名古屋市立大学は11月24日、人体に有害な紫外線を使わず、可視光線を使った光殺菌技術を開発したと発表した。ウイルスや細菌の殺菌に使われる紫外線ライト(UVC。波長が200~280nmの光)は、人の細胞やタンパク質に強く吸収されるため有害とされている。名古屋市立大学が開発した技術は、人体に害のない可視光線を瞬間的に照射するというものだ。
名古屋市立大学大学院医学研究科細菌学分野の立野一郎講師、長谷川忠男教授、芸術工学研究科の松本貴裕教授らによる研究グループは、瞬間的な可視光パルス照射(ストロボのフラッシュ光のようなイメージ)により、ウイルスや細菌を効率的に殺菌できることを実証した。高輝度の可視光線をナノ秒(10億分の1秒)程度照射すると、小さなウイルスや細菌は瞬間的に300度ほどの温度に達して死滅する。人間の細胞はもっとずっと大きいため、温度はあまり上がらず安全が保たれるという。
この方法は、レーザー物理学の先端的な研究分野で用いられている共鳴励起という手法を、病原性ウイルスや細菌の殺菌手法に取り込んだ、最先端の研究成果としている。
研究グループは、独自開発した「ナノ秒波長可変パルスレーザー殺菌装置」を使い、溶液に浸した細菌に見立てた金の微粒子にパルスレーザーを照射したところ、金の微粒子は瞬間的に1000度に達して溶解した。しかし溶液の温度は2度程度しか上がらなかった。
今回の研究で用いられた高輝度可視光線のパルスフラッシュ光は、現在のLEDの技術で容易に構築できるという。今後は、LED照明に「パルスフラッシュ殺菌光」を搭載したハイブリッド型照明器具への展開が予想されるとのことだ。病院や一般家庭への普及が期待される。