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産業技術総合研究所は2021年11月20日、次世代リチウムイオン電池である酸化物系全固体電池の安全性を向上させる、高容量の正負極材料を開発したと発表した。

難燃性の無機の固体電解質粒子を用いる全固体リチウムイオン電池は、従来の有機電解質を用いるリチウムイオン電池と比較して、安全性を大幅に向上させることができる。特に酸化物系固体電解質材料は、有毒ガス発生の危険性がないために安全性が高いと言われている。

しかし同材料では、充放電反応は粒子間接点を介して進行し、一般的な硬い酸化物系固体電解質粒子を使用すると粒子間の接触が悪いために、高い電池性能を得ることが難しかった。また、高容量活物質であるLi2SやSiは反応性が低いために、室温作動条件では酸化物系固体電解質材料を用いることができなかった。

今回の研究では、高変形性酸化物系固体電解質の原料を、導電材とLi2SまたはSiの電極活物質とを併せ、メカニカルミリング処理を実施。これにより、一段階のみで高性能な酸化物系全固体リチウム硫黄電池用のLi2S正極とSi負極合材を得ることに成功した。メカニカルミリングは、衝突やせん断などの機械的エネルギーによって常温反応を進める手法だ。微細化や複合化によって良好な粒子間接触を形成することもできる。

本技術による酸化物系固体電解質材料を用いた電極合材および電極形成概略図

この正極、負極を組み合わせたフルセルによる試験において、25℃でエネルギー密度283Wh/kgを記録。従来の酸化物系固体電解質材料を用いた全固体リチウムイオン電池と比較して、高いエネルギー密度を達成した。今回の研究により、有毒ガス発生の危険性が少ない安全な酸化物系全固体電池の実用化が早まることが期待されるという。

今後、高変形性酸化物系固体電解質材料の充放電サイクル安定性やイオン伝導率の改善を目指すと共に、活物質比率を現行の30%から50%に増加できる電極合材の複合化法を検討することで、さらにエネルギー密度の向上を図っていく。

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プレスリリース

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