2008年にPlayStation®2用ゲームとして発売された『薄桜鬼』。いわゆる「乙女ゲーム」の先駆けとなった主要作品の1つとして、発売当初から絶大な人気を誇っています。
ゲームはもちろん、アニメ、ラジオ、舞台、実写版ドラマと幅広い展開が繰り広げられて来ましたが、令和となった2021年にも、新作OVA発売という新たな展開が生まれました。
本稿では、10年以上の時を経ても、ファンを魅了してやまない『薄桜鬼』の魅力を紐解きます。
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『薄桜鬼』とは
『薄桜鬼』シリーズは、2008年9月18日にPlayStation®2をプラットフォームに発売された女性向け恋愛シミュレーションゲーム『薄桜鬼 〜新選組奇譚〜』を始めとして、ゲームのみならずアニメ化や舞台化などを幅広く展開した作品です。
『薄桜鬼 〜新選組奇譚〜』は江戸時代末期（幕末）を舞台に、女性主人公・雪村千鶴（プレイヤー・名前変更あり）の目線での「新選組」の姿が描かれています。『薄桜鬼』では、新選組の史実をトレースしつつも、「鬼」「吸血」「変若水（おちみず）」「羅刹（らせつ）」という斬新な要素を盛り込んだストーリーとなっています。
攻略対象は、「新選組」の幹部隊士5名です。
▼現在はいくつかの過去作がNintendo Switch版として移植もされています。
●土方歳三（CV.三木眞一郎）
新選組副長。「鬼の副長」とも呼ばれ、局長・近藤勇とともに新選組を率いる。鬼の頭首・風間千景と対決。『薄桜鬼』を語る上での最重要人物。
●沖田総司（CV.森久保祥太郎）
一番組隊長。人斬りを好む天才剣士。近藤勇を慕う彼が、労咳（ろうがい）により新選組のために剣を振るうことが出来なくなる苦悩が描かれる。子ども好きな一面も。
●斎藤一（CV.鳥海浩輔）
三番組隊長。左利きが理由で道場を流浪した末、新選組に拾われた経緯を持つため、新選組の意向に忠実な姿勢を見せている。口数少なく実直である。
●藤堂平助（CV.吉野裕行）
八番組隊長。隊士の中でも年少で快活な性格。喧嘩っ早いお祭り男でもある。池田屋事件での負傷で生死をさまよったことが人生の転機となる。
●原田左之助（CV.遊佐浩二）
十番組隊長。槍使い。女性に優しく、また、険悪ムードになった他隊士たちをとりなすなど兄貴肌の一面も見せる。鬼の1人である不知火と闘う。
また、隊士たちと対峙することとなる「鬼」の存在も、『薄桜鬼』の大きな魅力の一つとなっています。
中でも、鬼の頭首である風間千景（CV.津田健次郎）の不気味な存在感や、圧倒的な強さを誇る鬼と闘うことで露呈する人間の弱さ、限界なども描かれ、その力量の差に苦悩する隊士たちの姿に多くのプレイヤーたちの涙を誘う場面も。
また、各幹部隊士の声を演じた声優陣も、その骨太な内容に感銘を受け、役を忘れるほど台本を読みふけってしまったエピソードなどを明かす場面も多く見られるなど、男性キャスト陣の愛も感じる作品となっています。
「新選組」×「乙女ゲーム」で新たな女性主人公像を確立!?
「乙女ゲーム」とは、女性主人公（プレイヤー）が登場人物たちと恋愛をしていく恋愛シミュレーションゲームの総称であり、『薄桜鬼』もこの「乙女ゲーム」の代表として一角を担う作品となっています。
『薄桜鬼』の舞台となった「新選組」といえば、男性のみで構成された剣士軍団であり、本作でもその史実通り「男社会」として描かれています。
『薄桜鬼』では、とあるきっかけにより新選組と関わりを持った女性主人公・雪村千鶴が、女性であることを隠し、一隊士として新選組と生活を共にすることでストーリーが展開されています。
乙女ゲームでは通常、女性主人公のボイスはなく、デフォルトでついている主人公の名前変更も可能となっていることがほとんどのため、プレイヤーは”自分自身”としてキャラクターたちと織りなす恋愛を楽しむのが一般的です。
『薄桜鬼』も他の乙女ゲームと同様の仕様となっていますが、女性主人公である雪村千鶴の、作品の世界観に溶け込みつつも芯が強くしなやかな言動、清らかさを感じさせる存在感が、プレイヤーである女性から圧倒的に支持されるという、新たなムーブも発生しました。
アニメ版で雪村千鶴の声を担当した桑島法子さんの透明感のある声が、そんな千鶴の存在感とマッチし、多くの視聴者やプレイヤーから絶大な人気を博すとともに、『薄桜鬼』の女性主人公は「雪村千鶴」一択、という流れに。
多くのプレイヤーは自身が新選組と過ごす、というよりも「雪村千鶴」と隊士たちとの物語、として受け止め、その彼ら彼女のストーリーを楽しむという姿勢が多く見受けられました。乙女ゲームでありながらも、新たな女性主人公像を確立するという、革新的な展開を見せたのも『薄桜鬼』の大きな特徴の1つとなっているようです。