もっと詳しく

コロナ禍により自宅で長時間過ごす人が増えた昨今、在宅勤務はデスクワークが多いため、座っている時間がどうしても長くなってしまいます。座ったまま過ごす時間が長いと、死亡リスクが増加することがすでに研究でわかっていますが、日常生活ではどれくらいの運動を取り入れるべきなのでしょうか?

↑日常生活で身体を動かすことが大事

 

座りっぱなしで死亡リスクが増加

欧米諸国から集まった共同研究チームは、2001年〜2011年の間に行われた、運動や生活習慣に関する9つの先行研究をもとに、イギリス、アメリカ、スウェーデン、ノルウェーの男女4万4370人のデータを収集。集めたデータは方法論などが異なるため、彼らは、バラバラな情報を一貫性のあるデータのセットにすべく、それぞれの研究データを再処理したり、統一的な基準を使って分析し直したりして調整しました。そこから今度は4年〜14年半の追跡調査を行い、座っている時間、行っている運動量、死亡率の関係を調べたのです。

 

その結果、座りっぱなしの生活を送る人の死亡リスクは、中~高強度の運動を行う時間が短いほど上昇することが判明。また、中~高強度の運動を1日30分~40分程度行っている人の死亡リスクは、座っている時間が短い人の死亡リスクとほとんど差がないことも明らかとなりました。つまり、デスクワークのように座っている時間が長いと死亡リスクは高まるけれど、1日30~40分程度、中~高強度の運動を行うことで、そのマイナスの影響を帳消しにできるということです。

 

WHO「ちょっとした身体活動にも意味がある」

この研究結果が初めて掲載された2020年11月には、奇しくもWHO(世界保健機関)が「身体活動・座位行動ガイドライン」を発表。その中でも「座りすぎは心臓病、がん、2型糖尿病のリスクを高める。座りっぱなしの時間を減らし、身体活動を行うことは健康に良い」と運動が推奨されています。より具体的には、成人なら中強度の運動を週に150〜300分、高強度なら週に75〜150分行うことが勧められており、上述した研究内容と一致しています。

 

なお、中強度の運動とは、心拍数が上がり呼吸が速くなるような運動であり、高強度のほうは呼吸が荒くなる運動のことを指します。どちらにもスポーツや武道、ジムで行うエクササイズのほか、自宅で手軽にできる運動も含まれています。

 

毎日8~10時間働いている人にとって、1日30分でも運動する習慣をつけることは簡単でないかもしれません。しかし、WHOは「少しの身体活動でも、何もしないよりは良い」と述べ、たとえ軽強度の運動であっても、できることから始めようと呼びかけています。エレベーターの代わりに階段をのぼったり、バスやタクシーを使わずに歩いたり、座った状態のスクリーンタイムを減らして掃除をしたり。「千里の道も一歩から」とよく言いますが、健康管理においてもこの考え方を実践したいですね。

 

【出典】Ekelund U, Tarp J, Fagerland MW, et al. (2020). Joint associations of accelerometer-measured physical activity and sedentary time with all-cause mortality: a harmonised meta-analysis in more than 44000 middle-aged and older individuals. British Journal of Sports Medicine, 54(1499-1506). http://dx.doi.org/10.1136/bjsports-2020-103270