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 日本のメダルラッシュに沸く東京オリンピックですが、新型コロナの感染拡大が止まりません。五輪の会場に派遣されている医師はどう見ているのでしょうか。

 週末、トライアスロンの競技会場に詰めかけた大勢の見物客。“密”な沿道を不安そうに見つめていたのは、大会に派遣されている「医療チーム」です。沿道での観戦は自粛が呼びかけられていますが、それでも体調不良の人が居ればすぐに対応にあたります。

 およそ7000人の医療スタッフが派遣されている東京大会。トライアスロンが行われた「お台場海浜公園」会場で、医師や看護師およそ20人をまとめるのが、昭和大学病院の救急救命医・八木正晴さんです。今回、特別に会場内の医療施設を見せてもらいました。

 「ここは診察室。小部屋になっていて診察室として使います」(昭和大学病院 八木正晴医師)

 会場には選手用に加え、大会関係者用の診察室が。さらにコロナ禍ならではの施設も隣接しています。

 「ここは隔離部屋なので、感染の疑いがあればここにいていただく」(昭和大学病院 八木正晴医師)

 テント型の隔離室。新型コロナに感染した疑いのある患者が出れば一時的に隔離するのです。

 水泳・自転車ロードレース・長距離走の3種目、あわせて51.5キロで競われ、「鉄人レース」とも呼ばれるトライアスロン。自然環境も選手を苦しめました。

 「午前6時前です。まだ早朝なんですが、まもなくレースがスタートします」(記者)

 暑さ対策からレースは早朝のスタートに。ところが、金メダルを獲ったノルウェーの選手がゴール後、嘔吐するなど、倒れ込む選手が続出しました。医療チームが最も忙しかったのが、台風が接近するなか行われた女子のレース。

 「27日、あれが大変でした。4台転倒して、病院に即時に搬送したのは2名」(昭和大学病院 八木正晴医師)

 雨で濡れた路面で選手が続々転倒。医療チームも処置に追われました。世界最高峰の戦いを支えるという“やりがい”。その一方で、当初は派遣に葛藤も抱えていたといいます。

 「感染リスクに飛び込んでいくところもあるので、そういったものを家や病院に持ち込む可能性。選手は割とPCR検査を何回もしているんですが、大会スタッフは全員がそうではないので、どうしても部分的にバブルがはじけているので、そもそもオリンピックでバブルをやること自体、無理がある」(昭和大学病院 八木正晴医師)

 また、気になるのは、普段勤務している病院のコロナ病床の状況です。

 「ひっ迫してますよ。僕が最後に勤務した日は重症者病床が満床になったと言われましたから、気にはなりますね。ベッドがいっぱいだったら、コロナの患者さんは今どうなってるのかなとか。病床に関してはかなりきついと思います」(昭和大学病院 八木正晴医師)

 感染が急拡大する中、病院を離れ、大会に派遣されている医療チーム。八木医師は、今回の東京オリンピックをどのように見ているのでしょうか?

 「最後の表彰式も感動して見ていたのでこういうのは人間に必要なんだなと思います。感染対策がしっかりできているのであれば、僕もオリンピック競技をすること自体はいいと思う。ただそれで一か所に人が集まるので感染者は増えます。それをみんなが理解しているかどうか。ずっとこの1年のように、あれもしないこれもしないという生活でやるのかということだと思います」(昭和大学病院 八木正晴医師)