【グラスゴー(英北部)=塙和也、竹内康雄】第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)は13日、合意文書「グラスゴー気候パクト」を採択した。最大の焦点だった石炭火力発電の利用について、当初の文書案から表現を弱め、「段階的な廃止(phase-out)」から「段階的な削減(phase-down)」に変更した。産業革命前からの気温上昇は1・5度以内に抑える努力を追求すると明記した。
COP26は10月31日に開幕し、会期は11月12日までの予定だった。交渉が難航し、会期を1日延長して議論を続けていた。議長国の英国が各国との協議を経て13日朝、新しい合意案を公表し、これを元に各国が交渉していた。
議長国の英国は、石炭火力の段階的な廃止に強くこだわっていた。だがインドなどの反発が強く、当初案に比べて表現を後退させた。欧州連合(EU)やスイス、島しょ国の閣僚らが「表現の変更に失望した」と表明したものの、採択には反対しなかった。
地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は、現状の各国の排出削減目標では達成できないとの分析を受けて、必要に応じて22年末までに30年の各国目標を見直すことも明記した。パリ協定は地球気温上昇を産業革命前から2度未満、できれば1.5度以内に抑えることをめざす。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、1.5度に抑えるには、30年時点で10年比45%減が必要だが、気候変動枠組み条約事務局によると、現状の取り組みでは13.7%増える。
今回の合意文書は温暖化被害の多い2度よりも、1.5度を重視して排出減に向けた取り組みを進めることを確認した。採択後、山口壮環境相は記者団に「パリ協定を遂行する上で極めて重要な進展だ」と語った。
先進国から途上国への資金支援では、20年までに年1000億ドルを実現するとの約束が守られなかったことについて、途上国側は「約束違反だ」と批判していた。文書では「深い遺憾」を表明。先進国が早期に実現することを改めて約束した。
22年のCOP27はエジプトで、23年のCOP28はアラブ首長国連邦(UAE)で開くことも固まった。