もっと詳しく

 近年、企業が構築するネットワークは複雑化している。滞りなくアプリケーションが使える高速通信を実現するためには、大容量データ送信に適したルーターやスイッチのさまざまなネットワーク要件を満たす必要がある。ネットワークの技術革新が進む中、企業はネットワークの構築にとどまらず、運用の仕方も見直さなければならない。

 ネットワークの複雑さを解消する方法の一つが、特定のベンダーが提供する製品に依存せず、「ホワイトボックス」(ノーブランドの製品)のネットワーク機器を使う「ホワイトボックスネットワーク」の導入だ。ネットワークのハードウェアとソフトウェアは、基本的には単一ベンダーがパッケージ化して販売している。企業はそのパッケージを導入すれば、ほとんどの場合、ネットワークOS(NOS)を購入しなくてもよい。

 ホワイトボックスネットワークが新しいのは、ハードウェアとソフトウェアを切り離すことだ。企業は、ホワイトボックススイッチを使いネットワークを構築すれば、NOSを自由に選択できるようになる。NOSはハードウェアとは別に販売されているため、必ずしも同じベンダーのものである必要はない。

 こうしたメリットから今後、企業の間でホワイトボックスネットワークが普及する可能性が高い。ただし、現時点では積極的にホワイトボックスネットワークを導入している企業はまだ少数だ。業界アナリストはその原因として、移行作業の煩雑さやNOS選択の難しさを挙げている。

 調査会社IDCでネットワークインフラ部門のグループバイスプレジデントを務めるロヒト・メーラ氏によると、ホワイトボックススイッチはパッケージ製品と違い、ソフトウェアがプリインストールされていない。そのため、企業はまずどのようなNOSを使用できるかを調べる必要があるという。「NOSを選んだ後はネットワークポリシーやセキュリティの設定といった作業も発生し、IT部門の負荷が高まる」とメーラ氏は指摘する。

 一般企業に先駆けてホワイトボックスネットワークを採用しているのは、Amazon Web Services(AWS)やGoogle、Microsoftなどの大手クラウドベンダーだ。こうした企業は技術者のリソースが豊富なため、煩雑な作業にも対処できる。メーラ氏は今後、一般企業の間でもホワイトボックスネットワークの普及が少しずつ進むとみている。


 中編は、落とし穴になりがちな、ホワイトボックスネットワークのコストを考える。

TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス

米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。