、耐破壊性は5倍以上となっている。これは、現在のガラスの代替品として幅広い用途で応用できる可能性がある。

研究チームは、次のステップとして、スマート技術を取り入れてガラスの色や構造、伝導性などの特性を変えられるようにし、この材料を改良することを計画している。

フレキシブルガラスは、古代ローマ帝国ティベリウス・ユリウス・カエサル皇帝時代の失われた発明だといわれている。古代ローマの作家が残した記述によると、発明者は皇帝の前でその材料で作った杯を試しに壊そうとしてみせたが、杯は粉々に砕けずへこんだだけだった。発明者は、材料の作り方を知っているのは自分だけだと誓ったが、皇帝は、そのガラスが金や銀の価値を下げるのではないかと恐れて、発明者を処刑したという。論文の責任著者であるAllen Enricher准教授は、今回の革新的な研究が、処刑ではなく論文の発表に至ったことを嬉しく思うと述べている。

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The post 真珠層にインスパイアされた「割れない」ガラスを開発――ガラスとアクリル樹脂を組み合わせた複合材料 first appeared on fabcross for エンジニア.