名古屋大学は2021年11月17日、同大学未来材料・システム研究所が豊田中央研究所との共同研究で、大規模なデジタルデータを受信できるカーボンナノチューブ(CNT)1本からなる極微小アンテナを開発したと発表した。超小型の通信デバイスやセンシングデバイスへの応用が期待できる。
従来のセンサーは、受信する信号(電磁波)の波長により、情報検知と受信を司る「アンテナ」の大きさが決まっていたが、センサーの小型化の重要性が高まっていることから、極微小アンテナを開発した。
今回の研究では、受信信号を機械振動に変換してから電気信号に戻す技術である、機械的に振動するアンテナを利用して電磁波を検知する技術に着目。高い機械強度と優れた電気特性を持つCNTを機械振動子アンテナに用い、これまで数m~数cmの大きさが必要だったアンテナをナノスケールにまで小型化した。
極微小アンテナは、従来のアンテナとは異なる原理で機能する。ナノスケールでありながら、安定した高精度のデータ伝送ができる。さらに、作製したナノアンテナとデジタル通信技術を組み合わせ、ノイズのある環境下でも、極微小のアンテナでカラー画像のような大きなデータを通信できることを実証した。
作製した機械振動子アンテナは、1本のCNTからなる片持ち梁が、小さな空間を介して微小電極と対向している構造を持つ。この微小電極とCNT間に直流電圧をかけることで、CNT先端から電子が飛出して電流が流れる。外部から信号(電磁波)が照射されると、CNT内の電子に静電力が働き、到来信号に合わせてCNTが機械的に振動する。
CNTと微小電極間に流れている電流の大きさは、両者の距離によって変化し、距離はCNTが機械振動すると振動に合わせて増減するため、流れる電流には到来した信号の情報が反映される。
実際にカラー画像のデータを受信した際の動作を実証したところ、符号誤り訂正といったデジタル通信技術を組み合わせることで、ノイズ下でも0.93bit/Hzという高い通信性能を達成した。現在主流である80MHz帯域幅を持つWi-Fi環境でも動作すると仮定した際の通信速度は、70Mbps程度となる。これは、画像データやビデオ通話のような大容量データ通信への応用の可能性を示す。
研究の成果は、様々な信号検出に応用でき、生体内や大気中の情報など、これまで不透明だった様々な情報を直接的に検出できる可能性を秘めている。将来的に通信システム、人や物を検知するセンシングデバイスの超小型化を介してIoT分野への貢献が期待される。
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