総務省は9月1日、2022年に行われる予定の「国際電気通信連合(ITU)」の電気通信標準化局長選挙において、NTT(日本電信電話)の尾上誠蔵CSSO(※)を候補者として擁立することを発表した。尾上氏はNTTドコモに在籍中、通信規格としての「LTE(Long Term Evolution)」の策定と普及に中心的な役割を果たしたことで知られており、「LTEの父」とも言われている。
(※)Chief Standardization Strategy Officer:最高標準化戦略責任者
ITUは国際連合(United Nations)の電気通信に関する専門機関で、193カ国が加盟しており、約700の民間機関が参加している。本部はスイスのジュネーブに所在している。
ITUの最高意思決定機関は、全ての加盟国が参加して4年に1度開催される「全権委員会議」である。この会議ではITU憲章(ITUの最高規則)やITUが所管する条約などの改正を行う他、幹部職員と理事国の選挙なども行われる。
理事国は全加盟国のうち48カ国が全権委員会議において選出される(任期4年)。日本は1959年以来、現在に至るまで理事国を続けている。
理事国で構成される「理事会」は毎年開催されており、傘下に以下の3部門を開設している。
- 無線通信部門(ITU-R):無線通信規則の検討や改正を担当
- 電気通信標準化部門(ITU-T):通信に関する標準規格の策定を担当
- 電気通信開発部門(ITU-D):開発途上国における電気通信分野の開発支援を担当
ITU-Tを実質的に取り仕切る組織は「電気通信標準化局(TSB)」という。同局の局長は現在、韓国出身のチェーサブ・リー氏が務めている。
ITUは2022年9月26日から10月14日まで、ルーマニアのブカレストで全権委員会議を開催する。この会議で、日本は理事国選挙に立候補すると共に、TSBの局長選挙に尾上氏を擁立することになった。
尾上氏を擁立する理由として、総務省は「移動通信システムの業界団体の中で標準化から技術開発の両面で主導的な役割を果たしてき」たこと、「各種国際標準化団体のボードメンバーとなり、無線アクセスネットワークからコアネットワーク、ユーザー機器やアプリケーションに至るまであらゆる分野に携わり、関係事業者等との調整を行うなど、移動通信システムの標準化に向けて国際的に活躍しており、これまでの功績が関係諸国から高く評価されてい」ること、2017年から2021年までドコモ・テクノロジ(ドコモの子会社)の社長として「経営手腕を発揮してき」たことを挙げている。
なお、日本政府は近年、国連機関における幹部職選挙に日本人を積極的に擁立している。最近では「万国郵便連合(UPU)」の国際事務局長選挙に日本郵政の目時政彦常務を擁立し、当選させている。
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