イスラエルに拠点を置くAIヘルステック企業DiA Imaging Analysisは、深層学習と機械学習を利用して超音波スキャンの分析を自動化している。同社はこのほど、シリーズBのラウンドで1400万ドル(約15億3700万円)を調達した。
DiAの前回の資金調達から3年後に行われた今回の投資ラウンドには、新たにAlchimia Ventures、Downing Ventures、ICON Fund、Philips、XTX Venturesが参加し、既存投資家としてCE Ventures、Connecticut Innovations、Defta Partners、Mindset Ventures、Shmuel Cabilly(シュムール・カビリー)博士らが名を連ねている。同社のこれまでの総調達額は2500万ドル(約27億4500万円)に達している。
今回の資金調達により、DiAはプロダクト範囲の拡大を継続し、超音波ベンダー、PACS / ヘルスケアIT企業、リセラー、ディストリビューターとのパートナーシップの新規構築や拡充を進めるとともに、3つの地域市場でのプレゼンスを強化していく。
このヘルステック企業は、AIを利用したサポートソフトウェアを臨床医や医療従事者に販売し、超音波画像のキャプチャと分析を支援している。このプロセスを手動で行うには、人間の専門家がスキャンデータを視覚的に解釈する必要がある。DiAは、同社のAI技術を「今日行われている手動および視覚による推定プロセスから主観性を取り除く」ものだと強調している。
同社は、超音波画像を評価するAIを訓練して、重要な細部の特定や異常の検出を自動的に行えるようにしており、心臓にフォーカスしたものを含む、超音波分析に関連する各種の臨床要件を対象とした広範なプロダクトを提供している。心臓関連のプロダクトには、駆出率、右心室のサイズと機能などのアスペクトの測定と分析の他、冠動脈疾患の検出支援などを行うソフトウェアがある。
また、超音波データを利用して膀胱容積の測定を自動化するプロダクトもある。
DiAによると、同社のAIソフトウェアは、人間の目が境界を検出して動きを認識する方法を模倣しており「主観的」な人間の分析を超える進歩につながるもので、スピードと効率の向上も実現するという。
「当社のソフトウェアツールは、正しい画像の取得と超音波データの解釈の両方を必要とする臨床医を支援するツールです」とCEOで共同創業者のHila Goldman-Aslan(ハイラ・ゴールドマンアスラン)氏は語る。
DiAのAIベースの分析は、現在北米や欧州を含む約20の市場で利用されている(中国ではパートナーが自社のデバイスの一部として同社のソフトウェアの使用の承認を取得したと同社は述べている)。DiAは、チャネルパートナー(GE、Philips、コニカミノルタなど)と協力して市場開拓戦略を展開しており、チャネルパートナーは自社の超音波システムやPACSシステムに追加する形で同社のソフトウェアを提供している。
ゴールドマンアスラン氏によると、現段階で3000を超えるエンドユーザーが同社のソフトウェアへのアクセスを有している。
「当社の技術はベンダーニュートラルであり、クロスプラットフォームであることから、あらゆる超音波デバイスやヘルスケアITシステム上で動作します。そのため、デバイス企業およびヘルスケアIT / PACS企業の両方と10社以上のパートナーシップを結んでいます。当該分野には、このような機能、商業的牽引力、これほど多くのFDA・CE対応のAIベースソリューションを持つスタートアップは他にありません」と同氏は述べ、さらに次のように続けた。「現在までに、心臓や腹部領域のための7つのFDA・CE承認ソリューションがあり、さらに多くのソリューションが準備されています」。
AIのパフォーマンスは、当然ながら訓練されたデータセットと同等である。そして、ヘルスケア分野での有効性は特に重大な要素である。トレーニングデータに偏りがあると、トレーニングデータにあまり反映されていない患者群で疾患リスクを誤診したり過大評価したりする、欠陥のあるモデルにつながる可能性がある。
AIが超音波画像の重要な細部を突き止めるためにどのような訓練を受けているのかと聞かれて、ゴールドマンアスラン氏はTechCrunchに次のように答えている。「私たちは多くの医療施設を通じて何十万もの超音波画像にアクセスできますので、自動化された領域から別の領域にすばやく移動する能力があります」。
「各種のデバイスからのデータに加えて、異なる病理を持つ多様な集団データも収集しています」と同氏は付け加えた。
「『Garbage in Garbage out(ゴミからはゴミしか生まれない)』という言葉があります。重要なのは、ゴミを持ち込まないことです」と同氏はいう。「当社のデータセットは、数人の医師と技術者によってタグ付けされ、分類されています。それぞれが長年の経験を持つ専門家です」。
「また、誤って取り込まれた画像を拒否する強力な拒否システムもあります。このようにして、データがどのように取得されたかに関する主観的な問題を克服しています」。
注目すべき点は、DiAが取得したFDAの認可が市販前通知(510(k))のクラスII承認であることだ。ゴールドマンアスラン氏は、自社プロダクトの市販前承認(PMA)をFDAに申請していない(また申請する意思もない)ことを認めている。
510(k)ルートは、多様な種類の医療機器を米国市場に投入する承認を得るための手段として広く利用されている。しかし、それは軽薄な体制として批判されており、より厳格なPMAプロセスと同じレベルの精査を必要としないことは確かである。
より大きなポイントは、急速に発展しているAI技術の規制は、それらがどのように適用されているかという点で遅れをとっている傾向があるということだ。巨大な展望が確実に開かれているヘルスケア分野への進出が増えている一方、まことしやかなマーケティングの基準を満たすことに失敗した場合の深刻なリスクもある。つまり、デバイスメーカーが見込んだ展望と、そのツールが実際にどれだけの規制監督下に置かれているかということの間には、依然としてギャップのようなものが存在している。
例えば、欧州連合(EU)では、デバイスの健康、安全性、環境に関するいくつかの基準を定めているCE制度において、一部の医療デバイスはCE制度の下での適合性についての独立した評価が必要になるが、実際にはそれらが主張する基準を満たしているという独立した検証が行われることなく、単にメーカーが適合性の宣言を求められるだけの場合もある。しかし、AIのような新しい技術の安全性を規制する厳格な制度とは考えられていない。
そこでEUは、来るべきAI規制法案(Artificial Intelligence Act:AIA)の下で「高リスク」と見なされたAIのアプリケーションに特化して、適合性評価の層を追加することに取り組んでいる。
DiAのAIベースの超音波解析のようなヘルスケアのユースケースは、ほぼ確実にその分類に該当するため、AIAの下でいくつかの追加的な規制要件に直面することになる。しかし現時点では、この提案はEUの共同立法者によって議論されているところであり、AIのリスクの高いアプリケーションのための専用の規制制度は、この地域では何年も効力を発揮していない状態にある。
画像クレジット:DiA Imaging Analysis
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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)