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「無益な争いをやめませんか」 池袋暴走被告(90)に異例呼びかけ

 東京・池袋で乗用車が暴走し、母親と幼い女の子が犠牲になった事故。あすの判決を前に、遺族は「無益な争いをやめませんか」と、90歳の被告に向けて異例の呼びかけをしています。

 松永拓也さん、35歳。暴走事故で妻の真菜さん(31)と娘の莉子ちゃん(3)を亡くしました。2人は2年前、池袋駅近くの路上で、飯塚幸三被告(90)が運転する乗用車にはねられ死亡しました。

 拓也さんは事故後、再発防止を求める活動を行い、40万人の署名を集めました。しかし、こうした活動の裏で、拓也さんは日々、葛藤していました。警視庁から返却された2人の遺品。

 「『(警視庁が)持って帰ってもいいし、こっちで廃棄してもいいです』と。でも分かんないじゃないですか、 どっちがいいかなんて」

 一方、車を運転していた飯塚被告は・・・

旧通産省工業技術院 元院長 飯塚幸三被告
 「本当に被害者の方に申し訳なく思っております」

 しかし、事故から1年半後に始まった裁判で、飯塚被告は無罪を主張。

飯塚被告
 「ブレーキを踏んだのに加速した。車の電子系統に不具合が発生した」

 対する検察側は警視庁の捜査員の証言などから、「事故の原因はアクセルとブレーキの踏み間違いだった」と指摘、双方の主張は真っ向から対立しています。

 先月、松永さんは自身のブログを更新しました。

 「一審の判決が出たら、無益な争いもうやめませんか?」

 被告人の権利を尊重した上で、裁判を1審で終わらせましょうと呼びかけたのです。

 「世の中に争いの感情をばらまき続けるより、どうすれば事故が防げるんだろうか、みんなで対策を考えていく」

 沖縄に住む、真菜さんの父・上原義教さん(64)。拓也さん一家は、沖縄への移住を計画していました。

真菜さんの父 上原義教さん
 「(移住は事故の年の)秋ごろという話でしたね。事故がなければ、一緒に楽しく過ごしていた」

 真菜さんの優しさを思うと、重い判決が出たとしても素直に喜べないといいます。

 「真菜はとても優しい子だから、(仮に刑期が)10年だったら喜んでいることはない。彼が本当に反省して、心から謝ることが出来れば」

 求刑は過失運転致死傷の法定刑の上限である「禁錮7年」。判決には真菜さんの夫、そして父親も立ち会う予定です。