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病を乗り越えて出場した2回目の大舞台。世界の頂点を目指して再び歩みを進める21歳は、全力で泳ぐことができる喜びにあふれていました。

3日前、7月29日の夜、池江選手にうれしい知らせが届きました。
今大会、3種目めの出場となる女子400メートルメドレーリレーでバタフライを任されることが決まったのです。

「バタフライを泳ぎたくてうずうずしていた」

うれしそうに話した表情からは水泳を全力で楽しんでいる思いがあふれていました。「試合は楽しいだけではダメ」と勝負へのこだわりが強い池江選手ですが、水泳を愛する気持ちを忘れたことはありません。

白血病と診断される前、タイムを更新し続ける池江選手に水泳の何がいちばん好きなのか尋ねたことがありました。
彼女は少し考えたのち、「もちろん自己ベストや結果が出たらいちばんうれしいんですけど」と前置きしてこう続けました。

「泳いでいることが好きなんだと思います」

3人きょうだいの末っ子の池江選手は、小さなころから負けず嫌いで常にきょうだいに負けまいと張り合っていました。大人に怒られても言い返すくらいでしたが、「水泳を辞めさせる」と言われたときだけは素直になったといいます。

誰もがことばを失った病気との闘いも、「必ずプールに戻る」と誓って乗り越えてきました。そんな大好きな水泳を仲間たちと思いを一つにして泳ぐリレーは池江選手にとって「一番力を発揮できる種目」です。

個人種目では後半のスパートに備えて力をセーブしようとする場面でも、リレーは前半から積極的に泳ぐことができます。30日の予選では、前半から果敢に攻め、引き継ぎでのタイムながら復帰後の自己ベストより速い57秒50をマークして、日本の決勝進出に貢献しました。

「しっかり力を合わせて笑顔で終われるようにしたい」と臨んだ、今大会のラストレース。結果は8位と負けず嫌いな池江選手にとっては納得いく結果ではありませんでしたが、大舞台で仲間たちと大好きな水泳を全力で楽しんだ21歳は「3年後に向けてまだまだ速くなりたい」と思いを新たにして、2回目のオリンピックを終えました。